プロローグ
コロナ自粛の暇つぶし程度になれば幸いです。
次話投稿は今日の夜中になるかと。
「はあ……疲れた」
スーパーで買った惣菜をテーブルに置いて、スーツを床に脱ぎ捨てる。
1DKのマンションの一室。今の会社に勤めて、この部屋に引っ越して……一年程度だろうか。
いつ干したか分からない布団にガタついたテーブル。出せていないゴミ袋。
冴えない二十三歳の一室だが、一つだけ異質なモノがある。
えらくメカチックなヘルメット。こんな現実から異なる世界へ連れて行ってくれる素敵な装置だ。
『Real Life Online』。通称RL。
スキル制のフルダイヴ型VRMMOだ。
初めて完全なVR世界を作り出し、世界を賑わせたそのゲーム。
多種多様な職業。自分の行動から得られるスキル。超絶美形のNPC。
発売前から予約が殺到し、一時期はアクセス過多でサーバー落ちにまでなった程だ。
一か月前……そんなRLが発売され、事前情報から『商人』なんて職業がある事を知っていた俺。
異国の地を渡り歩き、品物を行商しながら生きていく――幼い頃から憧れた、そんな絵本の中の職業。
趣味の貯金を五十万程崩すには少し躊躇ったが……迷いに迷った結果、結局購入した。
その時の俺は、約五年……いや、十年ぶりぐらいに、胸が高鳴っていただろう。
飯も碌に食べずに、帰ったらすぐにRLの世界へ行っていた。
「……はあ」
そのVRギアを見て――俺はため息をつく。
ネトゲの世界。現実で上手くいっていない奴ほど楽しいなんて言うが、そんな言葉は嘘だった。
今はそのヘルメットを見る度、嫌気が差す。
『商人』――それは、とんでもない『不遇職』だったからだ。