第099話 私と国の再開
「……やっぱり貴方だったんだね……ゲンム!!!」
「……な、なぜ貴様がここにいる……月城エマ!!!!」
私は杖を取り出して握る。
「貴方がイツキをあんな事にしたんでしょ?なら私は、貴方を絶対に許さない。」
「……くっ、だからどうした、貴様に何ができる!!」
「……へぇ、随分と余裕そうじゃない、ゲンム……8年前と比べてどれだけ強くなったの?」
私はそう言って煽る。
8年あったところで、私はクレオールの力を扱えるし……負けるはずが無い。
余裕でしょ……そう思って私は戦う。
「クレオール如きが。いい気になるなよ……!!貴様なんて、滅ぼしてやる!!俺の新たな力を見せてやる……出よ混沌……クロノシィード!!」
彼はその赤く輝く石……私が今持ってるイツキを操る為の指輪を操作するための……石。
それを上に高く持ち上げる。
「……クロノシィード!?」
「そうさ。俺は7年前に神からこの石を授かった。この国を手に入れる為にな!!混沌の証……さあその力を見せろ!!!」
……混沌の証。
「全く……色々と面倒事を残してくれて……いい迷惑。クロノス……」
私はそのゲンムの部屋の中で杖を構えて、サンダーバードでも出そうとする……
「さあ、やっちまえ。お前ら!!!」
その瞬間、魔王城のガラスは割れて様々な魔物が飛び込んでくる。
「……混沌の証……正にディザスターみたい、だね。」
使役魔法よりもより簡単に、より強力に魔物を操る能力……って言うところかな。
「それでも、私は負けない!!」
私はそう叫んでその私に向かって襲い掛かろうとする魔物を使役しようと試みる……
「無駄だぜ。この証は上書きできない。貴様の魔力を持ってしても、な!!!ゴラァ!!」
……嘘っ。予想が外れた。
流石に私の力があれば、再使役できると思っていた。
……私はその一瞬のミスで四方八方から魔物に襲われる隙を生んでしまった。
「……終わりだ!!エマァ!!」
その時だった。
「……グォォォォ!!!!」
そんな声と共に私の周りを火が囲んだ。その火は当たりの魔物を焼き払った。
「待たせたな。久しぶりエマ!」
「……助けに来ましたよ。」
その二人。正確には一人と一体は、私の後ろからやって来た。
「……リカさん、ユウさん!!??」
……お母さん、お父さん……!!!
「さあ、終わりだ。ゲンム!!お前の悪事はもう既にバレている!!」
「……クッソ、貴様ら!!貴様ラァ!!!!」
「……ど、どうしましょう……ゲンム様!!」
その横でずっと私がいたぶられる様子をニヤニヤと笑っていたゲンムの仲間……?も焦りだす。
「……逃げるぞ!!!」
ゲンム達はその魔物が割った窓の外へと逃げ出そうとする……
「逃しません……」
そんな彼らの前を、お母さんは燃やし尽くす……
そうして、彼らは捕らえられた。
ーーー
「……さて。彼らはもう終わりだな。国外追放、って言うところだろう。」
捕らえた二人を見ながらお父さんはそう言う。お母さんも魔族の姿になっていた。
「……ありがとうございました。」
私は二人に頭を下げる。
「全然いいですよ。エマの元気な顔が見れましたし。」
「……そうだな。」
そう言いながら私の下げた頭を二人は軽く撫でて、私の後ろの方……扉の方へと抜けていく。
その罪人二人を引っ張りながら。
「しっかし……大きくなったな……」
「ですね……」
彼らの声はそう小さく聞こえてくる。
「ありがとう!!」
「コイツは俺たちが処分しておくから、また偶には会いに来てくれよ。いつでも待ってるから……」
お父さんは私の感謝に対してそう、手を振りながら伝える。
「……あらあら、泣かないで下さいよ、ユウさん!!」
「……ば、ばかっ!泣いてない!!」
彼らのそんな楽しそうな笑い声は魔王城に響いていた。
ーーー
「……聞いたぞ。エマ。遂に黒幕を見つけたんだな。ありがとう。」
その日、永遠に火が照り続けるその魔王城の最上階のバルコニーで私は樹にそう言われた。
「ま、まあね。ユウとリカのおかげ……だけどね。」
「まさかゲンム……だった、とはね。」
「……まあ、案外わかりやすかったかな。」
私は頭を掻きながら答える。
「……それで、相談なんだけど。エマ……」
樹は改まる。
「……何?」
「結婚してくれませんか。」
……彼は恥ずかしそうに、そう言った。
「……勿論!よろしくお願いします。」
私は元気よくそう答え、彼の手を取った。
ーーー
私はゲンムの悪事を暴いた英雄……と言う形で、今まで隠れて生活していたが初めて国民に公表され、正式に魔王のたった一人の后……として国全土に認められた。
勿論、変化の証を使って黒髪赤目の魔族の姿として、あくまでも魔族として振る舞うようにする。
私は……人々の願いの力集まりし所楽園への門開かれる……。
と言うその言葉を信じて王妃として、この国を改革しようと思った。
「……ある意味、ゲンムの言っていることは間違って無いのは事実なんだ。」
「……そうだね。この数日を見ても国民の劣悪な環境はよくわかるね……」
「……ああ。灼熱化による農地と森林減少……それによる魔物の減少、そして転移の災害……その影響は特に大きい。」
「だね。」
私達はその複数の資料を見ながら考える。
「……そういえば樹って、どれくらいの記憶を覚えてるの?」
「俺はアルマードとの戦いが終わった所まで覚えている。最後はニケ達によって倒された。そこまで、だな。」
……やっぱり、別世界の樹が言った通り、アルマードが滅んだのは確定、だったんだ。
私はテトラビアの現状に安心しつつ、グレートグレンデの情勢を考えていた。
ーーー
そんなある日、私は魔王……樹との子供を授かった。
「……どうして?」
私はその結果を見て、驚いた。
だって私は確かにファレノプシスに……尊びの鏡の力によって子供が産めない体になっていたはずだったから……
「……多分、神器化した俺の影響……だろう。」
「え?」
「俺はアルマードを倒す時にハシラビトだった彼らを解放して、守護神器の呪いも無くした。転移の影響を受けない彼らに倒してもらった。きっとその影響で、エマにかかった呪いも無くなった……んだと思う。」
「……そっか。」
私は確かに困惑したけど、その結果には不満はなかった。
だって、どんな事があったとしても私は呪いがあるから……って、そう諦めていたからこそその結果は寧ろ嬉しかった。
「そうだよな……呪いがあるからって安心してたよな。ごめん……」
樹はそう言って私に対して謝罪する。
「そんなことはない。私は嬉しいよ。これからもよろしくね、樹!」
そう言って私は彼を抱きしめた。
「……ああ。こちらこそよろしく。」
ーーー
「ねえ……名前なんだけど、キサキ……ってどう?祈咲!」
私は私たちの赤ちゃんの名前の案を……紙に。その漢字を書き記す。
「……古代グレートドーンの漢字文化、か。」
「そう!みんなの祈りを咲かせますように……って。みんなの希望になれるような存在になって欲しいなって、そう思う!」
樹は何か考える様子を見せてから、喋った。
「いいと思う。それにしよう。」
……何か隠してる雰囲気を感じた。
「……ねえ、どうかした??」
「……い、いや。なんでもないよ。」
「ええ〜っ??何か隠してるでしょ〜??」
私は樹の事をそう言って問い詰める。
「……いや、運命って面白いな……ってね。」
「何それ、どう言うこと?」
私は急になんか語り出した樹が面白くて笑いながら聞き返す。
「……前にリリーが言ってたんだ。私はキサキを産んだ……って。だから、エマからその名前を聞いて、そう思ったんだ。」
「……なるほどね。確かにそうだね!」
リリーも、キサキって名付けてたんだ。やっぱり並行世界なんだね。
……そんな私たちの宝は希望となることをこの時の私たちはまだ、知らなかった。