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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第六章 ココ 宿る場所
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第049話 過去へ

 翠史3840年……ある日。


「我々の計画は滅亡……いや世界の再創造だ。調子はどうだ?」


 暗い部屋にその機械音のようなノイズが乗った通信の音は響く。


「自国エランズ含め各国への手配は済んでいる。あとは例の日に発動するだけだ。」

「エヴァースへの介入はどうだ?ヴィケール。」

「無理だ。奴らは5000年以上、我々との外的接触を拒み続け……127回もの降下作戦を行なったがエヴァースへは立ち入りすらできていない。」


 その暗い部屋で、その通信を聞いて呆れた感じで男は答える。


「そうか。オリンパスはどうだ?アレス唯一のテトラビア接触国として、動けるか?」

「テトラビアには未来を見通す魔法統括システムがあるという噂、移住には権利の証が必要になります。侵略、及び移住は不可能かと。」

「そうか……」


「残された日々を、正しく使おう。貴様らは、神に……我が選んだ救われるべき人達だ……悪しきテトラビアを滅ぼす為我のままに従え。健闘を祈る。」


 その通信の音声は切られた。


 * * * * *


「カーラちゃん!これ!!」


 エマはそう言ってカーラに像を見せる。


 メルトは統括署に用事が出来たみたいで途中で別れ、俺たち3人はオーセントまで帰ってきた。

 昨日はオーセント一番の宿で一泊し今日は扉まで来た。


 次の行先は過去のオリンパスになる。


「これは!!破損した祭壇の像、見つけたんですね。」

「西の遺跡で、色々あって手に入れた。」


 俺はカーラのことを見つめながらそう説明する。


「……そうですか。この祭壇の欠けている部分は残り1つですね……」


 カーラは祭壇に視線を送る。その表情はどこか暗く、悲しそうだった。


「きっと残りの一つも手に入れてみせるから!!ね?そうでしょ!お兄たち!!」


 ミカはそのカーラの表情を見て元気付ける。


「そうだな。俺とエマは勿論カーラの為にも残りの物も探すつもりだ。」

「そうだね!扉の祭壇は残り時間と次元の2つがなかったはずだから、手に入れたら別の次元にも行けるようになるかもだし!私たちにとっても重要だね!!」

「……ありがとうございます。私の思いの為にそこまで動いて頂けれて……」


 カーラは俺たちに頭を下げる。


「ところで、この像、どっちにおけばいいかな……」

「多分この北西側ですね。」

「ありがとう〜!」


 エマは北西側と北東側にある像がない祭壇の内、北西側の上にそのフランが持っていた像を乗せる。

 その像はピッタリはまった。



「これで時間移動ができるようになるのかな。」

「さあな……もしかしたら次元の方かもしれないが……」


 ミカは目を光らせながらその様子を見届ける。


「……出来ます。時間操作が出来ます!」


 カーラはその修復された祭壇に手を当てて魔力を流し込んで確認し、俺たちの方を振り向いてそう言った。その目はキラキラと輝いていた。


「おお!!」

「やったね!!樹!」

「じゃあ、次元の祭壇は北東側の祭壇ってことね!!」


 俺たち3人はそう言ってハイタッチする。


「……ですがこの時間を操る力を容易には使わせれないと思います。時間移動は歴史改変につながります……それに、時間を越えて帰還申請が出せるとは思えません……」


「確かに。帰還申請どうするんだ……」


 俺たちはカーラに言われて納得する。


「……お待たせしました。遅くなりました!」



 その声とともにメルトは俺たちの前に現れる。


「メルト!統括署に用事があるんじゃなかったのか??」

「メルトお兄!!おかえり!!帰って来たってことは調査員になるの!?」


 ミカはまたメルトに聞く。



「いや、違う。僕はここの扉を統括者として任されることになった……それと。」


 メルトは俺たちに近づいて来て、3つのチェーンを手渡す。


「……これは??ペンダントの……チェーン??」

「『時空の証』だ。これに『権利の証』を取り付けて、身につければ時空移動を伴った帰還申請が行えるようになる……らしい。魔法統括システムによると。」

「なるほど……!いいね!!」


 エマは早速それに『権利の証』を取り付けて俺の方を見る。


「……かけて!」

「わかった。」


 エマは俺にペンダントを渡した。


 俺はエマの首にそっとそのペンダントをかける。その新しくなった金属のチェーンになったペンダントは、色合い的にも今のエマによく似合っていた。


「……あ。このチェーン、私のと同じじゃん!」


 ミカはそう言って俺たちにペンダントを見せる。


「本当だ。」


 『権利の証』をぶら下げるための紐やチェーンは人によって違うし、規定もそもそもないのだろう。ミカのは元々『時空の証』……のようだった。


「なら変えなくていいですね。」


「そういえばミカ、お前ってどこでそのペンダント手に入れたんだ?」

「ん〜、私は落ちてたペンダントを拾ったら、偶然テトラビアのやつだった……って感じかな。」


「……おいおい、落ちてたって……」

「……ま、まあいいんじゃない?ミカちゃんらしいし!!」


 よくは無い。がまあ気にする必要も無いか。

 また魔法統括システムに捕まるとかあったら大変だけど……



「それで、僕は今日から統括者としてこの扉の時空移動に関して任されることになりました。よろしくお願いします、カーラさん。」

「……よろしくお願いします。メルトさん。」


 カーラとメルトは握手を交わす。


「そういうことか。統括システム側から時空移動させるかどうかとか、制御する為に統括者を巫女の横に置くってわけか。」

「……多分そうですね。」


 メルトは苦笑いしながらそう言った。あまりわかってないらしい。

 それはそうか。統括者もあくまで魔法統括システムから使命を受けているだけで、振り回されている側だ。気持ちはわかる。

 しかし魔法統括システム、本当に何もかも出来事を把握しているな……


「じゃあ、早速一つ目の仕事だな。」

「そうだね!私たち、5年前のオリンパスに行きたい!」


 メルトの元へと紙が降りて来る。


「魔法統括システムからの許可が降りました。お願いします。カーラさん。」


 メルトはその紙をカーラに見せる。許可証と、操作の仕方が書かれているのだろうか、カーラはそれをじっくり見てから各祭壇を操作し始める。


「……準備ができました。5年前のオリンパス、アルカスのアクセスポイントへ接続ができました。」


 その扉はいつも通り開いて、渦巻く内部が現れる。その渦の色は若干変わっている気がした。


「……いいんだな、ミカ。嘗ての故郷に……行くぞ。」

「大丈夫!もう怯えたりしないから!」


「それじゃあ、行って来る。またなメルト!カーラ!」

「行ってきます!カーラちゃん!」


「行ってらっしゃい。」



 俺たち3人は……遂に過去へと向かった。




「ついたぞ。5年前のアルカス!!」

「来たねぇ!!遂に!!」


 ミカはその景色を舐め回すように見る。

 まるでソアロンと変わらないような機械や交通網が発展している文明レベルで、空には飛行機が、地上には変わった形をした車が……且つ都市の様子はフルーブのような立体感があった。


「生きてる!動いてる!栄えてる!!懐かしい!!!」


 ミカは感激で泣いている……


「やっぱり、連れてこない方が良かったんじゃ……」

「冗談冗談!わかってるって!私はただ若干懐かしさを感じただけだから!お姉!!」


 ミカは心配するエマの元へ急いで駆け寄ってそう告げる。


「本当……?無理はしないでね……」

「大丈夫大丈夫!!オリンパスは故郷でもアルカスは私の故郷じゃ無いし、辛くならないね〜!」

「この巨大都市アルカスが故郷じゃ無いのか。」


 よく見ると生活している人はミカと同じような茶色い髪・変わった爪を持つ土竜人っぽくは無く、黄色い髪をしたまるでエルフのような姿をしていた。


「そう。この星、アレスは主に三つの種族がいる!一つが耳長人!もう一つが土竜人!最後に魚人!」

「三種族が生活する……惑星か。」

「そう、耳長人は地上を支配する、兎みたいな種から進化したエルフみたいな人間!土竜人はその名の通り地中を支配してる土竜みたいな種から進化した人間!魚人は衛生国家タイタンの生き残りだね……」

「へ〜!三種族、仲良く暮らしてるんだ!」

「タイタン……生き残りなのか?」


 タイタンの魚人といえば、ニケやアルトポリスにいた人達だろう。


「衛生国家タイタンは3842年前に崩壊しちゃってね……すめなくなっちゃったみたい。それでアレスやテトラビアにいる感じかな……」

「……3842年か。翠史……だっけ。それと一緒か。」

「そう。3842年前、太陽に住む光の精霊族の生き残りと戦争して、相打ちになった結果タイタン文明は崩壊して、アレスに来たんだってさ……」


「文明同士の交流が始まったから、そこから歴史が数えられてる感じなのかな!」

「オリンパスの学校だとそう習うね!」

「ミカちゃんはちゃんと記憶してるんだ!」

「勿論!お兄と違ってね!!」

「……うるせぇ!!」


 やめろ。古い記憶が蘇ってくる……中学校くらいの記憶が。


「魚人は生き残ってるけど、光の精霊族……は今生きているのか?」

「多分全滅しちゃったと思う……学校ではそう習ったかな……」

「そうか。」


「それじゃあ、私の故郷に行こうか!!メーテールに!」



……その裏で、確かにその計画は進行していた。

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