表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第六章 ココ 宿る場所
70/123

第059話 精霊と彼等の創造主

 弾丸になった光が飛んで来て、私の腹部を貫いた。


「グハッ……」


 私の口と腹部からは血が滴る


「このくらいならまだ息はあるか……」


 そのミトラを被った翠教の司教は私に寄ってくる。


「だが、それじゃあもう動けないだろ。だから最後に教えてやるよ。」


 その男は私の前で光の矢を出して突き付ける。


「……。」私にはもう軽々しく言葉を発する余裕もなかった。


「神は元からエランズとミラーマーズを戦争させる予定だった。世界の再創造……と呼んでいたか。最後には核兵器と、新型薬品兵器フィーネを使用する。そんな予定だ。お前は勘違いしている。」

「……どう……いう……ことだ??」

「核兵器の使用は第一段階、全てを滅ぼす薬品フィーネの使用は第二段階、アレスから水を消し去るほどの力をアルテミスより照射するこれが第三段階……あんた達は最初から、こちらの掌の上だ。アレスは確実に滅ぶ。いや、こんなことをしなくても数年後には自然と滅ぶ運命なのは間違いないが……神は趣味が悪い。」


「俺達が……ニ国を争わせなくてもお前達が戦争をさせていた??というのか。」

「そうだ。さあ、もっと絶望しろ。」



「くそ……アポ……ロンめ……!!」


 そこまでしてアポロンがアレスを滅ぼす理由は何だろう。

 いや、タイタンを3000年以上前に滅ぼした奴らだ。3000年間何をしていたのかは分かっていないが、理由などもはやないのだろう。


 私は最後の力を振り絞ってその光の矢を掴む。光ではあるが、実体はあった。レーザーの様なものではなかった。


「……な!!何をしている貴様!!」

「まだだ……まだ……やれる!!」


 私は頑張って立ち上がり、そのまま光の矢を距離をとった司教に向かって投げつける。


「何度言ったらわかるんだ。こんな物余裕でよけれ……」


 奴はその矢をミトラに触れることで消し去ろうとする……


「……甘かったな。」


 その矢は当たりそうな直前、奴の目の前で蒸発するように消えた。

 でも、矢に隠れる様にして打った銃弾の一つは奴の手首を襲う。


「何が起こった!!」


 普通、そのミトラの力で矢を消そうとしたら一瞬で消える。蒸発する様になんて消えない。



「……一瞬で撃った。それだけだ。」

「……おのれ!!許さんぞ!!」


 奴はまたミトラに触れようとする。

 私の放った弾は二つあった。もう一つはミトラに命中していた。もう『光源の証』は破損して使えない。だから、蒸発する様に光の矢は消えた。


「何!?」

「もう、そのミトラは使えないな。」


「おのれ……貴様!!!!」


 彼は本気で怒る。彼はその胸元につけたブローチに触れようとする……きっとワープするあれだ……あれは絶対に触らせない。


「……待て!!」


 私の弾丸は彼の触れようとする右腕を貫く。


「……くそっ、くっそ……」

「これで終わりだ!!」


 私は苦しんで悶える彼の元に近寄り、その鋭い爪で引っ掻き、殺す。


 私の爪は彼の皮膚を抉り、出血が始まる。……そしてミトラが使えなくなった今、さっき貫いた今彼の心臓部からも血が溢れる。


 ……もう、確実に彼は死んだだろう。



「……あとは任せたぞ……私の、神様。」


 私は消えゆく意識の中で、手を伸ばしながらそう呟いた。



 ……ヘイルの手は、重力に従う様に自然落下した。その空間にはもうただ『天界の杖』があるだけだった。



 * * *



「あなた達はなぜコア環天体へ行きたいのですか?」

「アレスを救う為だ。」

「そうですか。」


 歩きながら、ニケは俺たちに背中だけを見せる。


「コア環天体……それは恒星ヘリオスで開発されたアポロン族……光の精霊族が有する技術です。」

「それは知っている。」


 ニケは歩きながらそう説明する。



「……コア環天体を破壊したところで、アポロンの最高指導者を倒さない限り、アレスは救われませんよ。」

「でもコア環天体に行けば最高指導者と会えるんじゃない!?」

「……そうかもしれませんね。」


 ニケは俺たちの前を歩きながらそっと笑う。


「なあ、ニケ。あんたはアポロンの目的について何か知っているんじゃないか?『荒びの鐘』の力があれば、音の力かなんかで情報がわかるんだろ?」


「……アポロンの目的は恐らく、完全体の再現です。彼らは心を持たない種族。しかし、5000年前には唯一心を持った実体化した最高指導者、キーラと呼ばれるアポロンいました。」

「心を求めてるんだね……」


 エマはニケの話を聞いて呟く。


「はい。滅ぼす理由も全て……心がないからだと思います。寧ろ滅ぼすことでその身に何かの心を宿したい。といったところでしょうか。」

「……なるほどな。」


 心がない種族か。多分奴らに道徳なんて関係ない。だからこそアレスのことなんて何とも思っていないのだろう。


「アポロンがこうなった理由、キーラがいなくなった理由はわかるか?」


 俺がそう問いかけるとニケはその場に留まり、俺達に背中を向けたまま話し始める。


「いいでしょう……どうせ滅びますし、教えましょう。」


「5000年前、私達タイタン人とアレス人、ヘリオス人は交流がありました。最高指導者キーラと、タイタンの皇族であった私とその友人のヴィクトリア。当時アレスの国家ミラーマーズの王であり、ヴィクトリアの兄であるマルスが筆頭で私たちは原生生物の星エヴァースを取り合う仲でした。」

「ヴィクトリアの……兄。」

「はい。当時、アレスは既に滅びのカウントダウンが学者の内では示されており、4つの国家エランズ、ミラーマーズ、オリンパス、ヴィケールによるエヴァース降下競争が繰り広げられていました。タイタンはオリンパスに協力し、アポロンはヴィケールに協力するという形でそれぞれの4ヶ国はエヴァースに植民地を作りました……実験隊と呼ばれる最初の降下隊メンバーが、私たちでした。」


「実験隊……」


「……しかし待ち受けていたのはエヴァースでの覇権争いです。ヴィクトリアはオリンパスに拾われた身でした。エヴァースに降下してシャングリラを作りました。」


 エヴァースでかつてあった事……それが今のアポロンにつながっていると……


「アレスの耳長人は遺伝子を操るのが得意です。それがヴィクトリア達エルフの正体……」

「……なるほど。」


 植民地開発のためだけに作られた種族、っていうことか?


「ヴィケールの作った国家はクトニオス。奴らは悪魔と呼ばれる生物ディアボロスを作り出し、フルーブレムを襲わせたりなどそれはもう見るに耐えない覇権争いでした。」


「……ディアボロス……オーランが封印したって言うやつか。」

「……知っていましたか。」

「ああ。オーランとは直接話した。」

「なるほど。彼らはまだ生きていましたか……彼らには申し訳ないです。本当に。」


 ニケの目からは一粒の涙が溢れる。

 ニケもやっぱり何かしらの事情があってアレスへと帰還した。オーラン達をおいてきた事自体は本心ではないと言うところだろう。


 というか、ニケは昨日の記憶忘れてるっぽいな。



「私に対して、何か言っていましたか?」

「オーランは自分が所詮道具だった、と言うところには気づいていたぞ。」

「……そうですか。そうですよね……」


 ニケは涙を流す。



「知っていました。私だって、本当は作りたくない。戦争したくなかったのです。でも、神器を作らなければ、オーラン達を生み出さなければ本当にシャングリラは滅んでいた……そうなのです。あの力が……無いとダメだったのです……」


 そのまま顔をその青い手で覆う。

 ニケもどちらかといえば心がないような人に感じていた。

 でも、実際は違った。しっかりとした人間だった。



「私は……彼らの創造主として最低です。」

「……戦争を好まないから……貴方は逃げた……ってこと??」


「少し違います。シャングリラが天下を取り、テトラビアになった時には私は病気で、余命1年でした。オーラン達と別れた時、既にそういう状況だったのです。なので私はハシラビトになる事を選びました。最低だとは分かっていました……我等的に言えば育児放棄……。そのことを伝えることもできず、私は今まで生きて来ました。」


 ニケはその手で涙を拭う。

 ニケが戦争嫌いだったから、とかではなく単純に彼らの元を離れたのはそういう理由だったのか。


「なるほど……3000年以上前のタイタンでのアポロンとの戦争の時も、ニケの力があれば負けなさそうな気がしたが、そもそも死の間際だったのか……」

「はい。その通りです。私の力があれば恐らくタイタンは滅びなかったでしょう……」



 ニケは創造主としては最低かもしれない……それでも、自分自身と戦い、やれることをやった。立派だと思う。



「ニケ。今まで勘違いしていた……ごめん。」


 俺はニケを憐れむ様に見つめる。


「いえ、謝る必要はありません。寧ろこのことをオーラン達に伝えてあげてください。それだけが私の未練です。」

「……分かった。」


 ニケの為にも、絶対に勝って、テトラビアに帰ろう。

 俺はそう決意するのだった。


 ーーー


「さあ、着きました。アレスの地下最奥、コア環天体です。」


 SFで見たことがあるような超巨大な施設に入って行ったと思えば、翠教の使徒と思われる人が大勢立ちはだかった。しかし全てエマのクレオールの力や俺の重力の力で一掃できた。

 その後、俺たちはエレベーターを使って下層にまでこれた。


 その地下奥深くにあったのはもう使用されて無さそうな超巨大施設だった。


 ニケが指差す先にはまるで太陽のような、光り輝く巨大な球体があった。

 いや、その光り輝く球体は更に大きい卵の殻のような装置で覆われている。

 まるで、恒星そのものを覆う様にして恒星からエネルギーを利用するための装置……地球にいた時に見たことがあった、実現不可能とさえ言われているダイソン球……その小さい版のようだ。でも、もう使われて無さそう。



「こんな装置が……実在したのか……」

「はい。これこそが奴らの技術……ですが既にここは捨てられた施設の様ですね。」

「人一人もいないね……」


「……いや……逆だ。ここに入る事ができるのは我と、使徒長のみだ。」


 どこからか声が聞こえてくる。


「誰だ!?」


 俺たちは辺りを見渡す。


「懐かしいな……ニケ。」


「……貴方はまさか!?……マルス……ですか?」



……俺たちの目の前に現れたのはアポロン。そのアポロンに対してニケは確かに、マルス……と聞いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ