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PKK職①

投稿遅れて申し訳ないです。

「――PKK職は初めてですか？」

彼女はそう言って笑う。

『PKK職』。

転職後に現れた特殊職業だってのは、直ぐに分かった。

「……ああ。そんなに派手なモノだと思わなかったよ」

「ふふっ！それは言えてますね。ただ自分達もこれ以外に色々とありますので」

「そうなのか」

「ええ。PK職と同様、様々な者達が居ますよ……あのクズ共に比べ数はかなり少ないと思いますけどね」

近付きながら話す。

『痛み分け』……そう彼女が唱えた後。

見ればそのHPは、半分まで回復していて。

俺のHPも同じく、半分まで減らされていたのだ。

何かをしてくるとは思っていたが……これまで削ったHPが無駄になってしまうとは。

「あ。気付きました？ふふっ、これで振り出し……すいませんね」

「……ああ――『パワースロー』！」

だがそれなら、もう一度減らすだけだ！

投擲したスチールアックスは、彼女の足へと飛んでいくが――

「っとと――」

「っ！？」

後ろへの高速ステップ。

明らかにAGIが上がったか、動きが良くなっている。

「――『スラッシュ』！」

投擲後走って接近していた俺は、魂斧を装備し武技を振るった。

だが――

「もう貴方の攻撃は効きません――よッ、『苦の反撃(カウンターペイン)』！」

「――ぐっ！？」

彼女は俺の武技に合わせる様に盾を魂斧にぶつける。

ガキン、と鈍い音ともに跳ね返された一撃。

同時に盾から現れた赤黒いエフェクトが、俺を喰らう様に包んでいき。

「っ、な――」

強く押された様な衝撃と共にダメージが入り、残りHPは四割。

俺は成す術なく、体勢が大きく崩れ――

「隙ありですね――『パワーブレード』！」

「――ぐっ！」

《黒の変質が発動します》

重い片手剣の一撃は、避けようとするものの動きを読まれ俺の腹に到達した。

急所は免れたが――残りHPは二割だ。

あの黒色のオーラを纏ってから明らかに動きが違う。

AGI、STR……もしかしたら、『黄金の意思』の様に全ステータス上昇しているのか？

そして何より、俺の動作に完璧に合わせられている。

「ほう！変わった武器をお持ちですね。『痛そう』だ」

「……それは、俺がって事か？」

「ふふっ！どうでしょうね」

思考する。

あのカウンターがある以上、迂闊に手は出せない。

黄金の一撃なんて跳ね返されたらそれこそ終わり。

この変質した魂斧の攻撃も、却って具合が悪いだろう。

小刀や鈍器は扱いがまだまだ慣れていないしダメだ。

思えば、最初のあの『観察』されていた様な目は、この為か？

だとしたら俺の『動き』は読まれている事になる。

刀を持つ今AGIは上昇しているが、彼女の余裕の態度はそれすらも……

……ああ、思考が追い付かない！！

「じゃ、行きますよ――」

前。迫る復讐者。

……そうだ。

動きを読まれているのなら――動きそのもののスピードを変えてしまえば良い。

「『高速戦闘』――」

「あら、良いスキルを……『持たざる者の苦痛(シェアリング)』」

「！？」

瞬間。

彼女の動きが、途端に『俺と同じ』になった。

「――っ」

「ふふっ、来ないのですか？」

思わず俺は攻撃の手を止める。笑う彼女。

スキルの効果だろう――俺の高速戦闘の効果をそのまま彼女は受け取ったのだ。

言ってしまえば、お互い高速戦闘を使っている訳だから……『普段通り』という訳で。

「……なら」

「……おっ？」

武器による攻撃は読まれているかもしれないが。

この手なら、行けるかもしれない。

俺は――走りながら、そのアイテムをこっそりと取り出した。

「っ――らあ！」

先程同様、盾を準備していた彼女に。

足元への刀による攻撃、に見せかけたフェイントを入れて。

俺は――右手に隠し持っていた毒瓶の中身を彼女の顔目掛けてぶっかけた。

「『苦の反撃』――ッ！？目が――」

「――『パワースウィング』！」

そして成功、顔面に紫色の液体が飛散する。

それは一瞬だが視界の妨げにもなり――『カウンター』も間に合わないだろう。

俺の武技は、彼女へとクリーンヒット。

「ッ、はッ――『侵される者の苦痛(インフェクション)』！」

「――！」

衝撃のまま、距離を取ろうとする彼女に迫るが――スキル発動に思わず足が止まる。

直後。

《状態異常：毒となりました》

鳴るアナウンス。

途端に減り出すHP。

「な――」

「……ふふっ、貴方と戦っているとあのゴミ共を連想してしまいますね」

『侵される者の苦痛』……スキルの効果はこの通りだ。

彼女が陥った状態異常をそのまま移された。

剣を構えながら近付いて来る彼女。

解毒薬を取り出す隙は無い――

「――言ったでしょう？私達は『PKK』職なのです。あの者共に対抗する為の存在だと……まあ貴方は生産職。こちらのスキル効果も弱体化してしまうんですがね」

告げる復讐者。

彼女のHPは残り二割。対して俺は一割と少し。

マズいな、このままでは自分が先に毒の継続ダメージで死んでしまう。

《逆境スキルが発動しました》

「……おっと！それも貰いますよ――『持たざる者の苦痛』」

「抜かりないな」

「それはもちろん。貴方は今ここで、私が倒したいと思ったので」

「……はは」

「！何か可笑しい事がありましたか？」

「いや、楽しい戦闘だなって。感謝するよ、『復讐者』」

「……貴方、そんな状況で何が楽しいと？」

不思議そうに呆れる彼女。

俺はその中で思考を巡らす。

もうHPは一割を切った。

恐らく全ステータス上昇に、攻撃を反射される武技持ち。

投擲はあの様子じゃ避けられる。黄金の意思もバフ効果を共有される為意味が無い。

刀も既に斧に戻ってしまった。

「そりゃ……『そんな状況』、だからこそだろ？」

――さあ。

ここからどうやって逆転してやろうか。

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