表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/258

二人の熊①

久しぶりの女性キャラです。

ラロシアアイス、非戦闘エリア。

ベアーの決闘後――俺達は、彼の『工房』とやらに向かっていた。



「……ちなみに、相方ってどんなプレイヤーなんだ?」


「そうだねえ……普通の子だよ。いつも忙しそうにしてるなあ」



笑ってそう言うベアー。

忙しそうって、俺なんかに構ってくれるのだろうか?

……まあ、武器を完成させてくれるならどれだけ待っても構わないんだが。




《専用フィールドに移動しました》


《『熊さん工房』に移動しました》



「……凄いな。いかにも鍛冶師の工房だ」


「ほっほっほ、ちょっと汚いけどね」



レンガの山に小さい炉の様なもの、ハンマーのような治具……それらが十畳程の部屋に置かれている。


同じ生産職でも、製作系の職だとこんな部屋も持てるんだな。



「……で。肝心の相方ちゃんは――多分休憩部屋かな」



鍛冶部屋?を抜けて、ドアを開けるベアー。

すると――



《クマー 鑑定士 level35》



「あーはいはい。『ぐらい』じゃなくてもっと正確に。はい、了解。九時半丁度にそっちね――」



慌ただしそうに、ソファーのような家具に寝転がり一人で話している彼女。


小さい背丈に大き目な眼鏡。……初めてみたな、眼鏡。

その装備はハルのようなオーダーメイドか、熊耳のついたローブのような服を羽織っていた。


んで名前はクマーって、ベアーと被り過ぎだろ!



「――はいはいこちらクマーです、ん、『鑑定』の依頼?まずはメールで概要送ってもらってからでいいかしら」


「次は……は?タダでやるわけないじゃない!ふざけ――あ」



五分程チャット?で話していた彼女が、こちらに気付く。

ローブに包まれた顔は、幼くも知性が高そうなものだった。



「え、誰。……ベアー?」


「あー、えーっと、クマーちゃん、こちらの方に武器のレシピを――」


「――ダメ。今ちょっと忙しいから」


「えぇ……頼むよ」


「どうせまた頼み込まれて来たんでしょ?断れって言ってるじゃん」



そんな会話を繰り広げる二人。

ベアーの方が身体は二回り大きいが、立場は彼女の方が上のようだ。不思議な関係だな。


それにしても、俺が口を挟む間がないぞ……



「……今回は違うんだ。彼との決闘にボクは負けた。勝利の条件に武器の製作を依頼されたんだ~」


「――は?」



何故か誇らしげなベアーの言葉に固まる彼女。

そしてクマーは、寝ていた身体を起こしてこちらに来る。



「……え、ベアーに勝ったの?……このプレイヤーが?」



その眼鏡を手で上下しながら、まじまじと見られる。



「……武器、防具も普通、いやそれ以下。……アクセサリーだけ良いの付けてるわ、氷宝玉って結構なモノじゃない――って『商人』!?」



つらつらと呟きながら、最後には大きな声を出しながら仰け反る彼女。そこは一番最初に分かるはずなんだが。

中々変わった子だ……って、今俺の装備を言わなかったか?



「勝ったのは本当だって。完全敗北だったなあ」


「……そう――でも、勝手に約束するのはおかしいっての!」


「ほっほっほ……ごめんね」



……流石に、そろそろ口を挟むか。



「――俺からもお願いします。クマーさん」



ベアーばっかりにお願いさせるのもおかしいだろう。

俺は、彼女に頭を下げた。



「……ちょ、ちょっと貴方まで……というか貴方は謝らなくていい。ベアーが勝手に約束しただけだから」


「とは言っても――彼に俺が強くお願いしたんだよ」


「うーん。まあいいわ!貴方はベアーに勝った――それだけで、優先度は一番だから」


「……一体、どうしてだ?」



そう問うと――彼女が、ニヤリと笑って胸を張る。



「――私の『野望』。それは――()()()()()()をこの目で見る事だからね」


「ほっほっほ」



クマーがそう言うと共に、後ろで見守るように笑うベアー。


……最強の、生産職か。



「生産職だからって、戦闘で彼ら戦闘職に敵わないって考えてるプレイヤーばっかりなの。まあ実際そうかもしれないけど……私は、『強い』生産職が見てみたい。生産も戦闘もこなしちゃうような、ね」


「……それなら、俺は当てはまらないかもしれないぞ」


「――どうして?ベアーにも勝ったんでしょ?」


「『戦闘』、だけだからだ。『商人』という職業が、どういう扱いを受けているか知っているだろ?」



ジャンルで言えば生産職。しかしその実態はGを増やす事だけ。

その量もそこまでで、パーティーに居ればPK職からも狙われる疫病神の扱い。


言うなれば、半戦闘職・半生産職。

黄金の一撃、黄金の蘇生術――それらが何とか繋ぎ止めてはいるものの、どっちつかずの職業だ。


……後ベアーに勝てたと言うが、彼が逃げずに向かって来てくれたからであって――本当なら負けていた訳で。ここでそれを言うのもおかしいから黙っておくが。



「っ!……ふーん。そんな職についてる割には、えらく堂々としてるのね」


「それは――この職業を、俺が何より気に入ってるからな」



……『それ』は客観的なもので、俺自身は『商人』が嫌いな訳ではない。

行商クエスト。NPCとの関わり。そして戦闘においても。

俺ははっきりと――この職業が、好きだと言える。



「!――うーん、気に入った!……えーっと、九時までの予定は全部キャンセルで……」



ピコピコと画面を弄る彼女。

……なんか不穏な言葉が聞こえているが、とりあえず受けてくれたって事だよな。



「……よし!んじゃ、早速やろっか!ベアー、準備しといて!」


「ほっほ、了解」



ベアーは先程の鍛冶部屋へ。

クマーもまた、何やらまた画面を触っている。


詐欺師にもあって、散々だと思っていたが。


……この二人の熊さん達?には、任せても大丈夫だろう。


最近全くPKK要素が無いような……もうすぐ出ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


コミカライズ単行本1.2巻が発売中! よろしくお願いいたします

↓新作のVRMMOモノです。↓
罠士の大罪人~不人気職、『落とし穴』で最前線を駆け巡る~



小説家になろう 勝手にランキング

作者ツイッター 322106000445.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] いまいち主人公の設定を商人にした意味が分からない。主人公がやってる事とか戦闘職がやればすぐ越されるし。てかそもそも戦闘職が戦闘っていう面で生産職をバカにするのは当たり前じゃない?
[一言] また女キャラ。 性格厨二病拗らせた奴らしか出てこない+まともなキャラはほぼ女キャラしかいないってきつ。
2021/08/07 11:57 退会済み
管理
[一言] 全然違う熊なので全く問題ないかと。 それにオンライン系で熊キャラ何ていくらでもいますからね。 かぶりとか気にしたらキリがないですよー。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ