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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第二章 光が降り注ぐ日
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第二章特別編 飛来した流れ星

「エマちゃん、ちょっといい〜?」


 日々、研究所や西の遺跡、近所の古城などを調査する私と博士。

 私は博士の助手になって2年。日々博士のお手伝いをしていた。


「なんですか?」

「私、知っての通り元々体がそんなに強くないのと、最近発見されたレトーンの歴史的遺物……と思われるものを研究していて思ったことですが、神器を全て知るためにはテトラビア外の調査も必要なのかな〜と思ってですね。」


 博士はある日そう私に言ってきた。


「……つまり、私に調査して来て欲しい、と。」

「そう言うことです〜!」


 博士は満面の笑みを見せながらそう答える。


「分かった。じゃあ、明日からはテトラビア外に行ってくるから、生活がんばってね!!」


 私は意地悪そうに博士を見つめる。


「……がん……ばります。」

「因みに、行き先とかの目星はあります?」


 私は顔を斜めにして博士に聞く。


「勿論!ただ提案している訳じゃありません〜!」

「そ〜??なら教えて。」

「ダガランってところです!」

「ダガ……ラン?」


 私はその名前の不思議さに困惑する。


「そう。ダガラン〜!エマちゃんがテトラビアに来た2年前に国交ができた、とてもとても新しい関係の鳥人の国なんだけど、そんなダガランから輸入された本に、面白い記述があってね!」

「面白い記述……?」


 博士は本棚からその本と思われるものを取り出す。


「向こうの国の聖書……らしいんだけど、『異次元より飛来した流れ星、翼の折れた槍を持つ勇者により滅ぼされた』っていう記述があってですね〜。これがテトラビアの神器の力じゃないかって……そう思いました。」


 その一文を指差して私にみせながら博士は読み上げる。


「……確かに。ちょっと気になるけど……!!確証はなさそうだよね……」

「そうですね。神話ですし本当に憶測の域は出ませんが、調査をしてみる価値はあると思います〜」

「……じゃあ早速言ってくる!!博士!」

「待って、エマちゃん!」


 博士はドアノブに触れて研究所から出ようとする私を止める。


「なに?博士。」

「これ。お金〜!調査しにいくのに、何もなしじゃダメでしょ?それに、危険があるかも知れないし、何かしら装備を買っていった方がいいですよ〜!」

「……確かに。ありがとう博士!!」


 装備を買ってからダガランヘいくことにする。



「装備……って言ってもゴリゴリの防具とかを着るのもな〜……どうせならおしゃれしたいよね……」


 私はそう呟きながらオーセントを歩く。


「……服屋か。入ってみるか……」

「いらっしゃいませ〜!!あら、可愛いお客さん!本日はどのような服を御探しですか?」


 その服屋の店員はそれはもうとてもとても馴れ馴れしく、引いてしまうくらいグイグイと私に近寄ってくる。


「……あーえっと、外傷に強い服とか……ありますか?」

「それなら……このバリアブル加工とかおすすめよ!」


 その店員は直ぐに私好みの服を提示する。

 ……心でも読めているのかな。


「……なるほど……」

「バリアブル加工は、状況や場所によって服が自動変化するから、破れたりしても自然修復する加工で、いい感じです!」


 いい感じらしい。


「テトラビアの外に着ていくものとしてオススメはありますか?」

「それなら、オートエアー加工があるといいわ。気温とかを不快感ない状態に合わせてくれる加工です!」


 その店員は服についているオートエアーのタグを見せながら私に説明する。


「じゃあ、これかこれかこれかこれにします!」


 私は可愛いドレスのような服を手に取る。結局は場所によって変わるから、デザインなんて大した差にはならないけど……


「……試着なされますか?」

「勿論!」


 私は4着ほど手に持って試着室へと向かう。



「……いい買い物ができた!!」


 私はそのうち1着に決めて早速買って、着た。

 今度来たときにじっくり他のは選んで、買おう。そうしよう。

 私はそう心に決める。


「……じゃあえーっと、一回ロッカー寄って……ダガラン行こうかな。」



 私は貸出ロッカーに自分が今まで来ていた服を置いてきた。


「行ってきます!カーラちゃん!!」


 私はカーラちゃんに手を振ってダガランへと向かった。


 実はグレートドーンに……グレートグレンデに帰ろうとした時以来の扉。

 カーラちゃんとは『扉に導かれし者』としてここに来てから博士と出会うまでの数ヶ月、結構かまって貰っていたから仲はいい……つもり。まだ神器なんて、歴史なんて興味がなかった頃のお話。



「わお!ここがダガランか!!」


 私は海翔のアクセスポイントへと来た。

 グレートドーンとも全然違う。その雰囲気は正に野生的。


「鳥人の国か〜……」


 グレートグレンデに鳥……なんて居なかったがテトラビアには居た。そんな鳥に近い種族の国……らしいが私からするとドラゴンの方が近い気がする。


 グレートグレンデで空を統べる者……といえば緋色の身体を持った最強種、フレアドラゴン。

 鳥……というか空を羽ばたく動物は存在しない。他にいるのはガーゴイルみたいな魔物。


 つまり、私からしたダガラン人は人型ドラゴンもどき……って言う感じだった。


「まずは情報収集……」


 国の文化も、何もかも知らないのに神器の情報を集めることなんてできないよね……


 私はそう思い、歩きながら辺りを見渡す。

 何やらタクシーと書かれているらしい看板を……公共交通機関のお店らしきものを見つける。


「これ、乗せてもらえる??」

「お、いいぜ。どこまでいくんだ?」

「ん〜……ぷらっと……情報を集めようかなと。」

「……そうか。まあ、この時間客は少ないし……多分大丈夫だな。」

「店長!!お客様一人乗せて行ってくるぜ。」

「分かった!!行ってこい!!ガイ!!」


 その空飛ぶ乗り物……タクシーのお店の奥から店長らしき人の声が響く。


「じゃあ、行くぞ。」

「お願いします。」


 私はその空飛ぶ釣り籠に乗り込む。私が乗ったのは恐らく一人乗り用。ガイという鳥人が引っ張ってくれるみたい。


「すごいねこれ!!」


 ガイという男は私を乗せて飛び立つ。


「だろ?ダガランの名物の一つだぜ。テトラビアからきた人向けの移動手段だな。」

「へ〜!!面白い!!」

「まあな……ところでぷらっと、ってどこに行くんだ?」


 私たちは街の上空を飛んでいた。

 ダガランのその紫色の木々は夢の世界のような違和感を醸し出す。


「まずはこの街をぐるっと一周……かな〜。」


 私はとりあえずここの人の生活を軽く触れたり、調査したりできそうな場所を探そうかなと思う。


「分かった。じゃあ3時間くらいで案内するぜ。」

「お願い!」


 私とガイさんの空の旅は始まった。

 私はガイさんにダガランの文化の事など様々な事を聞いた。



「ところで、エマはどうしてダガランになんか来たんだ?」

「私はただの観光できただけ……だよ。」

「反乱が起きてる国によく観光に来ようと思ったな……」

「そうなの?」

「ああ。ダガラン首都の那都と北砂っていう都市はガラ族による反乱が起きている。ここ、海翔は比較的マシな方だぜ。」

「そうだったんだ……」

「だからもし反乱地帯に入ることでもあれば引き返すから、そこら辺はよろしくだぜ。」

「分かった!」


 反乱している最中を流石に横切るのはまずい。

 まあ、ガイさんに任せよっと。


「この先が海翔名物の巨大港だぜ。」

「おお〜!!」


 海翔……と言うくらいだから海があるのかな、と思ってはいたけど想像とは少し違った。ダガランの海は巨大なツルに侵食されたような、不思議な生態系をしている。

 港というのは空の港だ。

 他の国行きと思われるまるでドラゴンの羽根みたいな乗り物……がいっぱいある。


「ちょっと待て……やばい。引き返すぞ。」

「どうしたの?」


 ガイさんは急に動揺する。


「この港……将軍の護衛軍と反乱軍が争ってるなんて聞いてないぜ……」

「え?こんなところで争ってるの!?」


 私の目線の先では鳥人が小規模だけど明らかに戦闘している。

 その戦闘は地上だけではなく空にまで及ぶ。さすが鳥人だ。


「……ガイさん!?」

「ガイさんだ!!来てくれたのか!?」


「馬鹿野郎!!」


 戦闘中と思われた反乱軍の一人が、空飛ぶ私たちに気がついてガイさんに声を掛ける。


「……ん?なんだ?あいつも反乱軍の一員みたいだぞ。やるぞお前達。」


 その将軍の護衛軍……らしい光る槍を持った人はそう言い放つ。

 その瞬間私たちのことを落とすように矢が放たれる。


「まずっ……」

「頑張って……ガイさん。」


 ガイは飛んでくる矢をなんとか避けてそのまま夕焼けで赤色に染まり始めている森の中へと帰還する。


「……ふう……危なかったぜ。」

「……あの光ってる槍の時計見たいな模様……どこかで見たような……神器……かな。」


 反乱の最中から逃げ切った私達。私はさっきみた謎の槍のことを考える。


「ん?どうかしたか?」

「なんでもない!ありがとうガイさん。」

「……そうか。」


「そういえば……さっきの人たちは助けなくていいの?」

「大丈夫だ。紙電晶を使ってさっき連絡しておいた。俺たちは応援に任せて帰宅しよう。」


 ……ガイさんはつまりガラ族の反乱軍の一員……って言う事。なら……頼んでみようかな。



 私たちはお店まで帰還した。


「ありがとう!楽しかった。ガイさん。」


 私はテトラビアのお金でガイさんに払う。


「また乗りに来てくれな……と言いたいところだが、もうこの店は終わりだな。」

「どうかしたの?」

「……ああ。テトラビアの人だから……政府側のスパイじゃないと思うからいうが……気づいてはいると思うが俺は反乱軍。そしてこの店は反乱軍が隠れる為に使っている偽装の為のお店。だからもう、さっきの反乱でヘマした野郎がいるせいでこの店は終わりだぜ……」


 ガイは悲しそうな表情を見せる。


「……そっか。ごめん。私が乗せてって頼んだから……。」

「顔を上げてくれ。気にしなくて大丈夫だ。」


 私は申し訳ないと思ってガイに謝る。


「ところで……もしよかったらなんだけど、あの護衛軍?の人が持ってた槍について、調べてくれないかな……?」


 反乱軍のこの人なら、あの神器みたいな物について知るきっかけになるかも……!と思いながら話を振る。


「……1ヶ月前くらいから護衛軍が持ち始めた……あの槍。か……」


 私の言動的にも、槍のことを知りたがっていることからして……ただの観光客の偽装はそろそろ無理がありそうだけど……と思いながら話を聞く。


「いいぜ。何で知りたいのかは知らないが、どうせまた明日にでも目にすることはあるだろうし……ただ、交換条件で頼む。」

「交換条件?私にできることならばなんでも!」

「じゃあ、テトラビアへの渡航権を貰いたい。」


 ガイさんはその鳥人の鋭い真剣な目つきで私のことを見つめてそう言い放つ。つまり、ペンダントの事かな。


「……分かった。次来るときに持ってくるね!」

「頼む。次来た時は、この紙に書いてあるレストランの受付でここに書いてある言葉を言って欲しい……次のアジトだぜ。」

「分かった!待っててね!」


 ガイは私に紙を一枚渡す。明らかにダガランの機密情報ではある気がするが、護衛軍が私を攻撃したことや、テトラビアから来たことが丸わかりなこと……とかを加味して信用されている気がする。


「ああ。それじゃあまた来いよ!」

「うん!」


 そうして、私はガイさんの元を離れた。


「さて……初回にしては大収穫だったね!!」


 私はそんな大きな独り言を呟きながら、スキップしながらアクセスポイントへと向かう。



……その日、そのダガランの夜空には流れ星が……様々な『光』が降り注いでいた。

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