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二十三話目 リュカスの思惑

「四天王を集めろとは言われても、魔王様にカリスマ性のスキルがないと知られたら誰も集まらないだろう。ただでさえ、良いイメージがないだろうからな……」


 自分でも他の四天王に悪いことをしたなーという自覚が無いわけでもない。もちろん、自分が生き残るための術でもあったわけだが、口の上手い自分が参謀を名乗り出て、魔王様の護衛として前線に他の三人を向かわせていた。まあ、魔王様もそれを知っていて私を利用していたのだろうからお互い様だろうとは思っている。


「普通に考えて、怒っているよな。何も考えてなさそうなアイミーですら、スキルの影響がなくなった途端に出ていったぐらいだ」


 リュカス自身もカリスマ性のスキルを持っていない魔王に対して思う所はある。カリスマ性のスキルは四天王になることでそのステータスを倍増させる。その恩恵もなく、死ぬ思いをしながら勇者パーティや大勢の人族と戦わなければないのは正直しんどいだろう。


 もちろん、魔王様がその成長過程でスキルを開眼させることは十分に考えられる。その一点に賭けて、他の四天王を集めていくしかない。奇跡的にもまだ忠誠心が残っていた私は、ギリギリとは思われるがステータス倍増の恩恵が残っている。この恩恵が消えてしまう前に、力づくで奴らを連れてくることは、そう難しいことではない。


「一番、最初はヴァンパイアロードのレムリアだな。やる気は一番ないし文句ばっかりだが、その戦闘力は随一だ。そして、かなりの確率で奴は寝ているはず。ここは手っ取り早く、寝ている棺桶ごと魔王城に運んでしまおう」




 そう思って、レムリアの城まで来たのだが、どうにも様子がおかしい。私が知っているのは、城の壁面はびっしり蔦に覆われ、もちろん庭の手入れなど一切されていない、まるで自然と一体化したような人を寄せ付けない雰囲気があったはず。


 ところが目の前の城は、陽の光に反射するように輝いている。雑草一つとして生えていない手入れの行き届いた庭。壁面の大量に覆われていた蔦は何処にもなく、庭の噴水まで復活しているではないか。惰眠を貪ることを信条とするレムリアの城とは到底思えない。



 んんっ? ウサギの門番だと!?


 お城の入口には、両脇に立つようにしてムキムキのウサギが二羽、まるで怪しげな者でも見るかのように、じーっとこちらを窺っている。


「おいっ、ウサギ。レムリアに用がある。そこをどけ」


「……」

「……!?」


 何やらウサギ同士で会話をしているようだが、ウサギの言葉は知らないので何を言っているのかはまったくわからない。だが、そのジェスチャーはわかる。ウサギが一羽、前に出てくると手を下から上へと数回軽く振りあげた。


 ほう、この竜王に向かって、たかだかウサギごときが邪魔をするというのか。


「吹き飛べっ、テンペスト!」


 得意とする風魔法を撃つと、意外なことにウサギの片割れが自らを犠牲にするようにして立ち塞がり、もう一羽に何かを告げて倒れた。



残されたウサギは倒れたウサギと私を交互に睨みつつも、全速力で城の中へと走り去っていく。レムリアに知らせることを優先したということだろう。


「まあいい、この分だとレムリアが寝ているという線はなさそうだ。魔力の半減したヴァンパイアロードなど敵ではない」



 開けっ放しの玄関を抜けて広間に入ると、機嫌の悪そうな顔をしたレムリアが出迎えてくれた。


「久し振りですね、レムリア。まさか起きてるとは思いませんでしたよ」


「な、何の用だ。俺はお前に用はない、さっさと帰れ!」


「つれないじゃないですか。同じ四天王として一緒に戦ってきた仲間に冷たいですねぇ」


「よ、よく言うわ。戦っていたのはお前以外の三人だ」


「私だって色々と大変だったんですよ。まあいいでしょう、こちらの要件を先に言います。魔王様が復活しました。あなた方、四天王の再招集をかけられております」


「断る!」


「そうですか……。でしたら、残念ですが無理やり連れていくということになりますね」


 しょうがありませんね。少し、力を見せればレムリアも諦めるでしょう。


「お、お前、その力、四天王の力を失ってないのかよ!?」


「わかったでしょう。今のあなたに出来ることは、大人しく私と一緒に魔王様の元へ行くことです」



「……ウサ吉、今の私ではこいつを押さえられない。急いでアイミーを連れて来るんだ。力を取り戻したアイミーと、私ならリュカスを退けられる。……大丈夫だ。それぐらいの時間なら耐えてみせる。合図を出したら行け」


「おやおや、何の打ち合わせですか? 今のあなたの実力では何を考えても無駄でしょう」


「ウサ吉、行けっ! ジェノサイドレーザー!!」


「目くらましのつもりですか? 何を考えているのかと思えば、自分を犠牲にしてウサギを一羽を逃がそうとは。もちろん、逃がしませんけどね」


 玄関に向かって走っていたウサ吉は、後ろから風の魔法で斬りつけられていた。


「ウ、ウサ吉!? き、貴様ぁ! こいつは関係ないだろう」


「このウサギは私に無礼な態度をとっていたのでお仕置きですよ。さて、そろそろ終わらせましょうか」


「万事休すか……いや、間に合ったらしい」


 突然扉が開くと、そこには獣王バリュオニウスの姿があった。何故ここに獣王がいる。しかも、ステータスが変わっていないだと!?


「レムちゃん! 大丈夫にゃ!?」

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