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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第四章 願いのカケラ
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第029話 記憶に在る者

 俺は、あの都市を……あのコロニーを救う為に、エネルギーを求めてテトラビアにやってきた。


「……この扉は……あれと同じか……」


 ……この、時計の針のような物こそが、俺の故郷を……救う方法のはずなんだ!!

 あれを入手する為になら、俺はどんな事だってする!!

 ……俺の元に、一枚の紙が現れる。統括者になって……何回目の仕事か。


「……次の仕事……テトラビア北西の地の調査……魔法大学旧校舎……か。」


 姉さん……俺は頑張っている。だから待ってて。

 俺はその紙を握りしめる。


 * * * * *


「……エマ……本当に、エマなんだな。」


 俺の目の前に現れた少女は、白髪青眼でありながら魔族のような衣装を見にまとう、そんなエマだった。


「私だよ……尊びの鏡の力で、人間に……聖女になっちゃったんだ。」


 その姿はあまりにも美しく、透き通っていた。



「……呪いは……?神器を使ったならば……呪いがかかるはずだ……」

「そうだね……」


 俺は、エマが紋章を出したので、それを見つめる。


「……呪い:生殖不可」


 ……そこに書かれていたのは、生殖不可……だった。



「あはは〜……私、子供産めなくなっちゃった!」


 エマは笑いながらそう言って頭をかく。

 まさか……そんな選択をエマがするだなんて。未来の証を使ってまで子供を産もうとした別世界のエマ……。それとは大違いな選択に俺は呆気に取られる。


「……まあ、それがエマが選んだ道ならいいさ。俺たちは相棒だからな……信じているぞ。」

「ありがとう!樹!!」


 ……リリー、いや別世界のエマ。この世界のエマは自ら君とは真反対に……子供を作らないことを選んだぞ。

 俺は空を見上げながらそう思う。



「……未来は、確かに変わるんだな……」


 俺は小さく呟く。


「ん?何か言った?」

「いや、なんでもない……」


「ところで、ユウはどうした?」

「……大事な用があるから……って。そうやって急いで帰って行ったよ!」


 ……まあ、何か思うことがあったのだろう。それにユウが、未来で産むはずの子供であるエマと接触し続けるのも多分良くない。別れとしては淡白だが……このくらいが多分丁度いい。




「おーい!!」


 そんな俺とエマがいる中庭部分に、ハガとシャガ、レイカが歩いてくる。


「……もしかして、エマ……?あなた本当にエマなの?」


 レイカ達は驚いた様子でエマのことを見る。


「エマだよ!私は月城エマ!!元々は魔族で今は人間!!」


 ……俄にも信じがたい、という表情を3人は見せる。


「……それ、カモフラージュじゃ無いよな……」

「カモフラージュをすれば……こうやってさっきまでの姿になることも一応、できるけど……」


 エマはカモフラージュをしてさっきまでの魔族の姿になる……


「できるんだけど、こうやって神器付近の反魔法結界に入ると解除されちゃう!!」


 エマは尊びの鏡があった場所の近くに行く。そうすると魔族の姿から、白髪青眼の人間の姿へと変化した。

 神器自体は壊れてしまったとは言え、反魔法結界は残っているらしい。


「……しかし……初代魔王ファレノプシス……よく倒せたな。すげーよ……エマ。いや、エマと樹!」


 シャガは俺たちの方を向いてそう言う。


「そうね。私たちもまだまだ力不足だと思わされたわ。」


 レイカもまた、そうやって頷く。


「あはは……それほどでも……」


 エマは恥ずかしそうに、笑いながら謙遜する。

 俺もそれを見て笑う。


「それで突然なんだけど私たち、旅に出ることにしたの。」


 ……予想外のことをレイカは言い放つ。


「ああ、俺たちは世界がこんなにも広いことを知った。だから、俺とレイカでこの広い世界をどこまでも旅して、いつか!エマや樹にも勝てるほどの力を手に入れてみせる!!」


 シャガとレイカはハガの前でそう言い放ったのだ。実の父親の前で。


「……いいのか?ハガさん。」


 驚いた俺はハガさんにそのことを聞く。


「まあ、我が子達と離れるのは寂しいですが子供の決断を受け入れるのもまた親の使命。私はこの子達を応援します。」


 そうやってハガさんは二人の肩に手を当てる。



「……また会えるといいね!!」

「会えますわ!!きっと!!」


 そう言って俺とエマ、レイカとシャガ達はそれぞれの道を歩み始めた。



「……さて……俺たちはこれからどこに行こうか。」

「……そうだね。まずは落下した創世の鉞の回収と、その納品かな。後博士に成果を報告しないと……」


 俺とエマは、中庭を後にして、崩れた旧校舎横の……魔王ファレノプシスが最後にいた場所あたりを目指す。

 ……そこにあったのは創世の鉞と……直径20センチくらい大きな、二つの魔石があった。


「……これって!!」

「……ああ。間違いない。初代魔王、ファレノプシスの魔石だ!!」

「私がブレイクコアで粉々に破壊したはず……」


 エマはそう呟く。


「何らかの要因でまた合体したのかもしれないな……でも、魔王として復活は流石にしなさそうだな。」

「……流石にまた復活したら今度こそ終わりだね!」


 俺とエマは笑いながら鉞と魔石を拾おうとする……

 俺の拾おうとした魔石は、その瞬間……小動物に盗まれた。



「……こーらー!!ネイビー!!それはその人の物でしょ!!取っちゃダメだって!!」


 俺の魔石を取ったウサギのような小動物……の後ろからその少女はやって来た。


「すみません、うちのラピーが……」


 ラピー?っていうのがこの小動物の種族名といったところか?


「可愛い!!!このラピー、ネイビーっていう名前なのね!」


 ……エマは屈んで……はそのネイビーと名付けられたラピーに触れる。


「こんにちは〜!!」


「キュウ〜」と嬉しそうにネイビーは鳴く。


「そう!!あとこっちはラヌーのペール!!みんな可愛いんだよ〜!!」


 その少女の後ろからラヌーという棘が生えた猪のような動物がのそのそと歩いて来る。


「ごめんなさい。その石、返すね!!」

「ありがとう!!」


 エマはそのネイビーに取られた魔石を受け取る。


「私はミカ!!ここから近い北の街アルトポリスで野菜売ってる!!よかったら買いにきてね!!!」


 ミカは手を振り、エマはそれに対して手を振る。


「ばいばーい!!」


 そう言って……その少女、ミカは俺達の元から帰って行った。


「元気な子だね!……でもミカ……どっかで聞いたことがあった名前な気が……」


 エマはそうやって頭を抱えて記憶を思い出そうとする……


 ……俺はその場で、呆気に取られていた……

 ……間違いない。俺は、あの子を知っている。




「……樹?どうしたの?」


 考え込む俺に対してエマは声を掛ける……


「……いや、何でもない。」



 ……誰なのかはわからない。でも、どこか記憶に……鮮明にある気がした。


「……戻ろっか!オーセントに!!」



 俺たちは帰還申請でオーセントに戻り、適当な宿を探して一夜を過ごす。

 次の日、俺達は研究所によってからヴィクトリアの元に創世の鉞を返すことにした。


 ……しかし。


「……ちょっと出かけています。次帰って来た時に報告でいいです〜!メアリー……って。博士ったら……あの人は本当にどうしようもない……」


 エマはため息を吐く。

 研究所に行くと鍵が閉まっており、扉にはそう書かれた張り紙がつけられていた。


「……博士留守にしてたのか……じゃあ仕方ないな。この魔石、研究所においては置けないな。どうしようか……」

「まあ、先に鉞を返しに行こう!!」




「……お待ちしておりました。お疲れ様です、エマさん。樹さん。」


 鉞を台座に挿してから命界へといくと、そう言ってヴィクトリアは俺たちを迎える。


「……それで……今回は何の用ですか?……報告しに来た、だけでは無いですよね?」


 ヴィクトリアは顔をあげてそう言いながら視線を送る。


「ああ。別世界の俺たちから聞いた。このテトラビアはもうすぐ侵略を受ける。そうなんだろ?」


 ……その言葉を聞いて、ヴィクトリアは軽く頷く。


「……知ってしまいましたか。そうです。この国はもうすぐ侵略に遭います。ですがそれを解決するのは私達ハシラビトではありません。貴方達です。」

「……やっぱり、そうなんだ……」


 エマは暗い表情でそう呟く。


「ですが安心して下さい。未来はいい方向に進んでいます。貴方達のおかげです。」


「……なら良かった。ヴィクトリア……次はどうしたらいい?」


 あくまでも俺たちはヴィクトリアや扉のハシラビトに言われてこの使命を実行している。

 だからこそ、ヴィクトリアに次の使命を聞く権利くらいあるだろう。


「……大丈夫です。好きなように好きな場所へ探しに行きなさい。ここから先は、私が介入する必要は無いので……」


 ……ここから先は自分たちで考えろと。そういう事だろう。


「……わかった。それはつまり、もう未来は粗方決まっていると……いう事だな。」

「……ええ。ターニングポイントは既に超えました。なので私は貴方達を信じます。頑張って下さい。」


 つまり、エマの覚醒……といっていたリリーの言葉は本当という事だろうか。

 ヴィクトリアは軽くお辞儀をする。


「……え〜……教えてくれても良かったのに……」


 エマは軽く愚痴をこぼす。まあ、情報を聞き出せないのであれば仕方がない。諦めよう。


「それでは、またお会いしましょう。」


 そうして俺たちは命界から帰る。




「……さて。本当にどうしようね……」


 俺たちは古城を後にし、とりあえずオーセントを歩く。


「昨日の子が言ってたアルトポリスに行ってみるのもいいかもな……」


 ……魔石、博士に見せようかと持ち歩いていたのに、これだったらレトーンから帰還した時にカーラのいる事務室の所の有料貸し出しロッカー、通称研究資金浪費ロッカーにでも入れておけば良かったかも……

 通称は今考えた。


「……おい、千歳 樹!月城エマ!!緊急事態なんだ……その魔石をくれないか?」



……その時、聞き覚えがある声が俺たちの足を引き留めた。

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