表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

終わりからの始まり

はい、始まりました!子供から始まる異世界物語。

この放送は瑠架の提供でお送りします♪




その日は随分と平凡で当たり障りない一日だった。




いつも通り、イヤホンを片耳に付けて大音量で好きなアーティストの歌を聞きながら通学する。体力がとことんない私の横を、同じ目的地へと急ぐ生徒が何人もすれ違っていく。

腕時計を見て、これは遅刻するかも?とか思いながらペダルを漕ぐ足を速める。

この信号を渡れば学校だと自分を励ましていると、横から凄い勢いで何かと衝突した。





跳ねる自分の身体、逃げ去る車、ありえない方向に曲がっている自転車、そして青ざめた顔でそれを見ている同じ制服を来た人達。






私は確かにそれを上空から見ていたーーーーーー今も。








思ったよりも死んだ事に対して何も思わなかった。

別に死を受け入れられないんじゃなくて、どうでもよかった。私は自分をひき逃げした相手にもなんとも思わなかった。ただそういうモノだと受け入れた。私の人生は終わったのだと、これからは思いっきり寝れるのだと思った。


あ、最後は余計か(笑)





それにしても、私はこれからどうしたらいいんだろう?死んだ後の事なんか知らないから、お迎えが来るのか、成仏して天に昇るのか、はたまたこのまま放置されるのか、何も解らなかった。まぁ解らないのが当たり前なんだけどね。



今の状態は多分だけど魂だけの姿だと思う、憶測だけど。だからなのか雲も風も私に何も影響を与えない。

ずっと事故現場を見ていたのだけど……正直に言うと飽きた。だからここから移動しようと思う。なんでか解らないけど自分の意思で動かす事が出来るみたいだし。



さて、どこに行こうかな?




「あ、ここにいたんですね。羽藤(ハトウ) 音羽(オトハ)さん」



私がどこに行こうか考えていたら、後ろから声が聞こえた。振り向くと金髪蒼眼のこれまた典型的な天使様がそこに降臨なさっていましたとさ。



……??誰だ?私はこんな美人のお方とお知り合いになってない。しかも私の名前まで把握してるとは……ストーカー?ナニソレコワイ



「違いますよ!!」


すいません、知ってます。


「知っているのでしたら、何でそう思ったのですか!?」


ノリ?


「ノリ……ノリですか……」


で、私のお迎えですか?天使様。



落ち込んでいた天使様は気がついたようにポンっと手を叩くと私に笑顔で手を伸ばした。



「あっそうでした……貴方を迎えに来ました」


別に未練もないのでひと思いに連れて行ってください。



私は天使さんの手を取った。取った瞬間に何故かとてつもない眠気が襲ってきたが、私はそれに抗わずに意識を落とした。最後に見たのは眉を下げて悲しそうに笑っている天使様だった。

それを疑問に思う事もなく私は完全に眠りについた。








目を覚ました時、周りには誰もいなかった。迎えに来てくれたという天使様でさえも。ってこれは当たり前か。


周りを見るとモフモフとしてて、布団に包まれたみたいに気持ちがいい。耐え難い感情のままにそれに身を預ける。ぼふんと少しの弾力があったけど、すぐに収まった。人肌の体温でなんだか安心してしまう。


ヤバイ。これは一家に一つ欲しい!!誰でも安眠できそう。



そんなアホらしい事を思いながらも、頭は勝手に思考する。あの天使様は何処とか、あのまま成仏じゃなかったのかとか、色々と疑問はあるけど、それよりも……。



「ここっ……?」



慌てて喉に手を当てる。声が出る。何で?さっきまで思考しか出来なかったのに……。



「ここは魂の寝床」


「貴方は?」



魂にある記憶を消すのに一旦寝る為の場所だと私は踏んだ。だからナニソレなんて聞かない。どうせ忘れるのだから、知っていても意味がない。


それにしてもこの声の主はどこにいるんだ?私の視線の中にはいないんだけど……。



「悪いが神の姿は肉体がない者が見たら消えてしまう」


「へぇ貴方は神様なんですね。大丈夫です、気にしてません」



神様も大変だね。誰かが死んだら一人一人会わないといけないなんてさ。私だったらボイコットしてる。



「ありがとう。それに死者に一人一人会う訳ではない。特別な場合のみだけ」


「特別?」



私は別に神様に気にしてもらえる程、特別な事はないはずなんだけど。だって成績は普通、顔もそれなり、身体能力は子供以下だったけど……。



「そう、特別。君はあの世界に違和感はある?例えば自分と周りがズレてるとか」




そう言われて思い出すのは私の家族。穏やかな両親に口うるさいけど私に甘い兄。

愛されている自分。必要とされている自分。

なのに私は物心ついた頃から“違和感”に気づく。両親にも兄にも心を開けない私。


住んでいる家、自分の部屋。聞こえる音、家具、環境。全てに疎外感を覚えた。


『ここは私の居場所じゃない』


漠然とした感覚。明確な答えなどないのに、歳を重ねれば重ねるほど強くなる違和感。

まるで私は一人“のけ者”のような気がして……。


だから自分の全てをかけて愛してくれる人が欲しかった。もしかしたらヤンデレっていう部類なのかもしれないけど、それでも自分をあの世界に縛り付けるナニカが欲しかった。



まぁその前に感情が欲しいかも。人に対して一ミリも心が動かないから全然解らないんだよね。今までは取り繕ってたけど、子供の頃はそれはそれは無愛想な子供だったんじゃないかな。




「……悪い。それは神のせい……。謝っても許される事ではないのは解ってる」


「いきなり謝られても解りません。詳しく教えてくれませんか?」



神様のせいだなんて謎なんだけど。説明を要求する!!

神様は少しの沈黙の後に話しだした。



「魂にはそれぞれ波動というものがある。その波動にあった世界で産まれる。世界との相性によって、身体が強かったり、頭が良かったり、容姿が良かったり。……君は地球とは全然真逆の波動を持っていた。だから君が感じていた違和感は、波動が真逆過ぎて拒絶反応を起こしていたんだ」



なるほど。私が違和感を感じていたのって拒絶反応だったんだ。はぁスッキリした!……スッキリしたけど一個だけ納得出来ない事があるかも。



「よく解りませんね。それで何故神様が出てきて、謝るのですか?」


「波動が真逆な世界には産まれないようにしているのに、君はそうなってしまったんだ。波動によって産まれる世界を最終的に決めるのは神。だから謝罪をと思って」




あぁ、だからか。でも神様にも間違いがあるだなんて親近感を覚えるな。


神様は沢山の魂の産まれる世界を決めているんだから間違いは起きるよね。生きている以上ずっと間違わないなんて絵空事もいいとこだよ。

それに黙ってたら気づかなかった事なのに謝ってくれた。それだけで私はいい気がした。




「……怒ってもいい。神が悪いから」


「別に怒りませんよ。逆に感謝します。私の悩みを解決してくれてありがとうございます」


「はは……君は変な魂だ。本当に変な魂だ」



変な魂って……。一応褒め言葉として受け取っとこ。



「それで、これから私はどうしたらいいんですか?」


「それなんだけど、何か願いはない?」


「特にコレといってないですね」



私、向こうでは寝る所があれば何もいらなかった。だからよく欲がないって言われたな……。でもない物はないんだから仕方がないよね。



「……それなら神からの贈り物もらってくれない?」


「いいですよ」



また産まれる時は今の記憶はないんだけど……来世の自分に必要なモノだったらいいな。



「うん、それは大丈夫」


「そうですか」


「贈り物っていうのは、君の魂の波動と一番相性がいい世界への転生。どう?」



それならば来世の私も高性能で産まれる事が出来るか。やったね!最初からイージーモードだよ、来世の私。



「神様ありがとうございます……あ、れ?」



深く何処にいるかも解らない神様に丁重に頭を下げていたら、強烈な眠気が襲ってきた。これは今の記憶がなくなろうとしてるのかな?来世の私、神様からの贈り物で楽しく生きろよ。





「あ、色々とおまけしておくから!」



見せられないと言われていたのに、意識を失う瞬間に神様がサムズアップをしているのが見えた。何故だかそれに嫌な予感がした。眠気に抗おうとするけど、抗いきらずに私は意識を落とした。







何卒、これからもよろしくお願いいたします



……www

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ