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EP9 北方小王国都市<ブリュンカ> 二人とストーンの新パーティー


______<個体名? ストーンにとって時間などに意味がない。しかしロレイス=トゥルーと出会ってから、その生命体が24時間という単位で生活している事が分かってきた。未だに私? が何者なのかは分からないが、ロレイスの視床下部に居候をしているお陰で、次第にいろいろと分かりかけてきている。それにしても私の? 存在理由は何なのだろうか>______。


______むぐぅ。

私は何かと表情を変えて唸っているらしい。

「今度は何よトゥルー?」

私が随分と怖い顔をしていたからでしょうか。


レインに私が隠し事をしていると言われて、その時の私の焦った顔から、私の正体とは違う事を思って驚いているようでした。

「あなたトゥルーって......すごくその重いんだね」

 ゲロッ

「カエルか!」


<......我は、個体名ロレイスの肉体再構成に失敗していたのか?>

ストーンも、自分の能力に気づいたのは最近だ。まだコントロール出来ていないと大きな勘違いをしていた。


「レ レイン、私ってそんなに......その太って見える? 重いだなんてわたし大ショック!」

 はぃぃ~?

「ややや、そういう意味ではないのよトゥルー」

「いいのレイン、慰めなんてさ。レインはスタイルがいいし、私ダイエットしなきゃ!」

 グㇲ


「えぇッ? そんなナイス・バディで何を言ってるのさ?」

ロレイスとストーンは同じように勘違いをしているのだが、案外相性がいいのかもしれない。

この相性の良さは、この先ロレイス=トゥルーとうまくやっていけるだろう。


 レインのちょっとした誤解? があったけれど、レインは受け継いだS級聖魔導士の奥義を完成させる為、私は復讐の為に。

それぞれ二人の目的は違うけれど、これから共に生きていくには、私の復讐はレインには秘密にしておきたいのです。

<はて、復讐とはなにか?>


______ところで村の冒険者組合で(たむろ)するアレストとモルドゥは、村の冒険者組合<ビレッジ・ホーク>で、依頼掲示板を見もせず、朝から紅い顔をしながら安エールを流し込んでいた。

 ヒック


「よぉモルドウ、ここんとこレインの女郎(めろう)を見ないが?」

「なんだぁ? レインの事なんざ俺も知らねぇ。3日になるが、あいつも金がないからな。じきに腹空かしてひょこっと出てくるだろうよ」

 そんなもんか?

 あぁ


「仮にだ、レインが消えたとしても、Cランクでなくてもヒーラーの替えはいくらでも居るんだ。この際、新しいヒーラーをあたるか? Dランクに落とせば安いしな」

この二人、今迄レインに三等分で報酬を分けた事が無かった。レインが消えたとしても、理由は分け前の事だろうと簡単に考えていたのだ。

「それなら今度は、Dランクでもボッキュン・エルフがいいぞ」


 モルドウの脳天気な物言いに安酒の勢いもあってか、アレストは青筋を立てて怒鳴った。

「チィ、あのなモルドゥ、ここらではエルフ自体が珍しいんだ。都合よくそんなエルフが居るわけねぇだろ。馬鹿かお前は。よく考えろ!」

 お おう。


 安い報酬の分け前でも、今迄我慢したレインは都合が良かった。しかし彼等は分かっていなかったのだ。レインの聖魔法に何度も助けられていたのに、全て己の力だと過信していた事に。


「しかし、一応レインの行く心あたりをあたってみるか」

「あれでも結構いい女だし、どこぞのツルペタよりはマシだ」

「あぁ、あの時の女か? ありゃ酷かったな! 洗濯板、いや待て、壁だったぜ」


◇川沿いの老人のバラック◇

 へ へぇくしょ~い ブヒぃ~

「ちょっとトゥルー、汚いわよ!」


______「あのねトゥルー、あなたエルフの見掛けと違って......凄く大胆なのね」

『悪かったわね、中身は間抜けなロレイスだよ』

<性格までは、エルフに反映されない>


「レイン、人を見掛けで判断しないでよね」

「ま、なんとも勿体ないと言うか、トゥルー、あなた自分が憧れの美女ボッキュンエルフだって自覚ないの?」

「本当に自覚なんて無いのよ。だって私は......もごもご」


 ?

「なにもごってんのさ。いい? 真面目な話、わたしはここから一刻も早く離れたいの。ねぇ、一緒に北の王都に行かない? あそこなら村より仕事もあるし、エルフのあなたならもっと仕事があるわ」

「色気を出す仕事は嫌よレイン」

「はぁ~勿体ない」

<はて色気とは?>

ストーンには、人間と言う生命体を理解するのに、まだ時間がかかりそうだ。


 レインの申し出は、私もそうしたいと思っていました。私達、もう過去のパーティー<夕暮れの乾杯>を殺した犯人の情報を集めるには、人が多い王都がいいだろうと。


「その話、賛成するわレイン。王都ならなんとか食べていけるだろうしね」

「あら賛成してくれるの? ならわたし、掘っ立て小屋でも小さな治療院を開業して......」

仮にもS級ヒーラーの卵。レインの力は、治療を続ける事でレベルアップすることだろう。


「それいいじゃない。モンスターを狩るよりも危険がないし、それなら私もお手伝い出来るわよレイン」

情報を得る為にも、確かにこれは効率がいいとトゥルーは思った。


 レインにもメリットがあった。

『トゥルーみたいな美女エルフなら、治療院のいい宣伝になるし、リピーターも増えるわ』


 むふふ

「ちょっとレイン、あなたナニをニヤケてるのよ?」

 へ?

捕らぬ狸の皮算用。今だけは二人の前途が、少しだけ明るいものに見えていたのです。


______王都とはここから川を北上すること120km、人口30万人と少し小規模な王国だ。しかし小王国でも治安はよく、物流も盛んな平穏小都市<ブリュンカ>である。


「ところでレイン、王都まではもしかして歩いて行くの?」

「文無しはお互い様でしょ。四日も歩けば嫌でも着くから」

 えぇぇ!?

「せめて乗り合い馬車で、のんびりガラゴロと?」

Non!

「何度も言うけどさトゥルー、私達はお金がないの! お金よ! 途中で魚を捕ったり、キノコなんかを火炎魔法で焼いて食べればいいのよ。トゥルー、あなた火炎球弾<ディオ>くらい使えるわよね?」

「うっ、あんなのせいぜい初級の上レベルだよレイン......」


 レインに怒られながら、私達は朝早く老人のバラックを後にしたのでした。

「さようなら我が師......おじいちゃん」

「お世話になりました......ちょっとセクハラエロ爺さん」


 この時の私達の装備は。

<トゥルー> ♀ 17歳

Cランク魔法剣士

装備

 鉄製ブレストガード

 老人から譲り受けたローブ(未鑑定)

 革製ロングブーツ

武器

 鉄製ショートソード 鋼製ダガーナイフ

魔法

 火炎球弾Dio<ディオ> LV2

<Hidden skils>

覚醒の謎の石を脳内視床下部に持っている

<原子メタモルフォーゼ複製><フェイス・シフト>



<レイン> ♀ 20歳

Cランク聖魔導士(Sランク未到達)

装備

ヒーラーズ・ローブ

ホーリーロッド

鋼製ダガーナイフ

革製ニーハイブーツ

聖魔法

 中級ヒール

 ミドル防御魔法

 ミドル筋力強化魔法


 Cランク魔法戦士の前衛と、Cランク聖魔導士の即席パーティーは結成されたばかりだ。

この二人は限りなく強くなるだろう。そんな自覚のないまま、旅は始まったのである。

『王都に着いたら......トゥルーをもっと露出を多めにした方がいいわね......ハイレグとかにして』


 レインの中ではトゥルーを広告塔にして、治療院でいかに儲けるか、着々とソロバンを弾いていた一方で、トゥルーは犯人捜しの情報を、どこで得たらいいのかを考え悩んでいた。

いづれにしても生活の為に、小王都ブリュンカの冒険者組合には出入りする事になるだろう。

そこで待っているのは人か事件だろうか。




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