六十三話目 エリオとの話2
「い、今はそんなことよりも、そのイシスと名乗った神様の話が聞きたいんだけど……」
そんなことのあたりで、全員の目が冷たくなったような気がしないでもないが、ここは気のせいだと思いたい。
「そ、そうね、この話題は彼女たちとも話し合いをする必要がありそうだから、いったん置いておくわ。それで、あいつは、そう。確か、修業をつけてやるとか言ってたの」
「修業? 神様が何のために。というか、本当に神様っているんだね」
「ええ、とんでもないエロ神がいたわ」
エリオの目が怖い……。神様が僕の身体に入っていたというのは信じられないけど、とんでもない能力でリュカスをボッコボコにしたり、砦の天井を吹き飛ばしたりと僕の体を使って無茶苦茶をやっている。
そして、記憶にはないけどレムちゃんやシュナちゃんに、とてもエロいことをしてしまっている。神様、本当に何がしたいのだろう……。
「それで、修業の開始はいつからなの?」
「それが、その時が来たら私とレックスを迎えにくるようなことを言ってたの。それまで、少しは強くなっておけって」
こちらから連絡もとれないし、どうしようもないか。うん、忘れよう。エロいことしたのは僕だけど僕じゃないし、今はひたすら強くなるのみ。
「お、俺にチューしといて、修業には呼ばねぇのかよ」
「あ、あなたもレックスに、せ、接吻をされたの!?」
聞こえない、聞こえない。
「大人のチューをしてたにゃ。主様、アイミーだけ仲間外れとかずるいと思うにゃ」
聞こえない、聞こえない。
「私だって、一回しかしたことないんだから」
「勇者もしてて、アイミーだけ仲間外れにゃ! これは断固として、チューを所望するにゃ!」
「いや、お前はいつも朝、ベッドでレックスの顔舐めまくってるだろ。そっちの方がよっぽどヤバいと思うぞ」
「あ、あれは、ただの挨拶にゃ……」
「べ、ベッドって!? ちょっと、レックス! まさか、この娘たちと一緒に寝てるんじゃないでしょうね」
「ね、寝てない、寝てないよ。別々だけど、朝起きたら、何故かいつもアイミーが横にいるんだ……」
「レックスのそういう無頓着な所は、危険だと思っていたのよね。村では私がずっと隣にいたから、誰も寄せつけなかったのに。たった一年で女の子三人と一緒に暮らしてるなんて……」
エリオが激しく狼狽している。い、いや、僕は何もしてないんだけど、何故だか、すごく責められている気がする。
「でも、生きていてよかったわ」
困ったような顔をしながら笑顔をされても、リアクションに困る。
「僕がエリオの前に現れたら、きっと迷惑を掛けることになると思うから、姿をみせるつもりはなかったんだ」
今度は、笑顔から一転、頬をふくらませている。
「王都では、勇者のお披露目も遠くからだけど見させてもらったよ。エリオが頑張ってるのちゃんと見てたんだから」
「レックス、私たちの目的は魔王討伐よね?」
「うん、そうだね」
「一緒に行動できないのは理解したわ。なら、約束して。これからは、情報交換をしながら魔王討伐に向けて動きたいの」
こういう時の女の子は強い。覚悟を決めたら、次にどうするのかをすぐに考えるのだ。
「じょ、情報交換って?」
「私より、勇者パーティよりも、レックスやあなた達の方が圧倒的に強い。それぐらいは私にもわかるわ。私は魔王と戦うまでにもっともっと強くなりたいの」
「つまり、神様との修業の前に、僕たちと特訓をして強くなりたいということ?」
「ええ、その方が強くなれる。三日に一度はここに来るわ!」
「来すぎだろっ! おいっ勇者、お前、他のパーティメンバーになんて言うつもりだよ」
「そうにゃ、それじゃ私たちのアドバンテージがなくなるにゃ」
「エ、エリオ、さすがにその頻度で来たら疑われるよ」
「そこは、なんとかするわ。アイミーさん、獣人の国と諜報活動で連携することにしませんか? あの、ウサギさん達もそうすれば私に近寄りやすくなります」
「諜報活動ってのはいい案だと思うにゃ。だけど、獣人の国と連携ってのは無理があるにゃ。イシス教は他種族を認めていないはずにゃ」
「ここはもう魔王領よ。そこまでイシス教の影響を受けないと思う。パーティメンバーには私から上手く説明するわ」
「それでも十日に一度が精一杯だね。それ以上はダメだよエリオ。それから、仲間から疑われても頻度は減らすよ」
「う、うう……。わ、わかったわよ」
「アイミーもレムちゃんもそれでいいかな?」
「構わないにゃ」
「レックスがそういうなら仕方ない」
「あのさ、王都でゴブリンキングを倒したのはレックスなのよね。そ、そういえば、レックスのレベルって今いくつなの?」
うーん、別に隠す必要はないのかな。
「僕のレベルは……」
興味を持っていただけましたら、ブックマークや下の星評価でポイント応援していただけると執筆の励みになります。是非よろしくお願いします。




