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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第七章 スべてのコトワり
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第075話 ハシラビトと決意

「これで、終わりです……ニケ。そしてヴィクトリア……。すみませんが、これが僕のやり方です。」


 朦朧とする意識の中で、その男フェイドは確かにそう言いました。

 その顔は、笑っているように見えた気がします。


「……やっぱりここにいたか!!」


 その時でした。動けない私達の前に現れたのは……トラッカーさんでした。


「……トラッカー、さん。」

「しっかりして!ヴィクトリアさん、ニケさん!」


 もう一人のトラッカーさん、白髪の女性に私とニケは助けられました。


 その男のトラッカーはフェイドと戦闘を始めようとしていました。


「……どう言うことですか……フェイド。」

「おやおや、起きましたかニケ……懐かしいですね、何年振りでしょう。」


 ニケはフェイドの方を向いて問いかけます。


「もしや……貴方は……アル……マード……!?」

「如何にも、私はアルマード。貴方の先生です。」


「……一体どう言う事ですか!?」


 フェイドという軍隊の隊長はシャングリラでも特に古くから……被験隊からいる古参で、国民からの信頼も厚いです。

 そんな人が、裏切り者でした。



「……何処かに潜んでいるとは思ったが、まさかこんなにも身近だとは思ってもいなかった。」

「そうですか。」

「今度こそ取り逃さない。」


 ニケが言っていました。そのトラッカーさんという人は宝石の精霊族のアルマード先生を嘗て取り逃した事がある、らしいです。


「……カン!!」


 トラッカーさんが持つ刀とアルマードさんの持つ輝く剣が当たり金属音があたりに響きます。


「……一体どのようにアルマードは侵入していた……のでしょうか。」

「それは恐らく『綻びの書』の力だね。」


 その女性のトラッカーは私の疑問に対してそう答えた。

 もう一人が戦っている中、私たちは治療されていました。


「綻びの……書……」

「あれですか……確かに私が作ったアレならば記憶の改竄が可能です。侵入だって余裕でしょう。ですがアレは魔神器です……使えば死ぬ筈です。」


 ニケが反応する。そうです。魔神器ならば使えば死ぬ筈なのです。

 つまり、アルマードは他の人物を殺したという事でしょうか……


「その通り。精霊族が神器を使えば共鳴反応が起こると思う。だから彼らは軍の重要人物を殺した……いやきっと、それこそがフェイドさん!!」


「アルマードはフェイドに神器を使わせ、殺し、その枠を乗っ取った……ということですか。」


 ニケは考えます。


「恐らくそういう事だね!」


「……流石、だな。トラッカー……だが少し違う……」


 血を吐きながらルースタは起き上がりました。


「無理しないで。貴方は私が救うから。」

「助かる……トラッカー。」

「大丈夫。」


 ルースタはその弱った声を見せます。


「全て思い出した……俺は森で出会ったアルマードに……体を乗っ取られて、フェイドの座を乗っ取る計画に……加担させられた。その計画は実行され……アルマードはフェイドになった。」

「……つまり、本当のフェイドは死んでしまっているのですね。」


「……違う。フェイドは……生きている。あの悪魔こそフェイドだ。アルマードは宝石の精霊族の最高指導者……他の宝石の精霊族を使えば、神器の呪いなんてない様な物だ。共鳴反応は起きないぞ。トラッカー。」

「……精霊族は神器を使えないと思ってた……そうだったんだ。」


 その女性のトラッカーさんは困惑していました。


「フェイドが悪魔で、アルマードによって記憶を改竄させられていた……のですか。」


 気が付かなかったです。

 女王として身近にいたはずの人間の違いに、私は一切気がつきませんでした。

 例えそれが神器の力なのだとして……そんな事が……。


 しかもきっと、ルースタが一時期ニケに対して敬語を使っていた様子……それは緊張とか、出会ってから直ぐだからではなかったと言う事……その時彼の中に宿っていたのは間違いなく、アルマードだったと言うこと……超面倒を嫌う彼が敬語を使っていたと言う事実を知っておきながら、そんな線は捨てていた……私の失態でもあります。



 最悪です。

 アルマードがこの場に現れたということは、恐らく準備が……整ったのでしょう。


 きっと銀河同盟に加入させられます。


 なら、私自身がハシラビトになれば……みんなを救えます。


 * * * *


 少し前の話です。


「ニケ……封印以外で神器の中に人を入れる……方法はないのですか?」


 その私の疑問に、ニケは困惑しました。


「……何故唐突に……できなくはないです。試したことはないんですが、生命自体の神器……という方法が可能かも知れないです。」

「というと?」

「オーランは神器を生命型、つまり人の様に製造した物……それに対し、人自身が神器になる……すなわちインガニウムをその体に宿す……食べてしまう方法です。」


「なるほど……。」


 確かに、興味深いです。


「……まあ、仮説ではそんなことをしてしまえば体がその力に耐えられず、粉々になってしまうのではないかと考えています。」

「……でしょうね。」


「……しかし、どんな事があっても貴方は絶対にハシラビトになんてなってはダメですからね。」


 ニケはいつもそう言います。

 私に自己犠牲の考えはやめてほしいというのが、彼女の願いです。


 * * * *


「どうかしました?ヴィクトリア……」

「なんでもありません……」


 私は考えているとニケがそう気を遣ってくれました。


「……まさか、ハシラビトになろうとしていませんよね??」


 ニケは的確に私の心をついてきました。

 私は、それ以外の表情を見せることはできません。


「あれ程、自らを犠牲にするなと、そう言っているではないですか!!貴方は一国の女王なのですよ!!」


 ニケは私の服を掴みながらそう、訴えました。



 * * *



「……目的はやっぱり、寵愛の盾か?」

「ええ、そうです。」


 俺……千歳樹の問いかけにアルマードは答える。

 その姿はフェイドからアルマードへと変化していた。つまり、コイツの姿は恐らくこっちが本来の姿なのだろう。


「……生憎だが、俺たちもそれを狙ってるんだ。悪いな。」


 リリーに提案され、過去に来てから10年以上……俺達は守護神器『寵愛の盾』を外に持ち出させない……という方向性で神器を手に入れることにした。


 シャングリラ時代にそれは作られ、一度はシャングリラにあったはずの神器だから、外に持ち出される前に行けば良いというのは当然の考え方だろう。

 そして今はその、外に持ち出すという運命……理すら断ち切れるこの刀がある。


 だからこそ、俺はもう迷わない。


「うぉぉぉ!!!」


 重力の証と速度の証で相当重みを加えた俺の刀は奴の輝く宝石でできた剣に対して相当な圧をかける。


「……くっ。」


 俺はそのまま耐え切れなくなったアルマードを追い詰める……


「……なかなかやりますね。ですが。」


 その瞬間アルマードの体は消える……まるであの時のように。


「……場所の証の力って言ったところか。」


 アレスでエマが手に入れたあの証の事だ。

 なんとなくわかってきた。精霊族は証の力をある程度扱うことが出来る。

 まあ証は精霊族が落とす魔石からできていると考えればその通り。


「正解です。トラッカー……。僕がどこから現れるか……分かりますか?」


 その場に結びの扉のゲートのようなものがいくつも現れる。

 きっと奴はこの中の一つから……出てくる。


「全て試すだけだ!!」


 俺は速度の証で移動速度を強化し、全てのゲートに対して刀で順番に斬っていく。


「……お前がその中から出てくるという運命すら断ち切ってやる。」


 アニメで見た事があるような分身を技を使って一つ一つ潰していくようなそんな様に俺はそのゲートを破壊していく。


「残り一つ!!ここだ!!!」


 残るゲートは一つ。ならここに奴はいる!!


「……不正解です。」


 そのゲートは簡単に消えてしまった。


「何!?」


 全てのゲートを破壊しても、奴は出てこない。

 別に本当に出てくる運命断ち切って、奴が一生そのゲートの中の空間に居続ける的な……そういうネタではない。本当に奴はそこに居なかった。


「……ならいったい何処に!?」


 俺は咄嗟に感覚の証を使う。

 何処かにいるならこれで探せるはず……


 というかそもそも声だけは聞こえていたんだ。


「……」


 辺りに響く波を感じ取る……

 ヴィクトリアたちが喋る声……それが壁に反射する音……ん?それ以外にも……ある一体がこっちに向かってくる様な音……


 そして……不自然にヴィクトリアたちの声が反射する場所……が見つかった。


「そこだ!!!」


 俺はその不自然な場所を刀で斬る。


「……流石です。僕の光学的な擬態が……バレるとは。」


 宝石の精霊族……というくらいだからか。実体化しているとはいえ、その体は擬態には向いているだろうな。


「……勿論だ。」


 だけど、俺の刀は奴の剣によっておさえられている。

 それに、このままだとまずい。早いところコイツを倒さないと……


「エマ!!!」


 俺はエマに目を送る。

 その意味は一つ。

 俺とアルマードをこの場所から一旦離れさせ……奴らが来るまでに本気で争える場所へと……


 と思った時には遅かった。


「……久しぶりだな、ニケ。今度こそお前たちの首、もらうぞ。」

「貴様は!!」

「……!!」

「マルス!!!!」


 ヴィクトリアは言葉にならない表情を見せる……当然だ。


 だってそこに現れたのはあの時の光の精霊族。5000年後に俺が倒した、次の最高指導者のアポロン。

 マルスの姿を好んで模倣するという……奴だ。


「よそ見してる場合ですか。」

「そっちこそ、光の精霊族がここにやって来ることは予想外じゃないのか?」


 俺とアルマードは剣と刀を交えながらそう話す。


「……それはどうでしょうね。」


 アルマードは俺と一旦距離を取り、その場で指を鳴らす……。


 その瞬間……その場には1000を超える宝石の精霊族が現れる……。


「なん……だと。」


 宝石の精霊族はさっき、光の精霊族と相打ちするように、ほとんどが消えたはずだった。

 俺たちが戦争が始まったことに気づいてファヴァレイから駆けつけた時には遅くて、キーラ率いる光の精霊族と、裏切ったアルマードの操る宝石の精霊族が相打ちしていた。だからアルマードが正体を表した時にしか来れなかった訳だけど……ヴィクトリアがキーラと一対一をしていた、その時にシャングリラのみんな巻き込まれると同時に、遠くからは光の精霊族も、宝石の精霊族も消えた様に見えていた。

 だから、光の精霊族は多分このマルスの模倣している奴が最後の一人。


 だが、それ以上に奴らは多かったということだ。


 光の精霊族は、きっとこの後マルスの模倣をしている奴がコア環天体を作り、インガニウムを手に入れてまた1から人数を増やしていく……とやったのが俺が見てきた歴史なのだろう。

 だが奴らは違った。銀河同盟という組織すら持ってる奴らが、この太陽系の中で完結している光の精霊族と同じわけがなかった。


「……さあ、銀河同盟に加入してもらおう。エヴァース……」



 その瞬間、空にはアレ……が現れた。



……それは宇宙に浮かぶコロニー。嘗て俺達がエネルギーの枯渇……と聞いて赴いた、浮遊都市『ソアロン』そっくりだった。

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