表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/258

似た者同士②

今日はもう一話投稿します。




《決闘専用フィールドに移動します》



「ふふ、二人ともがんばれ~」

「観客席で見るのも久しぶりだなあ」

「テンション上がるわねー!」



そういえば王都の決闘場は、ラロシアアイスより豪華風。


客席には二人の熊が座っているし。

何気に観客なんて初めてだ。



「お待た~!今更だけどニシキっちもオーケ?」


「ああ、大丈夫だ」



ブラウンに、俺はそう返す。

インベントリ内にはいつもの『毒』達もあるし、各片手武器も揃ってる。



「っし!それじゃ――」



《ブラウン様から決闘申請を受けました》


《決闘申請が受理されました》


《決闘は三十秒後に開始されます》



「よろしく、ブラウン」


「おん!そうこなくっちゃな~」



相変わらず軽い口調。


でも。

二人が言うからには、きっと警戒しなくてはならないんだろう。



「……そのナイフは、亡霊の素材から?」


「お!流石『武器』商人さん。お目が高いね、その通り~」



彼の持つそれは、俺の亡霊の魂斧の様な見た目をしていた。

予想は出来ていたが、武器も自分と同じで誰かに作ってもらっていたんだな。



「ニシキっちも持ってるんだね、そりゃ種類は違うけど。斧なんて初めて見たなあ」


「ああ。俺も初めてだよ、亡霊シリーズのプレイヤーに会うのは」


「おん!ほんと良い武器だもんねコレ。皆もっと持てば良いのになー!あ、そうだ」




《決闘は十秒後に開始されます》




アナウンス。

それに気に留めない様笑って、彼は不意に何かを取り出す。


それは――5本の黒いナイフで。



「よっよっよっ」


「!?」


「ははッ、アイツと闘うの楽しくて10本分は集まったんだよね!こんな芸も出来ちゃう――」



取り出したナイフ達を、ジャグリングの如く空中に投げるブラウン。

……それは危険な行動をしている筈なのに、全く危なげなく見えた。


彼は、一体何者なんだ?




「ッと。それじゃ準備運動も終わったし――」




《決闘を開始します》



「――やろうか、ニシキっち! 」


「ああ――『瞑想』」



《瞑想状態になりました》



そんな芸を見せてくれた後、一つを残しナイフを仕舞い彼は俺に向き直る。


……いつも通りやれば良い。

防具がかかっているのは分かる――それでも、落ち着いてやるだけだ。



「――『パワースロー』!」



地面に魂斧を刺し、インベントリからスチールアックスを取り出し投擲。

そのまま俺は魂斧を拾い走って接近する。


この動作にも――大分慣れたもんだな。




「……オレの首元一直線!良い投擲だね――」




笑うブラウン。


その様子には、未だ回避の様子は無い。

まるでその攻撃を『待っている』様に。



「――でも、これは通らない!」


「!?」



――『それ』はいつの間にか自分のモノだと思っていた。

実際これまでどの敵も、どのプレイヤーも使用する事なんて無かったからだ。



でも。

たった今。

目の前に――同じスキルを使う者が居る。



「――ぐっ!!」



その名は『反射』。

成す術なく俺は、首元に跳ね返ってきた斧に被弾した。



「ははッ、クリーンヒット!」



その小さな刃で、俺の投擲したスチールアックスは反射されたのだ。



「――さあ休む隙は与えないよッ、『パワースロー』!」



また同じく、投擲武技。

体勢を崩した俺に向かって迫る小刀。



「……まさか、『反射』なんてな――」



《――「一つ言えるのは、『貴方によく似てる』って事ね」――》




クマーの台詞が蘇る。

……本当に、この世界は広いもんだ。



「――っ!」



俺は、手に持つ魂斧を振るう。


何時もの様に。刃を横に向けて――



《Reflect!》



「――ッ!反射ぁ!?」



間一髪。

彼は跳ね返った己のナイフを避けた。


……あのスピードの反射を避けられるなんて、相当の反射神経だぞ?



「ははッ、いやあ奇遇だね……」


「まさか同じ『反射』持ちとはな」


「対人戦じゃよくある事だけど、流石にコイツはオレだけだと思ってた!」



お互い距離を取った後、間合いを詰めていく。

こうなると――接近戦で行くしかない。



「――『パワースロー』!」 


「!?」



そう思い、魂斧を手に突っ込もうとした瞬間。

ブラウンから、またも襲い掛かるナイフ。


でも――その武技はよく知ってる。

二度目なら、もう余裕だ!



「――らあ!」



《Reflect!》



「……ああ、ニシキっちならそう来てくれると思った――ッ!」


「な!?」



反射によって跳ね返されたそのナイフ。


それを、彼は――もう一度『反射』し返したのだ。

襲い掛かる、速度が増したその一撃。



「ぐっ!」


「ははッ、オレってば家庭科の成績だけはいつも10点満点でさ。『器用さ』では誰にも負けた事ないんだよね」



笑って俺に近付くブラウン。

どうやら、彼はかなりの強者らしい。



「まだまだこれからだよ、ニシキっち!」




彼の武器はナイフ。

裁縫術士と言う名前ではあるものの、未だにその要素は無い。

むしろ――



「――『スラッシュ』!」


「ははッ、当たらないよ――『スティング』!」



その動きは、PK職の小刀使いに似たモノがある。

彼の場合スピードに頼らず、身体を器用に動かし回避する為……より厄介なんだが。



「ぐっ――」


「……ニシキっち、こんなもんじゃないよね?」



衝撃のまま後ろに下がり、距離を取る。


挑発というよりも期待という台詞。

……それなら、ここで試してみよう。



「――らあ!」


「!」



俺は、魂斧をインベントリにしまい、反射が出来ない様取り出したスチールアックスを彼の地面に放る。

これはただのブラフと時間稼ぎ。


そして――



「――へえ、ダブルナイフかあ!」



その間インベントリから取り出したのは、二つのスチールナイフ。


商人は両手に武器を装備出来ない。

だが、ただのアイテム扱いとして『持つ』事は出来るんだ。


装備扱いではない右手のナイフは、投擲武技は当然不可能。

ステータスにも負荷補正が掛かっている様で、重く扱いづらい。



「――っ」


「!」



でも、ナイフ程度なら大丈夫だ。

麻痺毒瓶を投げる様、彼へと放つ。


着想はあの時の、水魔法を使うPK職。

それを少し変えた――投擲の同時攻撃。



「――『パワースロー』!」



ブラウンは『反射』行動は無い。

彼が回避を選択したのを確認してから――左手のスチールナイフを遅れて投擲。

直後にダッシュし、インベントリから魂斧を。



「くッ――」


「――『ラウンドカット』!」


「ッ!?避けれな――『糸状装甲ストリングアーマー』 !」



近付いた後、避けようとする彼に円周上を切る武技。

これなら全方位に攻撃できる――そしてその狙いは成功し、彼の左腕を切り裂いた。


……それでも、彼のHPは二割ほどしか削れない。

本来なら三割ぐらい減っていてもおかしくないんだが。


まあそのスキルのせいだってのは分かってるけどさ。



「……硬いな」


「おん!見た目はちょっとダサいけど良いスキルなんだぜ!」



彼を纏う様に現れた、硬い糸が編まれたような鎧。

触り心地が良さそうで……見るからに攻撃を吸収しそうだな。



「……なら――」



もう一度、繰り返すだけだ。

インベントリから、スチールナイフ――




「――ははッ。ごめんねニシキっち、『糸錠固定ストリングロック』」




《状態異常:装備固定となりました》


《スチールナイフが装備固定状態となりました》



俺が魂斧から、左手にスチールナイフに装備を変更した瞬間。



「!?」



狙いすました様に、突如流れるアナウンス。

装備固定――その効果は、説明を見なくても分かる。


背中に、冷たい汗が流れていくのを感じた。



……まさかと思い、俺はインベントリを開く。



《状態異常に陥っている為、現在の装備から変更は出来ません》



そして、その予感は当たる。

魂斧にも。



《状態異常に陥っている為、現在の装備から変更は出来ません》



当然の様にスチールアックスにも、もう変えられない。



《状態異常に陥っている為、現在の装備を離す事は出来ません》



それを地面へ放ることすら出来やしない。




「封じさせてもらったよ、キミの『斧』を!」







糸状装甲ストリングアーマー


物理攻撃に対しダメージ減少効果を自身に付与する。

火・炎属性の攻撃を受けた場合二倍のダメージを受ける。

自身の体力が1割より少なくなる攻撃を受けた時、このスキルは強制的に解除され、代わりに体力が1割残る。



糸錠固定ストリングロック


対象の装備部位に状態異常『装備固定』を陥らせる。

再使用には時間が掛かるものの、持続時間は長い。


状態異常『装備固定』

この状態異常に掛かった対象部位は、異なる装備に変更・また装備を外す・投擲する事が出来なくなる。

『装備破壊』など装備そのものが無くなった場合や、対象部位が『部位欠損』となった場合などはこの状態異常も同時に解除され、新たな装備を装備出来るようになる。

いつも応援ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


コミカライズ単行本1.2巻が発売中! よろしくお願いいたします

↓新作のVRMMOモノです。↓
罠士の大罪人~不人気職、『落とし穴』で最前線を駆け巡る~



小説家になろう 勝手にランキング

作者ツイッター 322106000445.jpg
― 新着の感想 ―
[良い点] まさに絡め手技は糸のごとくだねぇ。 その分炎系武技や術に弱そうなイメージ。
[良い点] 生産の戦闘系上位職は遅咲きの初期職の苦労に見合ったタイプになるのかな 生産スキルを維持したまま尖った戦闘能力ってずるいようにも見えるけど、実際は尖ってる分PS要求するし 何より強さ求めるな…
[良い点] 対人戦をよく考えてる上初見殺しがひどい 裁縫が最強なのか!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ