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落ちこぼれ王女の魔法修行記  作者: 彩華 芽依
第1章:カーバンクル亜種捕獲クエスト編
10/30

 VS『深海を統べる悪魔』 2




「ん?」




甲板へと辿り着いたヴェルフレイドが最初に見た光景は、見慣れた真っ白いカーバンクルが、妹の親友である少女の頬を、そのもふもふの尻尾で往復ビンタしていたものだった。





「・・・・・・アレクサンドル・・・・・・そういうプレイ(・・・・・・・)が好みなのかい??」





思わず、素で言葉を零したヴェルフレイドに、アレクサンドルは「失敬だなぁ・・・」と胡乱な目で彼を見た。





「ボクはただルーチェの現実逃避を阻止してるだけだよ。・・・っていうか、ヴェルフレイド(キミ)こそ、なんの冗談だい?」




その姿・・・・・・とは声に出さずとも、ヴェルフレイドにはきちんと伝わっていたようで、苦笑しながら「・・・俺はレオンハルト様の護衛だから・・・今は、ね?」と言い切ると、アレクサンドルは「うっわぁ~・・・」とわざとらしく震えた。





「そういうわけだから、俺のことは『ヴォルフラム』と呼ぶんだよ、アレクサンドル?」




「・・・この程度の幻覚(モノ)でキミの正体に気づかないなんて・・・キミらが危惧してる人物って相当のマヌケじゃない??」





ぽつりと呟いたアレクサンドルだが、ヴェルフレイドの凄まじくイイ笑顔の前に深い溜息を吐いた後に「了解。護衛のお兄さん(ヴォルフラム)。」と了承の意を伝えた。





「あっ・・・」




「ん?どうしたの、ルーチェ?」




「・・・・・・風が・・・変わった。」




「風?」





ふと、ルーチェが呟くと、首を傾げたアレクサンドルは程なくして「あぁ・・・風の精霊(シルフ)達が船首付近に集まってるね。・・・エリスが何かしたのかな?」と、ゆっくりと船首側へと視線を向けた。





「・・・風の精霊の加護をマーシェルに与えたんだろう。・・・『深海を統べる悪魔(クラーケン)』を倒すにはこちらから接近してやらないといけなくなったから。」




アレクサンドルの『守護(ガード)』でクラーケンは船に近づけなくなった。・・・マーシェルは魔法があまり得意ではないから浮遊魔法(フロート)を使いながらの攻撃はできない。そうなると、全ての精霊と繋がるエリスがサポートしてやるのは自然な流れだね。




やっぱり俺の出番はないかも。と楽しそうに笑うヴェルフレイドに、アレクサンドルはやれやれと苦笑しながらも「それでも行くんでしょ?」と、既にその答えがわかっているのだろう、ふよんとルーチェの傍からヴェルフレイドの肩へと移動し「早く行かないといいトコ見せらんないよ。」と催促した。





「・・・ルーチェ君はどうする?」




「あ・・・あたしは・・・・・・・・」





そんなヴェルフレイドとアレクサンドルのやり取りを見ていたルーチェは、不意に投げかけられた質問に一瞬言葉を詰まらせたのだが・・・・・





「あたしも、行きます。」





何ができるかわかんないし、足を引っ張るだけかもしれませんけれど・・・と、それまでの弱気が嘘のようにしっかりと、彼らを見据えて言い放つと、ヴェルフレイド達は満足そうに微笑み「・・・じゃあ、行こうか。」と言うヴェルフレイドの合図とともに駆け出した。










































風の精霊の加護を受け、海面に触れることなく、クラーケンまでの距離を詰めていくマーシェルは、駆け寄りながら数回、剣を振るう。






「はぁっ!!」





予め、自身の魔力を剣に上乗せしていたマーシェルの想像では、その上乗せした分の魔力が刃となり、敵を刻むはずだったのだが、ここでも風の精霊の加護が得られたのであろう、振るった回数の2倍の刃が、まるで鎌鼬のように飛び出し、クラーケンを襲った。





しかし、クラーケンもただ受身で居るわけではない。触手を素早く動かし回避したり、跳ね上げた海水を凍らせて防御壁を生み出したりと、マーシェルの攻撃の半分以上は防いで見せた。





「っ!『深海を統べる悪魔(クラーケン)』の名は伊達じゃないみたいだね。・・・知性なんて殆ど無いだろうに、大人しくやられてればいいものを・・・・・・」





一度は詰めた距離だったが、マーシェルは一旦後退して間合いを取って状況を素早く分析する。





―――――マーシェル(ぼく)の攻撃によって怒りに支配されたクラーケンの行動は素早くて的確。知性はなくても本能で攻撃と防御を見事に使い分けている。攻撃パターンは触手と・・・細長く尖った口からは冷気を吐き出したあたり、クラーケン(やつ)の属性は氷・・・接近しても、その冷気を受ければタダじゃすまないんだろうな・・・






さて、どうしたものか。

































動きが止まったマーシェルを船首から見守っていたエリスの肩にポンっと、軽い衝撃が走る。





「!?」




「やぁ、エリス嬢。状況はどうなってるんだい?」




「フレッ・・・・・・ヴィルフラム様。えと・・・マーシェルが風の精霊の加護を得て攻撃しているのですが・・・」




「細切れには至らず・・・か・・・。まぁ、グランバニエ家は代々長剣の剣技が主流で、一撃必殺に重きを置いているからなぁ。手数(てかず)的にも限界があるんだろう。」





慌てて振り向けばそこには見慣れた兄の姿だが、出航前に言われた言葉を思い出し、何とか言葉を繋げると、ヴォルフラムは苦笑しながらすっと船首の先へと視線を投げた。





「うーん・・・今回はマーシェルだけではちょっと厳しいかな?」





仕方ない、俺も行くか。そう呟いたヴォルフラムは続けて浮遊魔法(フロート)の呪文を唱えると、ふわりと、宙へと舞い上がり、何処からともなく取り出した双剣を携えてマーシェルの方へと向かっていく。残されたエリスの側には、漸く追いついたルーチェが肩で息をしながら「ま・・・マーシェルは大丈夫なの?」と心配そうな視線を彼女に投げかけた。





「ヴォルフラム様も手伝ってくれるみたいだし、大丈夫だよ。・・・そもそもルーチェの方こそ大丈夫なの??」




「・・・うん・・・・・・体力だけは自信があるけど、足の長さ(コンパス)には勝てなかったわ・・・」




「馬鹿正直に護衛のお兄さん(ヴォルフラム)に張り合わなくてもいいのにねー。ルーチェって結構負けず嫌いデショ?」




「うっ・・・」




「まぁ、逃げ出さなかっただけ良しとしようか。・・・で、エリスはクラーケン(あれ)の倒し方、ちゃんと聞いてるの?」






相変わらずマイペースなアレクサンドルに苦笑しながらもエリスは「勿論。」と頷いた。





「細切れになったら、炎か雷で消滅させるんでしょう?自発魔法は・・・自信ないから、召喚で行こうかなーって思ってるんだけど・・・」





炎で呼び出すなら『炎帝(イフリート)』、雷だったら『一角獣(ユニコーン)』あたりが妥当かなぁ・・・と、平然というエリスにルーチェが大きく目を見開いた。





「え?何、エリス・・・そんな高位の召喚魔法が使えんの?」




「え?あれ?『炎帝(イフリート)』も『一角獣(ユニコーン)』も高位召喚になるんだっけ??」




じゃあ、アラン先生居るから使えないか・・・どうしよう・・・・・・と、おろおろとし始めるエリスにルーチェは頭を抱えた。





「なんでこう・・・いろいろ凄いのに残念なんだろう・・・・・・」




「それがエリスの良いところだよねぇ~」




「アレク、本当にそう思ってる?」




「勿論だよ!この世に完璧な存在なんて居やしないんだからさ。」





残念なところがあるのは当然だし、そこが愛おしんだよ。とルーチェの頭の上で言い切るアレクサンドルに、彼女は胡乱な目を向けるも、まぁ、それもそうか。と納得して小さく息を吐いた。





「はぁ。いいよ、エリス。その最後のトドメはあたしがやる。」




「え?ルーチェが?」




「言っとくけど、あたし、自発魔法・・・特に炎と雷の魔法は得意な方だもの。・・・それに、あたしだってちゃんと戦えるってこと証明しなきゃでしょ。」





マーシェルは剣で頑張ってるし、エリスはこうしてアレクを呼んで船を護ってる。あたしだけ何にもしてないっていうのも悔しいもん。と、非常に複雑そうな表情ながらもやる気は試験の時より遥かにあるらしいルーチェはすっと目を閉じた。





「―――――――――『・・・気高き【創造の女神(プリマヴェスタ)】よ。汝が創造の片鱗を我に、授け給え』――――――――――――――――」





祈るように指を組み、呪文というよりはおまじないに近い言葉を小さく告げると、ルーチェは目を開き、真っ直ぐ視線を海へと向けた。





「ルーチェ?」




「しっ、エリス。・・・今、ルーチェは凄く集中してる。それを乱すのは良くないよ。」





不思議な感覚に声を上げるエリスをアレクサンドルが小声で注意する。おまじない以降、ルーチェ自身の魔力が彼女の中で溢れ、何か形を成そうとしている様子がアレクサンドルには感じられたのだ。





「―――――――――――――――『小さな焔は燃え上がる。不浄なるものを滅するために。全ての穢れを祓うために。』」





詠う様に紡がれていく言葉はエリスもよく知る聖典の一節なのだが、ルーチェにはそれすら呪文になるようで、言葉とともに、ルーチェの掌には最初こそ小さな炎が、徐々に大きくなり、試験でも一発合格を貰えそうなほど綺麗な火炎球(ファイアーボール)が出来上がっていた。しかし、それで完成ではないらしい。






「『穢れ無き聖なる焔よ。破邪の矢となりて悪しきものの上に降り注げ!』――――――」







力ある宣言によって綺麗な火炎球は燃え盛る細長く大きな矢へと変貌していて、いつの間にかルーチェの左手には、彼女の魔力で形成された弓がしっかりと握られていた。








弓と矢が揃ったということはそれ即ち―――――――――――――――――








ごめんなさい、いいところではあるのですが、一旦区切らせていただきます。バトルを一気に書ききるだけの文才が欲しい・・・・・・(切実)

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