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ReV  作者: 津坂朗
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始まりだったモノたち

  『歪』


ユトレシア王国は確かに歪といえる国である


 とは言っても、それは人間や悪魔、獣など異種族が入り混じっているというような歪ではない。


 それはまた国の形が歪などという幼稚な話でもない


 歪なのは、この国の体制である



 北東は大森林、南西は砂漠。


 生と死、正反対に囲まれた国。


外の対比に釣られたのかどうか、


 王国は、国を囲むその外壁に沿うように

国王の住む城や、貴族、裕福な民を。


 そして国の中心には貧困の段階ごとで四層に分けられたスラム街を抱える特殊な体制をしている。



 栄えるはずの国の中心は、生きる希望を失い、瞳に闇を宿した人間で溢れかえっている。


 誰かの絶望は、感染するように誰かに伝播する。

気持ちのありようは、人をあまりにも簡単に左右する。

 

 「とてもじゃないけど、安定した国とは言えないもんだな。スラムの寒さを貴族連中も理解すれば、こんなもの一瞬で終わると思うんだが。」


 スラムを中心に置いたユトレシア王国。


 その王国の東側に建った、王が住まうにしてはあまりにも質素すぎる王城の一室にて。


 そう口を開いたのは、ボサボサの茶髪を肩まで伸ばした青年だった。青年は窓からスラムとその向こうを見比べながらさらに続ける。



 「どうせまたスラムの力が有り余ってる奴らが決起集会でも始めるんだ。不毛すぎるんだよ。」


 忌々しげに言うと、青年は隣に立っていた少年に言葉を投げた。


 「どうするよ、プロメタ」

 



 「どうするって...オルキス。ユトレシアの格差を少しでもなくす政策を西側を抑えながらするしかないよ。

そんなユトレシアのゴタゴタを隣国が見逃してくれるかは知らないけどね。」



 プロメタと呼ばれる、目の下に隈がくっきりと残った少年は困ったように言う



 「まぁ、隣国を抑えようと外交でもしたら、いつ西側が動くかわからないんだけどね。このままにしてくれるほど彼らのプライドはちっぽけじゃない。」



 そう吐き捨てるように言う少年は窓を触ると、苦虫を潰したような顔でスラムの向こうに見える“もう1つ”のユトレシア王国を睨んだ。



「せめて外が友好的ならよかったけどな。

俺らに攻撃したい人間は、“外,,も”内,,も

わんさかいるってことだぜ、プロメタ。」


 今現在の国の現状を言葉にしただけで少年の心は折れそうになっていた。

 それは少年がまだ‘’国王‘’としての責務にも慣れていなかったからだ。そんな中でも考えなきゃいけないことは山ほどある


 そんな状況はまるで嵐の被害に遭っているかのようだと、少年は感じていた。ただ少年の苦悩など他者にはわからない。青年は少年の肩を叩くと、こう言った。


 「内は任せた。俺は外だ。」



 まるで当然の如く、青年はそう言いのけた。全信頼を置いたような眼差しで少年に訴えていた


それはつまりこういうことだ

 『1人で国内の政治情勢を覆せ』


 どうにかできるはずがない、と少年は頭を抱える。国王としての責任だとか、政治情勢を操れるほど巧みな手腕など持っていないのだ。

 何を考えているんだ。この男は。

あまりにも急すぎる話。準備も何もできていないの


 青年は辟易してこちらを見続ける少年を一瞥する。 

 ただ少年の様子など気にも止めずに青年“オルキス“は目的を達成するために扉へと足を踏み出す。


 城の最上階。2人の男は動き出した。お互いが別の方向から国を少しでも良くするために。オルキスは扉開け、後方に立ちすくむ少年を見つめる。否、ユトレシア最年少である国王“プロメタ“を見つめる。

 

 そして一言



「作戦開始だぜ。」



 そう不敵な笑みで言い放つと、オルキスは姿を消した。


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