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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第七章 スべてのコトワり
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第069話 二人の願い

 いつからでしょう。私は、『魔法』という存在に憧れを持っていました。

 この広い世界を、アレスの海や空を箒に跨って自由に駆けたり、便利に生活したり……

 そんなファンタジーな、フィクションを心の中で求めていました。


「……お兄さん。」


 私よりも大きい男の人……私の兄です。

 私は小さく呟きます。


「大丈夫。きっとエヴァースでも上手くやっていけるさ。」


 ……私の兄はそう言って、選ばれた私達……私率いるエヴァースへの『被験隊』を見送りました。


 * * * * *


 いつからでしょう。私は、『科学』という存在に憧れを持っていました。

 この広い世界を、タイタンの空や陸を車に乗って自由に駆けたり、便利に生活したり……

 そんな世界を、この小さな箱庭の中で求めていました。


 それが、私の幼少期。


 ニケと名付けられた……魚人の国、衛生国家タイタンの第一王女である、私。ニケ・ラキ・クロノシィードです。



「外の世界を知りたいだと?」

「……はい。私はもう今年で10歳です。このタイタンという星を、知りたいのです。」

「……だめだ。」


 私の父上……パラス・ラキ・クロノシィード。彼は私をそう言っていつも止める。


「なぜです!?世界は……こんなにも広いというではありませんか。炎の星に、水の星、ガラスが降る星に……氷でできた星……」


 私は父上の前でその本を広げました。


「……その本を、一体どこで手に入れた!言え!!」


 父上は私の胸元を掴みました。その力は本気……抵抗することも出来ないような、そんな力強さを感じました。


「……アル……あの人から受け取りました。」

「……全く。アルマードか……余計な事をしよって……」


 父上はそう言いながら呆れて……私をその場に下ろします。


「……今後も、あの部屋から出るな。それがお前の運命だ。」

「……はい。わかりました。父上。」

「連れて行け。そしてしっかりと脱走しない様、確認しておけ。」


 その後、私はいつもの様にその部屋の中で孤独を過ごします。


 ……そんな私の心を埋めたのは、科学でした。


 幼い頃からこの部屋へと軟禁され、無限と思えるような時間の中で、私はアルマード先生から様々な事を教わっていました。


 * * *


「……全く。どう言うつもりだアルマード。お主にニケの教育は任せたが、外の世界を見せろとは言っておらぬ。」

「これはこれは、すみません陛下……ですが、彼女を永遠に軟禁しておく事はいかがなものかと。」


 僕は眼鏡を上にあげながら陛下に対して反発する。


「……知っておる癖に、何度も言わせるな……ニケのあの頭脳とその特異性は奴らに狙われている。出してしまってはだめなのだよ。」

「……ですが最近、アレスで妙な実験が成功したらしいではありませんか。」


 僕。アルマード・ニアーテルナは一枚の記事を陛下に対して突き出す。

 これこそが、可能性。

 ……彼女を救う、唯一の可能性。


「……実験成功者……か。12歳の子供の魂……マルス……と言うのか。」


 陛下はその記事を読み上げる。


「大変興味深い記事ではありませんか?一度彼女をアレスに連れて行く事も良いかと。」

「……検討しておく……」


 陛下は厳しそうな目で僕の方を睨む。


「……では。これで。失礼しました。」


 僕はそう言ってまた、ニケの元へと戻る。


 * * *


 この部屋。この少し広い外部の景色を一切見せない空間は、私にとって地獄でありながら、楽園でした。

 いつでも好きな時に科学を考えることができます。食事はアルマード先生が持って来てくれます。そして、いつも大好きなお話も聞かせてもらえます。


 そんな先生から聞いた知識で、私は数学……物理学……様々な知識と、仮説なんかを考えて生きています。


「……あ、先生。こんにちは。」


 私は帰ってきたアルマード先生を見上げる。


「いい子にしていました?ニケ。」

「してました。今日はどんなことを教えてくれるんですか?」


「……そうですね、今日はガラスの星について、お話ししましょう。」


 その部屋に小さくある、黒板と机と椅子のところへと私たちは移動します。


「ガラスの雨が降る星。そこには精霊が住んでいました。水の精霊……と彼らは名乗りました。」


 アルマード先生は黒板に白色のチョークで絵を描きながら説明します。


「彼らの体は不思議でした。透明な体で、まるで心を持たないような、道徳というものを知らない、そんな人たちです。彼らの構造は光の精霊族……アポロンと殆ど同じです。唯一違うとすれば、文明レベル……銀河同盟と呼ばれる知的生命体の共同体の一員だという点でしょう。」


 ……知的生命体の、同盟。


「……彼らはいい人達、ですか?」

「……はい。彼らはいい人達です。このタイタンに希望と発展をもたらしてくれる、そんな人達ですよ。あと3年もしたら、タイタンも銀河同盟の仲間入りでしょう。」

「それはいいですね。タイタンもようやく仲間入りできるのですね。」


 学ぶことも、考えることも好きですが、王政や他惑星との関係性などは私にとっては未知の領域、そして興味もさほどありません。

 ある意味、そう言った性格からこの軟禁生活はできているのかもしれません。私が王位を継承する気がないから……


「……どうかしました?」


 私の前で、アルマード先生は暗い表情を見せます。


「……実は、それには貴方の力が必要不可欠なのです。」

「……どういう、事でしょうか?」


「……貴方の仮説……インガニウムと呼ばれる大いなる可能性を持つ物質。それがあれば、銀河同盟に仲間入りできます。」


 アルマード先生は真剣に私に対してそう伝える。


「……わかりました。それなら、更なる発展の為に私は協力しますよ。」


 私はアルマード先生のことが大好きだ。


「そうですか。それは有難いです。さてさて、それでは行きましょうか。」

「行くとは、どこへですか?」


 急に声のトーンが変わるアルマード先生。


「アレスです。緑と水の豊かな星、このヘリオス系で知的生命体が住む唯一の惑星、第四惑星アレスです。」

「……アレスに、今から行くのですか?」

「はい。そうです!」


 アルマード先生は元気にそう笑って私を見つめます。


「……ですが、外に行くなと、あれだけお父様は言っています。その言いつけは……破れません。」


 私はそう答えます。


「大丈夫です。私が全て責任は取りますし、陛下にもしっかりと伝えていますから。」

「……ですが!!」

「……外の世界、見たいのではないですか?」


 私は唾を飲み込む。


「……はい。そうです。」

「決まりです。行きましょう!」


 私はアルマード先生に言われるがまま、アレスに行くことを決めてしまいました。



「……ところでどの様に行くのですか?」


 王宮から脱走した私達。アルマード先生の家まで私はやってきました。


「これです。この飛行機はトライド。貴方の発見した物質、セレスチウムを搭載し惑星間飛行を可能にした飛行機です。さあさあ、乗ってください。」


「……凄いですね。」


 私はそのトライドを見上げる。


 3年ほど前、まだ7歳だった私が仮説を立てた物質、セレスチウム……それはアポロンのお話を聞き、他にも様々な可能性から導き出したただの仮説でした。

 それが、こんなにも早くそして実在していたと言うのは驚きでした。


 あの部屋の中で研究しながら生活してはいたものの、外部との交流はほとんどしていなかった為、この様な技術がある、私の研究が使われていると言うことを、今知ったのです。


「これでいいですか?本当に良いのですか?こんな事をして……」


 私はトライドに乗り込み、前席に座るアルマード先生にそう訴える。


「大丈夫ですって……全く。心配症ですね、ニケは。」

「そうかも知れません。」

「帰ってきたら陛下もきっと喜びますよ、銀河同盟への加入が、貴方の力で成し遂げられるのですから。」

「……そう、ですね。」


 私は納得して、アレスへと赴きました。



 ーーー



 ……ですが、私はその後何があったのか、よく理解できていません。

 アレスに行ったところまでは……覚えています。

 ついた先はオリンパスと言う国だと言う事も、わかっています。

 オリンパスには一度行ったことがあったはずです。私は確か、その時も記憶を失っていました。

 そしてそのオリンパスへ行った時以来、私は軟禁されていたのです。


「……痛い!!やめて!!!……アァァァァァ!!!」


 そんな悲鳴を出したようなそんな感覚は私の喉に痛みとして残っています。


「……成功です。」

「そうですか。それは良かった。」


 アルマード先生の声が隣の部屋から聞こえてくる。

 その時、その部屋との扉は開いた。


「……お疲れ様です、ニケ。今日から貴方の友達が一人、増えますよ。」

「どう言うことですか?」

「来なさい、ヴィクトリア。」


「……よろしくお願いします。ニケさん。」


 アルマード先生が呼ぶと、一人の少女が私の元へとやって来ました。

 その耳が長く鋭く、金髪で……オリンパス人と思われる少女は私に挨拶しました。


「……こちらこそ、よろしくお願いします。」



 私は状況を上手く飲み込めていませんでした。


「仲良くしてくださいね。」


 アルマード先生はそう言って私達二人の肩を押しました。



……これが、魚人の私とエルフの少女の出会いの記録です。

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