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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第六章 ココ 宿る場所
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第053話 死こそ完成

「……大丈夫か?ミカ。」

「うん……テトラピア……か。」


「……テトラピア、テトラビアに名前そっくりだね!」

「ペンダントも似てるし何か関係あるかもね……」


「そうだね……!」


 ミカはそれでもまだ悲しそうな、迷っている雰囲気を見せる。


「……もしかして……あの人のところに行きたいのか?」

「まあ……少しはそんな気持ちがあるかな……」


 俺はミカの頭に肩に触れる。


「……俺はミカの前世の従兄にすぎないから、俺たちのことは気にせず行っても問題ないぞ。」


 俺は悲しさを隠す。せっかくまた真緒に会えたのに……悲しくても決定権は彼女にあるから。


「そうだね!あの人に会ったことで、考えが変わったのなら、追いかけたいなら追いかけていいと思うよ!!」


 俺とエマはそれぞれミカに伝える。

 ミカはリンドウという男から貰ったそのペンダントを握りしめる。


「……大丈夫。私はお兄達についていく!!一度決めたことは変えないから!!安心して!!」

「……そうか。」


「じゃあ、メーテールに行こっか!!」


「あ、その話なんだけど……あの剣士さん……リンドウさんが私の元から離れたってことはもう、一週間も無いかも……」

「そうなのか。」

「うん。記憶が正しければ、明日には嵐が発生して……そのまま数日くらいでこの星は滅亡する……」


 残りのタイムリミットはもう少し……いや、一応テトラビアに戻って、過去に行けばもっと伸ばせはするが……それはメルト達に余計な負担になる。控えた方が良さそうだ。


「……そうか。じゃあ、一旦ニケを訪ねる……っていうのはどうだ??」

「そうだね!ニケさんのところ訪ねたら何か情報を得られるかも!!」

「行こう行こう!!私も会ってみたい!!」


 俺は重力の証を使ってミカとエマを浮かせてオリンパスの山頂へと向かう。


 ーーー


「そういえば、ニケって結局はフランとオーランを育児放棄した人ってことだよね……」


 山頂に向かって飛ぶ最中、ミカはボソッと呟く……


「ミカちゃん……!?まあそうではあると思うけど……」


 エマは驚いて苦笑いしながらミカのことを見つめる。


「まあ……一応本心としては連れていきたかったんだろうけど、無理だったっていう感じだろうな。」


 ニケ自身の本心はわからないが、オーランから伝わってきた記憶だとそんな気がしている。

 何かしらの事情で子供達を置いて行くしかなかった、それがニケだ。



「まあ、それも全て聞けばいいんじゃない??本人に会えるんだし。」

「そうだな。」


 俺たちはそんな会話をしながら山頂へと向かった。折角だったらあの時にもっと聞いておけばよかった……と後悔しつつ空を飛びながら山を登って行く。



「……山頂に、何かあるぞ。」


 5年後には無かった……建物だ。


「あれってもしかして!!」


 エマがその教会のような建物を指差す。


「うん、神山教の建物……かも。」

「5年後には無かったじゃないか……」


 俺たちは近くの岩陰に隠れる。

 間違いない。この標高はそこそこ空気が薄いし、5年後には痕跡すら残っていなかったのに。

 この世界の技術力……という感じか。


「人がいるぞ……」


 俺はその岩陰で呟く。


「あー、はいはい。エランズとミラーマーズが戦争を起こしたと……了解。」


 その男はその建物の前で電話を切る。その声は俺たちにはほとんど聞こえなかった。

 メガネの様なAR機器……の様なものを使って電話をしていた様だった。

 服装はいかにも悪そうな宗教団体……と言った感じな気がする。


「……神山教といえば、ちょっと前に復活したばっかりの宗教で、あんまりいい噂は無いんだけど……どうする?お兄達。あの建物、侵入してみる?」

「……行ってみるか……戦争っていう言葉が聞こえた気がするし、何か情報が掴めるかもしれないしな。」


 ここはテトラビアじゃ無いから悪いことをしても魔法統括システムみたいに一瞬でバレることはないだろう……。

 侵入は悪い事だけど……もっと悪い事を彼らはしてそうだし宗教施設なんて神器の情報が得られそうだし……。



「建物に入ったよ!!」

「よし、追うぞ。」


 俺たちはニケに話に行く前に、その神山教の男を追ってその建物に侵入することにした。

 男は更に奥の部屋へと入って行った。多分教会の奥……



「これ以上は無理そうだね……」


 エマが小声で言う。


「ああ……」

「もっと近づかないと何も聞こえなさそう……どうするお兄。」

「……こんな時の為の俺のこれだ。」


 俺はピアスを二人に見せながら、向こうの部屋に聞こえない様に小声で話す。


「感覚の証ね!!じゃあ樹に任せるね!!」


 了解。と俺はエマとミカに手でサインを送る。

 俺は耳に意識を研ぎ澄ます。


「神山教が再び出来て、世界の再創造の話が出て……早5年か……」


 世界の再創造??


「予定通り、エランズとミラーマーズの戦争は始まったみたいだ。」

「そうか……情報統制の方はどうなっている?」

「はい。現在国民は誰一人として太陽風や神など信じておりません。それに、信じたとしてもSNSに書き込めば馬鹿にされる……と言った風潮が出来上がっています。洗脳は順調です。」


 洗脳……誰も国民は太陽風のことを知らないのか?


「なるほど……わかった。」

「教祖様……本当によろしいのですか??教祖様自身……お子様がいらっしゃるのでしょう?」

「ああ……私には娘がいる。愛する一人の娘だ。だが……私は、人々が無知で死んでこそ意味があると思っている……これしかないのだよ……決断は。」

「しかし……よくこの星を滅ぼそうと思ったな。教祖さんよ。」


 星を、滅ぼす?だと。何を言っているんだ……この人達。


「……神山教は平和の為にある。死こそが完成であり、平和である。」


 彼らは何を言っているのだろうか。意味が理解できない。

 しかし、とりあえずこの人たちは悪いことをしようとしていると言ったところだろうか。


 ……もしかしたら、太陽風によって滅亡する……というのは人工的な力なのか?その可能性も考えられる。



「……因みに、火山の噴火はどうだ?」

「オリンパス山はあと5年もしないうちに噴火するさ。」

「そうか……分かった。」




「それでは……この場は解散とする。残された日々を……」




「ふぇっく……しょん!!」


 ミカは俺の横で豪快にクシャミをした。高い山の上だからか、寒いからだろうか。


「誰かいるのか!!」

「まずいよ!!逃げないと!!」

「おい!!」


 さっき電話をしていたあの男が扉を勢いよく開ける。



「……ん?誰もいないか……?」



「ちょっと寝てろよ〜ごめんね〜。」


 俺は重力の証でその男を地面に叩きつけ、そのまま打撃で気絶させる。


「何者だ。お前達。」


 その部屋を覗くと教祖様……と思われる男と、もう一人女が居た。

 どちらもマントを深く被っており、やはり悪そうな宗教団体といったイメージの格好をしている。

 俺は一応剣を抜いておく。エマとミカもそれぞれ戦闘準備する。


「……俺たちはただの旅人だ。何やら声が聞こえてきたからな……話をある程度聞かせてもらった。」


 時間的に逃げることはできなかった……なら戦うしかない。


「旅人……か。何が目的だ!!」

「それはこっちのセリフ!!神山教!!」


 エマはその教祖らしい男に対してそう言い放つ。



「まあいい……何が目的だろうが、お前達は何をすることもできないからな……」

「太陽風による滅亡……それに乗じて何かする気なんだろ?」

「ああ。冥土の土産に教えてやってもいい。それにお前達……その服と姿じゃアレスの民じゃないだろ。テトラビアからきた旅人だと思われるしな……」


 その教祖は俺たちのことをテトラビアの人だとしっかり理解していた。


「おお?気前良く教えてくれるんだな……」

「良いのですか?教祖様。」

「良い。所詮バレたところで、エランズとミラーマーズの戦争は止められない。」



 戦争。やっぱり今、このアレスでは戦争が起こっているようだ。



「残り4日でこの星……アレスは滅亡する。だから我らは3日後に核融合兵器によるアレス滅亡計画を実施する……それを我々は世界の再創造の為の滅亡戦争と呼んでいる。」

「何の為にそんなことを!!」

「死こそ……人の完成なのだ。死んでこの神なる山に帰ることこそが完成なのだ。その為に我々はこの星に住むすべての人を殺す。太陽風になんて……奴らになんて殺させない。」

「……どうして!!」


 ミカは俺たちの影から訴える。


「宗教として……我々は我々なりのやり方を遂行するまでなのだ……そうでもしないと……」


 彼らにも何か訳があるのだろうか……



「まあ良い。何をしたところで、結局4日後にはこの星は滅びる……我々にすら……その運命は止められない。」


 その教祖の男は俺たちに驚いて立ち上がっていたが冷静になってまた椅子に座る。



「神山教の人……戦う気は無いの?」

「戦う必要なんて無い。我々を殺したければかかってくるがいい。殺したところで、3日後の核による滅亡も、4日後の本当の滅亡も止められん。」



 俺はその声を聞いて剣をしまう。

 教祖の男とその女はフードと仮面を取る。


「どうだ……旅人よ。どうせ滅ぶんだ……ここで世間話でもしていくか?」


 その二人はそう言って入り口に屯っている俺たちをその部屋の席へと誘う。

 男は土竜人、女は魚人の様だ。



「待って……お父さん……なの??」




……ミカはその男の顔を見て、震えながらそう呟いた。

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