プロローグ
勇者との激しい戦いから数十年。再び、目覚めの時が訪れたようだ。次こそは、必ず人間どもを駆逐してやる。
「魔王様、復活おめでとうございます」
見知った声が聞こえてきた。側近のリュカスだな。魔王軍四天王の一人であり、我が最も信を置く者だ。
「リュカスか、どうやら復活までにかなりの時間がかかってしまったようだな……。どのくらい時が経っている?」
「およそ二十年もの時が経過しております。その間、我が魔王軍は散り散りとなり、勢力図もそのほとんどが人間どものものとなってしまいました……」
「そうか……致し方あるまい。それにしても二十年か。勇者ドゥマーニには、こっぴどく殺られてしまったからな」
「そのドゥマーニも、すでに勇者を引退したとの情報が入っております。次世代の勇者が育つ前に魔王様もお力を蓄えましょう」
魔族という存在は、魂までなくなることはない。例え、勇者に殺されたとしても時間を掛けて復活を繰り返し、再び立ち上がり人間どもを駆逐する。いずれは、勇者を倒し魔族が支配する世界を作り上げる。それが我が魔族、永遠の望みである。ちなみに、まだ世界を支配したことはない。
「今度こそ、勇者を倒してみせよう。……ところで、わしのスキルがかなり減ってるっぽいんだけど何か知ってる?」
「も、もしかして、カリスマ性のスキルを失くされていませんか? 実は、数年前にバリュオニウスとシュナイデルがいなくなりました。私もあと数年、魔王様が復活していなければ危うかったかと……」
「なっ!? 獣王バリュオニウスに魔剣シュナイデルがいなくなっただと!? レムリアは? ヴァンパイアロードのレムリア・ツェペシュは?」
「レ、レムリアは……。十年前から眠りについたまま起きてきませぬ」
「ね、寝過ぎじゃない? つ、つまり、現在、魔王軍四天王は竜王リュカス。お主しか残っておらぬというのだな……」
「も、申し訳ございません。そういうことになります……」
「い、いないものは仕方ない。リュカスよ、悪いが、わしが力をつけるまでに四天王を集めておいてもらいたい。カリスマ性のない、今のわしが声を掛けたところで、あいつらが戻ってくるとも思えぬ……」
「はっ、かしこまりました。必ずや魔王様のご期待に応えてみせます」
こうして、竜王リュカスは魔王城から一人仲間を集めるために出ていったのだった。
時を同じくして、勇者の村では引退したドゥマーニに代わって新しい勇者が生れようとしていた。