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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第七章 スべてのコトワり
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第070話 王女の誓い

「仲良くしてくださいね。」


 アルマード先生はそう言って私達二人の肩を押しました。


「……さあさあ、タイタンに帰りましょうか。」

「え?」


 アルマード先生は早速タイタンに帰る……と言い出しました。


「銀河同盟に仲間入りする為、インガニウムを手に入れるのではないのですか?」


 私はアルマード先生に真剣に聞き直します。


「……勘違いでした。アレスに行けば、インガニウムを手に入れられると思っていましたが……ここはタイタンよりも技術が発展していませんでした……僕のミスです。」


 アルマード先生は笑って私にそう伝えます。


「……そう……ですか。」


「どうかしましたか?ニケさん。」


 その少女……ヴィクトリアは私を見つめます。

 そんな彼女に私は何もない様子を振る舞いました。


「ごめんなさい、ヴィクトリア……会ったばかりなのに……帰らなきゃいけなくなりました。」

「……そうですか。では、またお待ちしてます。」


 私はそうヴィクトリアに別れを告げた。


「……さあ、アレスへ帰りましょう。」


 また私は先生に手を取られるまま、アレスへと帰宅しました。



 ーーー



 楽園とは、一体何でしょう。

 自由に研究し続けられる空間こそが、私にとっての楽園でしょうか。


 好きな科学……幼い頃本で見たSFの世界を段々と実現していくそんな研究が、私にとっての安息です。


 サターンの衛星、この小さなタイタンの更に小さな箱庭こそが、私にとっての楽園で間違い無いでしょう。


 * * *


「……なに!?ニケを連れ出した、だと??」

「はい。私の独断で、ニケをアレスへと連れて行き、実験を行いました。」


 僕は陛下にこの件を伝える。


「……そう……か。実験は、成功したのだな?」

「はい。成功です。」


 陛下は困惑しながら私に聞く。

 やはり、アレスの科学力……遺伝子操作は素晴らしい。


「で……その人はどうなったのだ。」

「ヴィクトリアとして、アレスで暮らし続けるでしょう。」

「……そうか。」

「ヴィクトリアは、第二の実験成功者になりますね。即ち、マルスの義妹と言ってもいいでしょう。」

「……そう、だな……」


 僕は陛下に笑みを送る。


「……ならエヴァース統括戦争は……近いな。」

「……はい。」


 僕は眼鏡をあげながら答えた。


 * * *


 私がアレスに行った次の日でした。

 私は、軟禁状態から解放され専用の研究施設と、広い世界を目にすることを、許されました。


 その景色は壮大で、私の新たな楽園……でした。


「……さて、アルマード先生から頂いた……これ……盾ですか。開発してみますか。」


 私はそう言って朝日を浴び、研究に没頭します。

 第一王女という立場はありながら、私は自由に研究することを許されました。


 ーーー


 それから、10年が経ちました。


 ヴィクトリアはアレスのオリンパスという国で育てられ、そのまま国の重要な人物になりました。

 私もまた、国を背負う王女として、彼女とは交流し続けています。

 あれ以来、私は記憶を失うなんていうことは無く、平和に過ごしています。


 そして例のアルマード先生から頼まれていた物は完成しました。


 ……実に10年という月日が経ちましたが、その時計の針のような物を持つ神器……寵愛の盾は完成しました。



「アルマード先生。できました。」


 私はアルマード先生をその完成した盾を見せようと探し回ります。

 ……しかし、王宮のどの扉を開いても、見つかりません。


「……先生??」


 私が探し回るその背後で……人の気配を感じました。


「……」

「……誰かいるの!?」


 私はその聞き慣れない声を聞いて振り向きます。


「おやおや、バレてしまいましたか。」


 そこに居たのは見知らぬ姿の生物……まるでガラスでできたかのような、そんな宝石の……生物。


「……貴方は!?」

「……僕はアルマード・ニアーテルナ。」


 その宝石?の精霊族……と思われる人物はそう名乗りました。


「嘘、先生ではないでしょう??」

「嘘ではない。ニケ……僕は貴方の持つその頭脳を……その特殊な人格を欲し、10年以上この王宮に侵入していた……実体化した宝石の精霊族だ。」


 アルマード先生はと思われるその精霊は、私の前でそうカミングアウトしました。

 私はその言葉を聞いて後退ります。


「……そんなわけが……ない。アルマード先生は、優しくて……私の恩人です!!!!」

「……それもこれも全て演技……貴方を利用するための、演技。」


 私の顔色は悪くなっているでしょう。

 信用していた人に裏切られ、そしてその正体はこの世界の最強とも言える……インガニウムに非常に近い性質を持つ精霊族……その話はアルマード先生自身から、何度も聞いていました。


「さあ。寵愛の盾を渡しなさい。3年でできると思ったが、まさか10年もかかるとはな……」


 アルマード先生はそう言いながら私の背中を押します。


「……ずっと利用していたんですか……。」

「ん?そうだな。」

「……何が目的なんですか。銀河同盟……が目的ですか?」


 私は殺される事を覚悟でその事を聞きました。


「そうだな。これが僕の最後の授業……教えてやろう。」


 アルマード先生はそう言いました。こんな形で、先生から教わる最後の日が来るなんて……


「僕達は100年以上前、銀河同盟を作った。この銀河系の生命体を、依存させる為の……そんな同盟だ。」

「……依存?」

「そうだ。僕達精霊系の種族は心を持たない種族。例外として僕の様に実体化した場合は心を手に入れるが、心を持たないということは……心を持つ知的生命体など陥れることは容易。僕達は銀河同盟という名の植民地化計画で……この銀河を、幾千もの星々を傘下に加え、搾取し続けている。」

「……最低ですね。」


 私の口からは、その言葉が漏れる。


「……つまり、タイタンも……このヘリオス系も植民地にしよう……というわけですか。」

「そうだ。だがこの星には貴方がいた。精霊系の種族で無いのに……その神の結晶にたどり着き……神器を生み出す可能性がある、人物。それが貴方だ。」


 ……神の結晶。それこそが、インガニウムという物質……。


「だから僕は貴方にあの盾を作らせた。あの盾は惑星を丸ごと守るほどの力を持った盾……そう設計図に書いたはずだ。あれがあれば、ガラスの星グラーシュをも、我が傘下に入れることが出来る。水の精霊族は銀河第二エリアを統括してもらっているが……グラーシュのせいで難航していてな。」

「……よく分かりませんが。精霊族がその結晶を知っているのであれば……自ら作れば良いでは無いですか?」


「……そう思うのは当然ですね。でも精霊は自らを生み出したそのインガニウムを扱うことはできない。もしインガニウムに触れたら、その波から新たな精霊族が生まれる。生物的に言えば……無性生殖というのが正しい。インガニウムが元となっていて、同じ種族は全て同じ個体であり最高指導者がいる……という精霊族の特徴故の、絶対的な不可能性です。」

「……なるほど。それが、他の種族を奴隷の様に扱ったり……私にこうして神器を作らせたりする、理由ですか。」


 彼らは他の生物を扱う事のみで、干渉できるっていう……そういう種族だっていう事……

 私は自分自身を恨みます。どうして、その可能性に行き着くことはできなかったのか……銀河同盟の話を聞いておきながら、そこに対する危機感を感じる事が何故なかったのか……。

 研究者という立場でありながらその可能性に辿り着かなかった私は、自分自身が憎いです。


「そうだ。君は立場上、騙し易かった。」

「……そう。ですか。」


 ずっと軟禁されていたから……外を知らない自分だからこそ、簡単に騙す事ができたんだ。


「さあ。最後の授業は終わりだ。早く寵愛の盾の元へと連れて行け。」


 ……アルマード先生は私の背中をそう言いながら押します。


「……嫌です。」

「……なんだと?もう一度言ってみろ。」

「嫌です。断ります。私は研究者として……死んででも、貴方に盾は渡しません!!」


 私は、死を覚悟します。

 タイタンを襲う運命は変わりません。


 宝石の精霊族が主体となる、銀河同盟にタイタンは加入させられて、植民地化される。それはどんな決断をしたところで、このままでは確定事項でしょう。

 ならば私は、断ります。

 タイタンを統べる様になる……王位は継承しないとはいえ、第一王女として私はタイタンを愛しています。


 世間知らずな王女なのは間違い無いですが、それでも、宇宙人に植民地化されるような事態は絶対に嫌です。


「……その覚悟……本当だな。」

「……はい。私はここで死ぬのであれば、それを受け入れます。」


「……こんなところで、こんなにも可憐で、天才な、将来有望なニケの命を奪わないといけないとは……僕はなんて不幸なのだろう。」


 アルマード先生はそう嘆く。


「……本当は、心なんて無いはず……」


 私は小さくそう呟く。


「……最後に何か言い残すことはあるか?ニケ。」

「……そうですね。今までありがとうございます。アルマード先生。」


 私は死を覚悟しています。

 私はアルマード先生の前で、お辞儀をしながらそう伝えました。

 もう、死にます。いくらアルマード先生が悪い人だったとはいえ、私に色々と教えてくれた事は揺るぎの無い事実です。そこに感謝の意は示すべきでしょう。それが王族として綺麗な死に方……では無いでしょうか。



 アルマード先生の右手には宝石でできた槍のような物が現れます。

 それは鋭く、ダイヤモンドの様な輝きを放っています。


「……こちらこそ、ありがとう。残念だ、ニケ。」


 その王城のガラスを通して入ってくる光のみが存在する輝かしい廊下で、私達はそう、最後の言葉を述べました。



 ……その瞬間でした。


 アルマード先生の身体は消え去りました。刀の様な物で、斬られ、光の粒子となって、消えました。


「……助か……ったのですか……?」


 私の口から安心の声が漏れます。


「……ああ。ニケ。ここでお前が死ぬ運命を、この刀で断ち切った。」


 そこには、仮面を被る二人組がいました。

 その男の人と思われる人は、そう言い放ちました。


「……貴方達……は?」

「私たちは神器を追跡する二人組、トラッカーだよ!!」



……私は急に現れたその、トラッカーという二人組によって救われたのでした。

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