六十話目 勇者対オークキング
エリオはとても混乱していた。
レックスがちゃんと生きていた。少しだけ大人の姿になったレックス。でも、その中身は違う人っぽくて……でもゴブリンキングを倒したのはレックスなのだという。
私の前に姿を現さない理由は、何かあるのだろうか。
で、でも、今はレックスが生きていて、目の前にいることの嬉しさが勝っている。隣のエルフとか物凄く気になるけど、でもあれは、レックスであって中身は違うわけで。うーん……。
い、いや、今は目の前のオークキングに集中しなくちゃ。何故か動きが硬いけど、あれでも魔王軍四天王の一角。油断してはいけない。相手の動きをよく見て先の先を読んでいく。ドゥマーニ様に言われた言葉を思い出す。
どうやら、オークキングは剣と盾で受けに回ろうとしている。私の剣をいなしてから剣で攻撃を加えようとしているのだろう。それならば……。
「光の波よ、伸びよ! ホーリークロス!」
剣の攻撃に身構えているオークキングに対して、先に魔法攻撃を与える。ホーリークロスは前後左右に波となって何度も攻撃を加える聖光魔法。盾で防げるのは前方からの攻撃のみ。左右、後ろからの攻撃には対処できない。
「ふんっ、この程度の攻撃なら何発くらってもダメージにもならんわ! ぶひっ」
命中した魔法攻撃もオークキングの皮膚を少し切り裂いた程度。想像以上に、オークキングの防御力が高い。あの全身筋肉のような体にダメージを通すにはどうすればいいのか。
「ええいっ! シャインソード、連撃」
「やはり情報通り、勇者の力はそこまで成長していないらしいな。ぶひっ!」
聖剣での攻撃はオークキングの盾で防がれ、二撃目は持っている剣で簡単に弾き返されてしまう。体重差があるせいか、攻撃の一つ一つが重い。
「ぐっ、やはり、かたいか……」
しかし、私の攻撃の方が先に届いている。つまり、スピードでは私の方が勝っているということだ。
「どうした、勇者エリオ。大変そうなら少しぐらい手伝ってやろうか?」
「わ、私が倒します。あなたはそこで見ていてください!」
今の私でオークキングに通る攻撃手段は、砦を破壊したディバインストライクしかない。魔力の残量的にも最後の一回になるだろう。絶対に外せない以上、ここぞという瞬間を狙い、いかに無防備な状態を作って発動するかにかかっている。
私に出来ること、とにかくスピードで翻弄する。一撃で倒せないのなら、何度でも攻撃を重ねるのみ。
残り僅かとなった魔力ポーションを飲み干すと覚えたばかりの支援魔法を発動させる。
「光の輝きよ、我、能力を上昇させよ。オーバーオール!」
この魔法はあらゆる能力を上昇させる魔法であるが、まだ初級段階のため身体能力を僅かに向上させる程度でしかない。それでも、スピードで優位に立っていた私の身体能力が更にアップすれば、より攻撃が通りやすくなるはずだ。
「シャインソード、三連撃!」
足を狙う、とにかく機動力を奪っていく。支援魔法が消滅しても有利に戦いを進められるようにするために。
一撃目はあっさりと入り、同じ場所を狙うように二撃目も深く入っていく。これならいけるっ!
「まだ全体が見えていない。そんなことはオズワルドピグマン氏も注意するんじゃねぇか? 攻撃の来る場所がわかっていれば、多少のスピード差も対処出来ちまうぜ」
連撃をわざとまともに受け、油断して大振りになった三撃目を躱されてしまった。無防備な体勢の私はあっさり剣を弾かれ、オークキングに足を取られてしまう。
「きゃぁぁぁ! は、離せ、離してよ!」
「ぶひひひひっ! 結構痛かったんだぜぇ。すこーし、静かにしてもらおうか。それにしても……んはあー、いい匂いだ」
オークキングは、捕まえた足を押さえるようにして自分の舌を這わせてくる。舐められると背筋がゾワゾワとして、何とも言えない気持ち悪さが全身を走る。
「や、やめろ……。はぐっはぁぁぁ!」
そこへ、容赦なくオークキングのパンチが私のお腹にめり込んでくる。足が固定されているため、逃げ出すこともできない。
続けざまに何度も何度も殴られていく。
だんだん力が入らなくなっていく。このままでは……。
「このままでは、まずいか?」
まるで、他人事のように私を見るレックスの視線はとてと冷たく、優しさが全然感じられない。あれは、私の知っているレックスの目ではない。
くやしい、くやしい! こんなところで、つまづいている場合じゃない。私は最速で魔王を倒し、村でレックスと武器屋をやるって決めているんだ。こんなところで負けられない。
誰かに助けを求めるようなこともしない。私が最後の砦、勇者なのだから! 私の後ろには誰も守ってくれる人はいない。私がやらなければ多くの人たちが苦しむことになる。
「ほう、覚悟は勇者の方があるのか……」
「な、何が起こっているんだ!?」
エリオの身体は黄金色に輝き始めると、負傷していた怪我も傷も全てが消えていく。いや、超スピードで回復しているのだ。エリオの眼は金色に輝きを放ち、あっという間に体力が回復すると次は力が溢れてくる。
「離せ」
体を起こすようにして自由な手を使い、掴まれていた足を腕ごと殴りあげる。
「う、腕がぁ、お、俺の腕が……」
オークキングの腕は反対方向に曲がっていて、ぶらんぶらんと力を失っている。骨が完全に折れていた。
「スキル習得の条件を満たしたようだな」
スキル、超回復、それからスキル、力の覚醒レベル二といったところか。
さて、ここからは本当に見学になるな。
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