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異世界ハーレムを築こう!でないとハーレムの一員になる……

作者: パインマシン

 ある種の魚は、群れの中に雄がいない場合、最も強い雌が雄へと性転換を果たし、ハーレムを形成するという事が知られている。そしてどうやらこの異世界では、男はハーレムを作り、仮に作れなかった場合、女となってハーレムの一員となる義務が生じるらしい。


 この女となるのは比喩ではなく、物理的な意味で女になってしまうということだ。子供の頃は大体男女同じくらいの数だが、大人になるとハーレム形成をしはじめるために一気に男の数が減る。さらに女側も弱い男に下剋上しはじめたりもするため、しっちゃかめっちゃかになりながら、多くのハーレムが出来上がるというわけだ。


 さてうららかな日差しの中、国立アルデルト魔法学校に向けて、俺は準備を進めていた。

 この学校は、生活に欠かせない魔法技術を学ぶとともに、ハーレム形成をしやすくするための場所でもある。多種多様な種族の出会いの場であるため、ここでは毎日熾烈なハーレム争いが行なわれているのだ。


 俺は男だ、ただしそんな言葉もこの世界では何の意味もない、負けたら女としてハーレムの一員に組み込まれてしまう。優秀な男のハーレムの一員になれば、確かに安泰に暮らしていけるかもしれない。しかしその分、自分の遺伝子が残る可能性は低くなる、そのため俺たちロズランドの民は最強の男を目指して、日夜研鑽に励むのだ。


早速学園の中に入ると、そこは人のごった返しで、しかし彼らの血走った眼は決して明るい学園生活が待っているのではないということを物語っている。さて、まずは手駒(ハーレムの一員)を増やしたいところだが、手ごろな人はいないだろうか。


 おっ、あの子なんかはいいんじゃないか。メカクレ系で凄い周りを見ている、まずはああいう御しやすそうな子から順に加えていった方がいい。早速、俺は声をかける。


「あ、そこの人、ちょっといいかな。俺、アルカ・トルンバードっていうんだけど、田舎から出てきたばかりでさ~、滅茶苦茶不安なんだよね。友達できるかなってさ、見てる限り君も不安げな顔してるし、友達いないんでしょ、あ、これ悪口かなんかに聞こえたらごめんね!だからさ、友達になってくれないかな~って思うわけ」


「え!?あの……その……」


結局コミュニケーションなんて主導権を握り続けて、圧倒すれば勝てる。これは極論ではあるものの、この弱肉強食の学園内では当然の理屈だ。この後も俺は一方的にナンパみたいな、軽い口調で喋り続け、友達になることに成功したのだった。


彼の名前はミシェルと言って、炎魔法の使い手らしい。そのまま、学園内を一緒に見て回っていると突如として声をかけられる。


「お前、うちらのオモチャになに手ぇ、出してるの?」

「ひぃ!」


 ミシェルが怯え、俺の後ろに隠れる。見るとこてこての不良集団が、何やら不機嫌そうにこちらを見ている。これは手駒ゲットのチャンスだ!


「何か文句あるのか?ミシェルは俺のハーレムの一員だぞ」

「え!?ちょっとまってよ、アルカ君!僕友達じゃなかったの、ていうか早く逃げた方がいいって」

「逃げるったってそうはいかないぜ、先に落とし前つけさせなきゃならねえからな」


 見ると不良集団はじわじわと囲むようにこちらに近寄ってくる。成程、面白い。そっちがやるきならこっちも気兼ねなく戦えよう。


「お、何だビビってるのか、そっちからこないならこっちが……!」

バキッ!!


 アルカは一番近くにいた不良の無防備な顎下に、得意の加速魔法で加速したアッパーを叩きつける。一撃で昏倒した不良を尻目に、次の不良を倒しに行く。隙に乗じて二番目の不良には渾身のストレートを鳩尾に叩き込み、三番目の不良は驚きのままに姿勢がとれていなかったため、足払いからの踏み付けでフィニッシュ。最後の不良は少々てこずったが、後ろからミシェルの援護魔法が飛んできたため、加速で炎と同時にキックを入れて倒した。


「何て強さだ……こんなやつに喧嘩を売っちまったなんて……」

「無様な姿だな、声も少し高くなってるんじゃないか?俺の女になってしまうのも時間の問題だな」

「くそっ、覚えておけ!」


 不良達は驚くほどの逃げ足で走り去ると残ったのは、二人だけとなった。


「何とか撃退はしたが、ちょっと危ないところだったな、最後の援護魔法がなければ負けていたかもしれない、サンキューな、ミシェル」

「うん、でも格好良かったよ、アルカ」


 みるとミシェルはかなり女に近づいていた。恐らく憧れや尊敬の感情のおかげだろう。ミシェルはゆっくりと近づいてこう言った。


「目を閉じてみて、お礼をするから」


 俺は言われたとおりに目を閉じた。


「ありがとう、だから……僕の手駒になってくれ!」


 急速に感じる熱の奔流、全身を覆い蝕む灼熱の炎。最後に目にしたものは、誰よりも男らしく勝ちを確信したミシェルの表情だった。


「っていう話さ、どうだアルス、恐ろしいだろう。自分が騙していると思った相手に、逆に利用されていたってわけだからね、これを教訓に魔法学校では生活するんだよ」

「うん分かった、”ママ”」


 私はミシェルに敗北し、そのハーレムの一員になった。ミシェルはかなりの慎重派でハーレムの人数は少なかったため私は彼の子供を産むことができた。悪い人生ではないと思うが、あの時は油断しすぎていたなとは思う。だから私の娘にはこう教えるつもりだ、弱い振りをして男を騙せ、と。


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