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落ちこぼれ王女の魔法修行記  作者: 彩華 芽依
第1章:カーバンクル亜種捕獲クエスト編
22/30

  :広がる世界3

大変お待たせしました!短いですが、続きをどうぞです。





「・・・・・・そう言えば・・・・・・何故、皆さんは『悪魔石(トイフェルシュタイン)』保持者と対峙することになったのでしょうか?」





ふと、ヒルデガルドがずっと抱いていた疑問を呟いた。それを聞いたエリス達はそれぞれ顔を見合わせながら困惑した表情を浮かべていた。




「・・・最初はアラン先生(かれ)悪魔石(そういうもの)を持っているとは気づかなかったんですよ。・・・そもそも僕たちが此処へ来たのは、エリスとルーチェの追試の一環で・・・アルトさんが一撃で倒したあのカーバンクル(モン)型人造()魔獣(ター)の捕獲が目的でした。」




「まぁ、怪しんではいたんだ。僕らもね。ただ、彼の裏を取ることは難しくて・・・結果今に至るわけだ。」





情けない話だけどね。と、レオンハルトの言葉から繋ぐ様にヴェルフレイドが言うと、ヒルデガルドは「なるほど・・・」と頷いた。





「パッと見ですけれど・・・エリュシフィア様もルーチェ嬢も・・・そこまで悪い成績を取るとは思えないほどのモノをお持ちのようですけれど・・・・・・」




「・・・だよな?エリス様(マイスター)に関しては全く問題ないはずなんだけど・・・・・・あー・・・でも守護竜(ルシオール)の所為かもなぁ・・・」




「え?」




「えっ・・・ルゥ・・・の?」




思わぬ人物の名が挙がり、エリスとマーシェルは驚きの声を上げ、ヴェルフレイドとレオンハルトはどういうことだと、目を細めた。





「今までのエリス様(マイスター)の魔力・・・だっけ?それを封印によって制御してたのが守護竜(ルシオール)なんだろう?」




「そう・・・だけど・・・・・・でも、ルゥはっ!」




「確かに、エリス様(マイスター)の身体の事を考えれば有効な手段ではあるよ。でも、それって要は必要分の魔力と不必要な魔力が分別された状態でエリス様(マイスター)の中にあったって事だろう?・・・分別されてはいても、何時暴走するかわからない魔力に常に怯えた恐れた状態で、必要分の魔力(つかえるはずのマナ)を正確に制御できるはずないだろう?」




「!!!??」




「それを知ってて見ぬふりしてたって言うんなら、相当のドSだぞ、あの守護竜。・・・その点、俺の【生命石(レーベンシュタイン)】の欠片は分別することなくエリス様(マイスター)の魔力を受け止め続けることができる『魔力炉』の役目をしてるんだ。・・・常に満たされている『魔力炉』から、エリス様(マイスター)が望むだけの魔力を引き出せば、自ずと自然な形で魔法を発現できる。暴発の心配も全くない。」




俺が死なない限りはね。と言い切ったアルトゥールにヒルデガルドとリーゼロッテ以外の驚愕の色を含んだ視線が集中する。





「・・・・・・あ・・・あれ?俺、何か変なこと言った??」




「・・・・・・言った・・・っていうか・・・ぞれじゃあアルトさんの人生(これから)を私が縛り付けちゃうことになるんじゃないですか!?っていうか、マイスターって呼び方、なんなんですか!!??」




「落ち着いてくださいな、エリュシフィア様。別に貴女の全てにアルトが縛られるわけではありませんから、そこは気にしなくても大丈夫ですよ。」




「そうそう。どうせ、アルトは殺そうとしても絶対に死なないから。【金剛石(ディアマント)】の鉄壁の守護の力を破れるのはアルト自身の意志だけだもの。あぁ、それと、マイスターは私たちの国の言語で『ご主人様』という意味を持つ言葉よ。こちらの言葉に言い換えるなら『マスター』ってところかしら。」





状況に振り回され青褪めるエリスを他所にヒルデガルドとリーゼロッテがマイペースに言葉を繋げていく。そんな彼女たちの言葉にほっとするのも束の間、問題はそこじゃないだろうというヴェルフレイドの声が響いた。




「・・・・・・今はエリュシフィアの召喚を受けてアルトゥール殿は此処にいるが、いつかは自国へ戻らなければならないのだろう?そうなった時・・・・・・ルシオールの結界の外側に戻るのならば、エリスの守護は途切れてしまうんじゃないのかい?」




「まさか。例え俺が国に戻ったとしても、一度繋がったものは簡単には途切れたりはしないさ。そもそも、金剛石おれの加護が守護竜の力如きでどうこうなるはずもないよ。それに、どうしても心配だって言うなら、うちの国との繋がりをもっと強化すればいいだけの話だしな。」




「え?」




「あぁ・・・そういうこと・・・。アルトにしては良い案ね。」




「あの・・・どういうこと・・・でしょう?」





おずおずとエリスが問いかけると、リーゼロッテはにっこりと微笑みながら「簡単なことよ。」と言った。





「守護竜の結界にエーデル(わたし)シュタイン(たちの)王国(くに)からの干渉を無条件で受け入れるよう、その効果を一部書き換えればいいのよ。それによっても齎される効果は、こちら側だと宝石の鉱脈の強化、魔石量の増加と質の良さね。逆にうちの国が受ける恩恵といえばこちらに自由に行き来できる特権くらいかしらねぇ・・・」




まぁ、それを魅力と取るか、不利益と判断するかは私たちではなく王太姫(アデルねぇさま)なんだけれど。




「・・・何れにせよ、全ての鍵を握っているのは守護竜と・・・その先の交渉に当たるであろうこの国の王位継承者とアデル姉様次第ね。」




「・・・・・・うちの王位継承者って・・・・・・・・」





エリスとマーシェル、レオンハルトの三人はヴェルフレイドへと視線を投げた。彼らの視線を受けてヴェルフレイドは苦笑した。そんな様子を眺めていた三姉弟は、アルトゥールは何とも言えない複雑そうな表情を、ヒルデガルドは普段通りの微笑みを絶やさず、リーゼロッテは彼を見定めるような表情でヴェルフレイドの様子を伺っていた。




「・・・あはは、責任重大だね・・・」



「・・・まぁ、ヴェルフレイド様なら・・・・・・いや、それでもウチのアデル姉相手じゃあ・・・・・・」




アルトゥールの脳裏には、交渉に当たる、彼らの長姉(アーデルハイド)の圧倒的な威圧感に圧される二人が簡単に想像できて言葉を濁したのだが、同じようにそんな状況を想像していたのだろう、リーゼロッテに「アルト。それ、とっても失礼よ。」と窘められてしまった。




「・・・ヒルダ様。アデル様ってどのような方なんですか?」




マーシェルの素直な問いかけにヒルデガルドはにっこりと「そうですわねぇ・・・」と、何処からともなく水晶玉を取り出して、彼の前に差し出した。




「!!?」




「これはリズの図書棟の最上階の壁に掲げられている肖像画なのですが・・・わたくしから補足させていただきますと、この時は無理矢理ドレスを着せられて不機嫌でしたので、このような威圧感ある絵になってしまっているだけで、普段はもっと穏やかですのよ?」




「・・・・・・穏やか?」




「・・・アルト?戻ったらアデル姉さまに言いつけるわよ?」




「!!?ちょ・・・リズ姉、それだけは勘弁・・・!!」




「うふふ、リズ、わたくしも協力しますわ。」




「っ、ヒルダ姉まで!!やめてよ、俺死んじゃう!!!」




「「まぁ、何をそんな大袈裟な・・・」」




(((((・・・彼らのお姉さんって一体・・・・・・・)))))





「で・・・でも、すっごい美人ですよね!こう・・・目に毒なくらい豊満で・・・・・」




「そ・・・そう!そうなんだよ、ルーチェ嬢!!アデル姉さんは美人で、軍服もいつも際どく着こなしてるから、ホント目に毒・・・じゃなくて、眼福でさぁ!!」




「・・・アルト、もうお黙りなさいな。」




「・・・・・・・・・ハイ・・・・・・・」





ルーチェのフォローに便乗してみたものの、あっけなく撃沈したアルトゥールはしくしくと、パンを千切り頬張った。





「・・・全体的に赤いタッチで描かれていますよね?何か意味があるんですか?」




ふと気づいた、レオンハルトの呟きにリーゼロッテは「そうね、意味はあるけれど・・・でもそれ、殆ど見たままなのよ。」と言った。




「え?」




「私たちの髪色や瞳の色って大体は自分たちが司っている宝石に由来することが多いのよ。――――アデル姉様の場合は『血玉石』・・・・・・ブラッドストーンを司っているので、この時のドレスの色もそれに合わせたらしいのよね。・・・まぁ、そのドレスを用意したのはお父様なんだけど・・・・・・もうちょっとマシな色があったでしょうに・・・・・・」




娘の好みも把握できないのかと、暗に失望の色を見せるリーゼロッテに、ヒルデガルドは苦笑しながら「ですから、威圧感ある絵に仕上がっていますが、実際はこれほどではありませんからご安心下さいませ。」とフォローした。











































そんな彼らが和やかに夕食を楽しんでいる同じ時間帯の某所では――――――――






「・・・・・・くしゅっ!」




堪えきれずに出してしまったくしゃみによって、高く積み上げられていた書類の束がぐしゃりと、崩れ落ち、アーデルハイドははぁっと重い溜息を吐いた。




「ったく、誰だ?私の噂をしている馬鹿は・・・・・・」




「おーい、アデル。やっぱ、リズの奴居ねぇわ・・・・・・って、うわっ、これはまた派手にやったなぁ・・・」




「・・・ギル・・・・・・」





大丈夫か?と、苦笑しながら、アーデルハイドの執務室に入ってきたギルベルトは迷うことなくアーデルハイドの所へと足を運び、崩れた書類に手を伸ばした。




「・・・で?何をしてこうなった?」




「何って・・・くしゃみをしたらこうなったんだが・・・・・・」




「何?具合悪いのか?」




「まさか。誰かが噂でもしてたんだろう。・・・・・・そうか・・・・・・リズも居ないのか・・・・・・」




「え?リズ()




「あぁ。数時間前、アルトとヒルダの反応が消えた。それはギルも感じ取っただろう?」




「あぁ・・・それは、な。」




「それよりも前に、リズの反応が消えかかっていたんだ。」




「!?」




「恐らく、アルトの収納術に巻き込まれたんじゃないかな?別宅を持っていくって言ってたから・・・。」




「・・・あー・・・ナルホド。アルトの別宅ってあれだろ?大半はリズの図書棟っていう・・・・・・」




「そう、それだ。元々好奇心旺盛で知識欲に飢えている奴だからな、リズは。結界に閉ざされた未知の大陸には少なからず興味があったのだろう。いつ戻るか解らないアルトに期待するより、自分で行った方が早いと判断したのかもな。」





我が妹ながら、行動力があるよな。と苦笑したアーデルハイドにギルベルトも全くだと、呆れたように苦笑した。





「しっかし、一気に三人も居なくなると結構寂しいな。」




「そうか?あー・・・まぁ、連絡の取りようがないという時点で、いつもとは違うが・・・そもそも、こうして姉弟揃って王城にいること自体が稀なんだが・・・・・・寂しいか?」




「そりゃあ、ヒルダという癒しとアルトという揶揄いがいのあるおもちゃ、それに物知りなリズが居ないんだぜ?」





残った姉弟なんて、無口なのと真面目なのが大半だからつまんねぇじゃん?と言い放つギルベルトに、アーデルハイドはほぅ?と妖艶な笑みを浮かべた。




「そうか・・・ギルは姉弟たちをそういう目で見ていたのだな?」




「え?あ・・・や・・・違うんだ、アデル!!決してアデルの事を言ったわけじゃあ・・・・・・」




「・・・ギルベルト。」




「・・・・・・ハイ。」




「私の代わりにこれ、よろしく。」




仕事に忙殺されれば寂しさも紛れるだろう?と宣ったアーデルハイドの背後には魔王が見えたとかなんとか。ともあれ、エーデルシュタイン王国の姉弟たちは今日も元気な様子である。

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