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第四十七話 戦いの後で…

「なんとかなったな」


「うんまぁ…あの動かなくなったデカブツを除けば」


「今からでもいい、壊せないか?」


「テラフォーミング用の設備が壊れて中身が漏れたらヤバいって言ってんだろ、さては疲れてるな」


格納庫の屋上で休憩時間を過ごすのは生還した隊長と傭兵だ。砲台の破壊によって街への被害は最小限のものとなり、侵入した敵部隊も大きな被害を出す前に投降した。


「治安維持隊としてやることをやるだけだ、陸上艦内のゲリラをどうするかも決めねばなるまい」


「スカベンジャーからの横槍は大丈夫なのか、あんなの宝の山だろ」


「鉄屑兄弟が抑えてくれるらしい、無論それなりの対価は要求されたがな」


「出る被害や割く人員を考えたらむしろ安いか、アイツらも上手く立ち回ってるな」


現在街は受けた被害の復旧を行いつつ、今回の戦闘で生み出された大量の残骸の回収を行っていた。のべ40機程にもなる第二世代機の残骸は金鉱脈にも等しく、整備班の面々はどうにか一機組み上げようと躍起になっているらしい。


「撃墜したコンテナは?」


「落下時の衝撃で大きく損失したらしい、相当強固な作りで開けるに三日はかかるそうだ」


「それまで待つことにするよと言いたいが、表情が暗いな」


「街を守るためとはいえ統治機構の私兵を撃退してしまった、これからどうなるか分からんのが今後の課題だ」


「お互い悩みの種は増えるばかりだな、この後も街を守り切れるか?」


「守るさ、ここ以外に人らしく生きていける場所を俺は知らん」


防衛体制を強化するべく防壁の高さを増すという計画もあるらしい、陸上艦から剥ぎ取った砲台も使えるだろう。これから先は茨の道だ、そして戻る道もないと来た。


「…傭兵、潜入任務は得意か?」


「やったことが無いわけじゃない、どうした」


「最早後戻りは出来ん、中央工廠が何をしているのかをその目で確かめて来て欲しい」


その施設の名前は治安維持隊との模擬戦をした後に彼の口から聞いたことがある、この星の人型兵器を生産している一大拠点だったはずだ。交易拠点の一つでもあり、この街にとって欠かせない存在らしい。


「穏やかじゃないな」


「アレだけの数の第二世代機、レンヤが戦った大型機、そして統治機構の輸送船が運んでいたアイギス。ハッキリ言ってあんなものを作れるのは中央工廠以外にない」


「重力制御機関やら慣性制御装置やらはそこらの町工場じゃあ作れない、確かに疑うべき場所だな」


「陸上艦から装備を剥ぎ取って色々と用意をしている、バックアップも出来る限りすると約束しよう。対価も今回のスクラップ売却で得られた物から支払いたいのだが、暫くは前金しか払えんのが現状だ」


治安維持隊に所属してもいないのに命の危険がある任務を遂行するのだ、対価を用意しなければならない。更に傭兵の持つ装備はこの星で手に入れられる物ではない、雇うとなればどれだけの金額が動くかどうか。


「金は後でいい、その代わり頼みたいことがある」


「後でいいということはないだろう…で、なんだ」


「俺の船をトバリのドックに隠したい、守ってくれ」


「いいのか?」


「損傷度合いを見て貰いたいしな、街を守る時の切り札にもなる」


峡谷の下に隠しておくのも限界があるだろうし、何かあった時のことを考えると相互に助け合える存在はいた方が良い。それにカンナギの整備には船の設備が必要だ。


「…というか宴会あるんだろ、俺達が居ないと向こうも困るんじゃないか?」


「まだ開始時間には間があるぞ」


「こう言うのは大抵早めに始まってるもんだろ、行こうぜ隊長サン」


ーーー

ーー


エレベーターを使って屋上から格納庫の中へと移動する、そして二人が会場となっている部屋の扉を開けると騒がしい声が聞こえて来た。


「傭兵殿じゃあないか!」


「傭兵さん!」


『先に始めてますよ、席はこっちです』


酒瓶を片手に持ったカザマキ、空のカップを押し付けてくるトバリ、酔うわけでもないのに発泡酒でヒゲを作るミナミが傭兵の視界に入った。よく見るとアルビノ少女もミナミに隠れるようにしてジュースを飲んでいる、未成年にアルコールを出さない程度にはしっかりしているらしい。


「遅かったですね隊長、教官と話していたんですか?」


『私達はいつでも始められるわよ!』


レンヤとカナミは治安維持隊と固まって座っており、久しぶりの祝いの場に嬉しそうな顔を見せている。ここぞとばかりに距離を詰めるカナミに対し、ミナミはもっと行けとハンドサインを送って背中を押していた。


「部隊全員揃ってますよ、俺は折れちまって片腕使えませんが」


「防弾服を過信し過ぎなんだよテメェは、散弾銃でバカスカ撃たれやがって」


「んだとぉ…そっちはドタマに三発貰ってたろうが!」


隊長も部下達に迎えられ、席に座った途端容器には並々と酒が注がれていく。彼は不器用そうに笑った後、それを一気に飲み干した。


「復旧作業が山積みだ、明日に響かないように調整して飲めよ」


「分かってますってぇ、合図をお願いしますよ」


「飲んでしまったじゃあないか、ええい…街の繁栄を願って!」


「「「カンパーイ!」」」


どれだけ過酷な環境でも人は何処かを向いて生きていくものだ、出来ることならば前向きに生きていきたい。傭兵は久しぶりに酔いたいと思える気分になり、体内に増設していたアルコール分解プラントの動作を止めた。


「今日は飲むぞぉー!」


久しぶりの飲酒、それも雰囲気に飲まれてかなりの量。彼とその仲間達は後日地獄を見ることになるのだが、それはまたどこかで。

第一章はひとまず次話で完結です、少々修正を行った後で第二部は更新する予定です。


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