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ROCKIN’ VOLCANO  作者: NOVENG MUSiQ


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12/12

ロックンローラーはアキラメナイ!

迎えたファイナルステージの朝。積み重ねてきた苦労と熱い練習の日々が、ついに結実する瞬間が訪れる。あふれ返る観客席、燃え盛るステージの熱気、そして “風in火山PJT” の全力の演奏。どんなハプニングが起こり、どんな勝負が展開されるのか――彼らのロック魂が炸裂するラストステージの幕開けだ。

 決戦の朝がやってきた。コロシアムは超満員。これまでとは比べ物にならないスケールのステージが目の前に広がっている。


 出演順はくじ引きで、俺たち“風in火山PJT”は二番目。フレキシブルローゼスは大トリだ。

「よし、行こう!」

 火煉と山河がうなずき、鈴楓も「最高のパフォーマンスを見せてあげよう」と気合い十分。


 スポットライトが降り注ぎ、司会が「風in火山PJT!」と叫ぶ。観客の歓声を背に、俺たちはステージ中央へ。

 ドラムカウントから一気に1曲目《壊せ!》で会場を熱狂の渦に巻き込む。火煉のドラムが怒涛のように鳴り、山河のベースがうねる。俺はギターをかき鳴らしてシャウト。

「Hey! 閉ざされたドアを壊して飛び出せ! まだ行けるだろ!」


 観客が手を挙げ、コール&レスポンスのように声を返してくれる。興奮に身を委ねながら、2曲目、3曲目とたたみかける。途中で鈴楓が加わり、透き通るコーラスが炎のような熱気を心地よく冷ます。


 そしてラスト曲――タイトルは《生きろ!》。新曲だが、ここで初披露し、俺たちの覚悟を示す曲だ。

「聴いてくれ! 《生きろ!》……ロックンローラーはアキラメナイノダ!」

 曲が始まると同時に一気に照明が落ち、アカペラのシャウトでイントロを作る。鈴楓がハーモニーを重ね、火煉と山河がそこへビートを乗せる。


――♪どんなに倒れても また立ち上がる

――♪生きてこそだろ 最後まであがいてやれ

――♪この声が枯れたっていい 明日に繋ぐために

――♪ロックンローラーはアキラメナイノダ!


 サビを繰り返すたび、観客が一緒に叫び始める。

「生きろ! 生きろ! 死ぬんじゃねえ!」

 会場全体が震えるほどの大合唱。火煉が全身でドラムを叩き、山河がベースラインをぶちかまし、俺はシャウトしながらギターソロを叩き込む。鈴楓がそのすべてを包み込むようにコーラスを響かせる。


 曲の終わり、照明が一気に復活し、フィニッシュと同時に火煉がシンバルを打ち鳴らして終了。観客から大歓声が起こり、息ができないほどの拍手と叫び声が溢れる。


「ありがとう! 俺たちは風in火山PJT! ロックンローラーはアキラメナイノダ!」

 そう叫んでステージを降りると、林音が袖に立っていた。控えめな拍手を送りながら、寂しそうな、でもどこか晴れやかな表情。


 そして最後を締めるのは、フレキシブルローゼス。これまたものすごい完成度と演出で観客を魅了する。ボーカルの声量は圧巻だし、バンド全体のグルーヴも隙がない。林音も裏方として完璧にサポートしている。

「こりゃ、どっちに転んでもおかしくねえな……」

 火煉がごくりと唾を飲む。俺も同感だ。


 全バンドの演奏が終わり、いよいよ優勝発表の時が来た。ステージ上に出演者が並び、司会がマイクを握る。

「では、ロイヤル・ロック・フェス優勝バンドを発表します……!」

 息を詰める俺たち。フレキシブルローゼスの連中も自信ありげに胸を張る。林音は伏し目がちに見える。


「優勝は――風in火山PJT!」

「うおおおおお!!」

 火煉と山河が歓喜し、鈴楓は涙目で俺に抱きついてくる。俺は実感が追いつかず、ただ「マジか……」と呟く。観客は大歓声と拍手で祝福してくれている。


 司会がマイクを俺に向ける。

「おめでとうございます! 今の気持ちを一言!」

「あ……えっと……」

 頭の中が真っ白になりかけるが、すぐに言葉が湧いてきた。

「俺たちは金もコネもない底辺から始まって……何度も挫けそうになった。けど、諦めなかった。そうしたら、道が開けたんです! だから、みんなにも言いたい――ロックンローラーはアキラメナイ! 生きろ! あがけ! しつこいくらいがちょうどいいんだ!」


 観客がどっと沸き立ち、盛大な拍手が響く。その中で、ステージ端に立っていた林音と目が合う。彼女は静かに笑っていた。

(これで何か変わるのか……?)


 フレキシブルローゼスのボーカルは悔しそうに舌打ちしているが、林音はそっと離れ、「おめでとう」と小さく口の動きで伝えてくれた。


 そして鈴楓が俺たちのもとに駆け寄り、無邪気に喜びを分かち合う。そんな二人を見て、火煉と山河も「よっしゃ、打ち上げだ!」と盛り上がる。


 大歓声のコロシアムをあとにしながら、俺はギターを天高く掲げ、最後にもう一度叫ぶ。

「ありがとう、みんな! これからも諦めずに突き進むぜ!」


 そう――拒絶されても、フラれても、失敗しても、立ち上がる限り俺たちは歩き続ける。

ロックンローラーはアキラメナイ!

 新たな日々が、今まさに始まろうとしていた。

ファイナルという頂点を目指し、奇跡を起こすかのようなエネルギーで挑んだ“風in火山PJT”が、見事に優勝を掴み取る結末となりました。勝ち負けの裏にある、仲間同士の絆やライバルへの敬意、そしてそれぞれの思いが交錯する展開こそが、ロックの醍醐味だったのかもしれません。

林音りんねの複雑な思いと「おめでとう」の言葉が、さらに新しい道を暗示し、鈴楓りんかの笑顔がこれからの未来を明るく照らす。ロックンローラーはアキラメナイ――そんな合言葉を胸に、彼らは次なるステージへと進んでいくでしょう。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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