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【完結】神の器の追跡者  作者: Ryha
第九章 来たる「執園」
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第086話 侵略者

「……さて。キーラ、いるんだろ?」


 俺はキーラを呼ぶ。


「……何の用でしょうか。千歳樹……」


 キーラは見えないほど小さい大きさから人のサイズまで大きくなる……

 やっぱりこいつは小さいだけでここにも居た。


「キーラは知らないと思うから言うが、俺達は過去を変えた。変える前だともう既にヴィクトリアは死にそうだった。」

「それが、どうかしましたか?」

「……いや、しないならいいんだ。君は扉の神子のカーラを前の歴史だと殺した。それをなくす為に俺は過去でヴィクトリアに力を分け与えた……あと数日の命というのは変わらないと思う、けど……延命しよう、なんて思わないで欲しい……かな。」

「ですね……お願いします。真神器から私には一方的にエネルギーを送ることができますが、逆は代償が伴いますし、私はもう、死ぬ気です。」


 俺とヴィクトリアはキーラにそう訴える。ヴィクトリアは未来を知っている。自分が死ぬ時に、侵略は来る……もう生きる気はないんだ。


「……そう、ですか……。私はお母様を失いたくありません……きっとその心が、その私を動かしたのでしょう……」


「キーラ……貴方……」

「いいのです。私はお母様を殺したくない……でも、それがお母様の願いでしたら、私は諦めます……」


「……ありがとう。キーラ。」


 ヴィクトリアは、キーラのことを抱き締めた。


 ーーー


 それから、俺達は毎日ヴィクトリアの元に行き、様子を確認した。

 その三日後……ヴィクトリアは死んだ。


「……最後まで、良く生きてくれたわ。」

「ああ。ヴィクトリアは最後まで俺たちの母だった……」


 フェリスタ達は棺桶に入ったヴィクトリアを囲いながら、そう言いながら涙する。


「……死んじゃったね……」

「ああ。ありがとうヴィクトリア……安らかに眠ってくれ……」


 俺たちはその様子を背に、命界から脱出した。


「……枯れていくよ!!」


 俺たちは古城の中庭から空を見上げる。


「……後は任せてくれ。ヴィクトリア……」


「ところで、守護神器はどう使うつもり??」

「とりあえず持っていこう……フェリスタが言うには適任者がいるらしいからな。」

「そうだね。」


 * * * *


「ところで、守護神器はいったいどうやって使うんだ?如何いう対抗手段になるんだ?」


 その日、俺は命界でヴィクトリアにそう問う。


「……」


 ヴィクトリアは黙る……


「……それなら私から説明するわ。」

「……フェリスタ!!」


 ヴィクトリアの様子を見に来た俺とエマの前に、急にフェリスタはあらわれた。


「その守護神器は、ある条件を満たせば呪いがなくなるの。適任者がいるから、その人達に任せれば良いわ。見つけないとダメだけど……」


「なるほど……」


 適任者を、見つける……か。


 * * * *


 俺たちは4つの守護神器を持ちながらその古城を後にする。



 俺たちが古城から出た時、この世界には異変が起こっていた。


「……なん、だあれ。」


 空は赤く染まる。まるでマグマのように……

 あれこそが、敵が来る空なのか?


「もしかして、これが本来のテトラビアの空なんじゃない?この土地はヴィクトリアの力で地下に沈んだ反転世界……みたいな感じだったよね!」

「……そういうことか。」


 つまり、俺たちの目の前にある空は地球内部の核……か。どういう原理かはわからないが、反重力になっているという事だろう。

 で、その中心にある巨大な機械がコア環天体……ヴィケールで見た、あれか。


 つまり、テトラビアはやっぱり地球の中にある国。そして太陽はコアだったということ……

 そんな嘘みたいな世界っていうことだ。


 オーランが言っていたコア環天体を使わせないっていう話からして存在自体はあるのだろうと思っていた。やっぱりあった。


 使わせない理由はやっぱりアレスと同じように、異常気象が起こるからだろう……


「……こんな場所侵略しようだなんてロストリアの目的はなんだろうな。」

「さあね……」



 俺たちは古城の城門前からオーセント方面を見下ろす。


「……ねえ、オーセント騒がしそうだよ。」

「そうだな……異変に気がついて逃げようとしてる人で溢れてるのか……それとも……」


「……樹、乗って!!」


「え?」


 エマはそう言って髪飾りを触る。俺は急にそう言われ一瞬困惑する。


「早く!」


 エマはフレアドラゴンに変化した。

 俺は神器を乗せてから乗り込む。


 ……俺たちはオーセント中心部へと向かった。


 ーーー


「おい、やばそうだぞ。」


オーセント中心部にはもう既に敵が……来ていた。


「遅いです!樹!!」

「悪い悪い。どうなってる?」


 俺はその扉付近で戦闘しているメルトを見つける。


「こいつが急に入って来ました。」


 俺とエマはその扉の方を向く。


「おいおい、こいつ……って言い方は無いだろう?俺たちはただ交渉をしに来ただけだぜ?交渉に応じればいいだけだぜ。」


 その侵略者はそう言った。


「……お前は!??」

「ガイさん??」


 俺もエマもその男……侵略者のガイを見て驚く。


「……そうだ。俺はガイ。アルマードの命に従いここにやってきた。」


「……そうか、お前は俺たちが知ってるガイじゃ無いんだな……」

「そうか、この世界にも俺はいるのか……会ってみたいな。そいつと。」



「……つまり、侵略者って……別世界のアルマード!?」

「数日前のあの魔法統括システムの異変、あれがやっぱりそうだったか。」


 エマと俺はそう考える。


「……正解だぜ。この世界は随分と豊かじゃねぇか。あの世界と違って。」


 その男……ガイは俺めがけて剣で突撃する……

 俺はその攻撃を咄嗟に刀を抜いて受ける。


「……まさか、ガイと剣を交えるとはな……」

「まあ、流石に直ぐには倒せないか……」


 その別世界のガイはそう笑う。


 別世界の人達が侵略者というところに関しては案外受け入れれた。

 俺たちは別世界の自分たちを見てきた……だから別に不自然ではなかった……けど、こうして仲間……知り合いを相手にするのは少しだけ心にくるものがある。


「……交渉ってなんなの??」


 俺が別世界のガイと戦っている後ろでエマとメルトは会話する。


「奴はここを植民地にするって、そう言い出したんです……」

「なるほど。それは成立するわけがないね……」

「はい。」

「アルマードってさっき言ってたからきっと銀河同盟……かな!」

「そうですね。」


「……おい、喋ってないで戦ってくれ!!」


 俺はガイの猛攻を避けながら隙を狙う……



「流石に相手が悪かったか……そろそろ来い……お前達!!」


 ガイがそう言うと結びの扉から数多くの敵が現れる。


「やばそうだね……!」

「ここじゃ魔法は反魔法結界で魔法は使えないから、僕は外から援護します。」


「わかった。頼む!」


「私も!」


 エマはクレオールの姿になる。


「……貴様の相手は俺だ。」

「誰?」


 大勢の敵の中からエマに向かって誰かが飛んで行く……



「俺はアール。アルマードの目指す世界がみたい。その為にお前を倒す!!」



 その敵は、アールだった。アールは銃でエマを撃ち抜こうとする。


「……アール!!?」


 その姿を見てエマは驚く。

 咄嗟にエマは障壁の証でその銃弾を弾く。


「……なん、で……」


「エマ!!同じ人でも敵は敵だ!!気を抜くな!!!」


 俺はガイの剣を受けながら叫ぶ。


「……う、うん。」



 少し心配だが、俺はエマを任せる。

 ……くそ……数が多すぎる。まずはガイからだ。


「よそ見している暇など無い。死んでもらうぜ。」

「くそ……どうしたら。」


 どうしたら……もっと戦力がないと……


 敵はどんどん侵入してきて、一般市民を襲っていく……

 それはもちろんカーラも例外ではない。カーラや扉を使用しようと並んでいた人たちは狙われ、逃げていた。


 その時だった。


「待たせたな。」

「……フュー!!」


 俺と敵のガイが戦っているところに、フューが来て敵のガイは動きが止まる。


「……統括者全員出動です。」


 そのアルマードの姿をしたデジタルデータのような存在……魔法統括システムもやって来た。


「魔法統括システム!!大丈夫なのか??いいのか?」


「……なん、だと、アルマード……だと。」


 その敵のガイはその姿を見て驚く。


 ヴィクトリアが死んだ今、奴はおかしなことになっても、裏切ってもおかしくないはず……

 正直、裏切られるんじゃないかとは思っていた。けど、彼は裏切らなかった。


「大丈夫です。裏切りませんから安心してください。僕も加勢します。」

「……そうか。助かった。」


 また一人、また一人と市民がやられていくその時間が、彼ら統括者の到着によってなんとかなった。


「とりあえず、国民の避難はなんとか間に合ってる。統括者はそれなりの訓練があるから少しくらいは止めれると思う。」

「ああ。助かった、フュー。」


 俺はフューと特に仲がいいわけではない。普通に彼のことを知っている程度だ。


 そして魔法統括システムは本当にしっかりと味方のようだった。

 アクセスなんたら……がないのは魔法による統括がなくなったから、だろうか。あれがいわゆる魔法による制御だったのだろう。


「……くそ。アルマードも敵にいるのか……」


 敵のガイはそう呟く。


「下がっていなさい。ガイ。ここからは僕が彼の相手をします。」


「……アルマード様。しかし……」

「貴方では彼に、千歳樹には敵いません。引きなさい。」

「……はい。」


 俺が過去で倒した男……アルマードが俺の前に現れた。

 奴はガイに圧をかけて引かせる。


「さて……ここの世界だと私は負けて、ヴィクトリアの犬になっていると……」

「犬ではありません。私は変わっただけです。今の貴方とは違います。……決めますか。どちらが本当のアルマードか。」


 魔法統括システムのアルマードはそう、言って勝負を求める。

 それに対して奴は因縁の刀を抜く。


「その刀……」

「そう。私の世界では貴方は私に負けました。この刀……これは貴方の物でしたね。」

「……やっぱり、そうか。」


 そうだと思った。俺が負けたからこそ、彼らはこの世界も征服する為にそのままここに侵略してきた……と。


「どちらが本当のアルマードか……と行きたいところですがまずは貴方を倒します。さあ、もう一度殺します。千歳樹!!」


 奴はそう言って俺に向かってくる……


 ……因縁の刀を持つ物同士……俺とアルマードの戦闘は、始まった。


 * * *


「……どうして、どうして魔法が使えない……ここはもう半魔法結界がないはずです……」


 僕は結びの扉から放れ、魔法を使い樹達を援護しようとします。


 しかし、魔法は使えません。


「……まさか、この空の異変が……」


 空……そこは赤く染まっています。

 そこには見えたはずの光の粒子がもう、なくなっていました。


「……やあ、この世界の僕……メルト・レイ・エルフォード。元気にしていますか?」


 そこに現れたのは、自分でした……しかし彼の持つものは銃でした。

 魔法が使えない今の自分は、剣で戦うしかない……


「……アルマードにひれ伏しているんですね……あなた。」

「神を信仰するのは当然です……」


 そう言いながら彼は僕めがけて銃を何発も撃ってきます。その銃はアサルトライフル……僕は咄嗟に近くの建物……人が逃げた後の誰もいない建物に逃げ込み、銃を対策しました。


 * * *


「アール……」


 私は銃を持ったアールに襲われる。


「……この世界の月城エマは奴隷じゃないのか……」

「奴隷!?」


「しかも妙な力があるみたいだな……」


 妙な力……私のクレオールの力のこと……かな。


 でも、ここは扉の近く……反魔法結界は扉自体にかかっているからクレオールの力も実質ないような物……


 それでも、飛べない彼に対して飛べる私は圧倒的に有利だった。


「でしょ!存分にその力を味わいな!!」


 私はクレオールの姿……普段の私に羽が生えた状態を維持しながら空を飛び、弾を避けて彼の元へと近づきそのままいつものナイフで斬りかかろうとする。


 守護神器は足元に置いて置いた。

 まあ、呪いがあるし多分誰も持とうとはしない……と思うから置いておいた。


「取った!!」


 アールが放つ弾丸を全て避けながら彼の首元を斬ろうと私は襲う……


 ……ごめんね。アール。本当は殺したくないけど……侵略者……だもんね。


 その時だった。


「……遅い!!」


 私が斬ろうとするところにその男……別世界のガイは速度の証をつけた脚で私の腹部を蹴って吹っ飛ばす……


 私は遠くに飛ばされる……


「……ぐっ……」


 私は吐血しながら飛んでいた。

 障壁もろとも蹴りで壊されていた……っぽい。

 しかも、樹の相手をしていたはずの別世界のガイがこっちに来た……


 私は遠くでアルマードと戦う樹の様子が見えた。

 ……ごめん。樹……私じゃ迷っちゃうし、無理かも……

 私は少し悲しく思いながら吹っ飛ばされていた。


「……泣くな、エマ。強くなったんだろ?」


 その吹っ飛びは急に止まった。


「……ガイ……さん。」

「それに、この槍こんなところに捨てておくなよ、使われたら終わりだぜ?」


 ……私が知ってる、この世界のガイが助けてくれた。


「久しぶり……ありがとう!」

「お安い御用さ。で、今の状況は??」

「……攻め込んできた敵……別世界のガイさんと、その他……いっぱい侵略者が来てる……」


「了解……じゃあ、俺はこの槍で一気に殲滅してくるぜ。」


 ガイはそういった……


「え?だめだよ!死んじゃう……」

「いいんだ。俺はこの槍を使う事がきっと使命……その為にここまで生きてると思うんだ。」


「……どう、して……」


「俺はあの時、エマ達がすごいなって思ったんだぜ……戦わずに俺は治療に専念したそしてここに来たら襲われて、助けられた……樹とエマはダガランを救った英雄。俺なんて……だから今度は俺が樹とエマを救う。」


 彼は殲滅の槍を持ち、背中を見せながらそう言い放つ。

 その覚悟は強そうだった……


「……でも……」


「……俺の後は、頼むぜ。」


 ガイは私の言葉を遮って顔だけ振り返って笑う。



……死ぬ気で彼はその槍を握り、その空には無数の光の槍が現れた。

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