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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第六章 ココ 宿る場所
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第058話 戦争と教祖の責任感

 ミカのいた場所にはテトラビアの権利の証と、リンドウから貰ったテトラピアへのペンダントが静かに落下する。


「……ありがとう。ミカ。」


 俺はまだ泣いていた。

 そんな中ニアは歩き出し、ミカの権利の証を取る。


「エマさん。ありがとうございます。また私をラヌーの姿に戻してください。」

「……分かった。」


 ニアは最後にミカの権利の証を握る。


「私はこの世界のミカに。この権利の証を届けてきます。ラヌーとして……ミカの大切なラヌーの、ペールとして……」


 ミカの心が宿った権利の証を握って自分がするべきことが分かったのだろう。いや、元から分かっていたのだろうか。

 それはよくわからない。



「ヘイルさん……短かったですが、またこうして出会えて良かったです。」

「……!!」


 ニアの姿形は小さな光と共にラヌーへと戻る。

 そのラヌーはミカの権利の証を持ったまま、その地下室、教会から抜けていく。


 エマは残った、リンドウから貰ったテトラピアへの権利の証を拾う。


「……さて。ミカの願いは……戦争は終わった、のか。」


 ヘイルの持っている携帯のようなものが鳴る。



「……私だ。どうした?」

「リエです。空に異常気象を確認しました。少なくともエランズ側は戦争を一時中断しようとしています。」

「……そうか、ありがとう。」


 ヘイルはリエと連絡を取ったみたいだ。もう、既に杖の効果は発動しているらしい。


「色々とすまなかった……」


 ヘイルは俺とエマに頭を下げる。


「謝るのはヴィケールとアポロンをぶっ潰してから、だろ?」


 俺はヘイルに手を差し伸べる。



「そう……だな。ミカの願いを無駄にしないようにしよう……」

「俺とエマはアポロンをやりに行く。ヘイルさんはあの司教を探して、倒してくれ。間違い無く翠教こそが敵だろ、杖を持っていた訳だし。だから、敵は明確だ。」


「……アポロンを直接叩く気……なのか。」

「勿論。アポロンを倒して、アレスへの最後の介入を阻止してアレスは自然な形で滅んで貰う。それが理想だろ?」

「……それこそが理想だ……。頼んで、信頼しても良いんだな?」

「勿論。」

「私たちは魔王にだって勝った。きっとできるよ!」

「そうか……分かった。私は私としての責任を果たす。」

「頑張ってくれ。」


 俺とエマは互いに見て静かに意思を確認する。


「行こうか!樹!」

「ああ。」


 俺とエマは杖を後にして教会から出る。目指すは理不尽にこの星を脅かす、アルテミスからの使者、精霊族(アポロン)を倒す為に。




「しかし、このヴィケールっていう国はすごいな。」

「そうだね!」


 ヴィケールは砂漠国家のミラーマーズと、海洋国家のエランズの下にある国家だ。

 オリンパスはエルフのような耳長人と土竜人による共同国家。それに対してヴィケールは土竜人と魚人による共同国家といった感じだ。昨日の夜聞いた話だと、元々あった巨大な地下空間に、2国の難民などが集まって出来たようなそんな国家のようだ。


 このオリンパス含む4国はアレスの中でも数少ない5000年前から存在する国家で、それ故にエランズとミラーマーズは核保有国というわけだ。


 ヴィケールの中央都市ユーノーは見えないほど先、数百メートル先にある天井とこの地底の地面まで立体的な洞窟による街が築かれている。その街の様子はまるでソアロンで見た乗り物イータルと同じような構造で浮き、バランスをとっているようにも感じる。

 光源は特殊な鉱石のようなものが光り輝気、常に明るい。


 街からして、軍事力とかそういう技術は低い、けど証の力……そう言ったものはしっかりと持っていそうな雰囲気だ。


「この大穴、超古代に土竜人がここに住んでいた、とかなのかもしれないね!」

「そんな気がするな。」


 ここが土竜人のルーツなのかもしれない。



 さて……アポロンをどう見つけるべきか。


「杖は2日後に取りに帰れば良いよな。」

「そうだね。確か3日くらい続いたんだよね、あの嵐!だからそんな感じだと思う!」


 最悪忘れていても恐らく回収するのはどんな歴史でも俺たちだ。そんな時にはきっと因果力が働くに違いない。



「とりあえず、コア環天体に関して情報を探すか……そこに光の精霊族がいる可能性が高いだろうし。」

「そうだね!」


 俺とエマは丸一日かけてヴィケールを調査する。

 しかし、案外コア環天体のことは街の人は知らず、本当に秘密裏に翠教が暗躍しているだけ……のように感じる。少なくとも庶民が知っているようなことではなかった。




「……残り2日か。」


 俺たちがアレスに来てから、2日が経った。

 1日目は火事を消し、ヘイルと出会いメーテールで夜を過ごした。

 2日目はミカと別れ、ヴィケールを調査して終わった。

 3日目が今日だ。


 1日目の段階で明日には嵐が起こるとミカが言っていたので、その点は間違い無く正しく歴史が動いている。

 また、1日目の段階で4日後にアレスが滅亡するということをヘイルは言っていた。3日後に核兵器を使う予定とも。


 つまり今日、アレス的にいえば翠史3842年7月18日。から見れば、明日の19日に神山教による核兵器投下作戦が起こる予定だったわけだ。そして太陽風照射は20日から21日頃といったところだろう。


 ヘイルはアポロンより先にアレスを滅ぼしてやろうという事だった。それは恐らく人工衛生国家アルテミスにヴィケールのものを持ち返さない為ということも含んでの決断だったのだと思う。


 そんな核戦争はミカの手によって、杖によって終わった。



 俺たちが核戦争をやめさせるという判断をさせたんだ。だから当然、それ以外の方法でアポロンには直接ダメージを与えないといけない。



「今日中にはコア環天体を見つけ出すか何かしないとやばいね……!!」



 こんな時に頼れるとしたら……


「ニケか。ニケならコア環天体の場所がわかるんじゃないか?」

「確かに!!」

「てか、呼んだら来そうだな……」

「来そうだね……」


 俺は冗談っぽく言う。エマも笑っていた。

 そんなことを言っていると俺たちの前に光が現れる。


「はい。私はニケ。『荒びの鐘』のハシラビトであ……」

「あ、もう良いです知ってます。」


 俺はまた顕在したニケに対して雑に扱う。

 定型文なのかこれ。


「すみません。ですが私はあなた達のことは詳しく知りません。一体何の用ですか?」


 ニケ側ではすでに因果力が働いているみたいだ。昨日の記憶がもうないらしい。


「ああ。コア環天体の場所を知りたいんだ。『荒びの鐘』の力でわかるか?」

「なるほど……勿論わかります。少しの間しか顕在はできませんが、ご案内します。」


 顕在したニケはそう言って俺たちを先導する。


「初めからこうすれば良かったね!」

「……確かに。昨日勿体ない時間を過ごしたな……」



 * * * *


 樹とエマが出ていったその教会で、きっと帰ってくるであろうその男を待っていた。



 私は親として、神山教としての責任を果たす。そう心に誓い右手を握る。

 あの二人がいなくなった教会の地下からは杖から放たれるエネルギーを感じられる気がする。


「ようやく一人になったか……」


 そのミトラを被った男は肩を鳴らしながら物陰から現れる。


「やはり隠れていたか。貴様。」

「しかしヴィケールを……アポロンを潰すだなんて馬鹿な奴らだな。無理に決まってる。」


 呆れたように翠教の司教は呟く。


「無理じゃない。私は彼らを信じる。ミカが選んだ彼らを……」

「愛の力で解決できる程光の精霊族は甘くない。アポロン……奴は神だ。」


 この惑星系の恒星ヘリオスで生まれエヴァースの人工衛星国家アルテミスに住む種族、光の精霊族こと、アポロン。

 最高指導者さえ倒せれば全てが終わる。最高指導者以外はまるで人形の様な振る舞いをし、最高指導者がいなくなれば新たな指導者が生まれる……らしいが指導者の意向で全てが変わる為、代替わりの影響は相当大きい。


 今の最高指導者さえ彼らが倒せれば、残り数日でもアレスへの介入は変わるはず。



「私にとっては、彼ら……樹とエマが神だ。こんな愚かな私に、慈悲を、可能性を分け与えてくれた。彼らを神と呼ばずして何と呼ぶ。そんな神が邪神を討とうとしている……私にもやるべき事がある!!」


 私は銃を取り出しそのままその司教めがけて放つ。


「自分で神山教を復活させておいて、その信仰心に背くとは信じる者として失格では?」

「関係ない。もう、全てを捨てたんだ。」

「そうか……」


 その男は軽々と私の弾を避ける。


「だが……力が入りすぎだ。一度受けた弾だ。もう避けられる。」

「くそ……」


 私は確かにさっきあの男の心臓部を撃ち抜いたはず……なのだ。

 そんな軽々しく避けられるほどの力は残っていないはず。むしろ痛みで動けないほどな筈なのだ。


「一体どうやってあの状況から生き残った。」

「神の力さ。このミトラ……アポロンから授かりし……アポロンの力。アポロンが生きた証。この『光源の証』の力さ。」


 アポロンが……つまり光の精霊族が生きた……証。それが……証。


「なるほど……さっき見せた光の矢をうまく変形させて……心臓部を塞いでいるのか。」

「今更分かったところで、もう遅い。消えて貰おうか。」


 ミトラに触れ、私めがけて今度は銃の弾丸になった光が飛んでくる。



……その光は、私の腹部を貫いた。

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