宿屋にて
三人は街に到着すると、宿屋に向かった。
掲示板で見た小さな宿だが、部屋は一室しか空いていない。ベッドも一つだけ。
蓮はいつもの通り、宿代の値切りを試みる。
「この部屋、一泊50ゴルドって書いてあるけど……ちょっと高い気がするんだけど」
宿屋のお姉さんは腕組みし、にっこり笑う。
「まぁまぁ、良いお客様に来ていただいたから特別に……でもあんまり下げられないわよ?」
蓮は軽く手を触れ、スキルの微弱な威力で心理的圧をかける。
お姉さんは一瞬戸惑いながらも、最終的に30ゴルドに値下げしてくれた。
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一部屋しかないため、三人はベッドを囲む形になる。
リィナは軽く頬を赤らめつつ、掛け布団を整えながら小声でつぶやく。
「……こうしてみると、意外と窮屈ね」
三人が一部屋のベッドに収まると、夜の静寂が部屋を包む。
掛け布団は一つしかなく、肩や膝が自然に触れ合う。
蓮は微かに手を伸ばし、隣のリィナの腕にそっと触れる。
「……ん?」
リィナは軽く目を見開き、肩に熱を帯びたような感覚を覚える。
蓮は心の中でスキルの起動を確認する。
「(接触型ドミネーション……軽く触れるだけで反応が分かる。戦闘だけじゃなく、こうして静かな状況でも効くか……)」
触れた瞬間、リィナの心拍がわずかに早まり、普段見せない表情が浮かぶ。
セリアも横で蓮の肩に手を添え、微笑みながら少しドキドキしている様子。
蓮は独り言のように考える。
「反応が分かる……攻撃や防御だけでなく、こうして心理的な揺らぎも確認できる。これで、戦闘でも平常時でも最大限に力を引き出せる」
リィナは頬をわずかに赤らめ、肩を少し引きながらも、魔力の流れが体内に増幅するのを感じていた。
セリアも同じく、被虐覚醒はまだ発動していないが、蓮の触れ方で微かに魔力が高まる。
ベッドの狭さで肩や膝が触れ合うたび、三人の間に心理的な緊張感と親密さが増していく。
蓮は手を動かすたび、微妙な反応を確認しながら、二人の魔力を静かに操作していた。
夜の静けさの中で、三人は触れ合うことで互いの存在を意識し、戦闘以外でもスキルの有効性を実感する。