第046話 巨大渓谷の調査
「どうやって降りて行くつもり??」
この渓谷は底が見えないとはいえ所々、崖沿いの家という感じの痕跡が複数ある。イメージするならばマンションや団地を上から見下ろしているようなイメージだろうか。
「ここを降りるのならば、ロープが必要、ですかね……」
メルトはその渓谷を覗き込んで言う。
「まあ、何とかなるだろ。飛べるし。」
俺は右拳を握って重力の証を使い、メルト達を空中に浮遊させる。
「何です……これは?」
「これはお兄の重力操作だね!!」
いい反応をメルトは見せてくれる。
「これがあれば、渓谷を降りて行くなんて簡単だし、登るのだって行けるな。」
「今回は重力の証に助けられそうだね!!私の力は要らなさそう……」
メルトが同行してくれるし、エマのクレオールの力は飛行能力があるとはいえ、対応しづらい。
今回は調査に専念してもらおう。
「じゃあ、まずは一段下まで行こう!」
「おー!!」
ミカは俺の言葉に元気よく拳をあげて反応する。
俺は自分も反重力で操作して、一つ下の層へと入り込む。
「ここは……?」
「西の遺跡の地下……みたいだな。」
目の前に広がるのは長く渓谷が終わるまで続くように繋がった建物の残骸。
所々木々の根や蜘蛛の巣などが張っている。一面土がかぶっている。
「じゃあ、みんな一応採掘する時用にこれ!」
俺たち3人はエマから何かが描かれた紙を受け取る。どこにしまっていたんだ……気づかなかった。
「これは?」
「風魔法ローウィングと、長さ測定魔法レングス、要素・年代測定魔法リサーチの使い方!!」
「テトラビアの遺跡調査資格の過去問で見た事があります。この3つで主に発掘して調査していくと……」
メルトが付け加える。どこまで行ってもこいつは優秀そうなやつだ。とはいえそこまで知識があるのはもはやありがたいレベルか。
「そう!何か問題あったら言ってね!ああ、あんまり離れないでね。崩れて事故に遭っても困るから!」
「はーい!」
「それじゃあ、調査開始!」
ミカは元気よくエマに挨拶してそのまま一人で進んでいく。
最悪ミカはその爪で掘ることができるから埋もれる心配はないだろう。
「相変わらず元気いいな……ミカは。」
「前世でもああだったの?……その真緒さんは。」
「まあ好奇心旺盛な、困る奴ではあったな……だけどその元気さにはいつも助けられてたよ。」
「そっか……いい従妹だね!!」
「そうだな。」
俺とエマは奥で魔法を使おうとして失敗するミカの事を見ながらそう話す。
「おーい、エマさん。これ、何ですかね……?」
「どれどれ……?あー壺か!!」
「なんか書いてありますよこれ……」
「そうだね……どうにか解読しないと……」
エマも案外仲良さそうにメルトと一緒に調査しているみたいだ。俺もこんなところに突っ立っていないで何か探すか……
「ねぇ、樹!これ見て!!」
俺が別の部屋で土をローウィングで飛ばしながら発掘作業をしているとエマが話しかけてきた。
「何かあったのか?」
「具体的にわかったわけじゃないんだけど、この壺に掘られてる文字!!」
エマから出土した壺を受け取る。
そこには確かに……『made in Evearth』と描かれており、その下のアイコンのような物、その下には『Farvalley』と書かれていた。
「エヴァース……」
「これ、ニケさんが言ってたエヴァースっていうこの星?のことだよね。多分!」
「……そうだろうな。」
「ニケ……?勝利の神ニケか?」
その話を横耳で聞いていたメルトが立ち上がって俺たちの方に来て聞いてくる。
「勝利の神……は分からないが、ニケはここテトラビアの神器を作った人。5000年前にいた人らしい。」
「……なるほど……ニケはテトラビアに古くから伝わる話、『聖剣の王』で出てくる勝利の神です。それかと思いました。」
「あ、それ!私も知ってる!!確か博士の部屋に置いてあった!!読んだことあるよ!!」
エマはまるで共通の趣味があることを知った友達のように興奮してメルトに話す。
古くから伝わる話……か。
「ソードっていう聖剣を持った神様で、邪悪な敵ディアボロスを封印したって話だっけ!!そっか、あれもニケって名前だったね!!」
「うん。」
「じゃあ、実話の可能性もあるかもな……」
俺はエマに壺を返してその場に座って、土がかぶった遺跡の地面を調査しながらその話を聞く。
「実話なんて、あるわけないですよ……だって邪悪な敵って、まるで悪魔みたいなやつですよ?」
メルトはどこかバカにするような感じでそう話す。
「魔族がいる世界だし、悪魔が居たって問題はないんじゃないか?」
「……確かに。」
「こっち来て、お兄!!」
そんなことを話しているとミカが奥の部屋から俺を呼ぶ。
「どうした?ちょっと待ってな。」
俺はミカの呼ぶ方へ行く。俺はその薄暗い遺跡の空間を歩く。
「これ、ここの設計図じゃない??」
ミカが見せる、その手に持つ石板のような物には『ファヴァレイ図』と書かれていた。
そこに描かれている絵は5層になっており、上から順に居住区、農園区、採掘区、研究区、最下層。という感じの絵の痕跡が描かれている。何とか、その区の文字は読めた。テトラビアの翻訳の力はやはりすごい。
「見た目もこの建物の雰囲気と、似てない??」
「そうだな……確かに……『崖型巨大施設。研究区からなら上面の開閉ができます……』か。間違いなさそうだな。ここの施設の設計図っぽい。」
「やったー!!」
「しかし……よく見つけたなこれ。」
ミカは俺が頭を撫でると燥いで喜ぶ。
「なんかここに本棚みたいなのがあったから、この先に何かあるかなと思ってぶっ壊した!!そしたら秘密の部屋があって、これがあった!!」
ミカは無邪気な表情で俺を見つめる。「にっ」とピースしていた。
俺の目線の先には確かに壊れた本棚と、入り口がある。
「おいおい……そんなゲーム脳で……」
「本棚後ろの秘密の部屋と、壺の中のアイテムはやっぱりロマンじゃーん?お兄?」
「まあ……そうだけど。」
謎解きゲームとかRPGとかだったら確かにそうかもしれないけど……
「ここ、一応重要な遺跡だからな……そこらへんは考えて行動しろよ~。ぶっ壊して崩壊したらどうするんだ……」
「……まあ……やり過ぎない程度に気をつけるよ……」
顔をポリポリと掻きながらミカは目を逸らす
「起こってからじゃ遅いからな。」
「……わかった!わかったから!!」
俺はミカを威圧するように顔を近づける。
「……頼むぞ。信頼してるんだからな……」
「……うん!!」
俺が後ろを振り向いてそう呟くとミカは嬉しそうに返事した。
まあ、突っ走りすぎる性格ではあるが何とかすれば制御は可能か……
「樹!ミカちゃん!そっちはどう?」
「ここの施設の設計図があったよ!!」
「お~すごいね!」
「どうやらここは5層で、ファヴァレイっていう施設らしい。」
ミカはエマにその図を見せる。
「……でも、なんか変だね。5000年前の石板にしては綺麗すぎる……かも。」
「まあ、インガニウムが生活の一部にあった可能性とか博士言ってたし、これにもインガニウム含まれてたりするんじゃないか?」
「確かに。神器と同じ成分なら長く保存できるかもね!」
ミカがそう言う。扉とかの神器は間違いなく5000年間姿を変えていない。つまりそれなりの強度や形を維持できる能力でもあるのかもしれない。
「リサーチ!!」
エマはその石板をリサーチにかける。
「……インガニウムはとりあえず見つからなかったけど……時間かければ見つかるかもしれない!」
「そうか。持ち帰って博士にでも調査依頼するか……」
「そうだね!そうしよう!!」
エマはそう言うと魔法陣を出してそこに石板を入れるようにしてしまう。
「な、何だそれ?収納魔法か?」
「お姉すごい!!ゲームのバッグみたい!!」
「あ、これ?これは図書館でチラッとみた本に書かれてたの。試してみたらできた!」
「なんて言う魔法だ?」
「古代魔法ストレージだよ!」
「古代魔法か……じゃあ無理だな。」
「えー私も使いたかった!!」
残念。まあでも、いくら魔法で道具をドラえもんのように収納できるとはいえ、魔法のある世界じゃないと呼び出せないだろうから便利ではあるけど使いにくさは感じるか。
それに、さっき紙を出したのもこの魔法か……
「おーい!!3人とも!!」
奥の部屋でメルトが呼んでいるのが聞こえた。
俺たち3人はその元へ向かう。
「ここ、ここから下層に行けそうだぞ。」
メルトが指差す先には階段があった。そこからなら重力の証無しで下層に行くことができそうだ。
「おお!ナイスだメルト!!」
「……お、おう。」
メルトは俺の言い方に困惑を見せる。
「この先はさっきの設計図だと農園区だね~お兄!!」
「そうだったな。」
「じゃあ、行こうか!」
……俺たちは、その巨大渓谷ファヴァレイ下層へと進んでいく。




