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第一話 不時着

第一章完結まで毎日投稿です。

 宇宙開発が進み、人々が様々な惑星に住むようになった未来にて。ある一人の傭兵が宇宙船の故障により、辺鄙な惑星に渋々着陸していた。


「次元跳躍装置に直撃してる、修理には半年かかるな」


「嘘だろォ!?」


 居たくもない惑星で半年の期間を過ごすことになる彼は頭を抱え、膝をついた。実は色々あって金もない、辺境では手に入りにくい高度な部品であれば修理費も高くつく。


「これから戦地に行って一儲けするつもりだってのに、最悪のスタートダッシュだ!」


「後ろに向かって出発したらしいな、流れ弾とは運がない」


「性格悪いねアンタ」


 修理工はニヤリと笑いながら、何かが書かれた紙をヒラヒラと動かしながらこちらに押し付けてきた。


「修理費割り増しにするぞ、傭兵」


 チラリと請求書を見ると、払えるかどうかギリギリの額だ。船の中には仕事道具が収まっている、修理費の代わりに持って行かれては困る。


「…払えるのか?」


「部品が届くまで時間あるんだろ、分割で頼む」


「その分手数料は取るがね、まあアンタがどうなろうと知ったこっちゃないが…」


「尻に火が着いてるの分かるだろ、一文無しで田舎に放り出されりゃ問答無用で死ぬっつうの!」


 こうして土地勘も何もない異国同然の土地で、彼の想像を超えた物語が始まる。早くも頭金として財産の4分の1が消し飛んだが、彼は見て見ぬふりをした。


ーーー

ーー


「砂、砂、砂…砂漠型の惑星かよ、こりゃキツいぞ…」


 預けた船から装備を持ち出し、頭全体を覆う軍用のヘルメットをガスマスク代わりに身につけた。舞い散る砂塵から呼吸器系を守るためであり、臓器の再生医療を受けられる設備も無さそうなこの惑星では必要な措置だ。


「仕事を探すって言ってもな、下手な肉体労働で死ぬのは馬鹿らしい。それに普通の仕事じゃあ修理費と比べると雀の涙、死ぬまで星を出られねぇ」


 溜め息をつきながらプレハブ工法で作られたであろう簡易的な建物の間を通る。恐らく惑星開拓初期から使われているのだろう、年季が入っているのがよく分かるほどに荒れ果てていた。


「…古いな、騙し騙し使ってやがる」


 そして雑な補修痕が残る建物を見ると、中からガスマスクを付けた人間がこちらを見ている。傭兵は嫌な予感がして周囲を見渡すと、建物の影や屋根の上から誰かが覗いていた。


「皆様お揃いで、こりゃあ盛大な歓迎ですなぁ〜」


 咄嗟に両手を上げ、手の中に武器が収まって居ないことを示す。ヘルメットに取り付けられたカメラを使って背後のガスマスク人間を見ると、何やら銃のようなものを構えているのが分かった。


「撃つな、撃つなって!」


「黙れ、そのまま膝をつけ」


 銃を構えているのは彼一人ではない、周囲の人々も膝を下ろそうとするのを見て武器を取り出そうとしている。つまり拘束する気は無さそうだ、このまま殺されて船も何も奪われる。


「あんのクソ野朗、分かってて放り出したな」


 傭兵が死ねば船は修理工の物だ、万々歳と言ったところだろうか。だが奴の誤算はただ一つ、彼が財産を削って装備を整えていたことだ。


「アンタら何者だよ、どうして俺を」


「黙れと言っている!」


 ガスマスク野朗の人差し指が動き、銃弾が発射される。今では時代遅れとなった火薬式のライフルは砂漠という過酷な環境でも動作し、弾丸は彼の肩を捉えた。


「あだっ!!」


 被弾した衝撃で前に倒れ込み、ゴロゴロと転がって悶え苦しむ。それを見て完全に勝ちを確信したのだろう、装備を傷つけずに奪うために近寄ろうとする。


「あのヘルメットは俺のだ、息子のマスクに合うフィルターがもう無い」


「アレは高く売れる、売ってマスクを何個か買うのはどうだ」


「駄目だ、最近の行商人は碌なものを売らない」


 銃から手を離し、刃がボロボロになった切れ味の悪そうな刃物を次々と取り出すガスマスク達。完全にホラー映画のワンシーンのような状況だが、彼は死を覚悟してなどは居なかった。


「生活が大変なのは分かった、だがな!」


 ライフルで撃たれた筈の彼は何かを投げ上げ、それと同時に懐から拳銃を抜く。一番近くに居た人々は銃を持たないため即座に撃てず、遠くから見て居た者達は反応が遅れた。彼の身体に傷は無い、身につけた防具がほんの少し凹んでいるのみだ。


「俺に銃を撃った時点で敵だ、死に晒せマスク野郎共ォ!」


 投げ上げたのは音響閃光弾、爆音と目が潰れる程の光が敵を襲う。高級品の軍用ヘルメットを着ける彼には大きな影響は無い、この程度ならしっかり防御してくれる。


「うわ、あっあっ!」


「見えない、何が…」


 聞き慣れない発砲音と放電音が入り混じったような音と共に、ガスマスク達の身体が弾け飛ぶ。彼が手に持つのは小型化された電磁投射砲、所謂レールガンだ。ナイフを腕ごと吹っ飛ばされ、肘から先を失った人々がのたうち回る。


「俺に手を出すな、今から屋根の上の奴らを全員撃ち殺すことも出来る」


 まだ生きていたガスマスクの一人を持ち上げ、盾にしつつ背後に下がる。不用意に立ち入ったのは申し訳ないが、問答無用で撃ち殺そうとするのは一線を超えている。しかし自制心が無い奴も居たらしく、人質の身体に銃弾が食い込んだ。


「容赦無ぇ!?」


 弾丸が飛んできた方向は個人用レーダーが捉えている、拳銃を向けて反撃することなど造作もない。引き金を引いた結果弾頭が加速され射出、相手が覗いていた狙撃銃のスコープごと頭部を貫通した。


「あー、人質は死んだし血は着く…最悪だよ」


 流石に、というかやっと彼らは武器を下げた。内臓までぶちまけられたので酷い有様だが、身体は痩せていて腹の中は空だったので最も嫌な匂いはしなかった。飢えていたのは本当らしい、こんなことで確かめられるとは思わなかったと傭兵は悪態を吐く。


「…取り敢えず戻るか、畜生め」


 最悪のスタートダッシュから二歩目、また後ろに下がってしまったようだ。

カッコいいロボ出るよ、挿絵もあるよ。

ブックマークしておいてね。

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