表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第九章 来たる「執園」
110/123

第九章特別編 神の器の追跡者

 調査記録を書くと一緒に、今日は日記も残しておこうかなと思って、ここに残す。


 もうすぐロストリアからの侵攻があるって言うし、この記録は消し炭になっちゃうかもしれないけど、私がいた証として残せれたらいいな〜って思う。


 これはいつも通りだけど、いつもと違う私達の物語。



 * * * * *



 私はエマ。月城エマ。



 私はいつもの様にこの研究所で目を覚ます。調査行ってるときは宿だけどね。その時間、6時!


 7時間もの睡眠。ものすごく体にも肌にも良いと思ってる。


 さて、まず起きたら朝の身支度!

 樹は大体いつも8時近くまで起きないから、それまでにまずはシャワーを浴びる!

 あ、博士はもっと遅いから放置ね。放置!あの人夜更かしばっかりだから……研究で。本当に良くないけど聞かないから。


 他の世界に調査行ってる時はお風呂入れないなんてざらにあるから、絶対に浴びたい!

 汚い汚れとか臭いは敵だからね!侵略してくるロストリアよりも……それはないか!笑


 さて、髪を乾かして……服をいつものに着替えて。

 ……あ。服はいつもの……と言っても研究所に同じ奴何着もあるし!それにこの前買った服大量にあるから!汚くないよ。


 そしたら、スキンケアからだね……洗顔に、化粧水……美容液、それとスライム由来のちょっと変わった乳液を塗って……


 で次はこのダガランのフェイさんが愛用してるらしいこのダガラン名産?のこの下地をまずは塗っていく。あの国、地味に日差し強いのでそれに合わせてUV効果がいいのが多いのが特徴!




「……ってこれじゃあ私の化粧講座になってしまうので割愛。知らない男の人がこれを読んでもわけわからなくなってしまうので……!ざっくり行かないと本題が遠のいちゃうね。」



 朝ごはんは昨日の残りと……まあ色々と。研究所……いや博士の雑な買い物と、食生活がバレてしまうので。これはその日によって違うし、なんなら博士は遅すぎてご飯も炊き立てじゃなくなってるので……まあ良し!気にしちゃダメだね。



「……で、違うんだよ!これは日記だから!一般的な日を書くんじゃなくて、今日!を書くんだった!」


 起きてきた樹と一緒にご飯を食べて、残りの身支度をして出発だよ!



ーーー



「今日はどこへ行く〜?」

「勿論決めといた。今日は行ったことがないって前にエマが言ってた、美術館に行こう。」


 私と樹はオーセントを歩きながらそう会話する。

 ……二人きりで、美術館デートっていう事。意外と樹はこう言う時しっかりしてる。


「博物館はいっぱい行ってるだろ?」

「まあそうだけど、ってそう言うこと〜?私をなんだと思ってるの??」


 言葉足らずだけど……何が言いたいかはなんとなく察した。本当、一言余分なんだから。

 しっかりしてると思ったけど、そう言う思考だったの??とツッコみたくなる。


「ん?あ、違う違う。博物館は飽きてるから適当に美術館にしたとかそう言うわけじゃない。しっかり考えたから。ルートも何もかも。」


「本当かな〜??」


 ……なんというか、若干経験無さそうな不備がありそうなところも、また樹らしくて可愛いのでした。



ーーー



「……ここだな。オーセント市立美術館……」

「あ。ここってオーセントが設立したところなんだ。知らなかった〜。」


 私たちはその大きな美術館の前で立ち止まって会話する。


「そういえば、私全然知らないんだけど展覧会?イベント?個展?みたいなのとかってやってるの?」


 私は樹に聞く。


「今はな、極寒の国と謎の部屋……っていうのがやってるらしい。」

「謎の……神器に近いものだったりするのかな!」

「まあ、知らない国の美術品からもそういう知識は得られるかもな。」

「とりあえず入ろうか。」


 私たちはそう話してから美術館へと入っていった。まさか、あんな事になるとは知らずに。



ーーー



「ねえねえ、これってなんだろう。」


 私はそう言いながら左手を振って隣の絵を見る樹を呼ぶ。


「……ん?この絵か。」


 その絵は天からその星……極寒の国の住民が、謎の家具のような物を受け取っている様子だった。


「作品名、なになに?神の家具……空間の神より授けられし。」


 私はこの絵のことを何も知らないし、よく分からない。けど、何か樹は知ってそうな雰囲気だった。


「何か思い当たる?神器を描いた物っぽくない?」

「……確かに、この家具が神器って捉えられるかもな……てかなんというか……全体的にこの極寒の国、日本っぽいな。」


 樹はそう言った。日本って、確か樹の故郷。


「え?これが樹の故郷なの??」


 私は興奮しながら言う。


「いや、文化的な雰囲気がかなり似ているだけで、文字は全然違う。それに、極寒じゃないからな。」

「……そうなんだ……残念。でも、こう言う雰囲気なんだ……いいね!」


「そうだな。もう、ここに来てだいぶ経つ。懐かしさも感じて来る、な。」

「そうだよね……最初は樹帰りたがってたけど、だいぶその雰囲気もなくなったよね……」


 初めの頃の印象と比べると、今の樹はだいぶ違うと思う。


「まあな、ここは遠い過去だって分かった。時間移動する力だって手に入れた。けど、帰る気はない。自分の使命を捨てて、この世界を見捨てたりはしたくないからな。何よりエマと一緒にいる時が最高に楽しいし、幸せだし。」


 私は、彼のそのさりげない言い方に赤面した。

 もう何があっても一生ついて行くって……愛するって……もうずっと思ってるけど改めてそう思えた。



ーーー



「ジリジリリリリリリ…………」


 その音は急にその美術館中に鳴り始めた。


「なんだ?」

「うるさっ、なんの音〜??」


 私は咄嗟に耳を隠す。


「ただいまメインエレベーターが止まっています。申し訳ございません。階移動の際は、階段をご利用ください。」


 ……そんな館内放送が流れた。


「もしかして、エレベーター事故ってこと!?」

「そうかもな、怪我人がいなければいいけど……」


 ……焦ったぁぁぁぁ……


「あんまり安心しちゃうと怪我した人いたら申し訳ないけど……安心しちゃう!」

「まあ、あんまり良くないけどわかるな。」


 でも、なんか周りは騒がしい。というか、警備員達が階段の方へ向かって行く感じがある。


「……警備員の人は焦ってるね。」

「緊急招集とかでもあったのかもな……」


 そんな感じだった。




「……聞いたか?上の階で、美術品が盗まれたらしいぞ。」

「えっ?嘘だろ?」



 私達のすぐ近くで、見知らぬ男性二人組が会話をしていた。

 そんな会話は当然私達の耳にも入ってきた。


「聞こえた?樹。」

「ああ。」


「……見にいく?」

「行くか。」



 急にエレベーターが止まったのは、きっとあくまでもパニックにさせない為……そう言うことなんだ。

 現場に近づくのはあまりよろしくないけど、気になるから私たちは向かう。



ーーー



「どうかしたんですか?」


 私たちは階段の辺りに集まる警備員達のところへとやってきた。


「え?いや……さっきの館内放送の通り、エレベーターが緊急停止したんだ。我々はこうやって階段を利用する人の統制を行なっているだけだ。」


 そう言いつつ、警備員の数は多かった。


「……それ、嘘じゃないのか?」


 樹はそう言ってその警備員に問い詰める。



「その通り……嘘ですよ。樹、エマ。」


 私達の名前を呼びながら階段を上がってきたのはメルトだった。


「メルト!!」

「はい。偶然ですね。」


「……な、統括者!?なぜ、ここに。」


 その警備員は驚く。


「無駄ですよ。魔法統括システムは全て分かってます。この美術館の3階に展示された美術品、神の器。それが盗まれた、と言うことです。」


「……神の、器?」

「はい。この美術館に展示されていた、器です。普通に料理の方の。」


 そっちか〜。


「この極寒の国で、神から授かった器……を模したものか、本物か、何かってところか。」

「はい。おそらく、そう言うことでしょう。」


 メルトはいつも通り紙を持ちながら答える。


「……行きますか。ここにいても多分無駄です。」

「え?」


「階段から来た場合、犯人が捕まるのは時間の問題でしょう。いる意味ないです。」


「……じゃあ、どこに行くの?」


 私は歩き始めてるメルトに聞く。


「この美術館は3階建て……3階から逃げるとしたら、下だけでは無意味です。行きましょう。屋上に……それで。」


 メルトは樹が持つ、重力の証を指差しながらそういった。



ーーー



 私たちは屋上へと行った。勿論、誰にも気付かれないように。


「さあ、観念しな。」


 予想通り、そこには犯人と思われる男がいた。


「っち、救援より先にそっちが来るか……使えない奴らだ。」


 その、鳥人と思われる犯人の男はそう愚痴る。


「なんか、どこかで見たような……」


 私はその鳥人を見つめてそう呟く。


「んあ?お?久しぶりだな、てめえら!」


 その声を聞いて思い出した。


「お前は、死んでなかったのか!!アスラ!!」

「ああ。そうだ。翼はイカれちまったがな。俺は今も生きてるし、捕まってもないぜ。」


「……やはり、そうでしたか。樹たちと知り合いだったんですね。」


 メルトはそう呟く。


「この人をメルトも知ってるの?」


 私は聞く。


「はい。アスラ・マラ。彼はテトラビア……いや、魔法統括システムが長年追っている犯罪者です。過去の犯罪経歴は、速度の証の加工技術をダガランに密売したり、その他裏世界に繋がっていたり、古城跡地付近で巨大な爆発を起こした……と言った罪があります。」


「それは私たちが立ち会った……彼が殲滅の槍を使用した時のやつだね……きっと。」

「はい。そうだと思いました。」


 奴は、殲滅の槍を使った癖に……呪いを受けたはずなのに生きていた。

 いや、魔法統括システムが殲滅の槍のエネルギーを削除した影響で、きっと呪いも変に作用した結果、翼が無くなった……と言うところだろうか。


 それか単純に爆発で翼まで持っていかれたか……


「久しぶりだな、そこの人間。」


 アスラはそう言って樹の事を睨む。


「カイライ家を潰したのは、貴様だったようだな。確か名前は、樹だったか。」


 アスラは器を抱えながら歩き出す。


「ガイは殺し損ねたが、ありがとう。貴様のおかげで今俺は最高だ。憎きカイライの血が途絶えたのは大きい。」


「……世界一いらないありがとうだな。」


 樹はそう言い返す。


「それで、一体何が目的なの!?アスラ!」


「……聞かなくても察せれるだろうに。まあいい、今度こそどうせ殺すし、教えてやろう。この器は、本物だ。これは神から本当に極寒の国が授かった秘宝だ。伝説によれば、これには治癒能力がある。俺の羽だって、きっと戻るはずだ。」


 ……そう言う目論見だったんだ。


「させない!!」


 私たちは、救援が来る前にと走り出し、アスラを捉えようとする。



 そんなアスラはその器を、天に掲げ、目を閉じた。



「……待っていたぞ。さあ神よ、この物から我に、力を分けよ。」


 アスラがそう言うと同時に、私は命界へと飛ばされる。


「樹!!メルト!!」


 私と樹達は隔たれた。


「……まさか、その器は……ただの治癒能力じゃないのね?」

「そうだ。貴様の力を移す。それがこの器の神器が持つ、力だ!」


 近づくのが、罠だった。

 彼が言うことが示すもの。それはこの器があれば、私は永遠に力を奪われると言うこと。即ち勝ち目がない、と言うことだった。樹たちの力も、今はもらえない。


「……そんな。」


 私は絶望感を感じていた。



 ……その時だった。


「安心しろ。エマ。」


 命界の中に、その声が響いた。


「え?」

「だ、誰だ。」


 アスラもまた、困惑する。


「その器は、君のような愚か者の為に作ったわけじゃないんだ。だから、使えない。」


 そう言いながら、彼は入ってきた。



「……な、確かに隔てたはず。それに、なんだその姿は!」


 アスラはそうやって、その樹の姿を見て驚く。


「……いつ……き。」


 私の口からはそう溢れる。



「どういう、こと?」


「久しぶりだな。この世界の……エマ。俺だ。グレートドーンで戦った、別世界の樹だ。」

「……何で、こんな器のハシラビト……って事?」


 普通に考えたら、その樹が出てきた場所は、そう言うことになる。


「まあ半分正解みたいな、半分不正解。俺は今、母神器『運命の(いつき)』だ。まあ具体的に言えば部屋みたいな空間自体が、俺の姿っていうことになる。勿論本体は向こうの世界だ。」


「……どういうこと?じゃあ、あの器は樹が、送った器っていうこと?」


「……そういうことだ。君たちが彼女から守護神器の模倣版『因縁の刀』をもらったように、あれは真神器を模倣して作って、極寒の国を助けるために贈った器だ。名前は……『選びの器』。」


 真神器の模倣版だから……こうやって会いに来れてる。っていうこと、なのかな。


「さあ、諦めろ。その器はお前には使えない。いや、使わせない。」


「……クソっ!!なんでだよ!!!!貴様ぁぁぁぁ!!!!!」


 そう言いながら、アスラは私たちに向かって来る。


「おっと、諦めが悪いな。」


 樹は命界で椅子とかをヴィクトリアが出すのと同じように、無から紐のような物を作り出してアスラを捕らえた。


「……ありがとう。樹。助けてくれたんだね。」

「いやまあ、助かったのはこっちもだ。奴が使用することを願わなければ、命界に入ることもなかったからな……コイツの処分は、よろしく頼む。」

「うん。分かった。また会えて嬉しいかった。ありがとう!」


 私はそう言ってその別世界の白い髪に、天使のような翼を持つ樹に対して笑顔を送る。


「そうだな……。こっちの世界の俺にも、よろしくな。」


「うん!!またね!」


 ……その命界の輝く空間の中で、その二人の笑顔はそれ以上に輝いていた。



ーーー



 こうして私と樹の変わった一日は、幕を閉じた。


 また、新しい一日が始まる。




……私と彼の冒険は、日常は、終わらない。きっと、永遠に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ