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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第八章 新たな世界の守護者
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第080話 異世界の理想郷

「ロストリア解放軍だ。いるんだろ?ソニア!!」


 私の研究所の扉は、突然蹴られ、開いた。


「……おやおや、これは王女様じゃありませんか。」

「何の用です。ここは王家直属の研究所、貴方たちがここを襲えば戦争に発展するはずです。」


 私がカーラに慰められているときに、奴らはやってきた。


「……まさか、アール!?貴方、何を!?」


 私はその解放軍の中にアールの姿を見つける。


「悪いな、ソニア。貴様の研究……嘘だったんだろ。」

「……な!!」

「その反応、図星だな。」


「待って……なんのこと!!それにあなた達誰!!」


 カーラは私の前に立って解放軍に対して勇敢に挑む。


「カーラ様。貴方は下がっていて下さい。ここは私が。」

「……その身体、弱いって噂のメアリーだな。」


 メアリーはそう。身体が弱いっていうことは確かカーラが言っていた。

 メアリーはアールの横にいた魚人の解放軍の人にそう言われて険しい表情を見せる。


「……さあ、渡して下さい。守護兵器を。」


 その奥から出てきたのは、ある一人の男性だった。

 その見た目は聖剣の王に描かれている通り……多分あの人が、アルマード……


「……なんの話かわかりませんね。アルマード。」

「あくまでも惚ける気ですか。流石は憎きニケの子孫……ソニア。」


 憎き、ニケの子孫……。彼からしたら、当然か。


「調べがついているんです。貴方は嘗ての知能神器、オーランの力を解析して僕らロストリア解放軍に対抗する守護兵器を開発している……と。」

「……バレていましたか。」


 バレているのであれば、仕方がない。

 私は護身用に持っていた銃を取り出す。


「……おっと、銃ですか。しかもレーザー銃……それも貴方の開発でしたね、ソニア。」

「これなら貴方だとしても戦い慣れていないはず……」


 このレーザー銃はまだ殆ど流通していない。

 これなら、不意をつける……そして最悪は、守護神器と、アレがある……

 守護神器の呪いを消す方法は未だ完成していない。けど……最終的に最強最悪の奴を滅ぼせるのならば、私はここで死ぬ覚悟がある。


「確かにレーザー銃はセレスチウムの加工技術の最高傑作と言っても過言では無いでしょう……ですが……」


 そう言いながら奴が取り出したのは、「アレ」だった。


 そう、樹とエマ彼らが持っていたあの因縁の刀、それをアルマードは持っていた。


「……やはり、その刀は貴方が持っていましたか……」

「ふむ……やはり、ということは5000年前のトラッカー……奴らは貴方がけしかけたというわけですか。」


 アルマードは納得する表情を見せる。


「ソニア!!あの人の言う事を聞いちゃダメだ!!」


 カーラは私にそう言い放つ。


 ……そうだ。そういう事なんだ。

 奴が、アルマードがそれを持っているという事は即ち本当に5000年前、彼らは死んでしまったという事を明確にさせてしまう。


「……邪魔だ。お前達には興味は無い。黙ってろ。」

「……フュー、殺すなよ。」

「はいよ〜。」


 アールとその魚人の人……フューというらしい人はメアリーとカーラを吹っ飛ばし、彼女達はそのまま白い研究所の壁まで吹っ飛ばされる。


「メアリー!!カーラ!!」

「……やっぱり、所詮実戦経験がない貴族達だな、脆すぎる、脆すぎる。」


 その魚人の男、フューはその鞭で二人を痛ぶる……まるで拷問のように。


「……やめて。」


 私は小さく呟く。


「ああ?なんて??」


 その魚人は私に対してより強く、そう言い直す。


「やめて下さい!!!!カーラ達を、離しなさい!!」

「……なら、そのレーザー銃は捨てな。それが条件だ。」


 私はそう言われ、レーザー銃を捨てる事を決める。


「……ソニア!!!!聞いてはダメです!!!」


 その声を私は無視する。


「ソニア!!!!!」


 より強く、カーラは叫ぶ。


「……ごめん、カーラ……私は降伏するよ……」


 私はカーラに背中を向けながら、両手を挙げて降伏する。

 ……そのレーザー銃は音を立てて落下する。



「潔いですね、ソニア・ラキ・クロノシィード。」

「これも全て……皆の為……です。」

「貴方ほどの脳を捨てるのは勿体ない……だが、見事だ。その意思、永遠に語り継いであげましょう。」


 アルマードはその刀を大きく振りかぶり……私の首目掛けて斬ろうとする。


「……今ですタロース。」


 私はその瞬間そう小さく呟く。


 その瞬間、100体を超える守護兵器、通称ソニア・タロース……知能神器オーランから生み出した私の最終兵器が、カーラ達がいる壁を突き破り、ロストリア解放軍に対して襲いかかる。


 その刀は私の首を斬る前にタロース達によって弾かれる。


「何!?」


 アルマードは驚く表情を見せる。


「……なるほど。これが守護兵器……ですか。」

「そう。これが私の最終兵器。貴方達を滅ぼすための、最後の砦です。」

「……ソニャニャン!!諦めてなかったんだ!!!!」

「勿論。私がそう簡単に諦めるわけがないでしょう……?」

「そう、だね!!」


 私はタロース達にその場を任せる。

 タロースの強さは精霊族レベル。だから精霊族よりも弱い種族……それに搾取しまくっている、健康状態が良いとは言えない兵士だらけのロストリア解放軍如きが、敵う訳が無い。

 私は完全に安心している。


 そして最終手段は守護神器がある……負けるはずがない。


「せいぜい頑張る事です。タロース達をやれなければ、私まで届きません。」


 私は勝利を確信する。


「……素晴らしい。実に素晴らしい。一つ一つのソニア・タロースはオーラン以上の力……神器としての力を捨ててスピードとパワーに極振りしているその脳筋な力……とても素晴らしい。」


 アルマードは戦いながら、楽しんでいるようだった。

 実際その通りだ。

 オーランという嘗ていたらしい知能神器、それは研究所の地下で見つかった。その神器を解析すると物に心を宿すような力を持っていた。

 だから私はその力を無くし、国王から頼まれていた通り最強のロストリア大陸防衛兵器を作り上げた。


「……その楽しみも、いつまで続くか見ものです。」

「確かに分が悪いですね。」


 辺りを見渡すと、50人以上はいたと思われる解放軍のメンバーは私のタロースによって気を失うほどにボコられている。


「……気がついた時には既に遅いです。アルマード、貴方の負けです。」



 私はソニアの後ろで、研究所の扉の下に可動式で隠してあった殲滅の槍を取り出して握る。


「なるほど、私がわざわざ他国へと配置した守護神器すら回収していましたか。」

「勿論です。貴方を滅ぼす……それこそが私の使命であり、ご先祖さまのニケの願いです。」

「貴方達はいつだってそう、私の邪魔をしてくれますね……ですがこれでどうですか。」


 その刹那、タロース達の攻防によって大穴が空いた私の研究所の天井、そこには1000をも超える宝石の精霊族が現れる。


「……いつから戦力はロストリア解放軍だけだと、錯覚していたのですか?」

「……忘れてた。そっか、そうですね……。なら、これでどうでしょう。」


 私はカーラとメアリーの前で、インガニウム結晶を取り出す。圧倒的な数にタロースたちが押され始めていたから。


 守護神器は特呪がある。だから、こっちを先に使う!!後から槍は使えばいい!!


「聖剣の王で出てくる……ニケと同列視されているもう一人の王、ヴィクトリアはその死に際に神器になろうとした、らしいじゃないですか……もしなっていたとするならば、きっと貴方達を滅ぼせるくらいの……。しかもその一生は、私と似ているそうな……」


 彼女もまた、私と同じように悲惨な環境で育った、らしい。

 私だって、このニケの子孫だっていうレッテルを貼られ続け、国王……カーラの親達には散々言われ、自己犠牲を強いられ……生活してきた。


 それはある意味ロストリアに住む人々全員がそうなのかもしれない。彼らは生まれた時から搾取し続けられ、劣悪な環境で育つ。私だけに限ったことではないかもしれない。


「……だから私は、この悲しみをここで断ち切ります!!」


 アルマードはインガニウムを取り込もうとする私に対してその刀を使おうと突進してくるが、それは10体以上のタロースによって無力化される。


「……くそっ……まだですか!!ヨーク!!」

「……今やってる。こいつら、セキュリティが強固なんだよな……」


 その鳥人の男はソニアを乗っ取ろうとしているみたいだった。

 でも、それよりも私が取り込む方が早い。


「……待って!!それだけはやめて!!ソニア!!!」


 カーラは私に対してそう、訴える。


「貴方が貴方じゃなくなるなんて、嫌だ!!貴方は私の一生の友達……じゃないの!!?」

「勿論。私は貴方の友達です。だからこそ、私は友達を守る為に神器になります……頼みましたよ。カーラ。導いて下さい。最高の世界へ。」


 私はそのまま心臓部へとインガニウムを突き刺し、私の体は天使のような体へと変化していく。


「ソニア!!!!!」


 彼女の叫びが、私に聞こえてきた。


「……これが、神器の力……」


 私は溢れる力……そのインガニウムの力を感じていた。

 そんな時だった。


 私の鼓動はどんどん早くなっていく。


「……一体、なんだ。これ。」


 おかしい。絶対に様子がおかしい。


「……ふぅ、ようやくできました。ボス!!」

「やっとか。」


 ヨークという奴が、ソニアのシステムをハッキングした……


「多少手こずりましたが、貴方もここまでのようです。インガニウムは共鳴反応を起こす事を理解していないようでは、貴方はニケにもヴィクトリアにも届いていませんね。」


「……インガ……ニウムの……共鳴……はんの、う……?」


 そんなものが存在するなんて私は知らなかった。


「はい。貴方のその右手にあるのは、なんですか?」

「……!!」


 そこにあったのは私が最後の手段として持っていた、殲滅の槍……

 私は最後の最後で、ミスを犯した。体内に取り込んだインガニウムと、槍が共鳴反応を起こそうとしていた……私は今、猛烈に自分の中に芽生えそうになるもう一つの自我と……争っていた。


 簡単なミスだった。でもそれが、生死を変えた。


「さようなら。ソニア……」


 アルマードの刀は、暴走しかけていた私の首を切り落とした。

 体が乗っ取られるその前に、彼は私を殺した。



 * * *



「……さあ、フェイ。その障壁の証でこの首、保存しておきなさい。」

「……はい。わかりました。」


「この脳みそは使えます。ニケほどでは無いですが、十分です。」


 これで、僕らは最強の軍隊、ソニア・タロースを手中に収めた。それに、憎きオーランが壊したこの扉も、元通りです。

 さあ、待っていなさい。異世界……この世界以外に存在する本当の楽園、今から全て壊します。


「……さあ。楽しくなってきましたね。トラッカー……それに。ニケ。」



……そのソニアが修復した扉には、まさに楽園と言える、緑豊かで人々が楽しく生きる、そんな世界が……が映っていた。

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