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落ちこぼれ王女の魔法修行記  作者: 彩華 芽依
第1章:カーバンクル亜種捕獲クエスト編
24/30

  :静寂な夜の過ごし方2

やっぱり短めです。




エリスとルーチェに宛てがわれた部屋はそれぞれ個室(しかも割と広い)だったのだが、広すぎる部屋に慄いたルーチェは「到底、こんなとこで一人なんて無理っ!!」と、涙目でエリスの部屋に乗り込んできたのだが、それはそれでエリスには有り難い事だった。




「そういえば・・・今のエリスの魔力ってどうなってんの?」




全然、魔力の気配すら感じられなくなってるけど・・・と心配そうに言うルーチェに、エリスも苦笑した。




「うん。多分、アルトくんの力の影響で、魔力感知ができなくなってるんだと思うけど・・・ちゃんと、ここにあるよ。」




そう言って自分の胸に手を当てたエリスにルーチェは「・・・そっか・・・それならいいんだ。」と安心したように笑った。




「てか、アルトとあたしたちが同い年ってびっくりだよね!てっきり年上だとばかり思ってたんだけど・・・」




「・・・うん。そうだね・・・。」





夕食会の時に明かされた事実として、しっかりしていて頼りになるアルトゥールが実はエリスたちと同じ15歳の少年であること(リーゼロッテが16歳、ヒルデガルドは『乙女の秘密です』と、にっこりと微笑んだのだが、アルトゥールがあっさりと19歳であることを暴露し水晶の(てっけん)制裁を受けていた光景はなんとも言えず、皆(リーゼロッテを省く)苦笑しか浮かばなかった。)が発覚し、彼自身もあまり堅苦しい言葉遣いは好きではないとのことで、随分砕けた接し方をするようになったけれど、仮にも他国の王族に対し、友達感覚で接して本当にいいものだろうかと、エリスにとっては戸惑う部分もある。





「レオンハルト様も同年代の子と比べれば随分大人っぽいけど、アルトと並ぶとやっぱりなんというか・・・比べちゃ悪いんだけど・・・違うよね。」




てか、アルトの雰囲気が同年代と比べれば遥かに貫禄があるというかなんというか・・・と少しだけ頬を染めながら言い淀むルーチェに、エリスも脳裏に二人の姿を思い浮かべて並べてみる。




黄金の少し長めのさらさらな髪に碧の瞳を持つ、爽やかな笑顔を浮かべるレオンハルトは正真正銘、女の子なら誰もが夢見て憧れる理想の王子様そのものだ。(そして彼は本物の王子である。)片や、白銀(光の反射で虹色にも見える)の長い髪を緩く一つに結い、絶対の自信をその薄い金色の双眸に宿すアルトゥールは確かに、同年代よりもずば抜けた貫禄を持ち、彼の横に立つレオンハルトを随分と儚く、存在すら霞ませてしまいそうな雰囲気すら持っているように思う。





「確かに・・・月のような淡い色を宿しているのに意外と行動派なアルトくんと並べると、ハルトくんも形無しっていうか・・・・・・アルトくんの国の同年代の子って、みんなアルトくんみたいに大人っぽいのかなぁ?リズさんも私たちと一つしか変わらいのに凄く大人~って雰囲気持ってるし・・・」




「ね~・・・あたし、アクティ(じぶ)アハー(んの)王国(くに)のこともあんまり知らないんだけどさ、そう考えると、ホント、世界って広いんだなぁって思うわ。」




しかも、あたしたちの暮らす大陸の他にも実はいくつか大陸があって、そこにたくさんの国や人々の暮らしがあるんでしょ?考えただけでワクワクしない?と、目を輝かせるルーチェにエリスも素直に頷いた。




「そう・・・だね。いつか・・・そういう所にも行ってみたいね。」




「ねー。見たこともない美味しい料理とか、風景とか・・・あ、アルトはある程度知ってるのかな?リズさんの集めている本にも載ってたりするのかなぁ??」





ん~・・・気になる!という、ルーチェの探究心は尽きることがない。少女たちの広い世界への憧れは静寂の夜にひとつの光を胸に灯した。










































「・・・・・・やぁ、眠れないのかい?」






喚びだした屋敷から大分離れた先で一人、日課である鍛錬(扱えるだけの武器を金剛石の耳飾りを通して具現化し、一つ一つの攻撃の型や武器から武器へのイメージの切り替えと言ったものを指す)を行っていたアルトゥールの元に穏やかな声が届く。




「ん?・・・・・・あぁ・・・・・・レオンハルト様と・・・マーシェル、だっけ?君らこそ眠れないのか?」





俺は別に眠れないっていうわけじゃなくて、睡眠時間短くても何ら問題ない体質なだけだから。と苦笑し、振り回していた、二人が見たこともないような、細身ながらも刀身が通常の剣の倍以上あり、月の光を受けキラリと煌く、彼らの知識にはない(もの)を瞬時に耳飾りへと戻したアルトゥールは「・・・で?世間話をしに来たわけではないんだろう?」と、どこか面白そうにしながら目を細めた。





「・・・お見通しですか・・・」




「なんだ?あっさり認めちゃうんだ?」




「レオンハルト様はともかく、僕はそういう腹の探り合いは苦手なので。・・・・・・・・・まずはお礼を。魔力暴走を引き起こした我が姫君をお救い頂き有難うございました。」




そう言って、臣下の礼を取ったマーシェルにアルトゥールは「そこまで畏まらなくてもいいのに。」と苦笑したが、それがマーシェルなりのけじめのつけ方だろうからと、謝意はきちんと受け取った。




「・・・マーシェルはエリス様(マイスター)の専属騎士・・・なんだっけ?」




「まぁ・・・見習いですけどね。」




「んじゃ、これから長い付き合いになるんだから、敬語も不要。気楽にやろうぜ。・・・で?レオンハルト様のご用件は?」





すっと、マーシェルからレオンハルトへと移したアルトゥールに、レオンハルトは浮かべていた笑を消して真剣な表情で「2、3・・・質問をしたいんだ。」と切り出した。





「まず1つ目。エリスから魔力が感じられなくなったのだけれど、本当に大丈夫なのかい?」




「あぁ、それ?全然問題ないよ。例えば今までその魔力っていうものが雰囲気みたいに感知出来ていたのだとしたら・・・これから先、エリス様(マイスター)の魔力は通常状態ならば誰にも感知されることはないんだけど・・・もしかして不都合が生じるのかい?」




逆にレオンハルトやマーシェルに問いかけたアルトゥールに二人は微妙な表情を浮かべた。




「いや、それでも魔法が問題なく使えるんなら問題はないはずだけど・・・・・・」




「事情を知らない者からすれば、エリスの魔力が失われたように思われてしまうだろうな。」




「ふぅん?じゃあ、早いとこエリス様(マイスター)には魔力を引き出すコツを掴んでもらって、とやかく言う奴らに一発ぶちかましてやれば問題ないな。」




(・・・・・・えぇ?)




「そ・・・それはちょっと過激すぎるよ、アルト。」




無問題!と晴れやかな笑顔を浮かべるアルトゥールに二人はドン引きである。しかし、言い分は間違っていないので、その手もありだなぁと(しかし、アルトゥールが考えているよりも大分穏やかに、ではあるが)納得もするのだが。





「それで?2つ目の質問っていうのは?」




「・・・・・・アルトがどれくらい強いのか、この目で確かめたい。」




「・・・なるほど。大本命の質問ってことだ?俺はいいけど・・・二人はまだ本調子じゃないんだろう?」





と、当然のようにマーシェルとレオンハルト、二人掛りでの模擬戦を想定していたらしいアルトゥールにマーシェルは「え?僕は戦わないよ!?僕は単にレオンハルト様に見届けるよう言われただけだから!!」と否定した。





「え?そうなの?」




「そうなの!出来ればアルトとは万全なときにやりたいの!」




「・・・そっか・・・・・・じゃあ、今やる気満々なのはレオンハルト様の方なんだな。・・・・・・さて・・・どうしたものかなぁ・・・。」




掌にある耳飾りを弄びながらアルトゥールは夜空を見上げた。その様子から彼自身はあまり乗り気でないことは窺えたが、レオンハルトはそれでも引く気はなかった。





「・・・・・・君が強いということは充分、理解しているよ。・・・誰も動けなかったあの状況で、全ての事態を収束させたのだから・・・・・・それでも、僕の大切なお姫様(エリス)の傍にいる人間として相応しいかどうか・・・・・・」




「それを判断するのは寧ろヴェルフレイド様だろう?」




「っ!?」





正論を突かれ、レオンハルトはぐっと言葉を詰まらせた。対してアルトゥールは面倒くさそうな視線で彼を一瞥すると一言「あのな?好きな女の子を取られたくないならもっと別の努力をするべきだろう?」と、レオンハルトの精神(こころ)を抉る言葉を投げかけた。





「・・・別に、気が済むのなら模擬戦してもいいけど、それでもっと自尊心(プライド)をへし折ることになっても俺は責任が持てないからな?自業自得で済ませられるわけだし。それに手負いな状況であれそういう理由なら俺も絶対手は抜かない。・・・てか、そもそも大前提として・・・・・・・」




「!!!??」




人間(おれ)相手に殺す気で向かってこれないような甘ちゃんに、俺自身をどうこうと判断されたくはねぇんだよ。」





向けられた殺気に当てられて、レオンハルトは硬直し顔を青褪めさせた。それは直接それを向けられなかったマーシェルも同じで、本来ならばそんな彼の視線からレオンハルトを守らなければならない立場にあるのだが一歩も・・・指を僅かにでも動かすことすら出来ずにいた。そんな二人にアルトゥールははぁっと深い息を吐き、瞬時に殺気をかき消すと「いやいや・・・流石に平和ボケしすぎだろ・・・」と何故か頭を抱えていた。





「あ・・・アルト?」




「やー悪かったって。まさか、この程度の殺気も受け止めきれないほど平和な世界(くに)だったなんて思わなかったんだって!そりゃ未経験なもんぶつけられたらどうしようもないよな?とりま、守護竜にあったら一発ぶん殴る!!」




「う・・・うん?」





辛うじて動けるようになったマーシェルにアルトゥールは斜め上な発言を繰り返すが、何にせよ、彼の怒り(なのだろう・・・レオンハルトの何かに切れたのだとそうマーシェルは分析した)が収まってよかったと、胸を撫で下ろしたマーシェルだったが未だに動けず呆然としているレオンハルトが気に掛かり、そちらへと視線を投げると、レオンハルトはいつの間にか地面に倒れていた。





「!?レオンハルト様!!?」






「あー・・・意識が戻るまで時間掛かりそうだなぁ。マーシェル、すまないけど彼を頼むよ。元凶の俺が居ても落ち着かないだろうから。」





そう言って去ろうとするアルトゥールに「待って!」とマーシェルが呼び止めた。





「ん?」




「さっきの言い分・・・・・・アルトはエリスとレオンハルト様のその・・・ごたごたを・・・知ってるの?」




「知ってるっていうか・・・まぁ、お陰さまで、ある程度の『情報』として、彼女の記憶は貰ってるよ。」





もちろん、その時の感情とかは読み取ってないけど、それでも、ね。と苦笑したアルトゥールにマーシェルも同じように苦笑した。





「そうか・・・まぁ、知っちゃったものは仕方ないか。」




「ある意味こればっかりは不可抗力だから・・・・・・」




「それで?どう思う?エリスとレオンハルト様って――――――――――」




「さぁね。それはエリス様(マイスター)次第だろう?けど個人的には・・・・・・・・・」





気に入らないね。と小さく呟いた言葉は果たしてマーシェルに届いたのだろうか。それを確認するまでもなく、アルトゥールは屋敷に向かって歩き始めた。

レオンVSアルト第一戦目はアルトの不戦勝(というより圧勝かな?)。

補足にはなるのですが、レオンは自分が負けるのを覚悟してアルトに勝負を挑んだわけですが、その理由の根底には多分アルトにエリスを取られたくないという、恋するが故の愚かしさ、盲目さがあり、アルトにしてみればそんな理由で戦うなんて意味がないと、戦いとは常に命懸けであるべきという自国の思想故に腹立たしかったのでしょう。・・・その辺りの駆け引きというか思惑は脳内補完でよろしくお願いします^^

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