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呪われた屋敷に、住み込みで働きます!  作者: 工藤 でん


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23/27

【23】 それぞれの気持ち

甘味成分が多量に含まれます。

ご注意ください。

マーメリズは自室で本を読んでいて、疲れ始めた目を天井に向けた。

夜の帳はとうに降りていて、自分で起こした火魔法の明かりだけがマーメリズの周りを明るく照らしていた。



マーメリズはコーキのドラゴンの呪いがなくなってからも、この屋敷の同居人として暮らしていた。

本来ならコーキの寝落ちが無くなれば雇用関係は解消されるはずである。その辺を匂わせて話すと、コーキとラクトから「見捨てないで」「まさか出ていくなんて言わないよな」的な視線で引き止められ、今に至っている。来たばかりの頃のゴミ屋敷を思い出すと……自分にできることはやろう、と思うマーメリズであった。



マーメリズは、今まで読んでいた本をサイドテーブルに置いた。タインより渡された貴族作法読本という本である。じとっと、本をねめつけてしまった。

そんなに分厚くはないし、挿絵も入って読みやすいし、一応貴族の端くれだからちょっと読んでおいた方がいいな、と言われたのだが……


……クソ難しいじゃないですか!

何がちょっと読んで、ですか!

今度タインさんに会ったら、ブラックを降臨させましょう。



マーメリズはそう心に誓うと、立ち上がった。

少し体が冷えてしまった。

温かい物がほしくなったのだ。




マーメリズが台所に向かうと、リビングから明かりが漏れていた。

明かりの魔道具消し忘れたかな、とリビングのドアを何気なく開けた。マーメリズはそのまま壁に張り付くことになった。視線が一点に集中する。


大人の姿のコーキが、ソファで酒盃を傾けていた。



物音に振り向いた大人のコーキは、相変わらずのエロイケメンっぷりだった。大人の体仕様の黒いローブを着ている。薄い茶色と炎色の髪が明かりに照らされて、その美貌を彩っていた。マーメリズは自分の内蔵が、ぎゅうぎゅう締め付けられるような感じがした。狐の杜以来である。


コーキはマーメリズを認めて薄く笑った。それだけで甘さがダダ漏れる。甘い香りが漂ってくるかのようだった。



「あ、マーミィだ」

「きょ、今日は満月、でしたっけ……?」

「そうだよ。何キョドってるの?」

「……満月であることと、その副作用について失念していました」

「副作用ってこれのこと?」


コーキが自分の頬を引っ張った。そんなことをしても美形が崩れないとは、どうなっているのか。マーメリズは若干呆れながらコーキを眺めた。



コーキが手招きするので、マーメリズは恐る恐るコーキと距離を置いてソファに腰を下ろした。もちろんコーキは簡単に距離を詰めてくる。

そういう性格なんだと分かっていてもたじろいてしまった。ローブで目立たないとはいえ立派な男性の体格、さらに極上の美貌がくっついてくると、マーメリズの心臓は運動過多に陥ってしまう。さらに聞きなれない低い声で名前を呼ばれると、心臓は止まりかける。

マーメリズはばくばくの心臓を抑えて、コーキに待ったをかけた。


「コーキ、ちょっと距離置いて。待て、です」

「なんでー?」

「あなた、自分の顔の破壊力、わかってます?!」

「うん、気にしてない」

「気にして下さいよ。私の心臓壊れます」

「あははは。マーミィって可愛いね」



笑いながら、コーキはマーメリズと少し距離を置いてくれた。氷の入った酒盃を傾けた。

マーメリズはそれを珍しそうに見ていた。コーキは普段、体こそ子供だが酒は飲めるはずだ。一度二人で泥酔したこともある。

今日のように、一人で酒を嗜む姿は見たことがなかった。



「……お酒、飲むんですね」

「たまにはね。マーミィもいる?」

「私はもう、お酒は金輪際いただきません」

「あは。この間二日酔い酷かったもんね」

「この家でお酒を嗜むのは、キュービだけかと思ってました」

「この酒もキュービからくすねてるけど。

……おれは今、眠れない夜を堪能中」



にやりと笑ったコーキの言葉は深い。

眠りたくても眠れない十二年があったのだ。

眠れない夜を過ごし続けてきて、いつでも眠れる夜が訪れるようになった。その夜を堪能するというのは、コーキにしかわからない贅沢な時間なのだろう。



「……ありがとな、マーミィ」

「……はい?」

「ちゃんと礼を言ってなかった。

ドラゴンの呪いから解放してくれたのは、君とキュービだ。感謝している」

「あの……たまたま。たまたま上手くいったんです。

キュービがホワイトドラゴンであったり、お庭に聖水が湧いたり、いろんな偶然が味方してくれて」

「君が、聖女の力を持っていたり、とかね」



コーキの目が甘く揺らめいた。

コーキが大きな手を伸ばして、マーメリズの髪を一筋指に絡め取った。優しい感触にマーメリズはドキリとする。

コーキの薄い唇が、弧を描いていた。


「君を選んで正解だった。おれの直感は大したもんだ……って、今なら言える」

「そうは思わない時期もあった、ってことですよね」

「面白い子だなーとは、思っていたけど」

「面白い……ですか?」

「まあ、ラクトは始め嫌がってたし、凄まじい世間知らずだな、ってのはあったけど。

だけど、呪いには妙に強いし、何より周囲への適応力が抜群で、気付いたらずっと深い所まで距離を縮めてきていて……目が離せなかったな」

「……そんな風に見られてたなんて、知りませんでした」

「……ほらね、世間知らず」



くすり、と笑うコーキを、マーメリズはムッと見返した。これでも少しは世間を知った気になってきたところなのだ。

むくれたマーメリズの頭をコーキが撫でた。ダークブラウンの髪がコーキの大きな手に掛かった。

そのまま顔を寄せてきた。

唐突に近付いた世界遺産級の貴重な美貌に、マーメリズは硬直した。身動きなど、取れなかった。

コーキはマーメリズの耳元で囁いた。


「……お礼に、キスの仕方を教えてあげる」



コーキはマーメリズの口に、ちゅっと唇を付けた。

マーメリズは近すぎる距離のコーキから、目を離せないでいた。どこを見ても整っている。そして、甘い。体の芯がとろけてしまうような気がした。

コーキがにっと笑う。


「……これが君の言う、ちゅーね」

「……!」

「キスっていうのはね……」


コーキの手がマーメリズを抱き寄せた。

深く口付けられて、マーメリズは軽くパニックを起こした。口の中に何かが侵入している。マーメリズを求めて動いている。捕えられる。

頭の芯がじんと痺れるような気がした。マーメリズを絡め取るコーキは執拗で、マーメリズはそのまま蕩けてしまいそうだった。このままだと溺れる。頭がコーキだけになる。他に考えられなくなる。だけど――


長いようでそうでもなかったかもしれない時間が過ぎて、マーメリズの口の中から侵入者が去っていった。

酒の味がしていた。



唇を離して極甘な表情を浮かべたコーキを、マーメリズは呆然としたまま見つめていた。この、どこにも非の打ち所がない美貌の男と、自分は今何をしたのか。口の中の記憶が意識を強めた。



ふと、コーキがマーメリズの背後に目を向けた。

一瞬目を見張り、次いでイタズラを見つかった小僧のような笑みを浮かべた。

コーキはマーメリズの肩に顎を乗せ、背後にいる人影に聞こえるように呟いた。


「あーあ、見られちゃった」



マーメリズはそれを聞いて振り向いた。

リビングのドアに、唖然とした様子のラクトが佇んでいた。



マーメリズの思考が固まった。コーキは今、見られちゃったって言った。……何を?

何をって……コーキとキスしているところ、ですかっ?! ラクトに、見られたっ?! キスしてた顔を見られたっ?!



氷魔法の最強クラスをかけられたかのようにフリーズしたマーメリズから離れ、コーキが酒盃を持ってラクトの方へ赴いた。


ラクトは、じっとコーキに鋭い視線を送っている。父親に向ける視線ではなく、一人の男としてコーキに対峙した。

それを横目に、コーキはラクトの脇を通り過ぎた。



「……いつまでもボヤボヤしてんなら、かっ攫うぞ」

「……すっこんでろ、ジジイ」



コーキはラクトの言葉を鼻で笑って、自室へ戻っていった。トントンと階段を上る音がして消えた。



それを見届けて、ラクトはマーメリズを振り向いた。

マーメリズは両手で顔を隠してソファで小さくなっていた。



ラクトは先程の光景を再現しようとする頭を強く振って、マーメリズに近付いた。片膝をついてマーメリズに向き合った。これを聞くのはかなりの勇気が必要だった。


「……マーミィ」

「……」

「君はコーキが、好きなのか?」


ラクトの声がとても静かで、それが意外で、マーメリズはそろそろと顔から手を下ろした。

まっすぐに自分を見つめてくるラクトがいた。

いつものように真面目で真摯な青い目が、マーメリズの言葉を待っていた。



マーメリズは言葉にするのを迷って、違う言い方を考えて、でも結局ため息と共に諦めた。

ラクトに対して誤魔化した言葉を使うなんて、そんなことはできなかった。こんなにまっすぐ自分に向き合ってくれているのに、不誠実な言葉なんか使えるわけがない。



マーメリズはコーキの座っていた場所を見ながら、口を開いた。


「……私は、コーキのことが好き、だったんでしょうね。

ラクトの部屋で写真を見た時から」

「……あれか」


ラクトが呟いた。

自分の部屋に置いてある集合写真に、大人の姿のコーキが写っている。

マーメリズがいつ見たのかは知らないが、目にする機会があったのだと思った。



「……私だってこれでも女子ですから、かっこいい人を見るとキュンてします。コーキに至っては行き過ぎて、ドキュンでしたが」

「……まあ、あれは。コーキはああだから」

「あの顔であの体格で、性格はコーキのままだから、どんどん惹かれちゃうんです。

私、コーキのこと好きなんだなあって思ってて」

「……」

「子供っぽいのにすごく大人で、甘えっ子なのに大事なところは頼らせなくて、翻弄されて、でもしょうがないや恋してるんだから、って思ってて」


マーメリズは苦笑いを浮かべた。

話しながら、自分の気持ちの正体が見えてきていた。


「私は母様(ははさま)に恋をしなさいと言われていたから、ずっと焦っていたんですね。恋をしなければいけないって。

そこに極上の美貌の持ち主が現れて、自分のことを気にしてくれてるようで、恋に落ちないわけがないですよ」

「……うん」

「でもね、さっきわかりました。

私は恋をしてる自分に酔っていただけだなって。本当に好きになったわけじゃないって」



マーメリズはコーキが座っていた場所を指で弾いた。自分とキスしていたコーキを思い出す。

余裕をもって自分に触れる、コーキの手は慣れすぎていた。



「だって、ちょっと気に入った女の子だったら、誰とでもあんなキスできる男の人、私には無理です」

「……!」

「遊びで付き合うとか、そういうの全然わからなくて。

好きになったらちゃんとずっと好きでいたいですし、相手にもそう思ってもらいたい。

私は世間知らずで、お子様なのです。高度な恋愛なんて、訳わかんないです」



ラクトは顔を伏せていた。

その表情が見えなくて、マーメリズは少し不安になった。

ラクトの肩と金髪が、小刻みに揺れ始じめた。

よく見ると、歯を食いしばって笑いを堪えていた。

マーメリズはカチンときた。完全に笑われている。

マーメリズは腹立ちまぎれに、こちらを向いていたラクトのつむじを、ぎゅうっと押してやった。

その手をラクトが、素早くつかんだ。

笑いを含んだ顔でマーメリズを見つめた。


「……ごめん。マーミィを笑ったわけじゃないから」

「明らかに私でしょう! あまりにも幼いんで呆れたんでしょう!」

「違うよ。

百戦錬磨のコーキが、このザマかと思って」


ラクトはマーメリズの手を握ったまま、喉の奥で笑った。


「俺のチビの頃の記憶でも、コーキってすごい女にモテてたからさ。女の扱い上手いし、あしらえるし。

この男にかかれば、落とせない女なんかいないんだ、と思わせるくらい。俺はそんなの、ずっと見てきてるわけ」

「あー……分かるような」

「それが、マーミィは一刀両断じゃん。あんな男、無理って」

「……」

「そうなんだよな。いろんな子がいるんだよなな。コーキみたいなのがダメな子がいて、当たり前」

「……なんか、すみません」

「俺にしなよ、マーミィ」



ラクトがふいに真剣な目をした。

澄んだ切れ長の青い目が、マーメリズを見つめている。

握った手に力がこもった。


「俺は君しか見てないよ。他には誰もいらない。

君だけを欲しいと思っている」

「ラクト……」

「……俺じゃ、ダメか?

年下だし、頼りないし、まだまだ弱いし。

俺じゃ、君の隣に相応しくないか?」



マーメリズはラクトの強い視線を受けて、堪らずに目を反らせた。

少し困ったように眉を寄せ、考えている。

その様子を見て、ラクトは軽く絶望を味わっていた。これでダメならもう終わりだと、括りたくない腹を括る覚悟を決めていた。

マーメリズはやはり困った顔をしながら、ラクトに視線を戻した。



「……あの、ですね」

「……なん、でしょうか」


思わず敬語になっているラクトにも気付かず、マーメリズは何度か瞬きをして、ラクトを真っ直ぐに見つめた。

ラクトの緊張がピークに達していた。



「……それで、私はどうすればいいんでしょうか?」

「……え?」

「ラクトの言っている意味がちょっとわからなくて、ですね」


ラクトの思考が停止した。

全く伝わっていなかったことだけは、理解した。

言っている意味がわからない? そんなにややこしい話、したか?

マーメリズは難しそうな顔で唸っている。



「だから、高度な恋愛というやつは、言葉が分かりづらくていけません。

私は物じゃないですし、欲しくてもほいほいあげたりできないわけです。ラクトだって物ではないので、私の隣にポンと置いておけないわけで」

「……マーミィ、ちょっと」

「一体私はどうしたら、ラクトが思うような私になれるのかと……」



ラクトは腹を括った。

また別の意味で腹を括ることになるとは思わなかった。

物凄く恥ずかしいからオブラートに包んでいたのに、この女性はオブラートを消化できない性質だった。

自分の顔は真っ赤だろう。もう関係ない。たくさん見せてきたし、今更だ。

恥なんて、今ここでかなぐり捨ててやる。



「マーミィ!」

「はい?」

「好きだ」

「……はいい?」


ラクトはマーメリズの両肩を掴んだ。

その目を覗き込んで、ゆっくりと言った。

青い目が真剣な色をしていた。


「君のことが、好きなんだ」

「……」

「ずっと好きだったんだ。マーミィに拒絶されるのが怖くて、言えなかった。君の気持ちがどこにあるかわからなくて。

でもそんなの関係ないや。俺の気持ちは決まってるんだから」

「……!」

「好きだよ、カミュ」



マーメリズ、本名カミュは、ラクトの言葉を理解した。

ようやく理解できた。今までラクトが言っていた謎めいた言葉が、全部繋がった。

好きだってことが前提なら、理解出来ることだったのだ。目の前の難問が、さらさらと解けていった。



マーメリズは体の力が抜けて、ラクトの腕の中に倒れ込んだ。

ラクトが恐る恐る抱きしめてきた。


「カミュ?」

「……遅いです」

「えー……と?」

「好き、が遅いです!

それさえ早く言ってくれたら、ちゃんとわかったのに!」

「何怒ってんの……」

「だって、結構前からですよね!」

「ああ、うん……」

「かなり勿体ないことしたな、と思うわけです!」



顔を赤くしてぷんぷん怒っているマーメリズが、ラクトは可愛く見えてきた。

ちょっと力を込めて抱きしめてみる。

密着度が上がった。


「……勿体ないって、どういうこと?」

「ラクトがカッコよくなったなとか、やさしいなとか、ありがとうって伝えたい時とか、きゅんってしてた気がするんです。でもずっと私はコーキに恋してるからって、気のせいにしちゃってたんです!」

「へえ」

「ラクトにキュンキュンする場面、かなり逃しちゃってるじゃないですか! 早く言えってんですよ!

好きって分かってたら、逃さなかったのに!」

「……くくっ」

「ああ! ラクトがまた笑った!」



マーメリズは笑ったラクトの顔がやけに近いことに、今更気づいた。見た事の無いほど甘い目をしたラクトが、自分を見ていた。

マーメリズは胸が高まり始めていることを自覚した。

コーキの時のように劇的なものではなくて、じわじわと温かくなるものだった。心臓が心地よく速まっていた。



「……ラクト?

なんだか、やけに近くありません?」

「好きな人は近くで見たいから」

「……!

ラ、ラクト。さっきの好き、から、あなたの中にあった何かの壁が、ぶっ壊れましたね?」

「俺はもう、怖いものなんか何もないからね」

「それにしても……」

「カミュに高度な質問するよ。

……俺にキュンキュンしたかったってことは、君は俺の事が好き、って事でいいんだよね」

「……えと、あのー」

「他に考えようがないんだけど」

「……」

「俺の事好きって事で、いいんだよね?」



核心をついたラクトの言葉に、マーメリズは屈服せざるを得なかった。

コーキに恋していたという思いを脱ぎ去ってみると、ラクトを見ていた自分しか残っていなかった。

マーメリズは甘すぎる目がちょっと重いな、と思いながらラクトを見返した。どんどん甘さが増している気がしていた。


「……ラクトが好きです」

「やった」


ぎゅうっとラクトが抱きしめてきた。

知っている体温だった。

この温かさは安心できることを、マーメリズは知っていた。そしてこの温かさを今日から独占できるのかと思い、心がざわめき出した。唐突にラクトととの、ゼロに近い距離を感じてしまった。


……これは、ちょっと、幸福度高すぎて鼻血出そうです。深く考えるのはやめましょう。初心者には早すぎます!



ラクトがふいに体を離した。

そうだ、と小声で呟いている。

何事かと訝しむマーメリズに、視線を合わせてきた。

甘さと、挑戦的な光が宿っていた。



「……俺、君と付き合うことができたら、絶対にやろうと思ってたことがあって」

「……ええ」

「もう、ずっと我慢してたから、今解禁する」

「は、はい」

「今後、俺意外でやるの、禁止な」



ラクトはそう言って、マーメリズの膝に頭を預けてきた。

マーメリズの膝で、金色と炎色の髪が寝転んでいた。いつも薄茶色の髪がいたので、新鮮だった。

マーメリズはそっと、膝のラクトを覗き込んだ。



「ラクト、絶対にやろうと思ってたって……」

「膝枕だよ。悪いかよ。

……今までコーキのことが羨ましくなかったわけ、ないだろっ」


ラクトの顔は赤い。

だが、明らかに開き直っていた。

赤い顔のまま、文句は続く。


「君のことが好きだって自覚してからは、特にさ!

寝落ちは仕方がないにしても、なんでいつも膝枕してんだよっ」

「……ぷっ」

「笑えよ。俺は小さい男なんだ。

散々見せつけやがって、あのクソ親父。

最近じゃキュービまでのうのうと膝で寝てるし、コーキに至っては触ってるし」

「あ、あははは」

「コーキの寝落ちの呪いはなくなったし、キュービは聖水に叩き込んでおけばいいし。

だから俺以外の膝枕は、今後禁止! 絶対ダメ!」



過去を思い出して怒っている、ラクトが可愛い。

マーメリズはラクトのサラサラの金髪を撫でた。炎色の髪も優しく撫でる。

愛おしさで胸がいっぱいになるなんて、初めての経験だった。






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― 新着の感想 ―
[一言] めちゃキュンキュン場面でしたね!(〃ω〃) こういうの大好き!めちゃ良い! 私もやりたいなぁ…/// もっとこういう場面、作って欲しいっ! お互い執筆がんばろー!(`・ω・´)
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