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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第九章 来たる「執園」
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第087話 守護者

「ガイさん!!!!」


 私は彼に向かって叫んだ。

 でも、彼は止まらなかった。


「……ん?なんだ、これ……この世界の、俺?が槍持ってるぜ。アール!!」

「ああ。やばそうだぞ、ガイ。あの槍はまずい。ソニアが持ってた奴だぞ。直感的にわかる。」


「……止めてくるぜ。」

「お、おい、待て!!突っ込むな!!」


 下で別世界のアールとガイがそう喋っているのが聞こえた……



「……別世界の、俺か……ごめんな。あの世で会おうぜ、俺……」


「ふざけるな!!今すぐやめろ!!!!」


 そう言いながら、別世界のガイは槍を振ろうとするこの世界のガイに……突っ込んでいく。



 ……その瞬間、殲滅の槍は振られた。



 その光の槍はガイの意図した通りに、的確に敵のみを追尾していく。

 突っ込んできていた別世界のガイはそのまま光に飲まれ消えていく……


「……くそ、なんだこれ!!」


 別世界のアールもその槍の攻撃を剣で弾くが、弾ききれずに飲まれていく……



 * * *



「……なんだ??」


 俺たちの元へ……俺が戦っているアルマードの元にその光の槍は降り注ぐ……


「……な……これがこの世界の神器の力……」


 アルマードは槍の力を知らなそうだった。

 槍の存在を隠していたのか、そもそも別の世界だとつくられてすらいなかったのか、それかただ単に使われたことがないからか、それは分からない……



「……誰が、誰が槍を……」


 俺はアルマードがその槍の対処をしている間にその槍が飛んできた方向を向く……


 そこには一瞬、光に飲まれるガイの姿が……見えた気がした。


「……ガイ……まさか……。」


 この世界のガイが……使ったのか……。

 フェリスタが言っていた何かしらの条件を満たした時にできる適任者こそ、ガイだと思っていた。


 でも、今使ったらあの特呪は消えない……


 俺はその場で呆気に取られる……

 戦況は確かに、ガイのおかげで優勢に変わった……けど……


 俺はその事実が悲しい……ガイ……



「……なるほど……」


 俺が悲しむ様子……周りの様子を見て魔法統括システムはそう呟き、俺の元を離れていく。


「お、おい、どうしたんだ??」

「……秘密です。」


 * * *


 僕は5000年以上、ヴィクトリアの下でこの国を支配して来ました。

 もう、僕は十分反省しました。


 もう、いいんです。


「……アクセス許可。修復……データ、『ガイ・カイライ』『魔法結界』!!」


 僕はもう、いいんです。

 あまり信用されていない自分はもう……いらないでしょう。


 ……だから、最後にガイを蘇生させ、魔法を使える環境にして死にます……


 この魔法統括システムはヴィクトリアが作った、新たな種族のようなもの、でも本当はただの神器と同じです。オーラン達知能神器の、失敗作の様なものです。

 アクセスする事は、魔法によって私に対してかかる呪いがかからなくさせていただけの、そんな神器……


 だから、これが最後の神器へのアクセス……


 魔法がない状態でアクセスすれば、それは守護神器と同じように死ぬ……



 そもそも生かされた命……これが僕の役割だって……そう思います。



 こうして、この世界のアルマードは、死にました。


 ……目を開けると、僕は白い空間にいました。


「……お疲れ様です。アルマード。」

「……ヴィク、トリア……生きていたのか。」


 僕は目の前にいるヴィクトリアを見て困惑します。


「生きていません。ここは命界……この次元に存在する、無の空間です。」

「……無の、空間……」


「ええ。宇宙の外に別の宇宙があることはグレートドーンの存在からも明らかだと思います。でも、その空間は完全に隙間なく隣接している訳ではありません。」


 ……宇宙は、球形……のはずだから、当然です。


「その間の部分、それはビッグバンが起こるような状態……さまざまな粒子や因果が交わり結果的に無となっている場所……それがここです。命界もここです。」

「……そんなところに、なぜ貴方や僕が……」


 どうしてでしょう。


「……ここは、言ってしまえば神の領域……上位存在にのみ許される場所です。神器とは、この世界の生命を上位存在に近づけるもの……という事なのかもしれません、そうでしょう?クロノス。」


 ヴィクトリアが振り向いた先、そこにはある男がいました。


「……クロ……ノス。」

「また、神器で上位存在になった生命体……か。まあ、新たな神の誕生は興味深い。受け入れよう。」


 その男はそう言って僕のことを受け入れてくれました。よく分かりません。


「……彼はこの次元を操る神の一人……クロノスです。」

「つまらなさそうな顔をしないでくれ、ヴィクトリア君。楽しもうじゃないか、このゲームを。」


「……そんなのゲームじゃありません。おかしいです。」

「まあまあ、そう言わずに見ようじゃないか。私が選ぶ異世界の君か、ヴィクトリア君が選ぶ彼ら……」


 ……異世界の僕……つまりあのアルマードか、千歳樹か……ということでしょう。


 僕はその二人が覗く画面を見つめました。


 * * *


 俺の元から飛び立った先で魔法統括システム……アルマードは弾けて消える。


 その弾けた粒子は光となってこのテトラビアを覆い尽くす……

 そしてガイは復活した……


「魔法統括システム……その身を犠牲に、ガイを蘇生させたのか……」

「……更に理解できませんね。この世界の僕は……」


「……アルマード!」


 光の槍を受けても、流石にこいつは死なないか。


「……残っている同盟軍は……かなり少数ですか。やられましたね。」

「……これが『殲滅の槍』の力だ。」


 ガイ……ありがとう。


「ソニアが持っていた物と同じですが、呪いがあると聞いてゴミだと思っていましたが良いですね……欲しい。欲しいですね。二つの槍を持った軍隊も素敵ですね。頂きましょう。私の野望の為に!!」

「……欲しい、だと?それなら、俺を倒してからだ!!!倒してもやらねえけどな!!!」


 俺はそのまま奴に襲いかかる。

 刀で奴の刀を押さえながら、俺は重力の証を使って物理的に地面などを動かして奴めがけて飛ばし、注意を引く。


「……小賢しい。行くのです!!!ソニア!!!!!」


 アルマードがそう言った次の瞬間、そいつらは来た。


 100体以上の何かが、扉を通してやってきた……


 その姿は、まるでオーランだった。顔は違うものの、姿はそっくりだ。

 奴らはエネルギーの銃のようなものをそれぞれ持っていた。


「……どうだ、これが僕らの最終兵器……ソニア・タロース!!行け!!!」


 アルマードの言葉に従って彼らはどんどん蹂躙していく。


 ソニア一体一体が、オーランと同じくらいの力に感じた。


「知能神器レベルの兵器が……100体……だと。」


「そうだ。オーランの力を元に作られた新たな知能神器です。貴方達は、終わりです。」


 ……新たな、知能神器。

 その通りだった。

 アルマードが連れてきたその100体の知能神器はあっという間にオーセントの街を燃やし尽くしていく。


 オーセントに住んでいる人はほとんどが外の河の方まで逃げたはずだったから恐らくそれほど被害は出ていない……はずだ。


 * * *


 僕は別の世界の自分が持つ銃を避けるため……屋内へと入りました。


 物陰に隠れて、来たところを倒す……という作戦です。


「……銃を見ただけで逃げるとは、臆病ですね。もっと強く来なさい。」


 ……そりゃあ、魔法が使えたら話は違うんです。でも、使えない以上……剣では近接しか戦闘できません。



「そこか!!!」

「……くそっ」


 その吹き抜けになっていてる宿……のロビー二階の物陰に隠れていました。

 そこはバレて、その壁を破壊するかの如く撃たれまくります。


「……ちっとも近づけないし、遠くから永遠に撃たれますね……」


 その時でした……

 その宿の屋根は謎の炎によって焼かれ……赤く染まった空が露出しました。


「……一体、これは!?」


「我は実験体14号ソニア・タロース。敵を排除する。」


 その焼かれた屋根、燃える火の中から……そいつは現れました。

 ……それを見た自分は、絶望しました。


 * * *


「……ガイさん!!ガイさん!!!」


 私は100体以上の兵器を前に家の方まで避難し、急に蘇生されたガイさんを起こす。


「……いてて……ど、どうして俺は生きているんだ。」

「……よかった!!」

「お、おう……確かに槍を使ったはずだぜ……生きているなんて……」


 多分、魔法統括システムがガイさんを蘇生させた……


「蘇生されたんだよ……魔法統括システムによって……!!」


「……そう、なのか。」

「うん。ガイさんのおかげで、敵は減った。けど、新たにやばい兵器がいっぱい来たの……!」

「……だから、こんなにオーセントの街が燃えているのか。」


 ……そこへ、奴は来た。


 私たちが隠れていた家は一瞬に消え去り、灰と化した。


 そのオーランみたいな兵器……多分知能神器のような存在は肩に9という文字がついていた。


「……9号……100号中の、9号……」


 私はオーランみたいなのが100体いると考えて絶望する。


「……」


 そいつは無言で腕につけられた穴にエネルギーを貯めていく……ビームだろうか。

 ……終わった。私もガイも、こんなところで……終わるのかな。


 * * *


 ソニア達は一瞬にしてテトラビア各地へと散らばっていく。

 100体もいる奴らを止めることは不可能だった。


「……早く倒さないと、この文明は滅びますね……もっと本気を出してください。僕を楽しませてください。」


「……くそっ!!!!」


 俺はアルマードに煽られながら、刀と感覚の証……重力の証、速度の証を使いながら対抗していく……


 奴は宝石の精霊族の力……つまり原理的には証の力で幻覚を見せたり、分身したりとさまざまな攻撃を仕掛けてくる。


 奴は透明化した。


「……透明化か……」


 その手には乗らない……感覚の証で……

 俺は耳元に手を当てようとすると、その瞬間ピンポイントでピアスを破壊された……


「……なっ!!!!」

「もう、その手には乗りません。どのように能力を使っているのかがわかれば、原因を壊すまで……」


 透明化したアルマードは俺に直接攻撃するのではなく、そのままアンクレット……グローブの証の部分……と、3つ丁寧に破壊していく。


「……なん、だと……」


 証がそんなに脆いだなんて、俺は知らなかった。

 俺はしっかりと刀を構える。


 それにコイツ、多分別世界の俺と戦ったからこそ、俺のパターンを知っている!?


「……これで終わりです。」


 その声が聞こえると、俺はとてつもない力を感じて……腕を持っていかれそうになるほど強い力を受け、俺の刀を持ち続けることが困難に感じ、刀はそのまま吹っ飛んで地面に落ちる。


「……アルマード!!!!」


 奴は実体化し、刀を構える。


「またあの世界と同じように、不死の因果を断ち切ります。さようなら、この世界の千歳樹……」


 終わった。俺、結局何も救えなかった……

 勝てなかった。

 ヴィクトリアの意思も、みんなも、何もかも失敗した。


「俺は何も成し遂げてない……ごめん、エマ……」


 俺は死を覚悟する……そして俺の頬を一粒の涙が落ちて行く。




 俺の頭に奴の持つ刀が触れそうになるその刹那。


「……ブレイクハート!!!!」


 その声が響き、奴は急に苦しみ出した。


「……なんだ。これ……魔法、ですか……」


「……まったく、壁にもならないじゃない。これ、しっかりと持ちなさい。」


 俺はその声を聞いて振り返った。レイカが投げた因縁の刀を俺は受け取る。


「……レイカ!!シャガ!!!!」


「久しぶり、樹。」

「そうね。」


 俺の前に二人は現れた。


「……助けに来たわ。遥々……アレに乗って。」


 レイカは上を指差した……


 * * *


 僕の前には14号を名乗るオーランのような知能神器が現れました。


「……短い人生、でした。」


「……排除する。覚悟せよ。」


 そのソニアはビームのチャージのような物を行い始めました。

 それは恐らくこの宿の屋根を破壊する程の、この破壊。そんな物を食らえば、確実に死にます。


 その時だった。


 ソニア14号は突如意味不明な向きを向き、首を曲げ、飛び去っていきました。


「……一体、何が……」


 炎が消えた屋根……その上を見ると巨大な黒い円盤が見えました。


「……なんだあれ!?」


 そこにあったのはまるでUFO……いや、浮遊都市でした。あの時代で見た、まさにあの宇宙船でした。


「……危機一髪、ですね。私の力がなければ貴方今頃死んでますね。」


 俺の前にその天使の姿をした少女とアールは現れた。


「……姉さん。やっぱりその力、凄いね。」

「そうね。アール。」


 アール……フューが言っていた、自分が統括者になる前に、統括者を辞めた人……。


「フューが探してた、人……」

「ああ。長い間席を開けていてすまなかった……」


 アールは僕の横にあるドアに対して銃を撃つ……


「……なっ!?」

「しっかりと敵の位置は確認しておけ。」


 ドアの向こうで、別世界の自分……別世界のメルトは撃ち抜かれ、死んだ……

 アール……統括者としては無断欠勤するあたり終わってますけど……強いですね。


「リナ……。君の夢……この家、守りに来たぞ。遅くなって……ごめん。君は俺の事は覚えてないかもしれないが……俺はここを覚えているから。」


 アールはそう言いながらその建物の壁に触れ、目を閉じた。


 * * *


「ちょっとじっとしてろよ……?」

「……え?」


 ガイは私を掴みそのまま速度の証を使って素早く上昇していく。

 それによって9号から放たれるビームは避けることができた……しかし、そのビームによって4つの守護神器は消し去られたかもしれない……っていう気がしてる。


「……逃したか。」


 そのソニア9号は小さく呟く。


「……あ、ありがとう……ガイさん!でも、私も今は飛べるし……」

「無理するな。その羽でどう飛ぶっていうんだ?」


 ガイにはバレていた。


 私はガイを……神器を全て守りながら、フレアドラゴンの姿で移動した。

 その時にソニアの痺れるようなビームを羽に受けたから、もう飛べないのは事実だった……変化の証でどうにかしようとしても、少し難しい。


「……俺も英雄になれたかな。」


 ガイは私を抱えながらそう言った。


「なってるよ!充分な程に……。」

「そうか……なんか、懐かしいな……。」

「そうだね……出会った日みたい……!」


 私たちはそのまま上空へと舞い上がった。


 それは嘗てガイが乗り物で運んでくれたあの日を思い出すような心地良さ。



 ……でも、街の上……も安全じゃなかった。

 空にはソアロンが来ているのが分かった。ここ地底世界だから一体どうやってきたのかはわからないけど……



「逃がさない……」


 目の前に現れたのはソニアだ。私たちは3体のソニアに囲まれてた。


 ……46……83……38

 数字は製造順を表しているのか。それとも強さを表しているのか、私にはわからない。


 ……今度こそ、本当に終わり……



「……ウォールレイン!!!」


 その声と共に私たちを狙うソニア達は上空から降る水に飲み込まれる。


「……これで良いかのう??リエ殿。」

「ええ。ありがとうございます。マーガレットさん。さすがです。」

「年寄りとはいえ、5000年生きた知恵じゃ……まだまだ死ねん。」


「リエさん!マーガレットさん!!!それに……あの時倒した人……」

「ジャックだ!!!」


 ジャックはいつも通りツッコミする……


「……知り合いか?」

「うん!」


 ガイとともに私はその場所まで降りていく。


「……古代魔法、ですよね。」

「そうじゃ……研究の成果じゃ。」


 マーガレットさんは自信満々にそう答える。


「やっぱりマーガレットさんって、5000年前の、あのマーガレットさんだったんですね……」

「私だけ歳とったみたいじゃな……お主も変わっとらんと……」


 私は笑ってその言葉を聞く。



……反撃開始だね!

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