第028話 名前は花に刻まれる
「樹!!!!」
私の目線の先で、樹は旧校舎に力強く投げつけられた。
……普通なら死ぬような……そんな状況だ。
でも樹なら、不死の樹なら多分……大丈夫。私の相棒はこんなものでは死なない!!
「気にしちゃダメだ!!奴はまだ、暴走中だ!!!」
ユウが私に向かって叫ぶ。
「……え?」
創世の鉞はもうファレノプシスの元から離れたはず。
もう、創世の力は使えないし、共鳴もしないはず……
「……あーあ。これでは4000年前と同じだな……」
ファレノプシスはそう呟く。
* * *
「……本当に良かったのですか?お母様。」
精霊、キーラは私にそう確認をしてくる。
「……彼はそう言う人……それに、この未来なら安心です。」
私には未来が見える。
この未来なら、きっと大丈夫。ファレノプシスの犠牲は、大きく貢献する。そしてそれこそが彼の決断ならば私に止める権利は無い。
長いようで、短い関係だったわ。
……それにしても、懐かしいわ。ファレノプシス。
……貴方が私の元に来たこと、しっかりと覚えているわ。
* * * * *
「俺はグレートドーンの魔王、皆からはファレノプシスとよばれている。」
……4000年ほど前、彼は私のこの母神器『生命の木』の命界に突然やってきた。
その時の彼の姿はハシラビトとしての姿、5メートル程度の巨人だった。それこそが彼本来の身長。
「惑星テラリスを、救う方法を探しに来たんだ。あんたなら知っているか?なあ、ハシラビトさんよ。」
「……私がなんでも知っていると……?」
「ああ。テトラビアは聞く限り無政府じゃねえか。どうやって制御しているのかと思った結果ここに辿り着いた。」
……テトラビアができて1000年。彼は初めての命界訪問者だった。
「……できます。創世の鉞を使えば可能です。テラリスの地軸を変えるのなら創世の鉞を使えばできます。」
私は答える。
「……ありがとう!!これでテラリスを救える!!」
「待ちなさい。創世の鉞は……守護神器は使えばその身が滅びます。呪いです。」
「……呪い……大丈夫だ。俺はクレオール、命である魔石が一つ消えても復活する。」
「……そう。なら、安心ですね。」
「ああ!!……そうだ、あと勇者に対抗するために戦力が欲しいんだ。」
「なら、殲滅の槍も持っていきなさい。」
「……いいのか?」
「ええ。これはテトラビアとグレートドーンの友好の証です。その代わり、テトラビア西の荒れた遺跡の大地、ここに街を。魔法を教える大学を作って下さい。」
「お安い御用だ。」
「……あと、4000年後……4000年後に鉞と槍は返す。それだけは約束してください。」
「ああ。勿論!4000年もあれば、人間との和解なんて簡単なはずだ。」
……私はそうやって、ファレノプシスこと初代魔王、月下 風蛾を送り出した。
今ではすっかりグレートドーンの漢字文化は苗字だけになってしまったらしい。
* * * * *
「……全く、馬鹿な魔王だ。コイツは。暴走することを知った上でこいつは神器に触れたんだろ?人格が変わることを知っていて。」
……やっぱり、今のファレノプシスは別人格だ。
だけど……どうして共鳴がなくなっても戻らないんだ……
「どうして……」
「どうして人格が戻らないんだ?って言う顔をしているな。」
魔王ファレノプシスは私に話しかける。
「それは俺が神器の共鳴反応ではなくクレオール・ディザスターで生まれた人格だからな。」
つまり、もはや今の状況はただのクレオール・ディザスター……
「……私も上手く制御できなかったら……こうやって暴走してた……」
私はボソッと呟く。
「魔王はもう、共鳴していない!!ただのクレオールディザスター!!」
私は下にいる3人に。ユウとレイカとシャガに叫ぶ。一刻も早くこの情報を伝えないと……と言う思いで叫ぶ。
「なら、魔石に同時攻撃だ。そうすれば、クレオールは回復できずに死ぬ。」
ユウが答える。
……魔石に対する同時攻撃……それでファレノプシスは……初代魔王を倒せる。
* * *
「悪い、レイカ、シャガ。魔物は頼む……」
「頼むって、一体何をするんだ?」
「……あいつと一緒に、ファレノプシスの魔石を斬る!」
あのクレオールの子と一緒になって倒せるのは……魔王継承権第一位の俺……月城ユウしかいないだろう。
「無理よ。彼の胸部は硬すぎる。腕は斬れても、あそこは流石の貴方でも無理よ。」
レイカは俺を止める。
「……なら、どうすればいいんだ。」
「私にいい案があるわ。あそこのクレオール、彼女に古代魔法、ブレイクコアのやり方を教えるのよ。」
「ブレイクコア……それはあんたが得意なブレイクハートと何が違うんだ?心臓を握るあれと……」
「ブレイクハートだと、魔力量的に私じゃファレノプシスの心臓の魔石まで届かないのよ……。でも、クレオールの力があればきっと古代魔法を再現できるはずだわ。やり方は多分、ブレイクハートと同じよ。感覚と、それが出来るっていう情報を与えればきっと出来るわ。あの子カモフラージュも成功したし。」
レイカはそう言って俺の方を向いて微笑む。
「ありがとう!!」
俺は飛行する魔物を斬りながら、あの子の元にファストガードを上手く使いながら登っていく。
「一緒に討つぞ。魔王を!!」
「うん!!」
* * *
ごめん、樹。後で必ず助けに行く。だからそれまで、そこで眠っていて……
私とユウで、必ず魔王を討つから!!!
「古代魔法、ブレイクコアを使うんだ……ブレイクハートと同じ要領で。」
「ブレイクコア……」
私の元にやってきたユウはそう伝える。
……レイカがやっているあの魔法。確かにあれの古代魔法ならば、同時に壊せる!!
「わかった!私が魔石を潰す。だから、魔物と右腕を任せる!!」
私とユウはそう意思を共にして、魔王ファレノプシスに対して飛び込む。
「いくらやっても無駄だ!!」
魔王はそう言って、私たちの前に大量の魔物を召喚する。
「邪魔はさせない!!頼む、親父を救ってくれ!!」
サンダーバード。シャガが出した鳥のように走る電撃が私たちを囲む魔物を一掃する。
「左からくるぞ!!」
シャガが叫ぶ。
……ファレノプシスの右手が私たちを襲う。
「今だ!!いけ!!!!」
ユウがファレノプシスの右手を剣で押さえる。かなり大変そうで、火花が飛び散る。
「これで……終わり!!!!」
私はブレイクハートをイメージしながら、よりそのイメージを強めていく。
……両手が、魔王の、心臓部に近づいていくその感覚がはっきりと分かり、そのまま、掴む。
「ごめんなさい……初代魔王、ファレノプシス!!!!」
私が両手で同時にその魔石を握りつぶすと、魔王は叫びながら発光していく。
……暴走した初代魔王を、倒せた。
私とユウはそんな中、また命界へと飛ばされた。
「ありがとう。」
命界の中で、最初に会った時と同じ姿をした……5メートルくらいのファレノプシスはそう感謝する。
……多分命界だと力が制限されるのだろう。
「……俺のもう一つの人格を倒してくれて、ありがとう。」
「……もう一つの人格っていうことは、今の貴方は無事なのか?」
ユウが聞く。
「……いや、お前たちに魔石を破壊された今、俺はもう無事じゃない。4000年経ってようやく、死ねるんだ……」
「……死にたかったの?」
私はそう、魔王ファレノプシスに対して聞く。
「……ああ。全てを話そう。」
* * * * *
あの日……俺は母神器と命界で交渉した。
鉞と槍を持ち帰る条件は街と大学を作ること。
俺はグレートドーンに一時的に帰り、大量の人材を使ってテトラビア西部にレトーンという都市を作らせた。
魔法を学ぶための大学は俺の編み出した魔法によって作り出すことになった。
魔王城も魔法で立てたから、俺にとっては簡単なことだ。
「魔王様、ここ。何か埋まっています!!」
……大学建設予定の地、そこに埋まっていたのは一枚の鏡だった。
時計の針のようなものを持ち、黄色く発光するその光。
……そこには俺ではなく……巨人が映っていた。
「おお……素晴らしい。まるで結びの扉と同じような、神器か!!」
……何を願ったのかは覚えていない。
でも確かに、俺はその巨人のような姿に憧れた。
魔王の宿命かもしれない。力が欲しかったんだ。
……俺は、気がついた時には、巨人と蛾のクレオールになっていた。元々蛾と魔族のクレオールではあったが、魔族ではなくなっていた。その時には5メートルくらいだった身長は10メートルにも及んでいた。
しかも、カモフラージュの魔法とは訳が違う。あれは体の大きさとか能力が一部変化するが、この鏡によって手に入れたこの姿は、もはや体の構造が変わったかのようだ。そんな実感があった。
そんな4000年前、俺はこの姿になった。だが、姿が変わっても根本は魔族である。思考などは変わらなかった。
明らかに前よりも強くなった、この姿になったがそれでも俺は力を欲した。欲には勝てなかった。
「この鏡を分析しろ。この時計の針のような結晶を特に!!」
……その力は、魔族を。いや世界をさらに発展させるのではないか。もっと更なる力を手に入れれるのではないか。そう思い俺は配下に命令した。
……インガニウム。夢の力だ。
そんなある日……俺は選択を間違えた。
「魔王様!!!!」
……俺は少量のインガニウムを体に取り込んだ。
なんでそんなことをしたのかはわからない。
力を求めて狂っていたのだ。
……インガニウムを取り込んだことで、俺にはもう一つの人格が生まれ、制御できていたはずのクレオールの力が、暴走してしまった。
その日、レトーンはクレオール・ディザスターによって壊滅的な被害を受けた。
……気がついた時には、俺はあの母神器の命界と同じような場所にいた。
「全く、世話が焼けますね。貴方の起こしたクレオール・ディザスターでレトーンは壊滅。貴方はお母様の慈悲でここに封印しました。このハシラビトが不在だった鏡に。今後はハシラビトとして生きるのです。」
その女性、光の精霊のようでありながら実体を持つ不思議な人はそう言って俺を見つめる。
……なぜ俺は間違えたのだろうか。神の領域へと、俺は踏み込もうとしてしまったのか。
分かりきっていた。
俺は自分の欲望を恨む……どうしてここまでやってしまったのだろう。……大切な配下を、レトーンを壊滅させてしまった。
俺は自分の欲に負けた。そうやって悲しみに暮れる。
「大丈夫です。これもまた運命です。ファレノプシス……いや月下風蛾、私達と共に生きましょう。」
「……どうして、俺を殺さなかった。」
「殺してしまっては、だめです。貴方にはまだ生きる権利があるのです。だから、ここで悠久の時間をかけて、反省し、生き続けてください。それが私の願いです。」
そのエルフ……ヴィクトリアはまるで母のように俺を包む。
……温かい、魔王になってから忘れていた温もり。力に狂い、愛や友情……そんな感情を捨てていた、あの忘れていた温もりだ。
俺は泣いていた。
自分の業を反省しつつ、それでも……心のどこかではまた地上に。現世に復活したいと、そう思っていたんだ。
* * * * *
「……だから、復活する望みをかけて……」
私はボソッと呟く。
「ああ。一度命界に永久に取り込んだ人を蘇生するのにも、外に出るのにも同じくらいのエネルギーが必要だ。それに、ああやってお前たちに鉞を要求すれば、ヴィクトリアとの4000年の約束も実行出来る……そう思ったからな。」
……この魔王は、欲望に勝てなかったんだ。
「でも結果がこれだ。多分また暴走するって……わかっていたけど、その探究心は、欲望は止められなかった。」
「……初代魔王……しっかり魔族だな。何が神だ。しっかりと欲望に負ける……ただの魔族だな。」
……ユウはそうやって魔王のことを見る。
「……4000年後じゃ俺は神扱いされてるか!」
ファレノプシスは笑いながらユウのことを見る。
「……しっかし、4000年経っても魔族は魔族だな。姿も形も変わらんな……古代魔法は……まあ使えないだろうが。」
「……それは基本ファレノプシス、貴方専用の魔法だ。それほどの魔力がないと古代魔法は扱えないからな。」
……そういうことだった。私も、別世界の私も古代魔法を使えたのはファレノプシスと同じクレオールだったから。
「……人間とは、和解できたか?」
「それはこれから歩む!!でも、樹のおかげでもう大丈夫!これ以上は溝は深くならないと思う!!」
……私のその答えにファレノプシスは優しく微笑む。
「……強くなったな……子孫達よ。」
ファレノプシスはそう言って立ち上がる。
「……ほら。月下ハガは蘇生した。約束通り。シャガ?の元へと送っておいてやる。」
ファレノプシスはその様子を私たちに魔法のメモリーを使うように見せる。
「ありがとう!!!」
「……貴方はどうしてハガさんを殺したんだ?」
ユウが聞く。
「……神器の、ハシラビトの定めだ。母が。ヴィクトリアが願った……な。」
「なるほど……」
ユウはそう小さく呟く。
……ますます、謎は深まっていく。さっきの話が正しければ、長い時をかけて反省し、生き続ける。それこそが彼女の願い……。
それと、どのように繋がるのだろうか。それとも、他の願いが……
「……それじゃあ、そろそろお別れだ。俺はこの世から消える。そしてこの尊びの鏡もまた、使えなくなる。というかもう既に暴走した俺によって落とされた瓦礫でこの鏡は壊れてしまった。……最後に、この尊びの鏡を使うか?」
今度は鏡の様子を見せながらファレノプシスは言う。
……神器って、壊れるものなんだ……。
「尊びの鏡は、何ができるんだ?」
「種族が変わる……だったね……」
前聞いた時にそんなことを言っていた気がする。
「……そうだ。この鏡の力はその生命体の種族を変える。カモフラージュとは違って体の作りから変わるから、魔法のない世界でもその姿のままになる。まあつまり、嬢ちゃんみたいなクレオールが魔法のない土地に行ったとしてもクレオールであることを隠せる。クレオールとか元々の力は引き継ぐから力がなくなる心配は無い。魔力とかは維持される。まあ、翼がなくなれば魔法がない世界で空は飛べなくなるが……あと、呪いによって生殖機能を失う……そのくらいだ。」
「……!!」
生殖機能を失う、それはつまり。子供を産めなくなるということ。
私の本当の姿は今のクレオールの姿だから、ダガランとかの魔法がない世界だとカモフラージュが使えなくて、クレオールの姿を晒すことになる……
それは実際躊躇いがあった。
「……呪い……馬鹿げた話だな。誰がそんな話。」
ユウは腕を曲げて掌を上に向けながら手を横に出して、理解不能といった感情を見せる。
「……お願いします。」
「正気か?あんた。」
魔法がない世界での活動する時の為、異端者っぽく見られたくないからというのはもちろんある。
……でもそれ以上に、私は魔族のグレートドーンを、きっと私の故郷の過去で間違い無いテラリスを闇に包んだ。その事実は変わらない。
樹が人間との溝を広げないようにしたとはいえ、それでも良いと月橋ケルト、現魔王が言ってくれたとはいえその責任は私にある。
ーー魔族として、世界よりも樹を。今を生きることを選んだから。
そのケジメは必要。その責任を負わなきゃいけない。ここで魔族と別れを告げなければ、永遠に私はその呪いに、その責任感に囚われ続けてしまうから。それはある意味逃げに感じるかもしれない。でも、このくらいの呪いを受けなきゃ、責任は負えない。
自分の中にある。その譲れない責任感。どれだけ周りが許してくれても、自分の中にあるその自分に囚われ続けてしまう。だからここでそれを断ち切るんだ。
……自分自身にある……魔族と別れを告げるという形で。故郷を、過去を捨てるという形で。
……それに元々樹は人間で私は魔族。私がどれだけ樹のことが好きでも、子供なんて産めない。だから生殖機能なんて、なくてもいいんだ。私が愛する人はあの人だけ。それ以外は考えられないから……!!
「……私を、人間に変えて!お願い!魔王ファレノプシス!!!」
私は決意した。その真剣な眼差しで初代魔王を見つめる。
「良いのだな、後悔するなよ。」
……ファレノプシスは私の方をじっと見つめる。
その瞬間、私とユウは命界から戻った。
* * *
俺は起き上がり、また屋根上に行くと、魔王は光の粒子となって消えていた。
どうやら、エマとユウがやってくれたみたいだった。
それより……
「……久しぶりです。シャガ、それに……レイカ……!?」
「親父!!!!」
ハガはシャガとレイカと再会することができたみたいだ。
「……お父様!!!」
レイカはそう言ってハガに抱きつく。
俺の頭にはハテナが埋まる……
……お父様???
「な、レイカは俺の……家族!?」
シャガは当然、そんな反応を見せる。
勿論それを壁の裏から盗み聞きしている俺も驚いている。
「……本当に久しぶりですわ……実に3歳以来ですわ……」
レイカはハガの元で涙を見せる。
彼らにとってはきっと、感動の再会……か。
「レイカ……自分が月成家じゃないと……私の子だと気づいていたのですか……」
「ええ。勿論。私は月下レイカ。それは魔王城の資料で初めて知りました。13年前……先代勇者が国を攻めてきたときに、私が犯した罪のために……私が勇者側に加担させられた事を……。グレートドーンでの強制させられても絶対に加担してはいけないという禁忌を貴方は、お父様はその私の罪を隠蔽しようと庇って、それがバレて脱国を命じられてテトラビアにきた……そして私は月成の養子になりました……そうですわね?」
「……そうだったのか……レイカ……」
シャガは分かりやすく反応する。
四魔皇家の一員であるハガさんが、学長をやっていたというのは確かに疑問ではあった。
四魔皇家はテトラビアにくることを恥というほどの認識のはずだから。
「全く……お父様は優しすぎt……うぁ??」
そう泣きながらレイカが言うと同時に、ハガさんは二人を優しく抱きしめる。
「……ああ。お前達二人は……私の……大切な宝物だ……。私がこうして脱国を命じられてから……二人の安否を知ることがなかったから……ずっと二人は殺されてしまったのではないかと思っていた……こうして救いに来てくれて……ありがとう!!生きててくれて……ありがとう!!!」
……これは邪魔をしない方がいい。そう思った俺はその場を、屋上を去る。
* * *
ファレノプシスと別れ、命界から脱出した私たち。
私とユウは屋上に居た。
「……その白い髪……魔族じゃなくなったんだな。」
「うん。」
私は白い髪に青い目まるで聖女のような姿になっていた。
人間というものの、容姿自体は勝手に決まったと思う。
魔族らしい、黒髪と赤目、ツノは消えていて、かつクレオールとしてのフレアドラゴンの羽も綺麗さっぱり、なくなっていた。
「……ところで。ずっと気になっていた……君。リカにそっくりだ。……ドラゴンにもなったし、血縁者か、何かか?」
そういえば、月城ユウには一切自己紹介をしてなかった。
「私?私はただの神の器の追跡者……名前は……千歳エマ……。エマって呼んで!!」
私は、空を眺めながら、そうユウに伝える。
中庭の彼岸花の花びらが、風で空に舞う。
紅紫色の蕾から生えた白色の彼岸花の花びら。その落ちたものが……私たちの目の前を覆うように舞い上がっていく。
* * *
そのリカにそっくりな聖女の姿になった魔族の少女はエマと名乗った。
「エマ……か。いい名前だ。」
……古代グレートドーンには漢字で名前を書く文化もあったという。それは古代魔法に詳しいリカが教えてくれた。
エマ……なら多分……『愛茉』……か。リカは『莉花』だって言っていたな。
リカと初めてあった場所……そこはあの鉞の場所……茉莉花が咲いていたか。
……リカ……私たちの宝の、いい名前の案が決まったぞ。
……その名前は、花に刻まれる。
今回で「第三章 愛の茉莉花」は終わりとなります!
まだまだ続く二人の冒険を、楽しみにお待ち下さい!
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ここまで読んで頂きありがとうございます。
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