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シークレットダンジョン⑩

今日はもう一話投稿します。




『GOAAA……』



アレから、二枚目のHPバーも同じ様に削り切った。

今の所二人ともノーダメージ……時間も後7分ある。



「……次は何が来るかしらね」


「はは、ずっとアレで良いんだけどな――!来るぞ」



『GO、GOGAGAGA……』



「な、何か様子おかしくない?」


「……あのまま死んでくれたら――」



小刻みに震えるゴーレム。

今の内に攻撃……なんて思ったんだが、HPバーはまだゼロなんだよな。


というか、何か地面から吸収しているように見えるんだが。




『GOGAGA、GOAAAAAAAAAAAAA!!!』



「く、来るわ――って何これ!?」


「これは――」




《ヴィクトリアゴーレムによる攻撃を受けた際、状態異常:『泥人形の呪い』となります》


《説明:『泥人形の呪い』……大幅に防御力が低下する》



「……当たったら不味いって事は分かるよ」


「ええ――というかHPバー、何かおかしくない?」



立ち上がろうとするゴーレム。

その姿は――最初の時よりも『三倍』程大きくなり。


また、一本のHPバーが三本連結したように長くなっていた。



「デカすぎ……でもあの『×』も消えてる……ってことは、コレで正真正銘最後ってわけね」


「ああ――あと七分で、何とか削り切るぞ!」


「ええ!」



そう声を掛け合う。


立ち上がろうとする馬鹿デカいゴーレム。

今度は何もない訳でもなく、そして翼がある訳でもなく――



「――何よあれ……『砲台』……?が埋め込まれてる」


「そう、だと思う」



先程は翼だったが、胸の位置に大きな大砲の様なモノが搭載されていた。

そしてそれは、何かをチャージしているかのように『光』が増大していって。



『……GO、GOOOOAAAAAAAAA!!』



――叫ぶ。

こちらへ飛んできたのは――



「――不味い!逃げろ!!」


「レーザーなんておかしいでしょ――!?」



迫る赤い光線。

極太のそれが、俺達に向けて照射されたのだ。


『反射』なんて絶対に不可能なそのレーザービームが、俺達が居た地面を抉り――



「――っ!持続時間長いな!」



ヘイトが向かっているのは俺。

走って逃げている自分へ――追いかけてくるように光線は照射されている。それも俺が走るスピードと同じぐらいに。


もし足がもつれて体勢を崩せば、容赦なく俺の身体はそれに焼かれる事だろう。

盾職なら防げるかもしれないが……俺ならかなりのダメージを食らってしまうはず。



『GOAAAA……』


「はっ、はあ――ようやく止まったか、クマー頼む!」


「ええ、『弱点分析』! 」



走り回って十秒程――ゴーレムは力を回復する様に座り込む。


……ようやく目に見えて分かる反撃のタイミングだ。

クマーの弱点分析によって、また巨体の『拳』へ赤い印が示された。



「――『パワースウィング』!!」


「ウォーターブラスト!」


『GO!?――GOAAAAAA!!!』



立ち上がろうとするゴーレムの拳に一撃を入れる。

クマーも後方から魔法にて攻撃。


怯む巨体――だが、またすぐに立ち上がっていく。

三枚のHPバー……削れたのは、その一枚の内たったの10%。

実質3パーセントか?


魂斧による弱攻、クマーの弱点分析のシナジーの恩恵があってこれだ。



『GOOOOAAAAAAAAA!!』


「!?レーザーだけじゃないのかよ!」



迫る光線。

そして――同時に振り下ろされる巨腕。



「――っ、迫力満点だな――」



照射されるレーザービームを避けながら、巨腕の挙動も観察し走り回った。

――来る!



「うっ、おお――!」



ゆっくりと迫りくる岩石の拳は、余裕を持って避けられた。

でも……地面に到達後、とんでもない『揺れ』が足元を襲う。



「――っぶない!」


『GOAAA……』



ようやくまた休息状態に入るヴィクトリアゴーレム。


……残り時間、後5分。

残りHPはまだ九割を切っていない。


このままでは――間違いなくタイムアップだ。



「――『パワースウィング』!」


「『ウォーターブラスト』……減らないわねホント!」


『……GOAAAAAA!!!』



一撃入れた後、また立ち上がろうとするゴーレム。


……このままじゃ駄目だ。

コイツに勝つために――今俺が持つモノ達を、総動員して立ち向かわないと。



「――なあ、クマー」


「!何?」


「別に今からやる事は、死にに行くわけじゃないからな」



俺は、魂斧をインベントリに仕舞う。


そして――取り出したのは二つの『瓶』。

それを左手で両方持った。



「へぇ?何する気――」


「――長くなるから詳しくは言えないが、『勝負』に出る」


「!分かった……でもそれなら私も負けてられないわ」


「クマーも何かあるのか?」


「ええ――どうせ失敗したら終わりなんだし、もう逃げないわ……『対象増加』、『弱点分析』!」



『GOAAA――』



そう言って、彼女は道中のモンスターに掛けていたスキルを発動。

立ち上がろうとするゴーレムの両手の拳と、片足のかかと辺りに赤い印が現れた。



「――選んで、ニシキ。一つなら『何処』が良い?」


「!この中なら足だ!分からないが頼む」


「ふふ。勿論――『対象集中』!」



クマーがそうスキルを発動すると、三つの赤い印が踵の印に集まり一つの白い印となった。



「――言わなくても分かるわね、ニシキ」


「ああ――勿論狙わせてもらう、来い!」


『GOAAA――』



光線射出に入るゴーレムに向けて走り出す。

同時に迫る拳を見ながら、俺はレーザーの挙動も観察。



『GO、GOAAAAAA!!』



やがて光線発射。

この様子なら拳は余裕で避けられる、『やる』なら今だ。



「よっ――来い、『高速戦闘』!」



拳が地面に到達すると同時にジャンプし、揺れで足を取られない様に。


そして着地。

高速戦闘を発動――俺は迫るレーザーに目一杯腕を伸ばして『右手』を突っ込んだ。

同時にインベントリを開き、左手で『増幅毒』を取り出す!



「っ……思ったより減るな!」


「に、ニシキ!?」



右手がVRの熱い感覚に包まれると共に、ゴリゴリと削られる俺のHP。想像通り衝撃は無くひたすら照射され焦がされている感覚だった。


高速戦闘によって、レーザーから右手を引き抜くタイミングを合わせ、減るHPを完璧に『調整』する。

この減少量なら――残りの俺の命を『31%』に限りなく近くに!



《状態異常:泥人形の呪いとなりました》



身体が重くなるが、高速戦闘のおかげで何とか走り抜けられた。


タイミング良くレーザーから手を放すと流れるアナウンス。

それを確認し『増幅毒』を身体に掛けて――



『GOAAA……』



一秒後、レーザーが終わった瞬間再度インベントリを開き――『毒瓶』を経口摂取。



《状態異常:猛毒となりました》


《不屈スキルが発動しました》



「っ、はっ、はあ……よし、ここまでは予定通り――っと」


「――――あ、貴方何してるの……?」


「はは、まあ見ていてくれ――」



遠くからのクマーの声へ返事をして。

そして身体をそれぞれ、不屈の赤いオーラと毒薬の紫のオーラが包み込む。

状態異常、『泥人形の呪い』と『猛毒』という強力なそれが二つ――発動してくれないと困るってものだ。


後は――『アレ』さえ発動してくれたら。

猛烈な勢いで減っていくHPゲージを確認しながら、俺はゴーレムの元へと走る。


猛毒の効果はHPを継続的に減らし、十秒間で三割削る。つまり――俺の残り体力は理想では1%に限りなく近くなるんだ。

これで発動してくれなければ終わり。



「頼むぞ――」



そして。

残りHP、5%になった所で。



《逆境スキルが発動しました!》



「っ、来た!ようやくだな――」



もう一つの赤のオーラが現れ……走りながら、笑ってしまう。



「……何か、やるのね?」


「ああ。見ていてくれ――この、『()()()()()()()()()()()()


「!」



『不屈』。

『逆境』。

この二つが両方発動している今。


やっとだ。

やっと……発動出来る。


この、商人専用の――新しいスキルを。




「――『黄金の意思(ゴールド・メンタル)』!!」



いつも誤字脱字報告、応援感謝です!

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― 新着の感想 ―
[一言] ハラハラしすぎて読者のメンタルが削られそうだよ!
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