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悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜  作者: まさかの
第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!

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もう我慢できません

 確かにわたしは最近あの死亡宣告のせいで大変なことが多かったが、その前まで何不自由しない生活だった。

 幸運体質の話が本当ならそれこそ全額出して勝ちを狙いに行くべきだろう。


「おいおい、もし一回でも負ければお酒飲まさせられるんだぞ。いい加減あのクソ野郎どもを殺してしまいたいくらいだ。それもマリアさまの手を触るなんてはらわたが煮えくり返りそうだ」

「それは言えてますね。お金を稼いだらわたしにいい考えがあります。大変不快でしょうがもうしばらくお付き合いいただけますか?」



 どうやらクロートもメガネの下では怒りが隠れているようだ。

 わたしは承諾して再びテーブルへと戻った。


「大変お待たせしました」

「もういいのか?」

「はい、わたしの護衛の者が失礼しました。それでは始めてください」



 わたしは先ほどと同じようにほぼ全額を掛け金として出した。



「かかか、いいな。諫言なんて関係ないってか。先に聞いておくがお前の魔力量はどれくらいだ?」

「下の普通です」

「それならギリギリだな」


 わたしの魔力量は下級貴族の平均値ということになっている。

 おそらくこの男は魔力量的に釣り合いが取れるかを考えており、わたしを妾にしようとか思っているのだろうがわたしからお断りだ。

 誰が地位も顔も体格に心まで劣っている者と結婚なんてするものか。



「今後ジョセフィーヌ領は災厄に見舞われる。まだ猶予はあるがすぐにわたしのところへ来なさい」



 災厄と聞いてわたしはふと夢のことを思い出した。

 もしかしたらなにか知っているのかもしれない。

 お金稼ぎのためだけに来たが思わぬ副収穫がありそうだ。



「災厄とはどのようなことですか?」

「あそこでは犯罪組織が勢力を増やしている。下級貴族と癒着が多く、一斉に摘発すれば魔力が足りなくなる。もう腐っていくしかない領土だ。今ならまだ間に合う。お前ならわたしの妾になってこちらに逃げてくればいい」



 わたしの腰に腕を回そうとしてくるが先に扇子で止めた。

 これ以上触られるのは御免だ。

 あまりわたしを安い女だと思わないでいただきたい。



「まずはゲームを楽しみましょう?」

「それもそうだな、では回せ」



 またわたしは七番に掛けている。

 回転盤が回り始めて、次にボールが放たれる。

 そしてまたもや七番に入った。

 これで、金貨三百九十六枚となった。


「おいおい、どんだけラッキーなんだよ。またわたしたちが飲みーー」



 わたしは男たちがお酒を飲む前に渡された大赤棒三個、つまり上限である金貨三百枚を掛けた。

 本来ならもう少し情報を探るべきなんだろうが、もうわたしはこの男の側にいるのは耐えられない。

 そこでとうとうズクミゴの目の色が変わってきた。

 わたしが狩られるウサギでないことに気付いたようだ。


「また単数掛けにしますが、金貨は用意できますか?」



 金貨一万枚を中級貴族では用意できないことは世間知らずなわたしでもわかる。

 挑発的な言葉にアルコールもあって顔を紅潮させる。

 立ち上がりすぐさま自分の椅子を蹴ってこちらを威嚇した。


「あんまり調子に乗らねえことだ、お嬢ちゃん。あまりにもこっちが優しくしてるからっていい気になっていると、紳士なお兄さんから猟奇的な獣になっちまうぞ」



 わたしはそこでプッと息をもらしてしまった。

 自分をお兄さんって、どっからどうみても醜い豚だ。

 どうやらその態度が気にくわないらしく、わたしへと手を伸ばしてきた。

 だがそれよりも早くヴェルダンディがズクミゴの腕を掴んで止めて、一瞬で体を投げ飛ばした。

 背中から思いっきり床にぶつかったので悶絶している。

 そこで周りの貴族たちも立ち上がってこちらに威圧的になっている。

 クロートはわたしに耳打ちした。


「姫さま、そろそろ変装をやめても構いません」

「バレてもいいのですか?」

「あとはお任せください。これまでよく我慢されました」



 わたしがウィッグを脱ぐと、この場にいる全員が口を開けて呆けている。

 どうやら立場というものを分からせないといけないようだ。

 クロートとヴェルダンディもかつらを脱いで正体を現した。

 クロートの声が響き渡った。


「何をしている。このお方の髪と御姿をみて未だにだれか分からない訳ではないでしょうね?」



 クロートの脅しの言葉にすぐさま全員が跪いて頭を下げている。


「くそっ、なんでマリアさまがこんな場所まで遊びに来るんだ。わたしたちの味方をしているっていうのはやっぱり嘘だったのか」

「違法カジノの摘発か。息抜きすら許されねえのかよ」

「この男たちは何を言っていますの?」


 周りの男たちが悪態を吐いているがわたしには意味がわからない。



「どうやら水の女神のことを言っているのでしょう。しかし今回の件は別ですよ。知らなかったとはいえ、姫さまに手を出そうとしたのです。こちらはルールを守っているのでとやかく言われる筋合いはありません」



 クロートは特にここにいる者たちに対しては思うところはないようだ。

 わたしが守っているのはわたしのために働いてくれる者だけだ。

 なぜただ立場が低いだけで守ってもらえると思っているのだろうか。

 ルージュたちと比べることすらおこがましい。


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