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世界最強の元騎士とワケあり魔法使いの同居生活(旧題:世界最強の元騎士と)【書籍化】  作者: ユタニ


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75.再会(4)


しばらくすると馬のいななきが聞こえ、続々と騎士達が到着した。


緊迫した様子で現れた彼らは、地面にしゃがんでせっせと魔法陣を描いているシャイナとそれを見守るエスカリオットを見つけて拍子抜けしたようだ。 

すぐ側には崩壊した小屋と無数の血溜まりがあり、鉄の臭いが立ち込めている。


「エスカリオット殿と、そちらがシャイナ殿か」

リーダーらしき騎士が一人近付いてきて聞いてくる。

「はい。そしてあの下にテロ犯達がいます」

シャイナは立ち上がって経緯を説明した。経緯の中にはさりげなく聖剣エクスカリバーの事も足しておく。


「彼らは魔剣も盗んでいたようですね。取り返しておきました」

さらりと罪を上乗せして自分の手柄を足しておくシャイナ。治癒もかけてあげたしこれくらいは許してもらおう。

禍々しい首輪の魔道具についても伝えて渡しておく。

 

シャイナが説明している間に小屋の瓦礫がどけられ、犯人達の救出と捕縛が進んだ。


「ご無事でなによりです。ところでそちらの魔法陣は?」

あらかた説明し終わると騎士はシャイナの足元に描かれた魔法陣について聞いてきた。

「帰還の魔法陣です。騎士の方達も来られたし家に帰ろうかと。帰っていいですか?」

「えっ、それはお待ちください! あなたとエスカリオット殿は重要人物です。こうして拉致もされた今、安易に帰ってもらう訳にはいきません」

「ええぇ」

シャイナは口を尖らせた。


「また何かあっては困りますし、私の一存で帰す訳にはいきません。せめて責任者の到着までこちらに」

「……分かりました」

シャイナは模範的で善良な国民である。真っ当に対応してくれている騎士相手にごねるつもりはない。

責任者が融通のきく人だといいなあと思いながら待っていると現場に現れたのはランディだった。


「ランディさん」

帰れる予感にシャイナの顔が輝く。

「シャイナ殿、エスカリオット殿、よかった。街中で拐われたと聞いた時は肝が冷えましたよ」

ランディは安堵の表情を浮かべ、先ほどの騎士から状況を聞いた。


「帰ってもいいですか?」

状況を聞き終わったランディにシャイナが尋ねると困った顔をされてしまった。何やらダメっぽい予感にシャイナの顔が曇る。


「ダメでしょうか?」

「そうですね……お二人を確保した場合は城にて保護する事が決まっていまして」

「ええぇ」

それは困る。店が開けられないではないか。


「すみません、一度帰っての準備は必要でしょうから一時帰還という形なら」

「お城での保護は遠慮したいんですけど」

「そういう訳にはいきません」

きっぱりと言われてしまってシャイナはしょんぼりする。


「そんなあ……」

「申し訳ないです。三日後に何らかの動きがあれば事態が進むでしょうからせめて三日だけでも城に身を寄せて欲しいですね」

「三日だけでいいんですか?」

「状況によりますが」

「分かりました。三日なら」

ランディにやんわりと丸め込まれたような気もするがシャイナは承諾した。

 

「延びる可能性はあるぞ」

エスカリオットがぽつりと言う。ランディは無言で微笑んだ。

「三日後に頑張って脱出しましょう」

「囲われてしまえば難しいと思うが」

「話し合いましょう」 

「夕方にお迎えにあがります、城でもひと通りは揃えますが必要なものは多めにお持ちください」

「三日だけですよね?」

にこにこしながら告げてくるランディにシャイナは念を押しておく。

 

「予定ではそうです」

絶妙な言い回しで答えるランディ。

「三日後には帰りますからね」 

「もちろん、そう出来るよう私も全力を尽くします。本日のお迎えには必ず私が向かいますので私以外の者には出ないでください。あと家からも出ないでくださいね」

「はーい」

シャイナは軽く返事をすると移動の魔法陣を作動させてエスカリオットと共に自宅へと戻った。




魔法陣の光に包まれてシャイナとエスカリオットは薬草店二階のダイニングの片隅へと転移した。 

そう来るかな、とは思っていたのだが着いてすぐにシャイナはエスカリオットに抱きしめられた。体に巻きつけられたその腕は、いつもより強めだ。また心配をかけたに違いない。


「ご心配をおかけしました。でもちゃんとすぐに逃げましたよ」

若干のくすぐったさはあるが、ハグにはすっかり慣れている。シャイナは自分を包む腕にそっと手を添えた。

今回はきちんと全力を出したのだし、褒められるはずだと得意気にエスカリオットを見上げる。エスカリオットは少しぽかんとした後で頭を撫でてきた。


「そうだな」

エスカリオットはそう言うと、撫でていた手でシャイナの顎を掴んで上を向かせ、当たり前のように柔らかく唇を重ねてきた。


「…………」

予想外のキスに目はぱっちり開いたままだ。

エスカリオットはシャイナを味わうように角度を変える。シャイナの顔や首はどんどんと真っ赤に染まった。


「シャイナ。悪意のある魔法をはじく事は出来ないのか?」

何度目かのキスの後でエスカリオットが聞いてきた。

 

「は、で、出来なくは、ないです」

もはや茹でダコのようなシャイナは浅い息で答えた。

 

「では、そうしてくれ」

「……はい」

エスカリオットの腕が緩められる。

 

「城に行く準備をしなくてはな。俺が要るのは着替えくらいだが、薬草や錬金術の釜は持って行くか?」

淡々と通常運転に戻るエスカリオット。


(ぐっ……私だけドキドキしてるではないか)

シャイナがまだ赤い顔で恨めしげに見上げると色気のある微笑みを返された。


「足りないか?」

一気に色気を増したエスカリオットの手がシャイナの後頭部を包む。

「ひょおおっ、足りてます! 足りました! 釜! 要りますね。持ってきます」

シャイナは腕を突っ張ってエスカリオットから距離を取ると、猛ダッシュで階下へと錬金術の釜を取りに行った。


釜を取り、よく使う薬草を束ねて包む。ついでに数日店を閉める旨をしたためて薬草店の扉に貼っておいた。

二階へ戻り、自室から大きめのズックを取り出して着替えも詰める。エスカリオットの服も一緒に入れてあらかたの準備が終わった。


あとはランディの訪れを待つだけとなった時、ダイニングの魔法陣からまばゆい光が溢れる。


「!」

自宅の魔法陣の作動にシャイナは身構えた。


(なに? まさかさっきの魔法陣が使われた?)

森の中に描いた移動の魔法陣からだろうか。だがあれは使用後に形は崩れたはずだ。


不完全で、しかも他人の描いた魔法陣を正確に作動させるのはかなり難しい。もしそれをやってのけたのであれば、これからここに現れる魔法使いはかなりのやり手だ。

シャイナは背中がピリピリした。エスカリオットの雰囲気も張り詰める。


まばゆい光の中に人影が現れる。一人で男のようだ。

 

光が治まり、


ダイニングの片隅には、高貴な服に身を包んだ金髪の赤い瞳の男が立っていた。



 


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あっ、ご令嬢渡したのか!あのジュバクレイの布……
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