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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第八章 新たな世界の守護者
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第八章特別編 魔法と剣と拳

「興味深いわね。ここ。」


 私とシャガは、長い旅を経てアズゲニア帝国へとやってきた。


「そうだな。しっかり調査しよう。古代魔法の手がかりがあるかもしれない。」


 アズゲニア帝国。それは剣と魔法の国……


 * * * * *


「ここは……どこだ?」


 俺は戦の途中、馬と共に池へと落下した。

 しかし、気がついた時には荒れ果てた広大な地にたった一人、倒れていた。


 目の前には超巨大な樹と、拙者が出てきたと思われる扉……



 あれ?拙者?私?……自分の一人称すら思い出せない程に、記憶が飛んでいた。


 そんな俺は謎の機械を見つけた。


「S……NIA?異国の言葉、か。」


 かなり古く、且つ読めなかった。



 私は自分の記憶とこの荒れ果てた世界を知る為に、また扉に入った。




「これは、過去の君の話……私のとても長い自己開拓の物語の一端。それを君に話そう。アニエス……」



 私の初めての旅先は、剣と魔法がある世界……アズゲニア帝国だった。次に海の国……浮遊都市……失われた国……炎の国……日本……とさまざまな国をまわり、さまざまな人と出会い、私を知っていった。


 もし、異世界に私が存在するのならば、その私もきっと色々な国を回るんだと思う。その異世界なら、この地……も滅んでなかったのかもしれない。

 この地にいる神様からは、ミカと言う名前の少女について教えて貰ったが……私の記憶には無い。だからきっと異世界の私の話なんだって……思う。



 まだ山南リンドウという名前をすみれから貰う前、一人称も俺……だった頃。神様も、自分の存在に気づいていない、そんな頃のお話。



 * * *



「勇気出して飛び込んだものの……」


 扉に飛び込んだ俺は捨てられた山小屋のような……遺跡のような……そんな場所から出てきた。


 水分補給しようと、水辺に行った俺は、自分の姿が別人のようになっていた事に気づいた。


「……これが俺?」


 自分の知っている俺は……黒髪に、黒い目。でも、今は青い髪が混じり、オッドアイになっていた。


「……あの扉の力……か。」


 記憶が消えた原因も、きっとあの扉にある。そう思えた。



 それから俺はその世界で過ごしていると……捕まった。

 どうやら敵国の兵士と間違われ、囚われてしまった。



 この国では、今アズゲニア帝国と戦争中だったらしい。最悪だ。


「……どうしようか……最悪だ……」


 一生このままここか?それはごめんだ。


 俺はその国では特殊だった着物……を脱がされ、文献でみたことがあるような西洋?の服に着替えることを強要された。勿論、愛刀も奪われた。


「……うぅ……」


 ここに囚われてから1週間……今まで気がつかなかったが……同じ部屋……この薄い木の板の仕切りの向こうに、もう一人少女が囚われている事に気がついた。


「……君は?」

「……私は……アニ……エス……」


「よろしく。」


 私は着替えた時、同時にネックレスを渡された。どうやらこれには翻訳の機能が付いていたらしい……すごい技術だ。お陰で気がつけたんだと思う。




 それから一ヶ月……俺はようやく釈放される事になった。敵国の者ではないと判断された。


「……出ろ。」


 その扉は開かれた。俺はそれと同時に看守を体当たりで押し倒し、すかさず蹴りを入れる。


「今だ!アニエス!!」


「おりゃーー!!」


 少女の拳は、看守を気絶させた。



 その薄い板は通り抜けできるように穴を開け、釈放と同時に脱獄する計画を二人で練っていた。

 監視が甘い小さな牢獄だからこそ、できた事だった。


 彼女は捕虜として捕まったアズゲニアの少女。名はアニエス・エシェロン。魔法があるこの世界で、彼女はかなりの力を持っているらしい。物理の力を……



 うまく逃走した俺たちはアズゲニア帝国へと、彼女を送った。


 男は武術、女は魔術の適性を持って生まれるこの世界において、彼女は異端なほど武術の才が秀でていた。10歳にして、さまざまな大会を踏破する程に。

 彼女には様々な圧力がかかっていたらしい。魔法を極めたい彼女にとって、その体と世間はそれを許さなかったのだ。武術一家であったエシェロン家は女であろうと適性があるなら武術学校へ行けと、彼女に圧をかけるらしい。


「つらい時は逃げても良い。」


 俺はそう言って、彼女をその国へと送った。


 * * *


 ……それから、私はアズゲニア帝国とその国の戦争の原因を調べた。




「それが……リンドウさんのお話……?全く覚えていないです……」

「仕方ない。あれから何年経つ?それに、牢獄に捕らえられていた時のことなんて、思い出したくも無いだろう?」

「そうですね……でもこうして、また会えてよかったです。」




 私たちはまた出会った。この地に居る神様と一人の王様が荒れ果てたここで作った新たな国……『テトラピア』で、また出会った。


 今は私と、彼女……そしてこの国の王女と、私が見つけたあのロボット……この四人はテトラピアを扉の力を使い、様々な世界に発信するプロジェクト……それを担っている。

 地球にも、SNSを使って活動している。

 そのロボットは事情により離脱してしまったが私たちは今尚、テトラピアの発展を目指している。



 テトラピアプロジェクト……それはまた別のお話。



 * * * * *



「ここ。この遺跡明らかにおかしいわ。」

「ああ……誰かがここにいたかのような痕跡がある。」


 私とシャガはその遺跡を調べていた。


「確か、アズゲニアはグレートドーンとは別の宇宙の可能性もあるって、言ってたわよね……ホールさん。」

「ああ。親父もそうかもって言っていた。」


 私はその遺跡の祭壇の瓦礫に触れる。


「……どう考えてもこれ、グレートドーンの技術じゃない……ここは古代に魔族と交流があったのよ。」


「古代魔法マテリアルコンストラクト……いや、これはそれ以上か?」

「ええ。きっとそうよ。」


 古代魔法……それは古代魔族の下に発展した魔法。古代の魔族の魔力量が多かった事からそう呼ばれるだけで、別に今でも力さえあれば行使できるし……基本的にはファレノプシスの遺産というものだってことは調べてわかってきた。


「この世界の魔物や人が古代魔法を発明したっていう可能性はないのか?」

「……魔物は気候と、星流によって生まれるか変わるって、貴方も学んだでしょ?」


「……そうだったな。この世界じゃ、良くてスライムとかだもんな……テラリスのようにドラゴンは発生しないって……」


 星の流れ……それは魔物の発生に大きく関わる。魔物の発生条件は主に二つ。流れ星が流れること。宇宙からインガニウムを含んだ流れ星が流れ、それが大気圏で散り魔力と反応することで魔物は生まれる。


 インガニウムが含まれる恒星の中にも勿論魔物……ではない何かしらの生命体が生まれる可能性はある。でもそれはこの宇宙では魔力によって破裂してしまい、保てなくなる。


 だからこの宇宙にはセレスチウムを発生させる魔物がいるっていうこと……


「或いは……」


「シャァァァァァァ…………」



 その時、私たちのはるか上空、宇宙に届くほどの場所をそれは飛んでいた。


「あれは……蛾の魔物!?巨大すぎる。」


 シャガは驚いた様子を見せる。


「いや、蛾じゃないわ。ファレノプシスよ。」

「あれが?星屑を喰らう伝説の魔物……じゃあやっぱり、初代魔王は本当にクレオールだったのか……」


「ええ。まさかこんなところで、こんな星が初代魔王と同じ血を持つ魔物に守られているなんて……ね。」


「この星は奴に守られている……だから魔物が繁栄していない……か。」


「……そうとも言えないみたい。この石碑に残されているのは、人の愚かな歴史……ファレノプシスに守られながら、奴を嫌悪し続けて来た……醜い歴史。」


 私はそれを触りながら、読み上げる。


「嘗て初代魔王と、その親……あのファレノプシスはこの星と同盟を結んで、その力で守る事に決めた……テラリスはこの内側を回る惑星だった。でも、3000年の時……この遺跡ができた時ね。それが経って惑星間交流もなくなり、ここの人々はその存在を忘れ邪悪な魔物だと判断しそれを言い訳に各国は同盟を結んだり、戦争を始めたり、それを宗教として崇める国との衝突も起こし始めた。見かねた神……ファレノプシスは、巨大な炎を用いてその戦地を焼き払った……そんな内容が書かれているわ。」


 じゃあきっと、この近くの焼け野原は……そういうことなんだ。


「守護者も、敵になれば恐ろしいからな……」


「……そうね。てか……テトラビアのアズゲニア辺りの研究進んでなさすぎだわ……どうせ、魔物が違うから別の宇宙、とあの人たちは考えていたんでしょうね……全てはアレのせいなのに。」

「そうだな。どこが違う宇宙だよ……って感じだな。調査なんていう資金がないのは確かだろうが……」


 この星にあるファレノプシスの加護……それこそが、この星の謎だった訳。


「帰ったらホール先生に伝えましょ。グレートドーンとアズゲニアはとても近い、兄弟の国だ……ってね。」



……巨大な炎、きっと目指す価値あるわ……この冒険、まだまだ楽しくなりそうね。

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