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ラブレター  作者: 百鬼
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愛しのあなたへ

「拝啓、お元気ですか。毎日あなたを見ています。ただ、見ています。あなたは素敵です。ご自分でもすでにお気づきかと存じますが、あなたは素敵です。僕は、いつも、あなたに癒されてます。あなたの一挙手一投足が、僕を癒します。この手紙を書いている今でも、あなたは、あの天使のような笑顔を、みんなに向けて、みんなを癒して差し上げてることなんでしょうね。あなたの笑顔は、例えようがない。それは、まるで、荒涼とした砂漠の中にたった一輪だけたたずんでいる、ひまわりのよう。ぎんぎら照りつけて、この世の生き物全てを暑苦しくさせている砂漠の太陽にも負けないで、凛と上を向いている。ただまっすぐに上を見てて、他のものには目もくれない。鋼の意思をもって、凛と上を向いている。みんなを苦しめる太陽を、にらみつけていらっしゃる。そんなあなたを、僕は、尊敬しています。

 あなたに近づき、仲良くなりたいなんて、思ってません。あなたは、僕のような下らない男と仲良くしちゃいけない。声を聞いてもいけない。視界にいれてもいけない。おんなじ空気をすっても、いけない。あなたを汚し、堕落させてしまうくらいなら、僕は、死にます。どうか、墓参りなんて、しないで下さい。僕は、誰からも嫌われるべき存在なんだ。生きてる間も、死んだ後も。永遠に。あなたは以前、こんな嫌われ者の僕に、声をかけて下さった。「あなただけじゃないのよ。あたしも同じ」って。

 正直に言います。すごく、うれしかったです。死んでもいいとは、ああいう状態のことをいうのだと思います。もう、ただ、うれしかった。書いててそのことを思い出すと、泣けてきました。涙が止まりません。泣きながら書きます。お許し下さい。でも、同時に、辛かった。あなたが美しすぎて、辛かった。あなたは、僕など、相手にしてはいけない。美しすぎる人は、醜すぎる人を、相手にしてはいけない。あなたは、他の人と一緒になって、僕を、蔑むべきだ。ほかの人が大人数で僕にするように、低俗に、僕を、蔑むべきだ。なのに、あなたは、僕に……僕に……優しく声をかけた。あなたは、女神だ。美の神ヴィーナスよりも美しい、女神だ。その女神が、こんな、安っぽい薄汚い乞食に、声をかけちゃ、いけない。僕はどうでもいい。貴女が、汚れてしまう。それが、何より、辛い。

 あなたは、過ちも、犯しましたね。あれは、あなたが僕に声をかけた、三日後のことでした。「来て、見せたいものがあるの」そういうとあなたは、僕を連れ出した。二人きりになるとあなたは、僕に、手紙を渡しましたね。あろうことか、そこには、間違いなくあなたの字で、「あなたのことを、ずっと、見てました。あなたが他の誰よりも知性に溢れた人だということは、ちゃんと私、見抜いています」とありました。正直に言います。僕は、めまいがしました。うれしいからじゃありません。あなたの、あまりに常軌を逸した行動に、憤りを覚えたからです。普通じゃ考えられない。あなたは女神で、僕は乞食なんですよ。女神が乞食に言っていい言葉じゃないんですよ。もう、もう、苦しい。しかもあなたのその手紙には、その後に、「あなたのことが、好き」とありましたね。もう僕は、死にたい。あなたは、堕落した。そんなあなたを見るくらいなら、僕は、死ぬ。あなたを愛しています。できることなら今すぐあなたのもとに飛んでいって、あなたを抱きしめたい。あなたの甘い香りの中に、身を、委ねたい。僕のこの両腕で、あなたを、癒して差し上げたい。あなたのかわいいお耳元で、愛の言葉を、囁きたい。

 長々、くだらない事を書き連ねてしまいました。僕のような乞食の薄汚い文章は、女神様にお見せするべきではなかった。でも、最後に、ひとつだけ、言います。言わせてください。本当は、これだけ伝えたかったんです。「心から愛してる」」


 彼は、彼が言うところの女神から手紙を受け取ってから、二日後にこの手紙をしたためて、その女神に手渡した。彼は女神を真剣に愛していて、女神もまた、彼を真剣に愛している。


 そして次の日……女神は、彼を、忘れていた。彼女の愛は確かなものだった。それは紛れもなく「愛」だった。ただ一人の男に向けられた、女としての、「愛」だった。





 彼女が彼に対する確かな「愛」を忘れた理由は、ない。


過去作です。評価と感想をよろしくお願いします。お手柔らかに。

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