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世界最強の元騎士と  作者: ユタニ


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36/85

36.国境の町の異変(2)


「シャイナ、今回は相手が悪いかもしれない」

早朝、森に入ってからエスカリオットは言った。


「今回の事に心当たりがあるんですか?」

「ヒトカゲの召喚が好きな奴を1人知っている。厄介な奴だ」


「エスカリオットさんが厄介という事は、かなりですね」

「何かあれば、お前は自分の身だけ守れ。俺は何とかなる。 マックスは見捨てろ」

「分かりました」


「聞こえてるぞー、ひどくないか?」

後方からマックスが口を挟む。


「マックスさん、耳がいいですね」

「いや、普通に喋ってたよな、俺を見捨てるくだり」

「マックス、お前もだ、俺とシャイナはどうとでもなるから、自分の事だけ考えろ」

「はいはい、分かったよ」


3人で、徒歩で森を奥へと進む。

街道ではなく、獣道に毛がはえた程度の細い道だ。

途中までなら馬で行けない事もないのだが、ほぼ確実に魔物と遭遇するなら、乗って行っても助けてやれないので、徒歩で入る。


小一時間程歩くと、早速ヒトカゲが出てきた。

エスカリオットがすぐに斬り捨てる。


「うわあ、一太刀かよ、やってらんねえな」

「マックスさん、エスカリオットさんは世界最強の武人と吟われた人です。不貞腐れないでください、あ、地獄の業火、黒炎よ、渦巻け、燃やせ」


話す途中で、シャイナは言葉を紡ぐ。横から出てきた新手のヒトカゲをごうっと黒い炎が包んだ。


「黒炎とは……凄いな。ヒトカゲが燃えるのは初めて見た。おまけに今、呪文は片手間に唱えたな」

「本当は、水魔法がいいんですけどね、私、攻撃魔法は苦手で、水で攻撃まで出来ないんですよね」


「シャイナ、お前は魔力を温存しろ、ここからどんどん増えるぞ、マックス、お前も働け」

エスカリオットがそう指示を出し、シャイナは攻撃補助に徹する事にする。


そこからは、どんどん出てくるヒトカゲをエスカリオットが斬って斬って斬りまくり、マックスもたまに貢献して、3人は駆け足で、魔物の発生地点の最奥を目指した。





森がいきなり途切れて、開けた場所に出たのは、昼前だった。


「ここが発生地点でしょうか?」

「おそらく」


その空き地には、小さな樵小屋が立っていた。

魔法使いのローブを着た男が1人、小屋の前の焚き火の前に腰かけていて、その周囲には騎士らしき人物が3名立っている。


魔法使いと……騎士?

シャイナは、騎士をじっと見つめる。


3名の騎士は、不安定な様子で立っていて、雰囲気が不気味だ。本当に騎士だろうか?


エスカリオットが舌打ちをしたのが聞こえた。やはりな、という呟きも聞こえる。


「お知り合いですか?」

「ああ、タイダルの元国家魔導師、リチャード・ドーソンだ」

「げっ、Sランクじゃないですか」


これは、いかんな。

シャイナはすぐに空き地の周りを結界で囲んだ。

おそらく、あの3名の騎士も、ただ者ではない。

あれらを相手にしながら、ヒトカゲも気にするのは難しい。


「なかなか、力のあるお嬢さんだね。そして、久しいね、エスカリオット」

魔法使いの男が腰を上げた。細く青白く病的な男だ。でも、ビリビリと強い魔力を感じる。


「ドーソン、何をしている?」

「何って、戦争を起こそうとね、ハン国とラシーンの。そしたら国家魔導師の話を蹴ったハン国も僕を重用してくれるだろう?」

にっこりとドーソンは笑う。


「お前が、ろくでもない人体実験をしてたから蹴られたんだろう。他を巻き込むな」

「いやあ、本当にタイダルの王室は居心地が良かったんだがね、戦争に負けてしまって残念だ」

「あんな王家、無くなって清々した」


「僕にとっては、良い場所だった。さて、エスカリオット、どうやら僕の邪魔をしに来たようだね。ここに君が仕留め損ねた最後の一体も居るよ?嬉しいね」


ドーソンが、パチンと指を鳴らす。

それが合図だった。

ゆらゆらと不安定たった3名の騎士が、ぴしりと立つ。


「あれは、ゴーレムですか?よく出来てますね」

騎士達の土色の肌に気付いてシャイナは合点がいった。あれは精巧な土人形なのだ。


「基部は人の死体だ」

「……趣味が悪いですね」


「そういう奴だ。そして、あれの内、一体は俺だ」

「へっ?どういう?」

「俺の血肉から出来ている」

「マジかあ……」

シャイナは、頭を抱えた。


「何だ、ピンチか?」

「マックスさん、あの3名の内、1名は騎士の時のエスカリオットさんとほぼ同等の強さがあるって事です」

「……ピンチかよ」


「俺のゴーレムは5体あった。4体は戦争時のどさくさで壊した、あれが最後のようだな」


3名の騎士がシャイナ達を目指す。


「マックス、残り2体をシャイナと何とかしろ。シャイナ、ドーソンにも注意しろ。おそらくゴーレムを操りながらでも、魔法は使える」


「はい」

返事をしながら、シャイナは無詠唱で炎をドーソンと騎士に放ってみたが、阻まれた。

ちゃんと防御の魔法をかけてるようだ。


この様子だと、黒炎でも動きは止められても、焼けないかもしれない。


「マックスさん、死なないでくださいね。蘇生以外は大体何でも出来ますから」

「お、おう、分かった」


騎士の中でも、特に素早い奴がエスカリオットに打ち込む。あれがエスカリオットのゴーレムのようだ。


残りの2体が、あんまり強くない事をシャイナは願った。






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