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『偶然』の出会い②


ラロシアアイス、非戦闘エリア。

そこへ戻ってきた所で、俺はネフ太に例の素材――インベントリから『亡霊の魂の欠片』を見せていた。



「……欠片二十個……おいおい、マジかよ……見た事もねえぞこんなの……」


「え、どうしたんだ?」


「い、いやいや!はは、何でもねえ。これはちょっと手間が掛かりそうだ」


「そうなのか、まあボスの素材だしな……」



少し引き気味に材料を見るネフ太。申し訳無さが凄いぞこれ。

あの亡霊の素材だ、確かに手間が掛かりそうではある。


本当に良いんだろうか、タダでお願いして……いやいや、ここは厚意に甘えよう。



「もうこんな時間だし、また出来たら渡す事にするよ。良いか?」


「ああ。んじゃ――あ、数は何個必要なんだ?」


「えーっと、そうだな――んじゃ、十個で」



上の空を見ながら、彼はそう言った。



《ネフ太様にトレード申請を行います》


《トレード申請が受諾されました》



俺は、現れた取引画面上にインベントリの亡霊の魂の欠片を選択する。

『トレード』。

素材アイテム等を一気に渡す時には、直接渡すよりもこれで行った方が早い……ちなみに初めてやった。



「そっか。じゃ、これで――」


「おう!」



《亡霊の魂の欠片×10をネフ太へ譲渡しました》


《ネフ太様からフレンド申請が届きました》


《ネフ太様のフレンド申請を受諾しました》



「宜しくお願いします、楽しみにしてるよ」


「はは、おう。んじゃ――明日の夜に出来てると思うから、また連絡する」


「ああ。それじゃ」



彼と別れ、メニューを開きログアウトを押す。


欠片の加工なんて頼む宛ても無いし、今の手持ちもそこまで無かった。

依頼するにしてもあの彼の反応じゃ結構高くついたのだろう。



「……ついに、新武器か」



亡霊からドロップしたアイテムを加工し、得られる武器。


年甲斐も無く期待してしまう。

明日の夜が楽しみだな。










……とあるラロシアアイス非戦闘エリア、深夜二時。

その場所に――二人のプレイヤーが落ち合っていた。



「――おいおいマジかよ!最高じゃねえか」


「だろ?俺の名演技のお陰だっての。アイツも馬鹿で助かったぜ」


「難関ボスのドロップアイテムとかレアなんてレベルじゃねえな!しかも十個だろ!?」


「アイツがどう手に入れたか知らねえが……偶然トレードか何かで手に入れたのかもな、商人があのボスを倒せるとは到底思えねえし」


「ははっ、違いねえな」



PK職である『暗黒騎士』。そして――『鍛冶師』。

そんな二人が、笑いながら話していた。



「初めてでこんな上物とか、俺達運が良すぎねえか!?」


「ついてるぜマジ!ちなみにソレ――お前加工出来んの?」


「出来る訳ねえって!レシピも見たことねえよこんなもん、する気もねえし。トレードにも出てないから大分高く売れるぜこれは」


「ははっ、だろうな――じゃ、分け前でそれ五個な」



暗黒騎士がそう言うと、鍛冶師は渋った顔をする。



「……いや、お前何もしてないじゃん、一対九でも多すぎるぐらいだぜ」


「ああ?俺が居なきゃそもそもあの商人に遭遇してないだろうが!」


「チッ……まあいい、ほら三個で我慢しろ」


「仕方ねえなあ……ったく」



少々言い争った後、トレードにてそれを渡す鍛冶師。

『物足りない』――そんな表情で。



「と、忘れずにその商人のフレンド登録は解消しとけよ。言及される前に」


「……ああ。勿論」


「それじゃあな」



二人は別れ、深夜のラロシアアイスに消える。

そんな中、鍛冶師の彼は――密かに邪悪な笑みを浮かべていた。



(……明日、残りの十個も奪えれば……それは全部、俺のもんだ)



その黒い欠片を手に、計画を企てる彼。

頭の中はもう――そのアイテムの事で、一杯になっていた。



「あの馬鹿な商人から、搾り取ってやらないとな」



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罠士の大罪人~不人気職、『落とし穴』で最前線を駆け巡る~



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― 新着の感想 ―
[一言] いや、気付けよww 主人公はそこそこ有名人だぞ?(笑)
[一言] 保険もなしにトレードして大丈夫なのかと思ったら案の定騙されてるし。
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