表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/258

交易クエスト③



 PK職、『海賊』。

それに対する『商人』。


先程までは――後者の優勢だった。



「――『ウォーターボール』!」


「っ……『スラッシュ』」


「ぐハッ!!ハッハッハァ、やるねえ!」



商人は海賊へ接近。

対し海賊は、杖から『地面』に水球を発射。


当然当たる事なく、地面に衝突し割れて――魔法発動の隙があった彼に武技が襲い掛かる。


このパターンを……かれこれ三度程繰り返し、今の状況。


商人のHPは八割。

対して――海賊のHPは、もう二割を切った所。


『圧倒的』に……商人側が優勢だったのだ。



「ハッハァ!やべえよ、負けちまうなァ!『咆哮』!」


「――っ」



咆哮により商人の動きを止め、無理やり逃げる海賊。


ここまでの不利な状況だが――



(……これで『三回』。もう十分だ――吠え面かかせてやるよ)



半面、海賊の顔は笑っている。

まるでこれから……そう示す様に。



「――?何を企んでる……っ!」


「それは――今から見せてやるってのォ!!」



杖を斧に変更しながら、叫ぶ海賊。

その隙に接近する商人。


そして――





「――『大海原の畏敬(オーシャンオブテラ―)』!」


「っ――!?」





そのスキルが、海賊の口から発せされる。

瞬間、商人は『恐怖』状態となり――動きは強制的に止まった。

だがそれだけじゃない。



彼は目にする。

それはスキルの映像か、それとも彼が見せる気迫によるモノか。


眼前……海賊の背から、押し寄せてくる大波を!



「……っな!?」


「――『ダブルスウィング』!!」



勢いのまま、彼の両手の斧が目一杯振りかぶられ商人へ襲い掛かる。



「ぐっ――!?」



商人は何も出来ず食らい――大きな衝撃と共に地面へ転がった。


先程の海賊のスキルは……『咆哮』と大差は無い。

ただその『恐怖』の効果時間は二倍以上に膨れ上がっており、二秒は動きが強制的に止められていたのだ。



「――よう。『それだけ』だと思うんじゃねえぞ」


「!?な――これは……」


「ハッハッハァ!気付いたか?テメエは今、このデケえ海に溺れてる様なモノなんだぜ!」


「……この状態異常、そうみたいだな――っ」



自身の下、水が広がる地面に手を突きながら海賊を睨みつける商人。



(ハハハ。コイツは発動条件は難しいが、決まればずっとオレのターンなんだよ!)




『大海原の畏敬』。



発動条件として……まずは『水属性魔法』による攻撃を『三回』以上当てる事。そして自身の体力が『三割以下』である事。

そして発動の際には、『咆哮』と同じく至近距離に相手が居なければならない。


――それらをクリアして、得られる恩恵は三つ。

対象へ五秒間の『恐怖』。

対象へ100秒間の『防御低下効果』。



そして一番の特徴が……プレイヤー相手に成功した場合、対象は100秒間『スキル詠唱不可』となるモノ。



詠唱とは、魔法の発動はもちろん言葉に出して発動するスキルも含まれる。

武技は勿論、黄金の一撃、高速戦闘、瞑想も。

商人の『切り札』が――ほとんど封じられたのだ。




(コイツならあんな魔法攻撃程度、余裕で避けられる筈だ)


(だから水魔法を地面へ撃つ事で『水飛沫(みずしぶき)』を浴びせた。ダメージはねえが、確かに当たってる判定なんだよな)




「ヘッタクソなウォーターボールだと思っただろ?全部コレの為の布石だってーのォ!」


「――っ!」


「ハッハッハァ!!無駄だ――『ダブルスラッシュ』!!」



それでも食らい付こうとする商人。


が――力無い通常攻撃を強いられており、それも一本の片手斧だ。

二本の重い武技が押しのけ蹂躙する。


商人の黒い斧は、呆気なく遠くの地面へ転がった。



「くっ――」


「逃がすかよォ――んなッ!?ぶねえ!!」



海賊が追撃で双斧を振り下ろそうとした時――商人の手から、黄色い液体の入った瓶が投げられたのだ。


そのまま振り下ろせば、瓶が割れて身体へ降りかかる――咄嗟の判断で、海賊は斧を引っ込めた。


だが商人は、その隙に大きく距離を取る事に成功。



(コイツ……麻痺毒瓶まで持ってたのか)



まるでPK職を相手しているかのような錯覚を彼は覚えたが。



「……ハッ、ただ距離を取ったのは間違いだったなァーー」



笑う。

寧ろ、好機だという様に。



「終わりだぜ!商人さんよ――『大海原(オーシャン)(オブ)牢獄(プリズン)』!!」


「――っ!次はなんだ――」



海賊がそのスキルを発動後――遠くの商人の地面の『海』から、湧き出る様に大きな檻が生成されていく。



『海の足枷』。

海賊専用の水魔法の一つ。

対象の地面から水の枷を生成し、それが対象に触れれば移動速度を低下させるもの。


だが――『大海原の畏敬』の発動が成功した対象に限り、効果は更に強力なモノへと変貌する。


それが、『大海原の牢獄』。

普通なら檻の生成中に走ってその場を離れれば回避は可能。

だが強化されたこのスキルは『回避不可』。

加えて――移動速度低下に留まらず、『移動不可』まで効果は上昇する。



(一気に逆転して蹂躙する、この瞬間が堪らねえ!これだから海賊は最高なんだよなァ!)



「移動不可、か――」


「ハッハァ!これが()()()()()ってヤツだ、『ウォーターアックス』……おらッ!」



海賊は左腕の片手斧を片手杖に交換。

その詠唱の後――地面から水の斧が生成、商人へ飛んでいく。


そして更に、タイミングを合わせてもう一方の右腕の片手斧を投擲した。


……彼の利き手は右利き。普通なら一本しか正確な遠距離攻撃を行えない。

だが、魔法の存在が二本の同時攻撃を可能にする。

補助が効く魔法は左、コントロールが必要な投擲は右で使い分けているのだ。



(コイツは確か、飛んでくる矢を反射するだとか噂されてた)


(でも――この二本の同時攻撃じゃそれも不可能)


(終わりだ、後はひたすら同じ様に蹂躙するだけ。流石にアイツももう諦めて――)





「――ッ!?」






それの対抗手段は無い筈だった。


だが。

瞬間、海賊は身震いする。

それが迫るというのに、商人は――




――真っ直ぐに、彼を見つめていたのだ。



いつも応援ありがとうございます。なんと500万PV突破です!感謝しかありません……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


コミカライズ単行本1.2巻が発売中! よろしくお願いいたします

↓新作のVRMMOモノです。↓
罠士の大罪人~不人気職、『落とし穴』で最前線を駆け巡る~



小説家になろう 勝手にランキング

作者ツイッター 322106000445.jpg
― 新着の感想 ―
[良い点] サクサク読めて、いつも楽しませていただいております。 [気になる点] 大海原の牢獄、であれば、英語としてはプリズンオブオーシャン、ですかね。 英語、日本語、どちらの意味合いを意図しているか…
[気になる点] 間接接触で発動OKってこれナーフ案件でしょう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ