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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第九章 来たる「執園」
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第081話 ヴィクトリアの命

「……ここは、どこだろう。私は、一体……」

「カー……ラ……」


「さあ、使命を果たそう……動け。」


 私は、自由に動けないその機械の身体にものすごい違和感を感じていた。



 * * * * *



 俺たちはミカと別れた後、オーセントに戻り最後の守護神器を求めて過去へ出発しようとしていた。


「そろそろ行くか……」

「そうだね。ちょっと今回は休みすぎたかな!」


 一ヶ月くらい俺達はテトラビアに居座っていた。

 これほど長くここにいたのは初めてかもしれない。


「その資料、運んでおいて下さい〜樹くん!」

「はーい。」


 俺は博士に頼まれた資料を徐に持ち上げ博士の元へと持って行く。

 そのダンボールの中には、さまざまな資料が入っていた。


「これ、なんだ?」

「これは次の学会で発表する内容です〜。」


「なるほど……」


 ダンボールに入れなきゃ持ち運べない程多いのか……それは俺たちの調査があるからなのか、ただ単純に博士のやり方が下手くそなのか……圧倒的に後者な気がするが。


「樹くんとエマちゃんのお陰で、テトラビアの過去が段々分かってきてますね。」

「そう、だな。」

「でも、同時に残す守護神器は一つ、じゃ無いですか……」


 博士は悲しそうな表情を見せる。


「守護神器が最後の一つ……って事は、もう終わりが近い……って事ですね……」

「そう、だけど……」


 博士はその拳を強く握る。


「これは勝手な願いですけど……例え全ての謎が解けても……樹くんは、樹くんのままでいてくれますか??」


 博士は俺の服の裾を掴み、泣いていた。


「……それは、どう言う?」

「……すみません。樹くんもエマちゃんも、本当は私が頼んだだけの助手ですから……今の目的さえ終われば、ここにいる義務はなくなります……ここでグレートグレンデ特製カレーを作った日々や、三人、いやミカちゃん含む四人でこの研究所にいた記憶……二人が道を見つけて、私の元を離れてしまうのが、怖いんです……」


 俺は確かに、ここにいる理由はエマに協力する為……そして神器を手に入れる為。最終的には日本に帰りたいと思っていた。

 けど、今はだいぶ違う。日本に帰りたいと言う思いは薄れ、エマと一生を過ごしたいという思いの方が強かった。ソアロンではエマと日本に行くことすら誓った……


 でも、それは博士にとっては……辛い事なのかもしれない。

 そもそも神器研究というのはメルトの言っていたようにあまり世間の評価は良くないらしいし、俺たち以外の人はいないのかもしれない。


 そんなこと、考えた事なかった。


「……大丈夫。俺もエマも博士の元を離れたりしないさ。だって博士はどんな時だって博士だし、俺は家族だって思ってる。それはきっと、エマもそうだと思う。」


 俺もエマも、家族や知り合いの元を離れてこのテトラビアに来てる。

 俺からしたら、カーラも、メアリー博士も、関わってくれた人皆が家族みたいなものだ……エマがどう思っているかはわからないけど。


 今はこれが本心……でも。俺は本当にそれを達成できるのかは、わからない。

 10年後、20年後、そんな時に博士を抱えて3人で生活なんてエマと俺はできるのだろうか。したがるのだろうか。

 最低、と言われたらその通りではあるが……


 そんな俺は建前で博士に対してそう言ってしまった。


「……いいんですか?」

「勿論だ。」



「ねーねー、樹!!なんか来てるよ〜??」


 エマが奥の部屋を覗いてきた……


「……んんん???」


 エマは俺の裾を掴む博士の様子を見て困惑する……


「ちがっ!!!誤解だエマ!!」

「……なるほどねぇ〜??」


 エマは悪そうな目をして振り向く。


「……エマ!!」


 俺はそのエマを追いかける。


「あはは……大丈夫分かるよ。なんでも分かるから!」


 絶対何もわかっていない。


「……分かるわけ……」

「あの表情をする博士は久しぶりに見た……だからきっと、私の元から離れないで……とでも言われたんでしょ?」

「……あ、ああ。よく分かったな……」


「まあね。私も言われたことあるし……!」


 そういうことか。


「ねぇ……なんて答えたの……?」

「……それは……」


「3人で……過ごそう。って……」


 俺は小さく……そう答えた。


「……そっか。樹……じっとしてて。」


 エマはそう言って俺の方を振り返った。


「……!!?」


 エマは俺の頬にキスをした。


「……大好きだよ。樹!」

「……はぁ……?」


 突然の出来事に俺の頭は困惑していた。



「さ、来てるよ!!メルトが!!」

「……お、おう。」




 俺とエマは研究所の玄関へと向かった。

 そこには一人統括者である赤髪の青年が……メルト・レイ・エルフォード。彼がいた。


「……やっと来ましたか、樹、エマ……」

「どうかしたか??メルト。」


 俺が聞き返すと、メルトは険しい表情を見せる。


「……ああ。」



「……カーラが……消えました。」


 その一言は、俺たちを困惑させた。



「……カーラちゃんが消えたって、どういう事!?メルトの横にいたじゃん!!」

「……そう、なんだ。扉の神子として……カーラは今日もいたはずなんだ……でも、急にいなくなりました……。」


「……それって、どう言うことだ?」


 カーラが、消えたらしい。


「それで急に来ました……ジェーン教授が……私が次の神子みたい……って。」

「……は?」


 より俺たちは困惑する。

 あのジェーン・ホールが?と言うことは……神子が変わったと言うことか??


「……ダガランの話……みたいだね。ジェーンさんが扉の神子だなんて。」

「そうだな……」


 ダリがいた世界線は、カーラがいない世界だったのかもしれない。


「……でも、神子が変わるって事は、あれしか考えられないよ……考えたく無いけど……」

「何か思い当たる節、ある?」


 メルトは俺とエマの様子を見て聞く。


「……多分カーラは、死んだ……どうしてかは……わからないけど。」

「……そん、な……」


 メルトはその場に崩れる……。

 1ヶ月と少し程度だとはいえ、一緒にカーラの横で毎日仕事をしていたメルトだ……それなりに仲良くなっていただろうし……辛いのだろう。


「どうしたら、どうしたらカーラを……救えますか!!」

「……直接、行こう……命界へ……」


 俺はそう提案する。

 きっと、カーラは扉の命界……すなわちキーラの元にいる、はずなんだ。

 この世界の扉の精霊もきっと、テトラピア時代のキーラと同じはず……だと思う。


 俺とエマと、メルトは『結びの扉』まで向かった。


 ーーー


「……いるんだろ。キーラ!!光の精霊族のキーラ!!」


 命界に入った俺はそう叫んだ。


「……キーラ……光の精霊族の前の最高指導者、だっけ……」


 エマは思い出す。


「そう。キーラはこの扉にハシラビトとして、いるはずだ……」

「……出てきてください、頼みます。」


 メルトもそう願う。


「……一体何の用ですか。貴方達。」


 ……その女性、キーラは現れた。

 黄色い髪に水色のメッシュが入る……そんな彼女の姿はあの世界と変わっていない。


 そして彼女は現れた時、一気に大きくなった……大きさ可変みたいだ。

 ……と言うことはもしかしたら最初俺を呼んだ時はめちゃくちゃ小さくなっていたのかもしれない。そういうことか?


「……カーラ・ミラー。彼女を開放してくれ。」

「……無理な話です。」


 ……この光景、久しぶりに見たな……ファレノプシス……の時以来か。



「……ヴィクトリアの、母の願いだって言うんだろ?」


 俺はキーラが言う前にそう予測する。


「そうだね!前も、ファレノプシスがハガさんを殺そうとした時は……そうだったね。」


 エマもしっかりと覚えていた。当然か。



「……今回に関しては私の独断です。お母様を延命させる為に……私はカーラを殺しました。」

「……延命、だと?」

「実際に会った方が早いですね。」



 キーラがそう言って指を鳴らすとその場にはヴィクトリア達が現れる……



「……貴方達は……!?」


 その幽霊の少女……フェリスタ……


「……久しぶりだな。ニンゲン……」


 その悪魔……ディアボロス……


「……誰、こいつら。」

「……ルースタ、彼らはお母様の知り合いです。」


「なるほど。」


 その軍人のような男のエルフ……俺たちも知らない人。ルースタとか言うらしい。

 多分この人たちが、真神器のハシラビトなんだ……と言うことは、このルースタは俺たちがまだ見てないアルトポリスにある神器のハシラビト……か。


 ……そしてベッドで横になるヴィクトリアがいた。


「……一体どう言う事だ!!ヴィクトリア!!」

「ゲホッ……」


 ヴィクトリアは弱そうにそう咳をする。


「……お母様は、もう寿命なのです。」


 キーラはそう俺たちに伝える。



「……ハシラビトは不老不死じゃないの!?だって、エネルギーさえあれば生きられるんでしょ??」


 エマは言う。

 そうだ。ニケは言っていた。

 だからこそ、ニケは火口に神器を置くことで、熱エネルギーで生き続けてきた。


「……そう。エネルギーさえあれば、生きられるのです。」



「……まさ……か!?」


 メルトは俺たちの前で絶句する。


「……そう。ごめんなさい。私はカーラ・ミラーの……彼女の生命エネルギーを、ヴィクトリアに与えました。」



……神子。その存在とは。

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