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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第七章 スべてのコトワり
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第074話 ハシラビトと精霊

「……では、作戦を決行しましょう。本日が、クトニオスの最後の日です。」


 その日、シャングリラとクトニオスの最終決戦が始まりました。

 目的は、クトニオスの滅亡。そして第二に捕虜となっているマーガレット達の奪還です。



 私達数千人の軍はクトニオス国境付近まで侵攻していました。


「捕虜の囚われている施設はクトニオス地下に存在するとされています。地上から行くルートを選べば先に捕虜の奪還、上空のルートを選ぶのであれば地上から浮島に向かうタワーのエレベーターから……後になります……。」

「作戦通りで良いでしょう。トライドを使用した空部隊はそのまま本拠地へ……ですが、そんな必要もなさそうですね。」


 フェイドは私にその地図を見せます。


 そんな私達の前には突如として一人の少女が現れた。


「何者だ?おい、貴様……」


 ルースタは威圧する。


 空には浮島が浮かび、地上からは複数のタワー……ビルが伸びる。そんな平原の中に一人の少女は現れました。

 私は警戒するフェイド達をを手で抑えます。


「……王自ら戦地に赴くとは、これで最後にしたいという心……ではこちらも見習いましょう。そうですよね、ヴィクトリア様。」


 その少女は私に対してそう言い放つ。


「ええ。勿論。今日で最後にしましょう。キーラ。」


 そう、その少女こそが光の精霊族の最高指導者……キーラでした。キーラは実体化した精霊族ですが、表に現れることは殆どありません。それはシャングリラの軍のトップであるフェイドすらも知らない程……でした。でも、私は彼女の事を知っていました。トラッカーさんからの情報でした。


「……はじめましょう。殺戮(ゲーム)を。」


 キーラが手を広げながらそう言うとその場には1000体以上の光の精霊族が現れました。


「一対一をしましょう?そうすれば、決着は明白ですよね。」


 キーラはそう私に提案します。


「……ええ。いいでしょう。」

「ヴィクトリア様!!?」

「おいおい、ヴィクトリア、それはやめとけよ。」


 フェイド達は私の発言に驚く。


「私の後は、頼みましたよ。フェイド……ルースタ……ニケ。」


 私はここで死ぬつもりです。

 私は女王としての正しさがもはやわからなくなっていました。

 軍は私と同程度、いやそれ以上の力をもはや持ってしまっています。


 シャングリラは国として既に腐敗しています。それは私が女王であったが故だと、考えてます。

 フェイドやルースタ、ニケによる新たなシャングリラが良いかどうかはわかりません。


 この作戦が成功すればマーガレットかフェリスタが私の後を継ぐでしょう。国民の不満を私は抱えきれませんでしたが、彼女達ならきっと出来るかもしれません。


 ですので私の時代はもう、終わりなのです。私は最後に、キーラ達光の精霊族を葬って、国民を守る。それだけが使命だと思いました。


「その心受け取ります。」


 キーラはそう言うとその場に結界を生み出し私とキーラ、二人の空間を生み出しました。

 まるで、寵愛の盾を使った時に作られる空間のイメージ図……としてニケから見せてもらった物とそっくりでした。


 私は剣を抜きました。


 ……腕には開発中の速度の証、首にはペンダント型の幻想の証をつけています。


 これがあれば、光の精霊族にだって対抗できるはずです。


「さて戦いましょう。」

「行きます。」


 キーラは金色の髪に水色のメッシュが入っているような特徴的な髪の持ち主です。そして白い翼を持っています。


 私の剣と彼女の光でできた剣は何度も当たり、火花を散らします。

 彼女はその翼を扱いながら何度も私に斬りかかり、私はそれを耐え、受け流していました。

 王女として戦場に赴く以上、私は剣術も学んでいました。


「……これならどうですか?」


 埒が明かないと思った私は速度の証を使って剣のスピードを上げました。

 私がニケに頼んでおいた……魔法のような力、私が望んでいるような力……

 本当はこんな形では使いたくありませんでしたが、その速度の力で飛んできた彼女の光の剣を吹っ飛ばすように高速で跳ね返しました。


「面白いですね。ヴィクトリア……その証はフルーブレムで死んだ光の精霊族から手に入れた魔石……ですね。」


 弾かれてその空間の端まで滑っていったキーラはそう呟く。


「よくわかっていますね……」

「私たちは個体ですから勿論わかります。」


 つまり、この力はキーラとやり合える力です。


「ですが……これは如何でしょう。」


 その瞬間、キーラは私の前から姿を消しました。


「……!!?」


 その空間の中にどこにも、キーラの気配は感じられない程になっています。

 その時、私の髪の毛が右後ろから来た刃物によって切れる感覚がわかりました。


 その感覚を感じ取り咄嗟に私は前方へと回転し受け身をとり着地します。

 私の目の前には切れた金色の私の髪の毛が落ちていきます。


「……一体どこから……」

「すごいですね。よく気が付きましたね。」


 キーラは透明化していたようです。


「透明化……ですか。」

「惜しいですね、私はどんな姿にだってなれます……例え小人のようにだって……!!」


 彼女は体の大きさを自由自在に変形できる力を持っていた様です。

 キーラは小さい妖精のようになってまた私の元へと剣を振るいます。


「小さい……ですね。」


 その剣は小さく、とても素早く私にはあまりにも反応出来るものではありませんでした。


「……どうしました。流石に対応できませんか。」


 キーラは余裕そうに私を追い詰めていきます。

 実際その剣は私の体勢を崩し、そのまま最後の一撃を与えようとしました。


「……まだです。」


 その瞬間私はペンダントを触り、空を飛ぶキーラを地面から生えた石で吹っ飛ばしました。


 幻想の証……それは幻想を一瞬だけ形にするもの。正に魔法……です。


「幻想……ですか。」


 キーラは予想外の方向から来たその一撃に対して血を吐きます。

 光の精霊族も血を吐くんですね……


「ですがまだまだです。まだまだ楽しませてください。」


 キーラは私に対してそう言い放ちまた巨大化します。

 私の手の内は全てバレてしまったわけです……


 ーーー


 私とキーラは外の事など忘れるように二人の時間を、その戦闘の時間を楽しんでいました。


「……貴方、本当はこんな事したくないのではないですか?」


 1時間以上剣を交えて、キーラの事を少し理解することができた気がしました。


「そういう貴方こそ、女王など辞めたいのではないですか?その為に私の誘いに乗った……」

「……そうですね。よくわかりましたね。」


 キーラにはもうバレていました。


「……私は実体化してまだ短いです。私の心はまだ幼児と同程度。教えてください。なぜ貴方は勇者になりたがるのですか。」

「勇者……ですか。面白い解釈ですね。その通りです。私はこのエヴァースを統一し、宝石の精霊族に対抗する為に……世界を救う為に勇者になります。なんていうのは嘘です……私は自分を犠牲にしてでも、明るい未来を作りたいだけです。」


「……面白い、ですね。自己犠牲を受け入れながら戦うという訳ですね。精霊族の力は常人ではまず太刀打ちできません。神器なら抵抗できるかもですが、その呪いは我が身すら滅ぼすもの……そんな相手に対抗すると言うその心……実に興味深いですね。」


「私はこの身を犠牲にしてでも精霊族から国民を救います。私が死んでも彼らがきっと守ってくれる。逆にいえば、死ぬほどに貴方と戦わなければ、国民は間違いなく救われませんから。」

「……なるほど、良いでしょう。わかりました。貴方の心はよくわかりました……」


 キーラはそう言うと交えていた光の剣を抜きました。


「どう言うつもりですか?キーラ。」


 キーラの戦意は喪失したかのように感じました。


「……いいでしょう。私は貴方の元につきます。その心を教えてください。クトニオスはもう、いりません。」

「……なっ。それで良いのですか?」


 私はそのキーラの様子に驚きました。


「はい。実体化して心を手に入れた私は知識が欲しいのです。こんな争いをしたいわけではありません。今後はヴィクトリア……貴方の事をお母様と呼ばせて頂きたく……思います。」


 キーラもまた、私と同じようにある意味で被害者なのだと思います。

 あのディアボロスもおそらくキーラの意思ではありません。そう言うこともなんとなく分かりました。


「……分かりました。これからよろしくお願いします、キーラ。」


 その二人きりの空間の中で、私達は和解しました。



 私の前でキーラは願っていました。


「何をしました?」

「最高指導者を降りただけです。私にはもう、光の精霊族を従える資格はありません。」


 それ程までに、彼女もまた被害者だったのでしょう。



 その時でした。

 キーラの体は消え、光の粒子となっていきました。


「一体何事ですか!?」

「お母様!!」


 私は手を伸ばしましたが、キーラの体は光となって消え私の手は届きませんでした。


「……何が起こったんですか……」


 キーラが消えると同時にキーラが作った空間も消え去りました。


「大丈夫ですか、ヴィクトリア様!!」


 その結界が消え去ると同時に初めて見えた人影はフェイドでした。


「大丈夫です。一体何が……」

「成功しましたよ。結界を突破することには時間がかかりましたが、最高指導者キーラは扉に封印することに成功しました。」


「……!!」



 キーラが……私と折角和解する事が出来たキーラが、扉に封印されてしまいました。


「ニケは、ニケはどうしました!?」

「ニケはあそこです。」


 フェイドが指差す先、そこには多数の魔石……光の精霊族が死んだと思われる結晶と、数多くの同志、そしてニケとルースタが倒れていました。

 辺りを見渡して生きていそうなのは立っているフェイドと私……くらいでしょうか。



「……ニケ!!しっかりしてください!!」

「……あぁ……ぁ。私は……大丈夫……です。それよりも……フェイ……ド……を。」


 フェイドが……どうした……のでしょうか。




 私はフェイドの方を振り向こう……としたその時でした。


 私は頭を何者かに殴られ……意識が朦朧と……



「これで、終わりです……ニケ。そしてヴィクトリア……。すみませんが、これが僕のやり方です……」



……その男は密かに笑っていました。

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