悪役令嬢に転生したオタクの奮闘記
思いつきのまま疾走して描いた作品です。
以前、ツイッターやピクシブに挙げた漫画を小説化してみました。
かなりメタ発言があります。
ギャグが苦手な方は回れ右をしてください。
笑っていただけたら幸いです。
木々が映えるとある学園の裏庭にて、ある男からの呼び出しに応じて行ったら、同級生の女の肩に手をおいた呼び出し男の姿があった。
初めまして、皆様。この度、異世界に転生した私は呼び出し男こと婚約者の王子に、
「申し訳ないが、君との婚約を破棄させて欲しい。」
「は?」
「僕は彼女を愛しているんだーーーー(以下略)」
とありがちなセリフで愛でたく振られました。
「そ、そんな、、、。」
胸が苦しくなった。興奮を抑えるのに必死で、その場にはいられなくて「覚えておきなさい!」と捨て台詞を吐いてその場から逃げ出した。
「はあ、はぁ。」
思ったよりも興奮していて息が苦しく、近くの壁にもたれかかっていると黒服に身を包んだ私の従者、アウルが声をかけてきた。
「盛大に振られましたね。大丈夫ですか?」
「よっ」
「よ?」
その姿を見た私は、安堵して、今まで溜め込んできた気持ちを全て吐き出した。
涙しながら。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うおっ、うるさっ」
アウルはあまりの爆音に身を縮こませて耳を塞いだ。そこまでのリアクションをしなくても良かろうに。
実は転生する前の私は同人誌作家であった。
栄養ドリンク片手に夜なべしながら好きな推しCPの沼に浸っては描いて、描いては浸っての日々を繰り返していた。(いやー沼のお風呂は最高だね。)
そんな中、とある乙女ゲームに出会い、とある沼CPに落ちた。そう、王子×ヒロインという名の沼風呂に。(ほんとに深かったんです、by個人の感想。)
ある日、いつも通り漫画を描いていると寝落ちしてしまい、気がつくとその乙女ゲームの悪役公爵令嬢、「アリア・リドルナート」になっていた。(将来美人や!!と思ったわ)
今流行りの転生をしたと悟った。
以来私は、私の推しCPができるよう動きながら、いくつかの物語を描き、NL、BL、百合などの概念の良さ、ありとあらゆるジャンルをこの世界に広めてきた。
これがめっちゃ大好評。
今では数多くのファンを持つ人気作家である。
もちろん、その作家が私であることは一部の人しか知らない。
悪役令嬢兼人気作家が今の私である。
そしてついに、、、、つ・い・に!!
私の夢、推しCPのリアルラブライフ実現があと少しのところまで来たのです。
そう、さっきの婚約者の王子と一緒にいた女は私の推しCP、とある乙女ゲームの王子とヒロイン本人達だったのです!!
(推しのCPのイチャイチャを間近で見れる幸せ、はぁぁぁぁぁーーっもう最高)
妄想するだけで雄叫びが止まりません。
頬を赤くしながら「キャァァ、、、、、」と軽く声に出す。そんな私を冷めた目で見ながらアウルが口を開いた。
「興奮しているところ申し訳ないですが、お嬢様は今後どうするおつもりですか?」
「え?そんなの喜んで婚約破棄して、2人の見守りライフに突入するけど?」
「周りが黙っていませんよ。」
「貴女は悪評高い令嬢ですが、そんな貴女を慕う方々もいらっしゃるのです。」
「慕うって、私、わざと悪評立つ事ばかりしてきたのよ?そんな人いるの?」
「いますよ、そんな物好きが。貴女は結構抜けていますからね、例えば、王子をこっそり見つめる貴女の姿を見てファンになった方もいます。」
「うそん、まじで?」
「まじで。
そ、それに、長年お仕えしてきた俺も思うところがあります。お嬢様にはその、幸せになっていただきたい、、、です。」
「お前っ、、、、」
なんて浅はかだったのだろう私は。自分の事ばかり考えて周りの人のことなんて一度も考えていなかった。そのことに気づいた私をよそにアルムは静かに続ける。
「やっぱりお嬢様は、」
「アルム、、、、」
「あの子と幸せになるべきです。あの子をあんな顔だけの奴に渡して、自分は幸せを見届けるだけの人生なんて、、、。」
「お前、そこまで、、、、、ごめっ」と言いかけた時何かが引っかかった。
「ん?
今なんて?」
「えっ?」
アルムはキョトンとした顔になる。
「だから、お嬢様はあの子と結ばれた方が幸せだと言ったんです。何か?」
さらっといい顔をして言うアルムに一瞬目が点になったが、私の背景に電流が走る。
こ、こいつ、百合派か!!!
吹き込んだのは私であるが。
「そ、そこは王子との婚約破棄を止めるところじゃなくて?」
「はぁ?何言っているんですか。あんな男よりあの子の方が貴女を幸せにしますよ。」
「わ、私は王子×ヒロイン派なの!!見ているだけでいいの!」
「俺はヒロイン×ライバルの百合の方が好きです。
そもそも、貴女が教えてくれたんですよ、好きな人(推し)同士が幸せになる尊さを、、、。」
「くっ、正論すぎて反論できない!!」
迂闊だった、こいつがここまで百合ルートに染まっているとは・・・・
おのれ過去の私!!!
と後悔をしていた時、ある可能性が頭に浮かんだ。
「お前、ずいぶんあの子を推すじゃない。もしかして、あの子のこと好きなの?恋愛的に。
だったらなんで自分の物にしようとしないの?」
私の返答にアルムは「何言ってんだこいつ」的な呆れ顔で、
「はぁ??推しは外側から愛でるからこそ尊く推したくなるんでしょうが。何言っているんです??」
とまたもやごもっともな返答に精神HPが削られる。
「ごふぉっ、た、確かに、、」
あまりの正論で見えない吐血をした。
それでもめげずに私は反論を続けた。
「じゃ、じゃあ、、私があの子と付き合うかわりにお前は王子と付き合ってって言ったら?
私はBLもいける口よ」
「殴りますよ??」
かつて無いほどの嫌悪顔を添えて即答された。
ですよねー、そうですよねー、、、でもさーーー
「殴るって、従者が主人にそんなこと言って良いと思っているの??」
「必要とあれば言いますよ、俺だって。」
「だって、そうなったらお互い、気持ち的にハッピーじゃない!!?」
「勝手に決めつけないでください。」
「すでに私の幸せについて決めつけているお前がそれを言う!?」
「王子×ヒロイン派なら、あの子のことも好きなのでしょう?いいじゃないですか。
推しとリアルでできても問題ないでしょう。あの子はとてもいい人です。」
実はこの時、アルムは私のために自分ができることはこれくらいしかないと考えていた。
幼少期、私がアルムを助けた時から彼は私に恩を返したいと思い、ずっとそばにいた。
王子とヒロインの幸せのために自分の幸せどころか人生までも犠牲にしようとしている、ヒロインのために人生を捧げたい気持ちは分るが、あの王子のために人生を犠牲にしている私をアルムは黙って見ていられなかった。
そんなアルムの気持ちを私は知るよしもなかった。
一歩も引く気はないわね。なんで?と疑問に思う程度だった。
「前から思っていたけど、お前って王子のこと嫌い??」
「今更ですか??ええ、嫌いですけど。」
「まさかの即答?そんなに?」
「だって、おいしいところ全部持って行くじゃないですか。」
マジだわこれ。
「悪いけど、私はもう彼らのために覚悟を決めているの。邪魔をするようなら容赦しないわ」
「受けて立ちます。お嬢様がなんと言おうともう見ていられません。
ここからは実力行使で行きます。」
「そうっ好きにしなさい。」
私とアルムはこの機を境に決裂した。
ただ一つ、絶対に、必ず、「推しを幸せにする」という意志だけ一致して。
そんな私たちを見ていたヒロインが実は私の本のファンで、好みの令嬢×従者CPにばっちりあてはまる私たちをうっとりした目で見ていたとか、私たちをくっつけたいとか、画策しているという誤算を知らないまま、それぞれの幸せをかけた三つ巴戦が始まるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
前書きでも書きましたが、思いつきで書いたので続きは考えていないです。
初めての投稿です。
宜しくお願いいたします。