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六十九話目 エルフの秘術

「エリオ、家の方へ退くぞ。少しでもシュナイダーとの距離を縮めたい。それから、ついでだ、例の魔法を撃ち込んじまえ」


俺の魔法を受けたばかりで、多少は身構えているはず。ここで、何とか少しでもダメージを与えたい。聖光魔法が当たれば可能性はあるかもしれない。


こちらの動きを察したのか、ウサ吉とラビ子が木陰から顔を出して、これ見よがしにリュカスの前に姿を現している。あいつら、危ない真似しやがって。でも、助かったよ。


「バインド!! 今だ、エリオっ」


「わ、わかったわ! 魔力濃度を高めて、一気に放出する……ディバインストライク!」


少しは発動まで早くなったか。実戦でここまでやれてしまうのだから、やはり勇者というのは末恐ろしい。リュカスの動きも押さえているので、あの光はまともに直撃している。これで少しは時間が稼げればいいのだが……。


 光の爆発の跡を確認しながら退避を続けていると、シュナイダーの魔力が近づいてくるのを感知した。よしっ、これで更に時間を稼げるはずだ。


「レムリア、エリオ! リュカスは?」


「今のところは大丈夫だ。ただ、奴の戦闘力がおかしい。レックスが来るまで、砦には近づかせず防御に徹するしかないぞ」


「ど、どうやらそのようだな……。来るぞっ!」


「そ、そんな……」

「おいおい、無傷かよ。これは本当にヤバいんじゃねぇか」


 エリオも信じられないといった表情をしている。自分が撃てる最大の攻撃魔法を防御態勢をとれずにまともに食らったはずなのに、結果が数秒程度の足止めだったのだ。リュカスは森の木々を豪快に倒しながら、こちらに真直ぐ向かってきている。


「レムリア、これだと森の中はかえって危険かもしれぬ」


 倒された木が周囲を巻き込みながら、まるで津波のようになって押し寄せてくる。隠れても無駄だろうし、足場も悪いとなれば戦闘場所には向かない。アイミーのようなタイプなら上手く活用して戦えるのだろうが、俺やシュナイダーでは難しい。


「レックスは北の山脈の方に行ったんだよな」

「私が少し時間を稼ごう、二人は先に行っててくれ」

「お、おいっ、大丈夫かよ」


「エルフの民としては、こう何も考えずに森を荒らされるのは許せぬのだよ。あの木々がここまで成長するのに何年、何百年掛かっていると思っているのだ」


「任せていいんだな?」

「ああ、以前のリュカスならまだしも、あのドラゴンは力の割にかなり頭が弱いようだから、可能性はあると思う。エリオのことを頼むぞ」


「無理はするなよ。エリオ、行くぞ」

「は、はい」


 さすがはシュナイダーだ。この一瞬で敵をよく観察し、自分の役割をどう活かせるか考えている。それに忘れていたが、エルフは森の民。周囲の植物やその環境を活用しながら戦うことはシュナイダーにとっても得意な分野か。


 魔剣ファムファタルを地面に突き刺すと、静かに目を瞑り、突進してくるドラゴンを真正面から見据えている。心を落ち着かせ、まるで森と会話をするように穏やかな表情をみせる。


「森よ、樹木たちよ、どうか私の声を聞いてほしい。森を荒らす不届き者に天誅を、世界樹の名のもとに命ずる、『森羅万象』」


 シュナイダーを囲うようにして多くの植物たちが成長していくと、目の前に迫っていたドラゴンの行く手を阻むようにして樹木がその動きを遮る。上から押さえつけるようにして幾本もの樹木がドラゴンを覆う。地面に張っていた根が移動するとその場所は陥没し、落とし穴にはめるかのようにドラゴンを地中へと埋めていく。


 暴れるドラゴンを力でねじ伏せる、圧倒的な自然の猛威。しかしながら、その力は永続的なものではない。加速的に成長した植物たちはその役目を終えたかのように動きを止めていく。残念ながら、ここまでのようだ。


「力を貸してくれてありがとう。みんなの気持ちは、しかと受け取った」


 これで、少しだけ時間を稼げたか。何故、リュカスがここまでの力を手にしているのか。四天王の時とは比べ物にならない暴力的な力。私たちでは少しの時間を足止めすることで精一杯だ。この分だと、あの魔王にも何かあったと考えるべきだろう。


「なんだ、ウサ吉とラビ子も残っていたのか。リュカスは間もなくここを脱出してくる。我々もレムリアを追ってここを離れるぞ」


他のウサ吉軍団はレムリア達に着いて行ったようだが、この二羽は私を心配して残ってくれたようだ。


リュカスは狂ったかのように暴れている。直に脱出してしまうだろう。


 おそらく、倒すことができるのはレックス殿しかおるまい。其方だけに頼らざるを得ない、不甲斐ない四天王を許してくれ。しかし、私たちはあなたの盾となり鉾となり、あなたが守りたいものをきっと守ってみせよう。

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