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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第三章 愛の茉莉花
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第022話 最強生命体

「……え?どうして、どうしてそれを持っているの!?」


 ……私の目線の先、その母神器と名乗る男天使の右手には、テトラビアの母神器に私たちが返したはずの守護神器、『殲滅の槍』それが確かに、存在する。


「殲滅の槍か。……ふむ。使ってみるか……」


 その母神器を名乗る天使は殲滅の槍に興味を示す。

 その天使は槍を振る。その瞬間その黒いバリアの空間の外にもわかるほどの光を放つ槍が現れる。


 * * *


 月のように太陽を隠し、城の上に現れた球体。

 その球体の内部では何が起こっているのだろうか。


「……未来を見てもらったとはいえ、やっぱりエマの事が心配だ。何か俺たちにできる事はないのか?」

「うーん……あのバリアを突破できるほどの力、あることにはあるけど……そんなにやりたい?」


 リリーはニヤッと笑いながらそう俺に聞く。


「教えてくれ。」

「……私ならあの空間にも干渉出来るほどの力があるよ。」


 ……どう言う意味だろう。


「どうやって干渉するの?……リリー、さん……」


 レイカが俺が言うより早く発言する。



「……だって私、クレオールだからね!!魔物の猫と魔族のハーフ!!」


 リリーは回転してピースしながらキメ顔でポーズをとりながらそう言い放つ。

 ハーフがクレオール・ディザスターの原因になると聞いた時、若干の疑問は感じていた。だってリリーは魔族のような雰囲気と、猫のような獣の雰囲気を持っていたからだ。


「……つまり……リリーはとんでもない力を持っていると……」


 俺は真剣な顔でリリーを見つめる。


「ああでも、クレオールはその共鳴反応を制御できないから暴走して、それを他の魔物にも影響を及ぼしちゃうだけだから、制御できる私は全然悪者じゃないから!」


 リリーは手を振りながらそうやって説明する。


「なるほど……で、エマを救うのに協力してくれるのか?」



 リリーは徐に歩き出し、俺の肩にポンと手を添えてから、俺を通り越して鉞の前へ行く。

 リリーは振り返って俺の方を向き、こう言った。


「私を倒してみて。樹!倒せれたら、いくらでも協力してあげる!!」

「……リリーを倒す。つまり殺せって言うことか……?」

「大丈夫大丈夫、クレオールは魔石を二つ持つから。要するに心臓が二つあるわけで、死なないし回復も早いから全力で来な〜。」


「……じゃあ、全力で行かせて貰う……!!」


 俺はそう決意し、レイカから受け取った剣を抜く。


「ちょっと待って。どうして貴方はそこまで力を持っておきながら、エマを救いに行かないの??」


 レイカが俺とリリーの戦闘を、そうやって引き止める。

 確かにそうだ。未来がわかるから安心しているとはいえ、ちょっと意地悪すぎる気もする。

 だからこそ俺はなんとか説得して協力してもらおうとしているわけだが……


「何か理由があるなら、教えてもいいんじゃないか?」


 シャガもそうやってリリーに聞く。

 リリーは暗い顔をしながら下を向く。


「だって私は……私は最愛の娘をね。キサキを失ったから!!」


 下を向くリリーのその目には涙が見えた。

 ……その姿は、どこか泣き崩れていたさっきのエマに似ている気がした。


 * * *


「サンダーバード!!」


 私は懐にしまっていたナイフを杖のように扱い、ナイフの先端に現れる魔法陣から、その天使めがけて魔法を放つ。

 鳥のようになったその電撃はその天使の腕に命中したように思えた。

 しかし……

 ……幻覚??私の魔法はその天使の体を突き抜ける。


「実力不足だ……」


 その幻覚を見ている隙に、その声が後ろから聞こえ、私の背中には光の槍が一本飛んでくる。


「……くっ!!」


 私は咄嗟に振り向いてナイフからファストガードを展開する。

 そのバリアでしばらく弾いていると、光の槍は粒子になって消える。

 またその天使の方を見ると、どこか退屈そうに呟く。


「なぜ其方と我はこの結界で閉鎖されているのだろうか……分からぬ。決闘の最中にしては其方は弱すぎる。この槍くらい、軽々しく消せるほどの力がなければ、我は倒せぬ。そもそも釣り合っておらん。」


 ……ここにいる理由……それは、その男天使の本当の人格が望んだから……

 どうして私をここに閉じ込めたのかはわからない。でも、頼まれたことは、全うするしかない。



「……このくらいの試練、乗り越えられなきゃ、不死の樹とは対等になれないし!!私は、貴方を倒す!!!」


 私はそのナイフを天使の方に向ける。


「ふむ……其方は我を倒すと、そう願うか。だがそれは不可能だ……この体は素晴らしい。ハシラビトとして……この神器は素晴らし過ぎる。無限の力が沸いてくる……それこそ、超新星爆発……いや、新しい宇宙を作り出せるほどの……そんな力が!!!!そんな力に、お前は勝てると……?」


 ……超新星……爆発。

 それに、ハシラビトと言った……

 つまり、あの天使は神器そのものか、神器を取り込んだ人といった感じで本当の人格はさっきの状態、今のこの人格はその身に宿るハシラビト……ということだろうか。


「勝たなきゃ……その人の人格を取り戻さなきゃいけないんだ!!!」


 私は真剣な目線をその天使に送る。


「理解不能だ。この神器は自ら共鳴反応を起こし、暴走し、我という第二の人格を……第二のハシラビトを生み出した……それは彼自身が望んだことであろう?」


 ……違う。そんなわけがない。


「違う……彼は謝っていた……暴走したいわけじゃない!!貴方を産み出したのは、彼の願いじゃない!!!」


 私はそうやって叫ぶ……


「ふむ……だが実際我はこうして産まれた。たとえもう一つの人格が望んでいなかったとしても。そして今この神器の使用権は我にある。何をしようとも、我の勝手だ。」



「その体を、好きにはさせない!!召喚!!フレアドラゴン!!」


 魔法陣が足元に現れ、そこから一匹の炎のドラゴンが現れる。

 あまり使う機会のなかった、魔族だけが使える魔物の召喚魔法……


「よろしくね!!」


 私はそのドラゴンの頭をそっと撫でる。

 そのドラゴンは吠えながら羽ばたいて、男天使の方へと炎を吐く。


「……無意味だ。」


 その炎は強烈な風で押し返され、そのままドラゴンもろとも壁まで飛ばす……


「大丈夫!!?」

「よそ見している暇など無い。」


 そう天使は私に言い放ち、その槍を振る。

 私の方にも、複数本の光の槍が飛んでくる。

 私はさっきと同じようにナイフとファストガードでなんとか受け流して、複数本の槍を受け切る。

 私が避けた槍はそのままその結界の地面に突き刺さり、そのまま光の粒子となって消えていく……


「身体強化!!ファストガード!!ガーゴイル!!!」


 私はそういって自分の足に魔法をかけてスピードを上げ、ガードを擬似的に階段にしながら、空中に浮かぶ天使との間合いを詰めていく。

 それと同時に、複数の魔法陣が現れてそこからコウモリのような魔物、ガーゴイルが複数体現れ、天使めがけて飛んでいく。


 そのフレアドラゴンも起き上がり、また吠えながらブレスを吐いて突っ込んでいく。


「……無駄だ!」


 男天使はフレアドラゴンの方を向き、そのまま槍を振りかざす。

 フレアドラゴンのブレスは届くことなく、事前に殲滅の槍によって生み出されていた光の槍で至る所から体を貫かれ、鳴きながら魔石となって消えていく……

 その攻撃で光の槍は最初に生み出した分、全てを使い切ったように見える。


「……ごめんね……でも貴方が産んだその数秒!無駄にはしない!!」


 魔族にとって、魔物は仲間だ。たとえ姿は違えども、魔物同士も種族があるが全て仲間だ。

 私はそのフレアドラゴンが産んだ僅かな隙を、利用してガーゴイルと共に間合いを詰めていく。


「貰った!!!」


 男天使との距離は5メートルくらい。高さも私の方が上にいる。私の前にはガーゴイルがとんでいる。

 私はナイフを上に振りかざし、物理的に男天使を刺しにいく。


「ふむ……少しは実力があるみたいだな……だが、これはどうだ。」


 男天使がそう言うと、そこには私が召喚したはずのフレアドラゴンが現れ、より強力となったブレスで、私の前を飛んでいたガーゴイル達を焼き払い、そのままその後ろにいた私も巻き込まれる。

 なんとか私はそのブレスを逃れ、ファストガードで空中に地面を作り、受け身を取る。



「……どうして!?どうして貴方が、使役できるの!!」


 魔物を使役するのは、魔族の特権。たとえ神器だとしても出来るはずがない。そう思い込んでいた。


「……所詮、魔法は神器の足元にも及ばぬ。其方の負けだ。」


 そのドラゴンのブレスによって、私はその高所から落下する。


「コットンガード!!」


 魔法によってふわふわの綿を生み出してなんとかその落下の衝撃を吸収する。


「……やっぱり、魔法じゃ、神器には勝てない……」


 ……私は目を手で隠しながら……そう呟く。


「ああ。神器はこの世で一番力を持つもの、インガニウムという結晶体からできている。それは、宇宙が生まれるほどのエネルギーを秘めた、そんな物。対して魔法は、所詮一般的な魔素レベルでできているのだ。魔石の核であるセレスチウムの力が、インガニウムに非常に近いレベルであること以外、負けているのだ。わかるだろう?この圧倒的な実力差が……」


 その男天使はフレアドラゴンに乗り、結界の地面に降りてきて私の目の前まで来る。

 ……完敗。

 さっきのナイフが届いていたとしても、最初のように避けられていたことは想像が出来る。

 それに、召喚魔法の中でも最上位のドラゴン召喚ですら、足元にも及ばない、そして逆に奪われる……もう、勝ち目はなさそう。



「其方だけにこの力を使うのは勿体ない。もっと大勢の人に振る舞いたい。この溢れんばかりの力を、我は放出したくてたまらないのだ。」


 もう、あれ以上のことは私にはできない……


「一体何をする気!!?」


 ……勝てないことは分かっていても私は聞いていた。


「其方は死ぬことになるが、我は超新星爆発を起こてこの空間を脱出する。其方の、我に立ち向かった勇気だけは褒め称えよう。だが、もうここでお別れだ。この結界を破るにはそのくらいの力が必要なのだ。」


 ……私の人生は、ここで終わりみたい。

 ……樹、博士……ごめんね。



……その瞬間、私とその男天使がいる空間には超高密度となった爆発が起き、私は……死んだ。

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