鈴楓と林音の狭間で
悠栄の指導によって、風in火山PJTは本選に向けて大きく動き始める。練習を積むほどに高まる期待と、レベルアップする演奏。そこへ鈴楓のコーラス参加という新たな要素が加わり、バンドの可能性は大きく広がっていく。
しかし、主人公・風斗の胸中には、冷ややかな印象ながらどこか引きつけられる林音の姿がちらついてやまない。フレキシブルローゼスの傍らにいながら心が揺れる彼女の言葉が、風斗の心に小さな波紋を広げる――。
悠栄のアドバイスを受け、俺たちは本選への準備に忙殺される日々を送っていた。
火煉と山河は猛練習で腕を磨き、俺もギターとボーカルをもっとアグレッシブにするためにトレーニングを繰り返す。さらに鈴楓がコーラスで参加してくれる可能性が出てきたことで、曲構成にも新しい光が差し込んだ。
――だが、同時に俺の頭にはもう一人の存在がチラついていた。林音……あの冷たいようでいて、ときどき謎の言葉を残していく女性。フレキシブルローゼスのマネージャーとして彼らを支えつつ、どこか迷いを抱えているようにも見える。
夜、スタジオ練習後に一人で外に出ると、路地裏に林音の姿を見かけた。
「こんなところで何してるんだ?」
「……ちょっと、散歩。あんたは?」
「俺もクールダウン。最近ずっと練習漬けだからな」
林音は煙草を取り出し、一瞬くわえようとしたが、ため息とともにしまい込む。
「やめたのか?」
「いや、吸う気が失せただけ」
「ふーん」
気まずい沈黙が流れる。俺は思い切って聞いてみた。
「お前、本当はフレキシブルローゼスのやり方に納得いってないんじゃないか?」
「……別に。でも、あいつらは強い。私もあそこにいれば、成功への近道があると思ってた」
「今は、違うのか?」
「さあね。あんたたちを見てると、なんだかバカみたいに純粋で……うらやましいだけかも」
林音は苦笑すると、まっすぐ俺の目を見て言った。
「もし本選で勝てたら、あたし……どうなるんだろう。ふふ、まあいいや。お互いに全力出しなよ」
それだけ言って、夜の闇に溶けるように去っていった。
(俺だって、鈴楓に惹かれてる気持ちはある。けど林音のことも放っておけない。くそ、こんな悩み方は自分らしくないな)
悶々としながらも、次のステージに全力を注ぐしかない――そう自分に言い聞かせるのだった。
鈴楓への思いとはまた別に、林音の存在も無視できない風斗。言葉少なげな彼女が抱える葛藤を垣間見るたびに、どこか放っておけない気持ちが募ります。
仲間たちとの練習やステージ準備で時間に追われながらも、頭から離れないもう一人の女性。――それでも、ロックにかける情熱を最優先せずにはいられない主人公と、それを取り巻く人間模様が、次のステージにどう影響していくのか。彼らの心の火花はますます熱を帯び、物語はさらに深みを増していきます。




