【23】 それぞれの気持ち
甘味成分が多量に含まれます。
ご注意ください。
マーメリズは自室で本を読んでいて、疲れ始めた目を天井に向けた。
夜の帳はとうに降りていて、自分で起こした火魔法の明かりだけがマーメリズの周りを明るく照らしていた。
マーメリズはコーキのドラゴンの呪いがなくなってからも、この屋敷の同居人として暮らしていた。
本来ならコーキの寝落ちが無くなれば雇用関係は解消されるはずである。その辺を匂わせて話すと、コーキとラクトから「見捨てないで」「まさか出ていくなんて言わないよな」的な視線で引き止められ、今に至っている。来たばかりの頃のゴミ屋敷を思い出すと……自分にできることはやろう、と思うマーメリズであった。
マーメリズは、今まで読んでいた本をサイドテーブルに置いた。タインより渡された貴族作法読本という本である。じとっと、本をねめつけてしまった。
そんなに分厚くはないし、挿絵も入って読みやすいし、一応貴族の端くれだからちょっと読んでおいた方がいいな、と言われたのだが……
……クソ難しいじゃないですか!
何がちょっと読んで、ですか!
今度タインさんに会ったら、ブラックを降臨させましょう。
マーメリズはそう心に誓うと、立ち上がった。
少し体が冷えてしまった。
温かい物がほしくなったのだ。
マーメリズが台所に向かうと、リビングから明かりが漏れていた。
明かりの魔道具消し忘れたかな、とリビングのドアを何気なく開けた。マーメリズはそのまま壁に張り付くことになった。視線が一点に集中する。
大人の姿のコーキが、ソファで酒盃を傾けていた。
物音に振り向いた大人のコーキは、相変わらずのエロイケメンっぷりだった。大人の体仕様の黒いローブを着ている。薄い茶色と炎色の髪が明かりに照らされて、その美貌を彩っていた。マーメリズは自分の内蔵が、ぎゅうぎゅう締め付けられるような感じがした。狐の杜以来である。
コーキはマーメリズを認めて薄く笑った。それだけで甘さがダダ漏れる。甘い香りが漂ってくるかのようだった。
「あ、マーミィだ」
「きょ、今日は満月、でしたっけ……?」
「そうだよ。何キョドってるの?」
「……満月であることと、その副作用について失念していました」
「副作用ってこれのこと?」
コーキが自分の頬を引っ張った。そんなことをしても美形が崩れないとは、どうなっているのか。マーメリズは若干呆れながらコーキを眺めた。
コーキが手招きするので、マーメリズは恐る恐るコーキと距離を置いてソファに腰を下ろした。もちろんコーキは簡単に距離を詰めてくる。
そういう性格なんだと分かっていてもたじろいてしまった。ローブで目立たないとはいえ立派な男性の体格、さらに極上の美貌がくっついてくると、マーメリズの心臓は運動過多に陥ってしまう。さらに聞きなれない低い声で名前を呼ばれると、心臓は止まりかける。
マーメリズはばくばくの心臓を抑えて、コーキに待ったをかけた。
「コーキ、ちょっと距離置いて。待て、です」
「なんでー?」
「あなた、自分の顔の破壊力、わかってます?!」
「うん、気にしてない」
「気にして下さいよ。私の心臓壊れます」
「あははは。マーミィって可愛いね」
笑いながら、コーキはマーメリズと少し距離を置いてくれた。氷の入った酒盃を傾けた。
マーメリズはそれを珍しそうに見ていた。コーキは普段、体こそ子供だが酒は飲めるはずだ。一度二人で泥酔したこともある。
今日のように、一人で酒を嗜む姿は見たことがなかった。
「……お酒、飲むんですね」
「たまにはね。マーミィもいる?」
「私はもう、お酒は金輪際いただきません」
「あは。この間二日酔い酷かったもんね」
「この家でお酒を嗜むのは、キュービだけかと思ってました」
「この酒もキュービからくすねてるけど。
……おれは今、眠れない夜を堪能中」
にやりと笑ったコーキの言葉は深い。
眠りたくても眠れない十二年があったのだ。
眠れない夜を過ごし続けてきて、いつでも眠れる夜が訪れるようになった。その夜を堪能するというのは、コーキにしかわからない贅沢な時間なのだろう。
「……ありがとな、マーミィ」
「……はい?」
「ちゃんと礼を言ってなかった。
ドラゴンの呪いから解放してくれたのは、君とキュービだ。感謝している」
「あの……たまたま。たまたま上手くいったんです。
キュービがホワイトドラゴンであったり、お庭に聖水が湧いたり、いろんな偶然が味方してくれて」
「君が、聖女の力を持っていたり、とかね」
コーキの目が甘く揺らめいた。
コーキが大きな手を伸ばして、マーメリズの髪を一筋指に絡め取った。優しい感触にマーメリズはドキリとする。
コーキの薄い唇が、弧を描いていた。
「君を選んで正解だった。おれの直感は大したもんだ……って、今なら言える」
「そうは思わない時期もあった、ってことですよね」
「面白い子だなーとは、思っていたけど」
「面白い……ですか?」
「まあ、ラクトは始め嫌がってたし、凄まじい世間知らずだな、ってのはあったけど。
だけど、呪いには妙に強いし、何より周囲への適応力が抜群で、気付いたらずっと深い所まで距離を縮めてきていて……目が離せなかったな」
「……そんな風に見られてたなんて、知りませんでした」
「……ほらね、世間知らず」
くすり、と笑うコーキを、マーメリズはムッと見返した。これでも少しは世間を知った気になってきたところなのだ。
むくれたマーメリズの頭をコーキが撫でた。ダークブラウンの髪がコーキの大きな手に掛かった。
そのまま顔を寄せてきた。
唐突に近付いた世界遺産級の貴重な美貌に、マーメリズは硬直した。身動きなど、取れなかった。
コーキはマーメリズの耳元で囁いた。
「……お礼に、キスの仕方を教えてあげる」
コーキはマーメリズの口に、ちゅっと唇を付けた。
マーメリズは近すぎる距離のコーキから、目を離せないでいた。どこを見ても整っている。そして、甘い。体の芯がとろけてしまうような気がした。
コーキがにっと笑う。
「……これが君の言う、ちゅーね」
「……!」
「キスっていうのはね……」
コーキの手がマーメリズを抱き寄せた。
深く口付けられて、マーメリズは軽くパニックを起こした。口の中に何かが侵入している。マーメリズを求めて動いている。捕えられる。
頭の芯がじんと痺れるような気がした。マーメリズを絡め取るコーキは執拗で、マーメリズはそのまま蕩けてしまいそうだった。このままだと溺れる。頭がコーキだけになる。他に考えられなくなる。だけど――
長いようでそうでもなかったかもしれない時間が過ぎて、マーメリズの口の中から侵入者が去っていった。
酒の味がしていた。
唇を離して極甘な表情を浮かべたコーキを、マーメリズは呆然としたまま見つめていた。この、どこにも非の打ち所がない美貌の男と、自分は今何をしたのか。口の中の記憶が意識を強めた。
ふと、コーキがマーメリズの背後に目を向けた。
一瞬目を見張り、次いでイタズラを見つかった小僧のような笑みを浮かべた。
コーキはマーメリズの肩に顎を乗せ、背後にいる人影に聞こえるように呟いた。
「あーあ、見られちゃった」
マーメリズはそれを聞いて振り向いた。
リビングのドアに、唖然とした様子のラクトが佇んでいた。
マーメリズの思考が固まった。コーキは今、見られちゃったって言った。……何を?
何をって……コーキとキスしているところ、ですかっ?! ラクトに、見られたっ?! キスしてた顔を見られたっ?!
氷魔法の最強クラスをかけられたかのようにフリーズしたマーメリズから離れ、コーキが酒盃を持ってラクトの方へ赴いた。
ラクトは、じっとコーキに鋭い視線を送っている。父親に向ける視線ではなく、一人の男としてコーキに対峙した。
それを横目に、コーキはラクトの脇を通り過ぎた。
「……いつまでもボヤボヤしてんなら、かっ攫うぞ」
「……すっこんでろ、ジジイ」
コーキはラクトの言葉を鼻で笑って、自室へ戻っていった。トントンと階段を上る音がして消えた。
それを見届けて、ラクトはマーメリズを振り向いた。
マーメリズは両手で顔を隠してソファで小さくなっていた。
ラクトは先程の光景を再現しようとする頭を強く振って、マーメリズに近付いた。片膝をついてマーメリズに向き合った。これを聞くのはかなりの勇気が必要だった。
「……マーミィ」
「……」
「君はコーキが、好きなのか?」
ラクトの声がとても静かで、それが意外で、マーメリズはそろそろと顔から手を下ろした。
まっすぐに自分を見つめてくるラクトがいた。
いつものように真面目で真摯な青い目が、マーメリズの言葉を待っていた。
マーメリズは言葉にするのを迷って、違う言い方を考えて、でも結局ため息と共に諦めた。
ラクトに対して誤魔化した言葉を使うなんて、そんなことはできなかった。こんなにまっすぐ自分に向き合ってくれているのに、不誠実な言葉なんか使えるわけがない。
マーメリズはコーキの座っていた場所を見ながら、口を開いた。
「……私は、コーキのことが好き、だったんでしょうね。
ラクトの部屋で写真を見た時から」
「……あれか」
ラクトが呟いた。
自分の部屋に置いてある集合写真に、大人の姿のコーキが写っている。
マーメリズがいつ見たのかは知らないが、目にする機会があったのだと思った。
「……私だってこれでも女子ですから、かっこいい人を見るとキュンてします。コーキに至っては行き過ぎて、ドキュンでしたが」
「……まあ、あれは。コーキはああだから」
「あの顔であの体格で、性格はコーキのままだから、どんどん惹かれちゃうんです。
私、コーキのこと好きなんだなあって思ってて」
「……」
「子供っぽいのにすごく大人で、甘えっ子なのに大事なところは頼らせなくて、翻弄されて、でもしょうがないや恋してるんだから、って思ってて」
マーメリズは苦笑いを浮かべた。
話しながら、自分の気持ちの正体が見えてきていた。
「私は母様に恋をしなさいと言われていたから、ずっと焦っていたんですね。恋をしなければいけないって。
そこに極上の美貌の持ち主が現れて、自分のことを気にしてくれてるようで、恋に落ちないわけがないですよ」
「……うん」
「でもね、さっきわかりました。
私は恋をしてる自分に酔っていただけだなって。本当に好きになったわけじゃないって」
マーメリズはコーキが座っていた場所を指で弾いた。自分とキスしていたコーキを思い出す。
余裕をもって自分に触れる、コーキの手は慣れすぎていた。
「だって、ちょっと気に入った女の子だったら、誰とでもあんなキスできる男の人、私には無理です」
「……!」
「遊びで付き合うとか、そういうの全然わからなくて。
好きになったらちゃんとずっと好きでいたいですし、相手にもそう思ってもらいたい。
私は世間知らずで、お子様なのです。高度な恋愛なんて、訳わかんないです」
ラクトは顔を伏せていた。
その表情が見えなくて、マーメリズは少し不安になった。
ラクトの肩と金髪が、小刻みに揺れ始じめた。
よく見ると、歯を食いしばって笑いを堪えていた。
マーメリズはカチンときた。完全に笑われている。
マーメリズは腹立ちまぎれに、こちらを向いていたラクトのつむじを、ぎゅうっと押してやった。
その手をラクトが、素早くつかんだ。
笑いを含んだ顔でマーメリズを見つめた。
「……ごめん。マーミィを笑ったわけじゃないから」
「明らかに私でしょう! あまりにも幼いんで呆れたんでしょう!」
「違うよ。
百戦錬磨のコーキが、このザマかと思って」
ラクトはマーメリズの手を握ったまま、喉の奥で笑った。
「俺のチビの頃の記憶でも、コーキってすごい女にモテてたからさ。女の扱い上手いし、あしらえるし。
この男にかかれば、落とせない女なんかいないんだ、と思わせるくらい。俺はそんなの、ずっと見てきてるわけ」
「あー……分かるような」
「それが、マーミィは一刀両断じゃん。あんな男、無理って」
「……」
「そうなんだよな。いろんな子がいるんだよなな。コーキみたいなのがダメな子がいて、当たり前」
「……なんか、すみません」
「俺にしなよ、マーミィ」
ラクトがふいに真剣な目をした。
澄んだ切れ長の青い目が、マーメリズを見つめている。
握った手に力がこもった。
「俺は君しか見てないよ。他には誰もいらない。
君だけを欲しいと思っている」
「ラクト……」
「……俺じゃ、ダメか?
年下だし、頼りないし、まだまだ弱いし。
俺じゃ、君の隣に相応しくないか?」
マーメリズはラクトの強い視線を受けて、堪らずに目を反らせた。
少し困ったように眉を寄せ、考えている。
その様子を見て、ラクトは軽く絶望を味わっていた。これでダメならもう終わりだと、括りたくない腹を括る覚悟を決めていた。
マーメリズはやはり困った顔をしながら、ラクトに視線を戻した。
「……あの、ですね」
「……なん、でしょうか」
思わず敬語になっているラクトにも気付かず、マーメリズは何度か瞬きをして、ラクトを真っ直ぐに見つめた。
ラクトの緊張がピークに達していた。
「……それで、私はどうすればいいんでしょうか?」
「……え?」
「ラクトの言っている意味がちょっとわからなくて、ですね」
ラクトの思考が停止した。
全く伝わっていなかったことだけは、理解した。
言っている意味がわからない? そんなにややこしい話、したか?
マーメリズは難しそうな顔で唸っている。
「だから、高度な恋愛というやつは、言葉が分かりづらくていけません。
私は物じゃないですし、欲しくてもほいほいあげたりできないわけです。ラクトだって物ではないので、私の隣にポンと置いておけないわけで」
「……マーミィ、ちょっと」
「一体私はどうしたら、ラクトが思うような私になれるのかと……」
ラクトは腹を括った。
また別の意味で腹を括ることになるとは思わなかった。
物凄く恥ずかしいからオブラートに包んでいたのに、この女性はオブラートを消化できない性質だった。
自分の顔は真っ赤だろう。もう関係ない。たくさん見せてきたし、今更だ。
恥なんて、今ここでかなぐり捨ててやる。
「マーミィ!」
「はい?」
「好きだ」
「……はいい?」
ラクトはマーメリズの両肩を掴んだ。
その目を覗き込んで、ゆっくりと言った。
青い目が真剣な色をしていた。
「君のことが、好きなんだ」
「……」
「ずっと好きだったんだ。マーミィに拒絶されるのが怖くて、言えなかった。君の気持ちがどこにあるかわからなくて。
でもそんなの関係ないや。俺の気持ちは決まってるんだから」
「……!」
「好きだよ、カミュ」
マーメリズ、本名カミュは、ラクトの言葉を理解した。
ようやく理解できた。今までラクトが言っていた謎めいた言葉が、全部繋がった。
好きだってことが前提なら、理解出来ることだったのだ。目の前の難問が、さらさらと解けていった。
マーメリズは体の力が抜けて、ラクトの腕の中に倒れ込んだ。
ラクトが恐る恐る抱きしめてきた。
「カミュ?」
「……遅いです」
「えー……と?」
「好き、が遅いです!
それさえ早く言ってくれたら、ちゃんとわかったのに!」
「何怒ってんの……」
「だって、結構前からですよね!」
「ああ、うん……」
「かなり勿体ないことしたな、と思うわけです!」
顔を赤くしてぷんぷん怒っているマーメリズが、ラクトは可愛く見えてきた。
ちょっと力を込めて抱きしめてみる。
密着度が上がった。
「……勿体ないって、どういうこと?」
「ラクトがカッコよくなったなとか、やさしいなとか、ありがとうって伝えたい時とか、きゅんってしてた気がするんです。でもずっと私はコーキに恋してるからって、気のせいにしちゃってたんです!」
「へえ」
「ラクトにキュンキュンする場面、かなり逃しちゃってるじゃないですか! 早く言えってんですよ!
好きって分かってたら、逃さなかったのに!」
「……くくっ」
「ああ! ラクトがまた笑った!」
マーメリズは笑ったラクトの顔がやけに近いことに、今更気づいた。見た事の無いほど甘い目をしたラクトが、自分を見ていた。
マーメリズは胸が高まり始めていることを自覚した。
コーキの時のように劇的なものではなくて、じわじわと温かくなるものだった。心臓が心地よく速まっていた。
「……ラクト?
なんだか、やけに近くありません?」
「好きな人は近くで見たいから」
「……!
ラ、ラクト。さっきの好き、から、あなたの中にあった何かの壁が、ぶっ壊れましたね?」
「俺はもう、怖いものなんか何もないからね」
「それにしても……」
「カミュに高度な質問するよ。
……俺にキュンキュンしたかったってことは、君は俺の事が好き、って事でいいんだよね」
「……えと、あのー」
「他に考えようがないんだけど」
「……」
「俺の事好きって事で、いいんだよね?」
核心をついたラクトの言葉に、マーメリズは屈服せざるを得なかった。
コーキに恋していたという思いを脱ぎ去ってみると、ラクトを見ていた自分しか残っていなかった。
マーメリズは甘すぎる目がちょっと重いな、と思いながらラクトを見返した。どんどん甘さが増している気がしていた。
「……ラクトが好きです」
「やった」
ぎゅうっとラクトが抱きしめてきた。
知っている体温だった。
この温かさは安心できることを、マーメリズは知っていた。そしてこの温かさを今日から独占できるのかと思い、心がざわめき出した。唐突にラクトととの、ゼロに近い距離を感じてしまった。
……これは、ちょっと、幸福度高すぎて鼻血出そうです。深く考えるのはやめましょう。初心者には早すぎます!
ラクトがふいに体を離した。
そうだ、と小声で呟いている。
何事かと訝しむマーメリズに、視線を合わせてきた。
甘さと、挑戦的な光が宿っていた。
「……俺、君と付き合うことができたら、絶対にやろうと思ってたことがあって」
「……ええ」
「もう、ずっと我慢してたから、今解禁する」
「は、はい」
「今後、俺意外でやるの、禁止な」
ラクトはそう言って、マーメリズの膝に頭を預けてきた。
マーメリズの膝で、金色と炎色の髪が寝転んでいた。いつも薄茶色の髪がいたので、新鮮だった。
マーメリズはそっと、膝のラクトを覗き込んだ。
「ラクト、絶対にやろうと思ってたって……」
「膝枕だよ。悪いかよ。
……今までコーキのことが羨ましくなかったわけ、ないだろっ」
ラクトの顔は赤い。
だが、明らかに開き直っていた。
赤い顔のまま、文句は続く。
「君のことが好きだって自覚してからは、特にさ!
寝落ちは仕方がないにしても、なんでいつも膝枕してんだよっ」
「……ぷっ」
「笑えよ。俺は小さい男なんだ。
散々見せつけやがって、あのクソ親父。
最近じゃキュービまでのうのうと膝で寝てるし、コーキに至っては触ってるし」
「あ、あははは」
「コーキの寝落ちの呪いはなくなったし、キュービは聖水に叩き込んでおけばいいし。
だから俺以外の膝枕は、今後禁止! 絶対ダメ!」
過去を思い出して怒っている、ラクトが可愛い。
マーメリズはラクトのサラサラの金髪を撫でた。炎色の髪も優しく撫でる。
愛おしさで胸がいっぱいになるなんて、初めての経験だった。




